2014年03月31日(月) |
第三者委員会を勝手に格付け |
日経(H26.3.31)夕刊で、不祥事を起こした企業などが設ける第三者委員会の調査報告書を格付けする独立機関を、有志の弁護士らが立ち上げるという記事が載っていた。
第三者委員会の報告書だけを基礎資料として格付けするしかないから、評価の正確性には限界があるかもしれない。
ただ、第三者委員会の独立性については疑問もある中にあって、それを格付けることによって、規律を持たせる効果はあると思う。
2014年03月28日(金) |
猪瀬前知事を略式起訴 |
日経(H26.3.28)夕刊で、猪瀬直樹前東京都知事が徳洲会グループから現金5千万円を受け取っていた問題で、東京地検は、公職選挙法違反(虚偽記入)で猪瀬氏を略式起訴したと報じていた。
公職選挙法は出納責任者に記入義務を課しているため、出納責任者だけが記載義務違反となる身分犯のように読める。
そのため、以前、猪瀬前知事は起訴されないのではないかと書いた。
ところが、解釈として、虚偽記入に関与したものはすべて違法になると解釈をされているようである。
それゆえ、東京地検は、猪瀬前知事を略式起訴したのであろう。
確かに、虚偽記入に関与したものはすべて違法になるという解釈は立法趣旨を考えればもっともである。
しかし、条文の文言からは直ちに読み取れない解釈のように思われる。
選挙運動資金の透明化は必要であるが、そうであれば、虚偽記入を処罰する構成要件はもう少し明確にすべきであろうと思う。
2014年03月27日(木) |
袴田事件で再審開始決定 |
日経(H26.3.27)社会面で、1966年に静岡県清水市で一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌元被告の第2次再審請求審で、静岡地裁は再審開始を認める決定をしたと報じていた。
有罪の最有力の証拠となったシャツなどの衣類について、裁判所は「捏造の疑いがある」と相当踏み込んだ判断をしており、驚いた。
裁判長は東京地裁の部総括を務めながら、その後、静岡地裁の部総括をしているようであるから、エリートコースからは完全に外れている。しかも、57歳なのでもうすぐ退官であろう。
それが遠慮のない判断となったのかも知れない。
ただ、マスコミは、再審開始は間違いないかのように報じているが、再審開始決定の判断が覆される可能性はあると思う。
2014年03月25日(火) |
竹崎最高裁長官の退官は、『絶望の裁判所』が原因か |
日経(H26.3.25)社会面で、竹崎博允最高裁長官が退官を前に記者会見をしたという記事が載っていた。
竹崎氏は任期を残しての退官であり、その理由について次のような憶測が流れている。
元裁判官の瀬木比呂志氏が今年2月に出版した『絶望の裁判所』(講談社現代新書)で、竹崎博允最高裁長官だけ実名を挙げて批判しており、それが原因ではないかというのである。
瀬木氏が書いた内容は、最高裁判所事務総局が裁判員制度導入に賛成するようになった本当の理由は、民事系に対して劣勢にあった刑事系裁判官の立場を強化するためであり、その中心となったのが竹崎氏であったというものである。
この本に衝撃を受けた竹崎氏が、任期満了を待たずに退官を余儀なくされたという見方である。
しかし、それはあり得ないであろう。
最高裁長官にまでなった人が、その程度の批判で退官するほど軟じゃない。
後任の最高裁長官となる寺田逸郎氏も司法行政畑出身であり、最高裁の体制は何ら変わらないことからも、瀬木氏の書籍の影響はまったくなかったことが窺われる。
実際の退官理由は、竹崎氏の健康上のことのようである。
2014年03月24日(月) |
退職する従業員の守秘義務契約はいつ締結しておくべきか |
日経(H26.3.24)法務面で、「東芝の営業秘密が提携先から韓国企業に流出する事件が起き、元技術者が逮捕された。海外企業との事業提携や人材の流動化が進むなか、日本企業は営業秘密をどう守るべきか。」という記事が載っていた。
その中で、「不正競争防止法では覚えている情報、身についたノウハウや技術、人脈などを転職先で使うことを止められない。」「企業は退職する技術者と守秘義務契約を結んでおくべき。」「契約時期は退職直前が望ましい。」としていた。
守秘義務契約を締結しておくことは正しいが、退職直前に契約を締結しようとして、退職する技術者が「俺のことを信用しないのか」と言って契約締結を断ればどうなるのであろうか。
契約締結を強制することまではできないので、契約を締結しないまま退職することになるだろう。
それゆえ、守秘義務契約は、守秘義務を課す必要のある地位につく都度、締結しておき、その上で退職時にも守秘義務契約締結を要請することが望ましいであろう。
2014年03月20日(木) |
「仕組債」を高齢者に販売すること自体が問題 |
日経(H26.3.20)社会面で、「仕組み債」と呼ばれる金融商品取引で損害を被ったのは事前説明が不十分だったのが原因であるとして、88歳の男性と81歳の妻が三菱UFJメリルリンチPB証券など2社に計6600万円の賠償を求めた訴訟で、横浜地裁は、同社に計約4600万円の支払いを命じたと報じていた。
仕組債については、商品の内容が難解であるため、トラブルは多い。
そのような難解な商品を88歳と81歳の高齢者に販売すること自体が誤りであると思う。
2014年03月19日(水) |
知的財産を意識した実験ノート |
日経(H26.3.19)6面下の週刊新潮の広告記事で「小保方さんが実験ノートもなかった」と書いていた。
しかし、実験ノートをまったく取らないということはあり得ないのではないであろう。
その点はともかく、日本の研究者の多くは、実験ノートの取り方が個人の裁量に任せられており、それゆえ、知的財産保護を意識した実験ノートになっていないことが多いといわれている。
そのため、今後は、知的財産保護を意識した実験ノートの取り方などを大学できちんと教育することが重要であろうと思う。
2014年03月18日(火) |
ビットコインの生き残る道 |
日経(H26.3.18)夕刊で、政府は、インターネット上の仮想通貨ビットコインを規制する法整備を、「必要があれば対応を検討していく」との見解を閣議決定したと報じていた。
ビットコインがどれだか有用であるかについては発言する立場にない。便利そうだなあ、ただ大丈夫かなあと思う程度である。
しかし、「国に管理されている貨幣が必ずしも信用できるとは限らない」として、ビットコインの将来性を通貨に取って代わるかのように解するのは誤りであろう。
というのは、通貨発行権というのは主権国家の重要な権限であり、それを脅かすものを国家は許さないからである。
実際、刑法では、公文書偽造罪は懲役1年以上10年以下の懲役であるが、通貨偽造罪は無期または3年以上の懲役と格段に重く、これは通貨の発行権の保護を重視しているからである。
それゆえ、仮にビットコインが国家の通貨発行権まで奪う恐れがあるならば、国家は絶対にそれを許さないであろう。
したがって、ビットコインがどれだけ有用であっても、生きる残る道は、国家の通貨発行権を脅かさず、それを補完するような立場しかないではないかと思う。
2014年03月17日(月) |
目的を偽って不正に戸籍謄本等を請求 |
日経(H26.3.17)夕刊で、知人の研究者から依頼され、ノーベル賞作家・川端康成の親族の戸籍謄本や住民票の写しを不正に取得したとして、兵庫県弁護士会の弁護士が戒告の懲戒処分を受けたという記事が載っていた。
弁護士は他人の戸籍謄本や住民票を取ることができるが、その場合には正当な目的が必要である。
ところが、この弁護士は「著作権使用請求事件、民事訴訟準備のため」と偽って請求したようである。
「高校の先輩に、趣味の研究だからと強く頼まれた」そうであるが、言い訳にもなっておらず、許されることではない。
2014年03月14日(金) |
濡れた床で転倒事故 裁判例は多い |
日経(H26.3.14)社会面で、みずほ銀行支店で足を滑らせ転倒し、けがをした女性が銀行側に約2800万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は、請求を棄却した一審判決を破棄し、「足ふきマットが滑りやすい状態だったのに見過ごしていた」として約92万円を支払うよう命じたという記事が載っていた。
店内で、雨で濡れていた床で滑ってけがをしたとして裁判するケースはかなり多い。
裁判では、雨で滑らないように足ふきマットを設置していたか、タイルは滑りにくい素材であったか、滑らないように濡れた床をふき取っていたか、注意を呼び掛けていたかなどが問題になる。
また、大型店舗では清掃業者が入っているが、店の管理者はその業者に任せきりにせず、自らも注意すべき義務がある。
記事の裁判では、「足ふきマットが滑りやすい状態だった」「管理を業者に任せきりにしていた」として銀行側の注意義務違反を認めたようである。
ただ、このような事故では過失相殺が認められるのが普通である。
過失割合は事案によって当然異なるが、記事では2800万円の請求で92万円の支払いしか命じていないから、逆転判決とはいえ、訴えた側としては勝訴したという思いはないだろう。
2014年03月13日(木) |
最高裁判事が補足意見で、一審の検察官に苦言 |
日経(H26.3.13)社会面で、覚醒剤密輸を指示したとして覚せい剤取締法違反に問われ、一審の裁判員裁判での無罪判決が控訴審で破棄された事件で、最高裁は被告側の上告を棄却したと報じていた。
その判決において、検察官出身の横田裁判長は補足意見として、「証人尋問や被告人質問の時間が長すぎるなど、裁判員が法廷で見聞きしただけで理解できる審理計画だったか疑問だ」とし、検察側の立証に苦言を呈したとしていた。
尋問の時間が長すぎるかどうかまで裁判官が指摘する必要があるのかと思って判決文を調べてみると、証人尋問の予定時間が6時間40分(特定の一人について),被告人質問は5時間40分も予定されていたようであり、実際もその程度行われたのであろう。
そのぐらい長時間尋問をすると、聞いている裁判員は何が何だか分からなくなっていたのではないだろうか。
もっとも、審理計画を立てるのは裁判官であるから、そのような長時間の尋問を認めた責任は、第一義的には裁判官にある。
ただ、公判前は、起訴状以外には事件の内容を裁判官は知らないから、審理計画を十分主導的に行うことができない。
そうすると、公訴事実について立証責任を負う検察官も適切な審理計画を立てる義務があるというべきであり、検察官に苦言を呈した最高裁判事の補足意見はもっともであろう。
2014年03月12日(水) |
公務員と政治家との関係 |
日経(H26.3.12)政治面で、小松内閣法制局長官が参院予算委員会の理事会で「公務員として反省している。」と陳謝したという記事が載っていた。
小松氏は「役人が政治家と対等のように口をきいて申し訳ない」と付け加えたそうである。
確かに、官僚は、政治家に対し「先生、先生」と言って立てており、対等な話し方はしない。
それは、政治家(議員)は国民の代表であるのに対し(憲法43条1項)、公務員は全体の奉仕者である(憲法15条2項)ということを意識しているためであろう。
その意味では、「役人が政治家と対等のように口をきいて申し訳ない」という謝罪の仕方はおかしくはない。(だからといって、政治家が官僚に偉そうな言い方をしていいわけではないが)
ただ、この小松氏の謝罪はかえって反感をかったそうである。謝罪に誠意が感じられず、単なる嫌味に聞こえたからであろう。
余計なひと言になってしまったわけであるが、プライドの高い人が犯しがちなことである。
そのため、今後もバトルは続くのかも知れない。
2014年03月11日(火) |
寄与分はなかなか認められない |
日経(H26.3.11)夕刊で、相続の寄与分についての解説コラムが載っていた。
コラムでは、父の家業を手伝ってきたことの寄与分が書かれていたが、よく相談されるのは、親の面倒を看たことの寄与である。
親の面倒を看たのに、相続分が平等というのはおかしいというわけである。
しかし、裁判所は、親の面倒を看るのは当然と考えており、特別な寄与がない限り寄与分は認められない。
それゆえ、親の面倒を看たことを評価して欲しい場合には、遺言書で「面戸を看てくれたので〇〇万円を相続させる」などと書いておいてもらうのが現実的である。
2014年03月10日(月) |
検察出身だけでなく、元裁判官の活用も考えてみては |
日経(H26.3.10)法務面で、キヤノンの御手洗会長が、従来「お飾りの社外取締役など無用」と主張してきたのに、それを翻して社外取締役を選任することについてのインタビュー記事が載っていた。
それによれば、「M&Aへの法的対応の強化のために、弁護士で元大阪高検検事長の斉田氏にお願いした」とのことである。
大手企業の社外取締役には元高検検事長などの大物検事が選任されることが多く、検察出身をありがたがる傾向が強いように思われる。
もちろん、大阪高検検事長まで務めたのであるから優秀な方だと思う。
ただ、いつも元検事ばかりでなく、もう少し元裁判官を活用すればと思うのだが。
2014年03月07日(金) |
「通信の秘密」の制約 |
日経(H26.3.7)経済面で、総務省はインターネット接続会社に対し、ウイルスへの感染を防ぐ目的で利用者の通信内容を見たりウェブサイトへのアクセスを止めたりすることを認める方針と報じていた。
これまでは「通信の秘密」を尊重して、利用者の同意がない限り通信内容を確認できなかったが、それを見直すものである。
見直しの理由は、悪質なウイルスが増えたので、利用者の同意なく利用者の通信内容を見たりして、感染による被害を減らすためであり、方針として妥当であろうと思う。
そもそも、「通信の秘密」は憲法で明記している権利であるが、それがために、それへの制約に対しては非常に慎重な取り扱いがなされてきたように思う。
そのような慎重な取り扱い自体は間違いでないが、デジタル時代の犯罪に対応するためには、通信の秘密もある程度の制限を甘受せざるを得ないのではないかと思う。
もちろん、それが妥当な制約なのかを事前または事後にチェックできる体制を設けるなどのバランが必要であるが。
2014年03月06日(木) |
悪いのはニセ被害者を紹介した弁護士である |
日経(H26.3.6)社会面で、放送倫理・番組向上機構は、インターネット詐欺特集で被害者ではない別人を被害者として放送した日本テレビについて、「裏付け取材の不足は否めないものの、放送倫理違反があるとまでは言えない」との意見書を公表したという記事が載っていた。
この事案は、テレビ局側が、「インターネット詐欺に詳しい」と触れ込みの弁護士に、詐欺被害者を2人紹介してもらい、取材したところ、その「被害者」は、2人ともその弁護士の法律事務所の事務員であったというものである。
その弁護士を信じたテレビ局には同情の余地があり、放送倫理違反に問うことはできないであろう。
悪いのは自分の事務所職員を被害者として紹介した弁護士である。
被害者を見つけてこないと今後依頼がなくなってしまうと思い、無理をしたのかも知れない。
ここにも弁護士過剰の弊害が出ているというのは、牽強付会(こじつけ)であろうか。
2014年03月05日(水) |
なぜ談合を繰り返すのか |
日経(H26.3.5)社会面で、北陸新幹線の融雪設備工事を巡る談合事件で、談合に関する匿名の通報が発注元にあったが、既に決めていた落札順を入れ替えて対応していたという記事が載っていた。
談合は刑事事件になり逮捕されることもあるのだから、匿名の通報があったのであれば、談合を中止するのが通常の感覚であろう。
それを、隠ぺい工作までして談合を継続するのだから、世間の常識とはずいぶん違う世界なのかもしれない。
2014年03月04日(火) |
ドワンゴの受験料徴収 厚労省に問題があるのでは |
日経(H26.3.4)経済面で、動画配信大手のドワンゴが、厚生労働省から、2015年春入社の新卒採用では受験料の徴収を自主的にやめるよう口頭で「助言」を受けたという記事が載っていた。
ドワンゴは、「本気で志望してくれる人に受けてほしい」として、新卒採用で首都圏の1都3県に住む志願者から受験料2525円を集めていていたことが問題となっていた。
職業安定法は労働者募集で、「報酬を受けてはならない」と規定しているからである。
報酬受領禁止の趣旨はよく分からないが、推測すると、人気企業の募集で報酬を徴収すると、資力のある者しか募集できなくなり就職の機会均等に反することになる、あるいは、就職難を利用して報酬名目で不当に利益を上げることを防止するということかもしれない。
しかし、そのような社会的実態はあるのだろうか。
人気企業はそのようなことはしないであろうし、報酬名目で利益を上げようとする企業には誰も応募しないだろうから、そもそも報酬を徴収しようとする企業はないと思われるからである。
その意味では、報酬受領禁止の規制自体に疑問が残るところである。
その点はともかく、2525円の徴収程度では資力のない者の就職の機会を奪うということはあり得ず、また、企業が不当に利益を上げているとは言えないから、前述の立法趣旨に反してはいないであろう。
それゆえ、職業安定法が禁止する「報酬」には該当しないし、厚労省も「報酬」にあたるとはみていないようである。
職業安定法は、「業務の適正な運営を確保するために必要な指導及び助言をすることができる」とされており、厚労省はこの規定に基づき「助言」したのであろう。
しかし、「適正でない」とは言えないのに厚労省が助言することは、むしろそちらの方が問題ではないだろうか。
日経(H26.3.3)夕刊で、長野県建設業厚生年金基金の掛け金24億円が使途不明になった問題で、同基金が元事務長の坂本芳信被告に対し約6200万円の損害賠償を求めた訴訟したところ、被告が第1回口頭弁論に出廷せず、答弁書も提出しなかったため、長野地裁は基金側の主張を全面的に認める判決を言い渡したという記事が載っていた。
しかし、勝訴判決を得ても回収可能性はほぼ100%ない。
他方、訴訟すれば、裁判所に納める印紙代、切手代だけで20万円以上かかり、それと別に弁護士費用が掛かる。
基金側の内部事情があるのかもしれないが、それだけの支出をしてまで勝訴判決を得ておく必要性があるのだろうかという気はする。
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