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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2010年11月28日(日)
Vol.769 最後の親孝行

おはようございます。りょうちんです。

幼なじみの彼は、昔からそんなだった。引っ込み思案でおとなしくて、自分から積極的に何か始めるタイプではけしてなくて、ましてリーダーシップを取ることが大の苦手で、優柔不断で要領も悪くて、どこかどん臭くて。だから大げさに言えば、いつも昔から少し気が強く口も立つ俺がいじめっ子で、彼がいじめられっ子という図式だった。でもずっと仲が良かったのは、彼はすごく優しいから。誰よりも優しいココロの持ち主だったから、ケンカしてもずっと俺は彼のことが大好きだった。
彼のお母さんが体調を崩したのは、今年の春。桜が咲いていた頃にたまたま彼のお母さんを見かけた時は、あんなに元気そうにしていたのに。夏の終わりに末期のガンと診断され、それはすぐに隣県に住む彼の耳にも届いた。彼は週末になると必ず車を走らせて、彼のお母さんの入院する病院までお見舞いに来るようになった。
彼のお母さんも、残された時間は残りわずかだと薄々感じ取っていたのかもしれない。病院のベッドの上で、自分が生まれ育った生家に帰りたいと時々言っていたそうだ。それを知った彼は、一大決心をする。体調の良い時を見計らって彼のお母さんを一時退院させ、北関東のはずれにある生家まで家族で旅行する計画を立てたのだ。どんなこともすべて彼の考えで、何があってもすべて彼の責任で。病院も彼の強い意志と彼のお母さんの体調を考慮して、最後の親孝行は無事に実行された。自分から旅行の計画を立てるなんて昔の彼じゃ考えられないのに、母親を想う優しさが行動に移させたんだろう。彼のお母さんも、きっとうれしかったに違いない。
今年いっぱいだという宣告よりもずいぶん早い今月初め、良く晴れた朝に彼のお母さんは帰らぬ人となった。昔はあんなに泣き虫な彼だったのに、告別式の日に久しぶりに会った彼はもう俺の知っている弱っちい彼ではなかった。「りょうちんのお母さんも体調悪いんだろ? 何かあれば力になるよ!」。久しぶりな上にどんなコトバで励まそうか迷っている俺に、逆にそう言って微笑んだ彼がすごくカッコ良く見えた。そうだ、俺は知っている。昔から彼はすごく優しいんだ。