今日の日経を題材に法律問題をコメント

2015年02月27日(金) 出頭する際に弁護士が同行

 日経(H27.2.27)夕刊で、川崎市で中学1年生の遺体が見つかった事件で、川崎警察署は、殺人容疑で男子高校生を逮捕したと報じていた。


 別の新聞では、この18歳の少年が出頭する際、弁護士が同行したようである。


 この事件は被疑者国選相当事件であるから、逮捕されれば国選弁護人が選任される。


 しかし逮捕前であるから、この弁護士は私選弁護人になる。


 弁護士を雇ったことに非難の声も聞こえてきそうだが、18歳の少年やその家族にとっては、今後どのような手続になるのかは不安であろうから、弁護士を選任すること自体に問題はない。


 ただ、国選弁護人の場合には、名簿から順に選任されるので、自分が選任した弁護士が国選弁護人になるわけではない。


 もちろん、逮捕後も国選弁護人を依頼しないのであれば、引き続きその弁護士が私選弁護人になる。


 しかし、今後、家裁送致、検察官への逆送が予想されるから、逮捕された少年の家族にとって金銭的負担が大変である。


 そうすると国選弁護人が就くことになるであろうから、逮捕前に選任した私選弁護士の役割というのは非常に限られてしまうであろう。



2015年02月26日(木) 渋谷区がパートナーシップ証明書を発行 アイデアが素晴らしい

 日経(H27.2.26)夕刊で、渋谷区が、「結婚に相当する関係」が認められる同性カップルに「パートナーシップ証明書」を発行するという記事が載っていた。


 法的な効力はないが、家族向けの区営住宅に同性カップルも入居できるようになり、民間の賃貸住宅でも、賃貸人が認めれば、夫婦と同じ扱いで入居できるようになる可能性があるとのことである。


 パートナーシップ証明書発行のためには、互いに任意後見契約を交わすことが要件になっているようである。



 もっとも、任意後見契約は、将来自己の判断能力が不十分になったときに備えて、後見事務の内容と後見人を、事前の合意により決めておくものである。


 したがって、男女間でも契約は可能であり、任意後見契約の内容自体に同性カップルであることを推認させるものはない。


 ただ、相互に任意後見契約を締結するということは、お互いが強いきずなで結ばれていることは推定できる。


 そこから、同性の2人がパートナーであることを推認しても不合理とはいえないであろう。


 本来は別の制度である任意後見制度を使って、同性カップルであることを認知するというアイデアは素晴らしいと思う。



2015年02月25日(水) 顧問弁護士と社外取締役の東証の基準

 日経(H27.2.25)3面で、東京証券取引所が、上場企業に求める企業統治(コーポレートガバナンス)ルールの原案を公表し、独立性の高い社外取締役を2人以上選ぶように促すと報じていた。


 東証に上場している企業は3000社以上あるから、そのすべてで独立性の高い社外取締役を2名以上選任するのは大変なことである。


 そうすると手っ取り早い候補者として、顧問弁護士や公認会計士が念頭に浮かぶ。


 ただ、顧問弁護士を、その地位のままで社外取締役にすることは、東証の定める「独立性の高い社外取締役」の要件に抵触する可能性がある。


 というのは、東証の基準では、報酬が多額の弁護士・会計士等は独立性がないとしているからである。


 ところが、「報酬が多額」といっても具体的数字が示されていないため、社外取締役に就任する弁護士は、念のため顧問契約を解消せざるを得ないことになる。


 しかし、最高裁は,監査役である弁護士がその会社の訴訟代理人となることを容認し、立場が併存しても、監査役の独立性を害するものではないことを認めている。


 そうであれば、東証は「多額」の基準を示して、顧問弁護士と社外取締役の併存の余地を認めるべきではないだろうか。



2015年02月24日(火) 飲食店の主張に無理がある

 日経(H27.2.24)夕刊で、「秘密の隠れ家」を売りにバーを営業している大阪市の飲食店運営会社が、飲食店の情報を掲載した「食べログ」に対し、情報の削除と330万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は飲食店側の請求を棄却したという記事が載っていた。。

 
 ネットでは、飲食店だけでなく、病院など様々な評価サイトがあるが、そこで勝手に評価されて、迷惑に思っているところもある。


 そのような場合に、評価サイトに対し削除要請が認められるかは興味深い論点である。


 記事に載っていた事件は以前に報道されたことがあり、裁判所の判断に注目していた。


 ところが、この事件では、飲食店側が「店名や住所、電話番号、地図などをホームページで公開していた」そうである。


 これでは、店の情報を削除せよという飲食店側の主張には無理がある。



2015年02月23日(月) 医療事故調査制度 医療関係側と遺族らとで意見対立

 日経(H27.2.23)社会面で、患者が死亡した医療事故の原因究明や再発防止を目的とした「医療事故調査制度」の運用指針作りで、医療関係側と遺族らの間で意見が対立しているという記事が載っていた。


 もともと、医療事故調査制度の目的を「原因究明と再発防止」とし、「医療機関による調査報告書は遺族に十分説明のうえ開示しなければならない」としていた。


 ところが具体的な運用指針作りが始まると、医療関係側委員は、「報告書に再発防止策は記載しない」と主張した。


 再発防止策を記載することは医療ミスを認め、裁判などの紛争や医師個人の責任追及に使われる懸念があるほか、医療現場の負担になるというのが理由のようである。


 また、報告書の遺族への伝え方についても、医療関係側は「報告書を開示する必要は無い」としている。


 医療事故の原因究明のためには、当該医師に刑事上、民事上の免責を与えた上で、協力してもらうのが最も効率的であると思う。


 しかし、そのような免責を認めることは遺族側や世間一般の理解を得られないであろう。


 そうすると、原因を究明したい遺族側と、刑事責任、民事責任の追及を恐れる医療機関側とが利害対立するのはやむを得ないことかも知れない。


 ただ、調査報告書の開示については、それを拒んでも裁判をすれば開示することになるのだから、それまで開示を拒否するのはいかがなものかと思う。



2015年02月20日(金) 非上場会社の株価算定について最高裁が判断

 日経(H27.2.20)社会面で、不当な安値で新株を発行して会社に損害を与えたとして、アートネイチャーの株主が五十嵐祥剛社長を相手に約22億5千万円を同社に賠償するよう求めた株主代表訴訟で、最高裁は請求を棄却する判決を言い渡し、原告株主側の逆転敗訴が確定したと報じていた。


 判決理由では、「非上場会社の株価算定について、客観的資料に基づいて合理的に算定されていれば問題ない」と指摘している。


 非上場会社の株価の算定については、簿価純資産法、時価純資産法、配当還元法、収益還元法、DCF法、類似会社比準法など様々な評価手法があり、どのような場合にどの評価手法を用いるべきかについて明確な判断基準が確立されていない。


 それにもかかわらず、裁判所が事後的に、他の評価手法を用いたりして株価の算定を行い判断するのは、取締役らの予測可能性を害することになる。

 
 それゆえ、非上場会社が新株を発行するに際し、客観的資料に基づき一応合理的な算定方法によって発行価額が決定された場合には、その発行価額は尊重されるべきと解したものである。


 非上場会社の株価算定は難しく、それだけに争いを生じやすいことから、最高裁の判断が実務に与える影響は大きいと思われる。



2015年02月19日(木) 夫婦別姓と女性の再婚禁止期間について最高裁が判断

 日経(H27.2.19)1面で、夫婦別姓を認めないことと、女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定が憲法に違反するかが争われた2件の訴訟について、最高裁第3小法廷は、審理を大法廷に回付したと報じていた。


 これにより、夫婦別姓と、女性の再婚禁止期間(離婚後6か月後でないと再婚できない規定)について、最高裁が大法廷で判断を示すことになる。


 夫婦別姓については、普通に考えれば、夫婦同姓か別姓かは立法政策の問題であり、違憲の問題は生じないと思うのだが、大法廷に回付したことから、最高裁がどのような判断をするのか予想できない。


 他方、女性の再婚禁止期間については、6か月と期間に合理性がなく、違憲判断がなされるのではないだろうか。



2015年02月18日(水) 選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げ

 日経(H27.2.18)1面で、選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる公職選挙法改正案が今国会で成立する見通しと報じていた。


 18歳は十分大人といえるし、世界の9割以上が18歳で選挙権を認めているのであるから、引き下げは当然であろう。


 今後は民法の成人年齢引き下げが議論となると思われるが、選挙権を認める以上、成人年齢も18歳に引き下げるのが筋であろうと思う。



2015年02月17日(火) 弁護士が身元保証人に頼まれたら

 日経(H27.2.17)夕刊の元検事総長のコラムで、若手検事のころ、仮釈放で出獄した、かつての容疑者から「就職の保証人になってほしい」という依頼があったという話を書いていた。


 迷った末に先輩検事に相談したところ、「検事がやることではない」と言われ、かすかな痛みを感じながら断ったとのことである。


 弁護士の場合も実際に頼まれたら断るしかないだろう。


 その人のことをよく知っているわけでもなく、保証人になっても責任が取れないからである。


 司法研修のときには、弁護士は身柄引受人にもなるべきでないと指導されたくらいである。(これについては指導に反して身柄引受人になったこともあるが)


 



2015年02月16日(月) 自称弁護士を逮捕

 昨日の日経(H27.2.15)首都圏版で、14日午前3時半ごろ、千葉県の駐車場で職務質問をしていた警察官を押し倒したとして、自称弁護士の北久浩容疑者が公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されたという記事が載っていた。


 「自称弁護士」といっても、この弁護士は登録されているようだ。


 事件は午前3時半のことだから、職務質問されているという依頼者の要請で駆け付けたのかもしれない。


もしそうであれば立派なことであるが、逮捕されたのはいただけない。



2015年02月13日(金) 防犯カメラの容疑者の映像を積極的に公開

 日経(H27.2.13)夕刊で、警視庁が、防犯カメラが捉えた容疑者の映像を積極的に公開し、成果を上げているという記事が載っていた。


 映像を見て「逃げ切れない」と出頭してくるなど、昨年末までに公開した70件のうち約4割で容疑者逮捕などにつながったそうである。


 公開する映像の基準については、容疑者が成人であることが確実、犯行がはっきり映っているなど別人である恐れがないこととしている。


 おおむね妥当な基準であろうと思う。


 懸念は、容疑者の映像が拡散することにより、更生の機会を奪う可能性があることである。


 この点は、いわゆる「忘れられる権利」により解決すべきことになるのであろう



2015年02月12日(木) 「病的窃盗」(クレプトマニア)

日経(H27.2.12)社会面で、欲しくもない物を衝動的に盗む行為を繰り返す、「病的窃盗」(クレプトマニア)と呼ばれる精神疾患に対し、一部の更生施設が専門家によるカウンセリングを導入したほか、弁護士グループが相談窓口を設置する動きがあるとの記事が載っていた。


 確かに、どうして窃盗を繰り返すのだろうと思う人はいる。


 裁判では「もう二度としません」というのだが、また窃盗をしてしまうのである。


 カウンセリングを受けた当事者から「万引きをやめられないのは反省が足りないからだと家族に責められ続けていた。病気だとは考えもしなかった」との感想が述べられたとのことであり、その成果を期待したい。



2015年02月09日(月) 旅券返納命令は違法か

 日経(H27.2.9)夕刊で、シリアへの渡航を計画していた新潟市在住のフリーカメラマンに、外務省が旅券法に基づき旅券(パスポート)を返納させたこと続報が載っていた。

 フリーカメラマンは、報道の自由、移動の自由の侵害であるとして訴訟を検討しているそうである。


 ただ、旅券法は、「生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合には旅券の返納を命じることができるとしている。


 そして、「イスラム国」が日本人2人を殺害し、今後も日本人に危害を加えると警告している。


 「イスラム国」では、ジャーナリストでも安全は保障されておらず、シリアに入れば生命に危険が及ぶ可能性は高い。


 少なくとも、その判断には合理性がある。


 そうであれば、旅券返納命令が違法であるとはいえないであろう。



2015年02月06日(金) 余罪を処罰する趣旨で量刑を判断したとして一審裁判員裁判を破棄

 日経(H27.2.6)ネットニュース面で、三鷹市で高校3年の女子生徒が刺殺されたストーカー事件で、東京高裁は「一審は起訴されていないリベンジポルノ(復讐目的の画像投稿)を処罰する趣旨で量刑を判断した疑いがある」として、一審裁判員裁判判決を破棄し、審理を差し戻したと報じていた。


 起訴されていない犯罪事実(余罪)を、実質上処罰する趣旨で量刑として考慮することは許されない。


 他方、刑事裁判における量刑は、被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等すべての事情を考慮して決定するから、量刑のための一情状として、起訴されていない事実を考慮することは禁じられていない。


 これが最高裁が定めた基準であり、その後のすべての刑事裁判はこれに基づいて行われているし、刑事裁判官は当然この基準を意識している。


 そうであるのに「起訴されていない犯罪事実を処罰する趣旨で量刑を判断した」と認定されたのは、裁判員裁判では判決文を書くのに数日しかないため、慎重に検討する時間的余裕がなかったのかもしれない。


 あるいは裁判員の「市民感覚」に引きずられたのかもしれない。


 もちろん、非難されるべきは、一審の裁判員ではなく、刑事裁判官である。


 ただ、刑事裁判官だけの裁判では考えられないことであり、裁判員裁判の弊害が出た裁判であろうと思われる。



2015年02月05日(木) 死刑事案だけ過去の量刑傾向を重視?

 日経(H27.2.5)社会面で、一審の裁判員裁判の死刑判決を高裁が破棄した2件の強盗殺人事件で、最高裁は、検察側と弁護側双方の上告を棄却したという記事が載っていた。


 これにより高裁の無期懲役判決が確定することになる。


 最高裁は、控訴審では裁判員裁判の判決を尊重すべきとしつつ、死刑事案に限っては過去の量刑傾向も重要すべきとしており、それを改めて示したものである。


 しかし、死刑の事案だけ過去の量刑を重視するというのは分かりづらい。


 今後は、死刑事案以外でも、過去の量刑がより重視されるようになるのではないだろうか。


 そうなると、何のための裁判員裁判制度かということが問題になってくるかもしれない。



2015年02月03日(火) 退避勧告に強制力を持たせることは可能か

 日経(H27.2.3)社会面で、過激派「イスラム国」が後藤健二さんを殺害し、今後も日本人を標的にすると予告したのを受け、テロ対策の取り組みが急がれており、自民党会合では「法改正し、退避勧告に強制力を持たせることはできないのか」との意見が出たという記事が載っていた。


 ただ、「退避勧告に強制力を持たせる」といっても、身柄を確保して強制的に連行することは実際上不可能である。


 そうすると、「強制力を持たせる」ものとしてあり得る方法は、退避勧告に従わなければ旅券を無効にすることであろう。(間接強制ということになる。)


 しかし、そもそも退避勧告は日本人保護のためである。


 それなのに、それに従わなければ旅券を無効にして保護を放棄するというのは不合理であり、憲法で保障する海外渡航の自由(条文上は「外国移住の自由」)に反するであろう。


 政府も退避勧告に強制力を持たせることは難しいとの立場であり、それは妥当な判断であろうと思う。



2015年02月02日(月) 合格者数の大幅な変更は望ましくない

 日経(H27.2.2)夕刊で、公認会計士が足りなくなっているという記事が載っていた。


 原因は、会計ルールが複雑化に伴い会計士の作業が増えているのに、会計士試験の合格者が減少しているため、とのことである。


 7年前の合格者数は約4000人もいたのに、昨年の合格者数は約1100人であり、これほど合格者が減ると公認会計士が不足になるのは当然かもしれない。


 それにしても、これだけ合格者数に変動があると、受験する側はとまどうしかない。


 合格者数の変動は、そのときのニーズに応じたものであろうが、もう少し先を見据えて、合格者数をある程度一定にすべきではないだろうか。


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