2014年08月29日(金) |
ASKA被告の初公判 懲役3年と重い求刑 |
日経(H26.8.29)社会面で、覚せい剤取締法違反などの罪に問われた「CHAGE and ASKA」のASKA被告の初公判が東京地裁で開かれ、検察側は懲役3年を求刑したという記事が載っていた。
初犯の場合、求刑は懲役1年6月から2年が普通であるから、懲役3年というのはかなり重い。
覚せい剤などの所持量がかなり多かったのではないだろうか。
それでも判決では執行猶予が付くだろうが、保護観察付になるのではないかと思われる。
2014年08月27日(水) |
「証言の方が法廷で重要視される」? |
日経(H26.8.27)25面で、金融商品トラブルで、紛争処理機関で解決せず、裁判で賠償責任を問うことになった場合の注意等について解説していた。
その記事の中で、「金融訴訟を多く手掛ける弁護士は『証拠としては、証言の方が法廷で重要視される』と言う」と書いていた。
本当にそう言ったのだろうか。
裁判官は、証言が他の客観的な証拠と整合性がある場合には、その証言を信用するが、客観的証拠に反する証言はあまり信用しない。
それゆえ、「証言の方が法廷で重視される」ということはないと思う。
むしろ、販売担当者との会話を録音しておけば、(録音の内容次第ではあるけれど)有力な証拠となり得る。
もっとも、録音するほど慎重な人は、あまりトラブルにならないのであるが。
2014年08月26日(火) |
顔写真公開は自制すべき |
日経(H26.8.26)社会面で、滋賀県のゲームセンターで、ゲーム機を蹴りつけたとして、中学生とみられる少年らの後ろ姿の写真と警告文が店頭に掲示され、約5時間後に撤去されたが、インターネットで画像が出回り、市教育委員会がゲームセンター運営会社に抗議したという記事が載っていた。
先日は、中古ショップ「まんだらけ」が万引き犯のモザイク入りの写真を公開し、期限内に名乗り出なければ顔写真を公開するとしたことが話題になっていた。
「まんだらけ」のケースでは、顔写真の公開に肯定的な意見が多かったようである。
顔写真を公開すれば、その店には寄り付かないだろうから、犯罪の抑止策になることは間違いない。
ただその風潮が蔓延すると、法が禁止する私的制裁になるであろうし、また、公開した写真が間違っていた場合に取り返しのつかないことになる。
とくに、冒頭の記事のケースは少年の事案である。
少年が殺人を犯した場合に顔写真の公開の適否が問題になることはあるが、ゲーム機を蹴りつけたことで、後姿とはいえ、写真を公開するのは行き過ぎであろう・
被害を受けた店の気持ちは分かるが、顔写真を公開して当然という風潮があるとすれば、それは自制すべきではないだろうか。
2014年08月25日(月) |
広島土砂災害 行方不明者の氏名を公表 |
日経(H26.8.25)夕刊で、広島市北部の大規模土砂災害で、広島市が、行方不明者の氏名、読み仮名、住所、年齢、性別を公表したと報じていた。
行方不明者を特定することは迅速な捜索活動につながるから、もっと早く公表すべきであったと思う。
それなのに公表が遅れたのは、個人情報保護法(行政機関個人情報保護法)や条例で、個人情報について広範囲に利用制限がかけられているからである。
しかし、個人情報保護法等は規制が広範囲過ぎており、しかも例外的に本人の同意なく利用できる要件があいまいである。
そのため、本件のような場合でも公表するかどうかが迅速に判断できない原因になっている。
したがって、本人の同意なく利用できる場合をもう少し具体的にするなどして、個人情報保護法制全体を見直すべきであると思う。
2014年08月22日(金) |
裁判では「正直と反省」が大切である |
日経(H26.8.22)社会面で、漫画「黒子のバスケ」を巡る連続脅迫事件で、東京地裁は、威力業務妨害罪に問われた被告人に対し、求刑通り懲役4年6月の判決を言い渡したという記事が載っていた。
一瞬「重い判決だなあ」と思ったが、犯罪自体が、上智大の構内に硫化水素を発生させた容器と脅迫文を置いたり、毒物のニコチン入りの菓子と脅迫状をコンビニなどに送り、商品を回収させたりしており、非常に悪質である。
それだけでなく、被告人は、「反省しない」として謝罪を拒否したようである。
裁判では「正直と反省」が重要である。
正直に供述し、反省の態度を示すことにより刑が減軽されるのであり、それがない場合には刑は非常の重たくなる。
「黒子のバスケ」の事件では、「反省しない」と言い放っているのであるから、求刑通りの判決となってもやむを得ないだろう。
2014年08月21日(木) |
「ギャンブル依存症」が成人の5% |
日経(H26.8.21)社会面で、厚生労働省の調査で、「ギャンブル依存症」の疑いがある人は、国内に計536万人いると推計されたという記事が載っていた。
成人の約5%に当たるというからかなり多い。
推計の根拠が不明なのでどこまで正しい数字かは分からないが、「ギャンブル依存症」の人がいることは間違いない。
ギャンブルで何度も借金し、三度くらい債務整理したが、それでもギャンブルが止められずまた借金をしてしまい、精神的に追い詰められて自殺した人もいる。
現在、カジノ解禁が議論になっているが、解禁する場合には、「ギャンブル依存症」に対する精神的ケアなどの対策が重要になると思う。
2014年08月20日(水) |
声紋鑑定の信用性は低い |
日経(H26.8.20)社会面で、東京都議会で、みんなの党の塩村文夏都議にヤジが飛んだ問題で、同党は、録音データから発言者を特定することを断念したと発表した。専門業者に声紋分析を依頼したが、発言が短い上、雑音がひどく判別できないとの回答があったという。
業者が「判別できない」というのだから断念は仕方ないが、そもそも声紋鑑定の信用性は低く、仮に声紋鑑定で発言者を特定したとして、それを公表した場合、名誉棄損になる可能性があったと思う。
確かに、声紋鑑定の証拠能力を認めた裁判例はある(東京高裁 鬼頭判事補事件)。
ただ、その判決でも、「声紋鑑定の確実性について未だ科学的に承認されたとまではいえず、証拠能力を認めることには慎重でなければならない」とくぎを刺しており、声紋鑑定は補強的に証拠に使っているに過ぎない。
それゆえ、たとえ発言部分が長く、専門業者が発言者を特定したという鑑定をしたとしても、その信用性は低く、みんなの党は公表することができなかったのではないだろうか。
2014年08月18日(月) |
発明の対価を企業に求める訴訟が落ち着いている |
日経(H26.8.18)法務面で、企業の研究者などが仕事で生み出す「職務発明」の帰属についての記事が載っていたが、その中で、元従業員が会社を相手取って発明の対価を求める訴訟が落ち着いていると書いていた。
記事では発明の対価を求める訴訟が落ち着いている理由までは書いていないが、おそらく、発明の対価の算定基準について、裁判所が、発明者の貢献度を5%程度と認定することが多いことが大きいようにと思う。
これにより発明者や企業側にある程度結論を予測できるようになったから、その点では意義があるが、ただ、貢献度5%という数字が適正な評価といえるかどうかは分からない。
2014年08月15日(金) |
最高裁に要望する趣旨が不明 |
日経(H26.8.15)社会面で、佐世保市の同級生殺害事件で、元裁判官や犯罪被害者らでつくるグループが、殺人容疑で逮捕された少女が家裁へ送致された後に、徹底した背景解明をするよう求める要望書を最高裁に提出したという記事が載っていた。
家庭裁判所において背景解明を尽くすことには賛成である。
しかしそれを最高裁に要望するということはどういうことであろうか。
個別の事件について、最高裁が家庭裁判所の裁判官に事件処理の指示をすることを期待しているのだろうか。
しかしそれはできないことであるし、元裁判官がそのような要望をしていることには理解できないものがある。
2014年08月14日(木) |
財産権の保障も重要であるが |
日経(H26.8.14)1面で、相続時に登記手続がされず、国や自治体が所有者を把握できなくなる森林や農地が2050年までに最大で57万ヘクタールとなるという記事載っていた。
記事では、農林業の効率化を目指した土地集約だけでなく、東日本大震災の被災地復興に悪影響が出る懸念があるとしていた。
また、そのような場合だけでなく、他人の名義のまま長年土地を使用しており、時効取得を理由に裁判をしようにも相手方(相続人)が分からず困っているケースもある。
財産権の保障という憲法上の権利があり、それが障害になっているのであるが、解決のためには、何らかの補償制度を設けて、強制的に所有権を移転する法制度の創設を検討すべきではないだろうか。
2014年08月12日(火) |
佐世保事件の高一少女を鑑定留置 |
日経(H26.8.12)社会面で、佐世保市の同級生殺害事件で、長崎地検佐世保支部は、殺人容疑で逮捕された高校1年の少女を精神鑑定するため、鑑定留置したという記事が載っていた。
事件が余りに特異なので、この時点で精神鑑定することもやむを得ないのかもしれない。
ただ、この少女は今後家裁送致されるわけで、家裁の判断によっては刑事裁判が行われない可能性もある。
そうであるのに、この時点で鑑定留置して刑事責任能力を調べる必要があるのだろうか、逆送になってからでも鑑定留置は遅くないのではないかという気はする。
2014年08月11日(月) |
マルハニチロが、偽計業務妨害罪の被告を提訴 |
日経(H26.8.11)夕刊で、マルハニチロ群馬工場の冷凍食品農薬混入事件で、偽計業務妨害などの罪で前橋地裁に懲役3年6月を言い渡された元契約社員に対し、マルハニチロが1億円の損害賠償を求め提訴したという記事が載っていた。
提訴理由として、マルハニチロは「食品業界で二度とこのような事件を起こさせてはいけないと考え、提訴した」と説明している。
しかし、裁判をしても実際の回収はほとんどできないであろう。
他方、訴訟費用は、数百万円はかかると思われる。
そうすると、裁判をする意味があるのか、それを株主に説明できるのかという疑問もある。
会社もこの辺の事情は十分承知の上で提訴したのであろうから、とくに批判するつもりはないが、なかなか難しいところである。
2014年08月08日(金) |
DNA鑑定でトラブルが増加 |
日経(H26.8.8)社会面で、親子の血縁関係を確かめようとDNA鑑定を依頼するケースが増え、トラブルも増加しているという記事が載っていた。
最近では低価格のサービスが増えており、インターネット上には1万円台の格安料金を掲げる業者も多いが、そのような業者は止めた方がいい。
というのは、第一に、正確性に疑問があり、万が一間違った鑑定が出た場合に、家族関係が深刻なことになる。
それだけでなく、争いになって家庭裁判所に申し立てることになった場合、裁判所は、その鑑定結果を鵜呑みにはしないから、結局、二度手間になってしまうからである。
2014年08月07日(木) |
小僧寿し社長が差押え免脱行為? |
日経ネットニュース(H26.8.7)で、小僧寿しは、開示予定だった2014年1〜6月期決算短信の公表を延期する見通しになったと報じていた。
小僧寿しによると、大西社長が東京地裁から債権差し押さえ命令を受け、地裁への提出書類に自らが無報酬だと記載したが、小僧寿しから自分の個人口座に4500万円を入金させていたとのことである。
この発表通りだとすると、社長が、強制執行を免れるために、無報酬との虚偽の書類を提出して、実際には報酬を得ていたことになる。
どうして社長の資産が差押えになるのかも疑問であるが、その点はともかく、強制執行を免れる目的で財産を隠匿することは犯罪行為にあたる。
大西社長はアメリカの弁護士資格があるそうだが、今後、大きな問題になるのではないだろうか。
2014年08月06日(水) |
写真のネガがいまごろ「発見」されるとは |
日経(H26.8.6)社会面で、静岡地裁が再審開始を決定した袴田巌さんの即時抗告審で、弁護側が開示を求めたが検察側が「存在しない」としてきた衣類発見直後の写真のネガについて、検察側が「地裁の決定後にネガが警察で発見された」と明らかにしたという記事が載っていた。
衣類は袴田さんを有罪とした重要な証拠であるが、その衣類は事件から1年2カ月後に発見されるという不自然な経緯がある。
それゆえ、衣類発見の際の写真から衣類発見の経緯が分かる可能性があり、重要な証拠となる。
その写真のネガがいまごろ「発見」されるというのは不自然極まりない。
弁護団は「故意の証拠隠しだ。このままでは終わらせない」と怒っているそうであるが、それは当然であろう。
2014年08月05日(火) |
ストーカー規制あり方 |
日経(H26.8.5)夕刊で、ストーカー規制のあり方を議論してきた警察庁の有識者検討会が報告書をまとめたという記事が載っていた。
報告書では、フェイスブックなどを使ってメッセージを送り付ける行為や、被害者の自宅付近をうろつく徘徊についても規制対象にすべきとし、また、現在は、被害者の告訴がなければ立件できない「親告罪」となっているが、これを廃止することを「議論すべきだ」とした。 さらに、治療・カウンセリング体制の検討なども求めたとのことである。
日経では報じていないが、罰則の強化も提言している。
現在、ストーカー行為が懲役6カ月以下・罰金50万円以下、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合が懲役1年以下・罰金100万円以下である。
そうすると、たとえ実刑になっても数か月で釈放されることになり、それほど刑の感銘力(もう二度と犯罪をしないという思い)はないであろう。
そのため、被害者の住居を徘徊して、被害者の手紙を盗んだ場合には、窃盗罪でも起訴をするなどして厳罰化を図っているが、それには限界がある。
他の刑罰との均衡もあるが、犯罪の危険性に鑑み、刑の上限を懲役3年くらいに引き上げるべきではないだろうか。
2014年08月04日(月) |
被害者への謝罪文は難しいが |
日経でなく朝日(H26.8.4)社会面で、佐世保市の女子高校生徒殺害事件で逮捕された少女の父親の謝罪文全文が掲載されていた。
刑事事件で、被疑者・被告人に、被害者側への謝罪文を書いてもらうことはよくある。
しかし、手紙を書いたからと言って、被害者側の被害感情が慰藉されることはほとんどなく、かえって反発されることもある。
それゆえ、被害者側への謝罪文をどのように書くかは難しいが、せめて被疑者・被告人の「申し訳ない」という気持ちだけでも被害者側に伝わればいいと思っている。
記事の少女の父親の謝罪文は、きちんと謝罪しており、書いている内容に過不足はない。
しかし、あまりにも整然と書かれていて、過不足がなさ過ぎ、果たして遺族に謝罪の気持ちが伝わるのだろうかと思った。
2014年08月01日(金) |
検察審査会で、旧経営陣らに起訴相当の議決 |
日経(H26.8.1)社会面で、福島第1原発事故を巡り、昨年不起訴になった東電の勝俣元会長ら旧経営陣3人について、検察審査会は、業務上過失致死傷容疑で「起訴相当」と議決したという記事が載っていた。
東電は、福島原発事故前に、政府機関の予測に基づいて最大15.7メートルの津波を試算し、勝俣元会長らはその報告を受けていたことから、安全対策を取る義務があったと判断したものである。
15.7メートルの津波の可能性が試算されていながら、それを放置して何の責任もないのかというのは、誰しも思うことであろう。
二回「起訴相当」の議決をすると強制起訴になるという制度については、問題が多いと思っている。
しかし、この段階での「起訴相当」の議決は、検察庁に再度捜査を促すものに過ぎず、市民感覚に基づく妥当な判断であろうと思う。
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