2014年11月28日(金) |
営業秘密の侵害に毅然とした態度を取れない理由 |
日経(H26.11.28)社説で、経済産業省が不正競争防止法を見直し、営業秘密の不正取得に対し罰則を強化する方針について論じていたが、その社説の最後で「漏洩が判明すれば、毅然とした対応をとってほしい」と書いていた。
企業としては、これがなかなか難しいようである。
まず「営業秘密」であることが必要であるが、その要件を充たさないことが多い。
また、漏洩した証拠がはっきりしないこともよくある。
結局は、営業秘密に対する管理が甘いことが起因しているのであり、まずはその点を改善すべきであると思う。
2014年11月27日(木) |
「1票の格差」 衆議院と参議院は同じ基準によるべき |
日経(H26.11.27)1面で、昨年7月の参院選において「1票の格差」が最大4.77倍だった選挙区の定数配分が違憲かどうかが争われた訴訟で、最高裁大法廷は、「違憲状態」とする判断を示したと報じていた。
かつては参議院では5倍までは有効という見解もあったが、最高裁は4.77倍では違憲状態としたわけである。
しかも、最高裁は、「都道府県単位の選挙方法を改めるなどの改革が必要」としているから、参議院の都道府県代表的役割は認めていない。
制度論としては、参議院に都道府県代表の役割を認め、但し参議院の権力を弱めるという考え方はあり得るが、それには憲法改正が必要である。
すなわち、現憲法下の解釈としては参議院の「1票の格差」は衆議院を同じ基準になるべきであり、4.77倍というのは到底認められない格差ということになる。
2014年11月26日(水) |
複数の社外取締役選任の指針 |
日経(H26.11.26)3面で、金融庁と東京証券取引所は、企業統治指針をつくる有識者会議を開き、社外取締役を2人以上置くよう促すなどの指針原案を提示したと報じていた。
対象は東証上場企業約2380社である。
もちろん、これは指針であり義務ではない。
そうはいっても、社外取締役を複数にするとなると、、2名以上の社外取締役がいる企業は約620社とされているから、それを除いた1800人近くの社外取締役が新たに必要となる。
果たして、それほどの人数の人材がいるのだろうか。
2014年11月25日(火) |
不動産だけがとくに優遇されているわけではない |
日経(H26.11.25)のエコノ探偵団というタイトルの解説記事で、空き家が増加しており、それに対する自治体が問題になっているということを書いていた。
背景には空き家の増加がある。昨年の空き家数は約820万戸で、5年前より63万戸増え、全住宅の13.5%にもなっている。
空き家を放置すれば崩れて周囲に危険が及ぶ恐れがあり、また、放火や侵入の危険もある。雑草や害虫もはびこりやすい。
要するに周辺住民にとって迷惑な存在なのである。
そのため、条例で持ち主に管理や取り壊しを助言・指導・勧告を定めている自治体は多い。
ところが、強制的に取り壊す代執行を定める自治体は5割強に過ぎないとのことである。
記事でも「川口市でも代執行を盛り込まなかった。個人から訴えられる恐れがあるからだという。」としていた。
また、「不動産に対する財産権は強い」ともしていた。
しかし、憲法が保障する財産権の中で、不動産をとくに優遇しているわけではない。
不動産であっても公共の福祉のために必要であれば権利を制限することは可能である。
それゆえ、崩壊する恐れがあり危険な場合には、それを強制撤去する条例を定めることは十分可能なはずである。
むしろ問題は、家屋の解体費用を自治体が負担することの不公平さであろう。
それゆえ、空き家の所有者に対し、解体費用をきちんと求償することが重要になる。
日経(H26.11.21)社会面で、価値の低い土地をだまして売りつけられた「原野商法」の被害者が、土地の売却話などを持ちかけられ、新たに被害を受けるトラブルが続発しているという記事が載っていた。
記事で紹介していた手口は、業者が「土地を買いたがっている人がいる」「大型商業施設ができるので値上がりする」と語り、売却するための広告や測量などの名目でお金の支払いを求めるものである。
この場合、実際にインターネットに広告を掲載したり、測量していたとすると、詐欺とまではいえなくなり、支払ったお金を取り戻すことは難しいかもしれない。
原野商法の被害者がこのように二次被害を受けることは以前からあり、それは被害者の名簿が流出しているからである。
原野商法で被害に遭われた方の気持ちは分かるけれど、そのような話に乗るべきではないと思う。
日経(H26.11.19)社会面で、大阪地検は、強姦罪などで懲役12年が確定し服役していた男性を、「被害者」とされる女性らの証言が虚偽だったとして釈放したという記事が載っていた。
「被害者」女性や「目撃者」が虚偽の証言をしていたことが分かったからとのことである。
再審により釈放されることはあるが、検察官が刑の執行を停止し釈放することはあまり聞かない。 「被害者」女性や目撃証人の証言が虚偽であることがあまりにはっきりしたからであろう。
問題にすべきは、証言の怖さである。
「被害者」女性と「第三者」の目撃証人の証言が一致すれば、裁判所はほぼ100%その証言を信用する。
その怖さを裁判所は常に肝に銘ずべきでないかと思う。
日経(H26.11.18)社会面で、米金融業者MRIインターナショナルの資金消失問題を巡り、投資家9人が出資金の返還を求めた訴訟で、東京高裁は「裁判管轄を米国に限定したのは不合理」として、一審判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻したという記事が載っていた。
MRIと投資家との契約には「裁判になった場合は米ネバダ州裁判所が管轄する」との条項があったので問題になったのである。
契約書で裁判管轄がアメリカの州とされている場合、アメリカで裁判が行われるのが原則となる。
今回の高裁判決により日本で裁判を行えることになり、被害者から見れば幸いなことであるが、これは例外的な判断と考えた方がよいと思う。
投資する場合には、裁判管轄には注意した方がよい。
日経(H26.11.17)法務面で、企業のサーバーの安全対策が不備でハッカーに「踏み台」として乗っ取られ、他社に迷惑をかけた場合の法的リスクについて解説していた。
ただ、記事では、ハッカーに踏み台にされた企業の責任と、企業にサーバーを提供しているクラウド事業者の責任が混然としており、分かりにくい解説になっていた。
一般の企業とクラウド事業者とでは、注意義務の内容は異なるから分けて考えるべきである。
一般の企業の場合には、セキュリティソフトを入れ、最新のものにアップデートするなど通常のセキュリティ対策を講じていれば注意義務を果たしているといえる。
それゆえ、たとえハッカーに踏み台にされたとしても、その企業の責任を問うことは難しいであろう。
それに比べてクラウド事業者の場合には、サーバー提供者として高度の注意義務があるから一般の企業と同列には論じられない。
そうはいっても、クラウド事業者が、ハッカーからの攻撃を防ぐために数日間サーバーの利用ができなくなったとしても、サーバー利用企業が、クラウド事業者に対し損害賠償請求することは難しい場合が多いと思う。
なぜなら、クラウド事業者と利用者とは契約によって損害賠償の免責条項があり、クラウド事業者の責任を問えないか、または、責任を問うことができる場合でも、賠償額は、利用できなかった期間の料金を返還する程度の低額を定めているからである。
2014年11月14日(金) |
犯罪の認知件数が低下 |
日経(H26.11.13)夕刊で、2014年版犯罪白書が発表され、13年の刑法犯は191万7929件と前年から5.8%減少し、1981年以来32年ぶりに200万件を下回り、窃盗が98万1233件と40年ぶりに100万件を割り込むなど犯罪の認知件数はおおむね低下していると報じていた。
原因はよく分からないが、生産者人口の減少が大きく影響しているのかも知れない。
2014年11月13日(木) |
違法薬物密売サイトのランキングサイト |
日経(H26.11.11)社会面で、インターネットで覚醒剤など薬物の密売サイトを人気順に紹介し、売買をあおったとして、兵庫県警は、サイト開設者の男性を麻薬特例法違反(あおり)のほう助容疑で逮捕したという記事が載っていた。
ランキングサイトから違法薬物サイトを知り、購入した者もいるようであるから、そのような違法薬物販売をあおる行為を取り締まる必要は高い。
ただ、ほう助の概念は漠然としているため、サイト開設者を安易に麻薬取締法違反のほう助とすることは、犯罪の成否の境界線があいまいになり、問題である。
それゆえ、一般的に言えば、いきなり逮捕するのではなく、まずにはサイト運営者に対して注意喚起をすべきではなかったかと思う。
日経(H26.11.11)社会面で、小笠原諸島周辺海域などに中国のサンゴ密漁船が多数押し寄せ問題になっていたが、撤退の動きを見せていると報じていた。
これでしばらく落ち着くであろうが、サンゴの価格が高騰を続ければ、再び密漁船が押し寄せる可能性はある。
外国人が日本の排他的経済水域内で無許可で漁業を行った場合には1000万円以下の罰金が課せられるが、担保金を積めば、違反者は釈放され、船舶だけでなく漁獲物も返還される。
担保金の金額は定まっていないが、罰金が1000万円以下であるから、それ以下にせざるを得ず、400万円前後と言われている。
そのため、担保金を支払った方が得ということになり、密漁船が大量に押し寄せることを防止できないのが現状である。
政府は、対策として、早急に法改正して罰金額と担保金を引き上げる方針と報じられている。
もちろんそれも有効であるが、担保金を積んでも、船体は返還すが漁獲物は返還しないように法改正できないのであろうか。
そもそも、担保金を積んだ場合に漁獲物まで返還する理由がよく分からない。
海洋法に関する国際連合条約では、「拿捕された船舶及びその乗組員は、合理的な保証金の支払又は合理的な他の保証の提供の後に速やかに釈放される。」と定めている。
すなわち、「船舶及び乗組員」の釈放は定めているが、漁獲物の返還までは義務付けていないようである。
漁獲物を返還しないと保管費用がかかるということかもしれないが、金銭に換価して保管することができるとするなど、何らかの手当てによって解決は可能であろう。
そうであれば、排他的経済水域内における密漁対策としては、罰金と担保金の引き上げとともに、担保金を積んでも漁獲物は返還しないようにすべきではないだろうか。
日経でなく朝日(H26.11.10)夕刊の法律相談のコラムで、裁量労働制について書いていた。
裁量労働制を採用しているという話はときどき聞くが、裁量労働制を採用するための要件を充たしていないケースは意外と多いように思う。
そもそも、担当する業務が法律で裁量労働制の採用を認められている業務でない場合がある。
また、裁量労働制では、業務の遂行手段や時間配分について具体的指示をしてはいけないのだが、それが守られていないこともある。
そのような会社では、裁量労働制を採用していることがかえってトラブルの種を作ることになりかねないのであり、一度要件を充たしているか見直した方がよいと思う。
2014年11月07日(金) |
冨田選手 窃盗を否定 |
日経(H26.11.7)社会面で、韓国で開かれたアジア大会競泳会場でカメラを盗んだとして略式起訴された競泳の冨田選手が記者会見し、「面識のない男がかばんに押し込んできた」として、窃盗を否定したという記事が載っていた。
冨田選手がその場でかばんの中身を確認せず、選手村まで持ち帰ったようであり、その理由を、「怖くなり、その場を離れるのが先だと思った」「ごみだと思った」と、極めて不合理な言い訳をしている。
仮に日本で裁判が行われても、このような言い訳ではまったく通らない。
付き添った弁護士はやりづらかったであろうと思う。
2014年11月05日(水) |
母親と祖母を殺害した少女に1万人の嘆願書 |
日経でなくネットニュース(H26.11.5)で、北海道南幌町で母親と祖母を殺害したとして高校2年生の三女が逮捕された事件で、同級生らが、三女の処遇に配慮を求める嘆願書と約1万人分の署名を札幌地検に提出したと報じていた。
三女の同級生や保護者らが街頭活動を始め、インターネット署名約800人分を含む1万534人分が集まったそうである。
しかし、検察官や裁判官はほとんど考慮しないだろう。
その少女のことを知らない人が署名しても、処分を考える観点からすれば何の意味もないからである。
記事では、「応対した地検の担当者は『趣旨は理解しました』と述べた」とのことであるが、それは「あなたの言い分は分かりましたが、そのとおり処分するかどうかは別ですよ」という意味である。
ただ、同級生らが「何とかしたい」と思う気持ちは大切だし、それは少女の更生にプラスになるであろうから、無駄ではないが。
2014年11月04日(火) |
「安楽死」「尊厳死」 |
日経(H26.11.4)社会面で、脳腫瘍で余命わずかと宣告され、「尊厳死」を選ぶと宣言していたアメリカの女性が、自宅で医師から処方された薬を服用し死亡したと報じていた。
このニュースは日本でも話題になっていたが、テレビなどでは「安楽死」と「尊厳死」をあいまいなまま論じていたように思う。
もっとも、「安楽死」と「尊厳死」の定義は論者によって異なるため、両者を混同したとしてもやむを得ないかもしれない。
ただ、「安楽死」と「尊厳死」は使われる場面が違うように思う。
「安楽死」は、死に直面している人に、その嘱託・承諾の下に医学的処理を施して楽死させる行為が嘱託・承諾殺人罪にあたるかという場面で使われることが多い。
これに対し「尊厳死」は、もっぱら延命治療を施すかどうかという場面で使われるようである。
いずれにせよ、当該女性は自ら薬を服用したのであるから、「安楽死」の問題でも「尊厳死」の問題でもなく、自殺である。(薬を渡した医師は自殺ほう助となる。)
テレビでは、アメリカの女性のニュースについてどう思うかというインタビューを行っており、賛成、反対が半分ずつくらいであった。
しかし、「がんで死に直面したとき、あなたは自殺しますか」と聞いていれば、ほとんどが反対になったのではないだろうか。
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