A Will
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あれだけ罵倒し、馬鹿にし、脅し、そして、わたしを軽蔑したであろう、 その男は、いともたやすくわたしを抱いた。
嬌声。
ねぇ、この声が聞きたかったの?
何度も何度も、しつこいくらい、何度も。 懇願も厭いも、均しく扱われるなら、もう手放してしまったほうが楽だと思った。
いつもより早く果てた、その男を、わたしは煙草の煙の向こう側で見つめる。 あの憤りは一体何なのだろう、と思うほど、締り悪い笑顔を向けられた。
抱きたかったのか。
ふと、そう思って、多分そんなこと男自身気づいてやしねぇだろ、と胸中で呟いて笑った。
どんなに怒ってたって、どんなに軽蔑したって、一度抱いてしまえば一緒だね。 征服欲か何かを満たすのに丁度良いのかもしれない。
あぁ。わたしが、あの嬌声の合間合間に、そんな分析をしてるって少しでも気付いたら、今度こそ本当に男はわたしの首を掴んで離さないかもしれない。
それは、それで、結構どうでも良いことだ。
煙草1本分。 わたしの男への愛情なんて、たかが知れてる。
せいぜいお互い、バレないように楽しもう。
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