日経ネットニュース(H26.5.30)面で、最高裁が、夏休み期間中に、小中学生と保護者を対象にした親子見学会を開くという記事が載っていた。
最高裁判所を身近に感じてもらうという意味ではいい企画であるが、それだけ最高裁判所は縁遠い存在ということであろう。
そもそも、建物自体が、「権威」を重視しているためか、分厚い花崗岩を積み上げた非常に近寄りがたいデザインであり、「奇岩城」と呼ばれることもある。
いずれ建て替えるときがあるだろうが(以前建物に入ったときに、事務所棟の方が相当老朽化していた)、そのきにはもう少し親しみやすいデザインにして欲しいと思う。
2014年05月29日(木) |
インサイダー取引は割に合わない |
日経(H26.5.29)社会面で、イオンの元執行役がインサイダー取引をしたとして、証券取引等監視委員会は、情報を伝えた知人らと合わせ600万〜700万円程度の課徴金勧告を出す方向という記事が載っていた。
元執行役は社長室責任者として多くの重要情報に接する立場にあり、ダイエー株をTOBするとの情報を得て、公表前に同社株を不正に売買し、百数十万円の利益を得たとのことである。
しかし、発覚により、執行役の解任と課徴金という制裁を受けたわけで、まったく割に合っていない。
インサイダー情報を得たとしても、それを基に大量に株式売買すると摘発される恐れが高いから、売買をある程度に抑えることになり、そうするとそれほどの利益は得られないことが多いようである。
他方、不正が発覚した場合のリスクとしては、職を失い、課徴金を課され、最悪の場合は刑事罰まである。
そう考えると、インサイダー取引は割に合わないと思うのだが。
2014年05月28日(水) |
司法試験の回数制限が3回から5回に |
日経(H26.5.28)夕刊で、改正司法試験法が成立し、司法試験を受けることができる回数が、それまで5年間で3回であった回数制限を5回までになったと報じていた。
司法試験合格を目指して法科大学院に入学して勉強していた受験者が、試験に2回失敗して3回目を受験する際、そのプレッシャーは大変なものであると思う。
その制限を5回に改正したので、少しは救いになるかもしれない。
しかし、4回不合格になった受験者の心理的負担は同様に大変なものであり、何ら解決になっていない。
試験に回数制限を設けるのは不合理であり、撤廃すべきであると思う。
2014年05月27日(火) |
保釈中の証拠隠滅行為 保釈保証金全額は没収されず |
日経(H26.5.27)夕刊で、パソコン遠隔操作事件で保釈が取り消された片山被告について、東京地裁は、保釈保証金1000万円のうち600万円を没収する決定をしたという記事が載っていた。
刑事訴訟法では、「保釈を取り消す場合、裁判所は保証金の一部または全部を没収することができる」と定めているから、没収しないこともあり得る。
そして実際に没収するか否かについては、裁判官の考え方によって幅が大きいように思う。
ただ、この事件では、保釈中に証拠隠滅行為をしており、極めて悪質であって、通常であれば全額没収するのが当然の事案である。
しかし、1000万円は片山被告の母親が定期預金を解約して用意したとのことであり、それを考慮して600万円だけ没収することにしたと思われ、裁判官の温情ということになるのだろう。
2014年05月26日(月) |
FRAND特許の侵害の損害額の算定について |
日経(H26.5.26)法務面で、知財高裁は、サムスンとアップルとの訴訟において、FRAND特許の侵害について、損害賠償額を低く抑えた判決が下されたという記事が載っていた。
FRAND特許とは、標準規格に不可欠な特許として技術の標準化団体に認めてもらう代わりに「公正、合理的かつ非差別的」な条件で他社に利用を許諾すると宣言をした特許である。
それを侵害した場合の計算方法について、知財高裁は、製品の売上高に、対象特許を含む通信規格が売り上げに寄与した割合を掛け、さらに5%を掛けたものを同通信規格の必須特許の数で割ったようである。
売り上げに寄与した割合をかけ、さらに5%掛ければ相当低い額になってしまう。
実際、アップルがサムソンの特許を侵害したことを認めたが、その損害額は約995万円というかなり低いものになった。
なぜ5%掛けたのかは理論的に説明することは難しい。
ただ、FRAND特許は特許権という独占的権利と、公正・公平な利用の保障とが対立する場面であり、両者の調整を図る必要がある。
そこで、裁判所は、過大な金額にならないようにという考えの下に、適正であろうと思う金額になるように、切りのいい5%という数字を掛けたというのが実際なのだろう。
2014年05月23日(金) |
追い越し車線を走り続けることは問題? |
日経(H26.5.23)社会面で、埼玉県警が、東京外環自動車道で、誤って約2400人を道路交通法の車両通行帯違反で取り締まっていたという記事が載っていた。
県警によると、本来必要な県公安委員会の決定がないまま、片側2車線の車両通行帯と定め、追い越し車線を理由なく走り続けたドライバーを取り締まっていたとのことである。
誤った取り締まりを訂正し、反則金を返還することは当然である。
しかし、そもそも追い越し車線を走り続けることを取り締まる必要があるのだろうか。
追い越し車線を走り続けることが法規違反であると知っている人は少ないと思うし(知り合いの裁判官も知らなかった)、流れに乗って走行している限り実際上の弊害はないのではないだろうか。
むしろ、恣意的な取り締まりの温床になっているように思えるのであり、弊害の方が多い気がする。
規定を改めて、単なる訓示規定とした方がよいように考えるのだが・・。
2014年05月22日(木) |
「退官間近に思い切った判決を書く」? |
日経(H26.5.22)1面で、関西電力大飯原子力発電所3、4号機について、周辺住民らが関電に運転差し止めを求めた訴訟で、福井地裁は、再稼働を認めない判決を言い渡したと報じていた。
判決理由で、大飯原発には「地震で原子炉の冷却機能が失われたり、使用済み核燃料から放射性物質が漏れたりする具体的な危険がある」と判断した。
また、「多数の人の生存に関わる権利と、電気代の高い低いの問題とを並べて論じる議論は許されない」とも述べており、市民感覚的な判断であり、言い換えれば思い切った言い方をしているといえる。
裁判長の経歴を見てみると、61歳で退官間近であり、この年齢で福井地裁の裁判長だから、出世コースを歩んだとはいえない。
「退官間近に思い切った判決を書く」と言われることがあるが、そのパターンなのだろうか。
2014年05月21日(水) |
パソコン遠隔操作事件で片山被告を収監 |
日経(H26.5.21)社会面で、パソコン遠隔操作事件で無罪主張を続けていた片山被告が、一転「自分が犯人」と認めるに至り、被告を支えてきた弁護人は苦渋の表情を浮かべたという記事が載っていた。
「弁護士は苦情の表情を浮かべた」のはそのとおりであろうが、被告人が無罪を主張して弁護人にもうそをつくということは珍しいことではない。
その場合でも、弁護人は被告人の意向を尊重して弁護活動をするのであるから、今回の事件でも弁護人が非難を受ける筋合いはまったくない。
ただ、証拠隠滅までして、挙句の果てにうそがバレたのであるから、その時点で信頼関係は崩れており、大抵の弁護士であれば辞任したであろう。
ところが、弁護人の佐藤弁護士は引き続き弁護するということのようであり、立派だと思う。
2014年05月19日(月) |
ASKA被疑者を覚せい剤取締法違反で逮捕。 勾留は? |
日経(H26.5.20)社会面で、歌手のASKA被疑者が覚せい剤取締法違反で逮捕されたことの続報が載っていた。
逮捕の被疑事実は、4月6日と12日ごろ、ASKA被疑者と栩内被疑者が、栩内被疑者の自宅マンションで少量の覚醒剤を所持したということらしい。
ただ、現行犯逮捕でないから、いかなる証拠に基づいて逮捕したのかよく分からない。
それゆえ想像にすぎないが、警察は内偵捜査をしたようであるから、栩内被疑者が自宅マンションから出したゴミ袋を調べて、そこに覚せい剤が微量入っていたのではないだろうか。
もしそうだとすると、ASKA被疑者からすれば他人のマンションに覚せい剤があったことになるから、ASKA被疑者と栩内被疑者が共同で所持していたと認定することは難しいように思う。
そのため、厳しい裁判官であれば、ASKA被疑者については勾留請求を却下することがあるかもしれない。
もっとも、報道では、ASKA被疑者には覚せい剤使用の陽性反応が出ており、また自宅からは覚せい剤が発見されたようであるから、仮に勾留請求が却下となっても、直ちに再逮捕することになるのではあまり影響はないが。
日経(H26.5.16)社会面で、死者、行方不明者304人を出した韓国の旅客船沈没事故で、韓国検察は、船長ら幹部船員4人を殺人罪などで起訴したと報じていた。
これは不作為による殺人罪ということであろう。
最高裁でも、不作為による殺人罪を認めた判例があるから(シャクティ治療殺人事件)、そのような法律構成が不可能なわけではない。
ただ、不作為による殺人罪が成立するためには、救助すべき作為義務があり、しかも、それを放置したことが、作為による殺人と同視できるだけの強度の作為義務が必要であろう。
また、殺人罪に問う以上、放置すると死ぬかもしれないがそれでも構わないという未必の故意がなければならない。
旅客船沈没事件についていえば、いずれの要件もハードルは高いように思う。
もちろん、他国の法律の下での起訴であり、韓国の判例も知らないので、起訴したことについてあれこれ言う立場にはないが、日本であれば殺人罪での起訴は難しいのではないかと思う。
2014年05月15日(木) |
自治体で働く弁護士が増えている |
日経(H26.5.15)社会面で、自治体で働く弁護士が増えているという記事が載っていた。
自治体において法的問題に悩むことは多いはずであり、実際に弁護士を採用した自治体では、「弁護士が身近にいることで助かっており、大きな信頼を得ている」と聞いている。
問題は、任期が数年と身分が不安定なことである。
この点が改善されればと思う。
2014年05月14日(水) |
権利者不明の著作物を使いやすくする取り組み |
日経(H26.5.14)夕刊で、作者がわからなかったり、権利を持つ人を探しにくかったりする書籍や音楽を商業的に使いやすくする取り組みが始まるという記事が載っていた。
2015年にも国連の世界知的所有権機関(WIPO)がデータベースをつくる方針で、商業利用できる各国の作品を検索可能にするそうである。
現在行われているTPP交渉では、日本でも著作権保護期間を権利者の死後70年となる可能性が高く、著作権の保護が強化される方向にある。
そうであるならば、反面、著作物を使いやすくする工夫も必要であり、その見地から、権利者不明の著作物を使いやすくすることは望ましいことだと思う。
2014年05月13日(火) |
日産の元社員を不正競争防止法違反(営業秘密の領得)の疑いで逮捕 |
日経(H26.5.13)夕刊で、日産自動車のサーバーにアクセスしてスポーツタイプ多目的車の販売計画データを不正に取得したとして、元日産社員が不正競争防止法違反(営業秘密の領得)の疑いで逮捕されたという記事が載っていた。
県警は、元社員は、退職する直前に約5千件のファイルを取得し、転職先にデータを持ち込もうとしたとみているそうである。
退職した社員が競業先にデータを持ち込むということはときどき聞く。
会社側から相談されたことも何回かあるが、元社員を訴えようとしても「営業秘密」の要件がネックになることが多い。
データの管理が「秘密」といえないことがよくあるからである。
記事のケースは未遂だったようであるが、逮捕に至っているから、会社側のデータ管理がしっかりしており、「秘密」の要件を充たしていたということなのだろう。
2014年05月12日(月) |
株主代表訴訟は増加するのでは |
日経(H26.5.12)5面で、損害保険会社が株主代表訴訟などに備える「役員賠償責任保険」の保険金の支払限度額を上げたり、補償内容を増やしたりするという記事が載っていた。
株主代表訴訟は年200件を超え賠償額も大きくなっているため、訴訟のリスクを保険でカバーする企業の動きに応えるとのことである。
弁護士人口の増加に伴い、今後、株主代表訴訟は増加するのではないだろうか。
いわゆるアンビュランス・チェイサー(被害者の依頼を受けるために救急車を追いかける弁護士を揶揄する言葉)の事態が起こってくると思われるからである。
日経(H26.5.9)政治面で、憲法改正の手続きを定めた国民投票法が改正され、国民投票の投票権年齢が、4年後に「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられる見通しと報じていた。
また、2年以内には選挙権年齢も18歳以上に引き下げるために、公職選挙法の改正を目指すと明記している。
国民投票法の改正は、憲法改正問題と絡んでいるので評価しづらいが、投票年齢が18歳以上になるのはよいことだと思う。
それ以外の分野でも、18歳以上は成人とみてよいのではないかと思うが、それには反対の方が多いようである。
2014年05月08日(木) |
理化学研究所 小保方氏の再調査請求を棄却 |
日経(H26.5.8)社会面、STAP細胞の論文問題で、理化学研究所の調査委員会が、小保方氏側が申し立てた再調査請求について、調査しない方針を決めたと報じていた。
同じ機関が審査するのであるから、同じ結論になるのは当たり前である。
これに対し、小保方氏側としては、現時点での訴訟提起は考えづらい。
なぜなら、現段階で訴訟提起をするなら、名誉棄損を理由とする訴訟になるのだろうが、名誉棄損訴訟では、理化学研究所側では、小保方氏に不正があったことが立証できなくても、不正であると信じるにつき相当な理由がある場合には責任はないとされるからである。
それゆえ、今後の流れとしては、理研側による小保方氏に対する懲戒処分、それに対して小保方氏が処分無効を求めて訴訟するという公算が一番高いと思う。
2014年05月07日(水) |
容疑者逮捕後に、2件のガスボンベ爆発事件が起きる |
日経(H26.5.7)夕刊で、札幌市の大型書店出入り口付近で、カセットこんろ用ガスボンベ1本が破裂し、約10メートル四方にくぎ千本以上が散乱していたという記事が載っていた。
札幌市では1月から4月にかけて、警察施設や大型店でガスボンベを使った爆発事件が5件起こっており、北海道警察は、5件のうち道警官舎を狙った事件で、激発物破裂容疑で無職女性を逮捕して取り調べ中であった。
ところが、今月4日には北署の石狩駐在所でも、ガスボンベの破裂事件が起こっている。
道警は5月の2件は一連の事件を模倣したとみているそうである。
被疑者を逮捕して取り調べているのに、同種の事件が起こったのでは、逮捕自体が問題になりかねないから、道警としては「模倣犯」という言い方しかできないであろう。
しかし、この種の事件で有罪になれば重罪となることは間違いなく、第三者が安易に模倣するのだろうかという気がする。
もともと、逮捕した被疑者について、逮捕前に任意で4日間も連続で取り調べを行っている。
任意だから違法ではないにせよ、勾留期間の制限を潜脱している疑いがあり、適切な取り調べ方法とはいえないと思う。
道警は、「模倣犯」と決めつけるのではなく、今一度事件全体を見直した方がよいのではないか。
2014年05月02日(金) |
明石市歩道橋事件で指定弁護士が上告 |
日経(H26.5.2)夕刊で、明石市の歩道橋事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された事件について、検察官役の指定弁護士は、大阪高裁判決を不服として上告したという記事が載っていた。
本来、上告理由は、判決に憲法違反がある場合など極めて限定されている。
もっとも、被告人の場合には判決に不服があれば上告することは間違いではない。
しかし、検察官は公益的立場を有する以上、被告人と異なり、上告理由の有無については厳格に判断すべきである。
そして、この事件の判決に憲法違反など適正な上告理由があるかははなはだ疑問である。
2014年05月01日(木) |
「司法取引」を導入か |
日経(H26.5.1)社会面で、刑事事件の捜査の改革などを検討している法制審議会の特別部会で、法務省は議論のたたき台となる試案を示したと報じていた。
記事では、取り調べの可視化の問題を大きく取り上げていたが、注目されるのは、容疑者が共犯者の犯罪を明かした場合に検察官が起訴を見送ったり、略式起訴にとどめたりする「司法取引」の導入が盛り込まれたことである。
司法取引はアメリカでは普通に行われているが、日本の風土にはなじまないとされてきた。
ただ、実際の捜査ではあうんの呼吸で司法取引は行われていたと思う。
それが法律に基づいた手続として認められるのであるから、運用次第という留保付きではあるが、かえっていいのではないだろうか。
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