日経(H25.5.31)社会面で、保釈保証金を用意できない刑事事件の被告を対象に、日弁連が、「保釈保証書」を発行して裁判所から保釈許可を得る取り組みを始めるという記事が載っていた。
身柄が拘束されたまま起訴された場合、裁判所の許可があれば保釈されるが、その際保釈金を納付する必要がある。
ところが、保釈金を用意できずに、保釈されないケースもしばしばあった。
そのため、保釈金を立て替える業者がいくつかある。
しかし、手数料が必要であり、その手数料は実質的には貸金に対する利息であろう。
それゆえ、利息制限法の潜脱に手を貸している気がして、弁護士としてはあまり使いたくなかった(業者の言い分としては、「貸金ではなく、利息制限法の適用はない」ということである)。
それだけに、日弁連の保釈保証書の運用がうまくいけばいいと思う。
日経(H25.5.30)夕刊で、大阪弁護士会所属の弁護士が、裁判員裁判で証拠提出された取り調べの録画映像をNHKの番組に提供したことに対し、大阪地検が大阪弁護士会に懲戒請求したという記事が載っていた。
刑事訴訟法は、証拠の目的外使用を禁じており、マスコミへの提供がこれにあたることは間違いないと思う。
ただ、被告人のプライバシーには十分配慮しているようである。
それゆえ、懲戒請求までする必要があったのだろうかという気はする。
2013年05月29日(水) |
夫婦別姓は憲法で保障された権利といえない |
日経(H25.5.29)夕刊で、夫婦別姓を認めない民法の規定は「個人の尊重」を保障した憲法に違反するなどとして、国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、「夫婦別姓は憲法で保障された権利とはいえない」などと述べ、原告側の請求を棄却したと報じていた。
世論は夫婦別姓でまとまっているわけでもないから、原告の請求棄却というのは予想された結論である。
記事では「判決後、原告らは落胆した表情を浮かべた。」とあったが、原告側も、勝訴できるとは考えていなかったのではないだろうか。
ただ、判決の中で「姓の変更で人間関係やキャリアの断絶などが生じる可能性が高く、選択的夫婦別姓制度に対する期待は大きい」と述べて、選択的夫婦別姓に好意的な表現をしている点は、注目してよいのではないかと思う。
2013年05月28日(火) |
成年被後見人の選挙権を付与する法案が成立 |
日経(H25.5.28)社会面で、成年被後見人に選挙権を付与する改正公職選挙法が、参院で可決という記事が載っていた。
「付与する」というのは恩着せがましい言葉遣いであり、選挙権はもともと持っていた権利であると考えると、「付与する」という言い方はおかしいということになる。
それはともかく、法改正はしたけど、そのきっかけとなった訴訟については、政府は「違憲判決が直ちに確定すると混乱を招く恐れがある」として東京高裁に控訴して取り下げないそうである。
その理由として、日経新聞では「違憲判決が確定すると混乱を招く」としているが、よく分からない。
ただ、別の新聞では、選挙権を認めないことで損害賠償請求を受けている訴訟があり、東京地裁の判決が確定すると、損害賠償額に影響するからであるということであった。
そうであれば意味は分かるが、その国の主張はナンセンスである。
本来認めるべき被後見人の選挙権をはく奪したのであるから、損害賠償すべきである。
そんなことをケチるのはおかしいと思う。
2013年05月27日(月) |
労働者派遣ルール 分かりにくい規制 |
日経(H25.5.27)法務面で、働く期間や仕事の業務区分など、労働者派遣ルールの見直し議論が進んでいるが、日本人材派遣協会会長が「派遣業務に関する規制の多くが実態に合わなくなっており、雇う側にも働く側にも分かりにくく、誰のためにもなっていない」と述べたという記事が載っていた。
確かに、派遣ルールは非常に分かりにくくなっていると思う。
定型的な派遣契約書をチェックすることはよくあるが、その内容は複雑で分かりにくい。
定型的な派遣契約書の場合は、法律にほぼ忠実に各条項を定めているから、契約書が分かりにくい原因は、法律そのものにあるということである。
おそらく、派遣先の会社は、内容をほとんど理解しないまま契約を締結していると思う。
派遣労働者も十分理解していないのではないだろうか。
もう少しすっきりした規制の仕方をしないと、かえって労働者の権利擁護にも資さない結果になると思う。
2013年05月23日(木) |
馬券購入は資産運用の一種か |
日経(H25.5.23)夕刊で、競馬の払戻金を一切申告せず、約5億7千万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた男性について、大阪地裁は、弁護側の主張通り、はずれ馬券を含む購入費全額を経費と認めたうえで、元会社員に懲役2月、執行猶予2年を言い渡したと報じていた。
国は25%も先に控除しておきながら、当たり馬券にさらに税金を掛けること自体が問題であろう。
その意味では、結論自体は穏当であると思う。
ただ、判決は、穏当な結論を導き出すために、男性の馬券購入を「娯楽の域にとどまらず、継続的、網羅的で資産運用の一種である」として、払戻金は税法上の「雑所得」に当たるとした。
「雑所得」となれば必要経費を広く認めやすくなり、はずれ馬券の購入費も経費と認定できるからである。
しかし、競馬という偶然性に左右されるものへの掛け金について、「資産運用の一種」というのは無理があると思う。
もちろん、裁判所もこの男性がソフトを活用して広範囲に馬券を購入している点をとらえて判断しているのであり、一般的には「競馬は娯楽である」としている。
しかし、娯楽で競馬をやっている人でも、競馬ソフトを使っている人は少なくないであろうが、それとの線引きは困難である。
それゆえ、検察側が控訴した場合、控訴審では一審判決が破棄される可能性は高いと思う。
2013年05月22日(水) |
個人情報の提供に慎重になりすぎている |
日経でなく、朝日(H25.5.22)1面トップで、北海道湧別町の地吹雪によって父親が娘を抱いたまま亡くなった事故で、消防署が父親の携帯電話の位置情報を携帯電話会社から得ようとしたが得られなかったという記事が載っていた。
原因の一つには、携帯電話会社が、位置情報(個人情報)を提供することに慎重になったためのようである。
消防署からの問い合わせであれば、細かい理由を説明をしなくても、緊急事態であると考えて情報提供しても何ら問題はない。
たとえ、後に緊急事態でなかったことが判明したとしても、違法にはならないだろう。
記事では、総務省が消防にたいする情報提供のルールをきちんと定めることにしたとあった。
それも大切なことであるが、個人情報を提供することに委縮しないよう、国は、提供してよい場合を柔軟に解釈し、それを広く広報すべきではないだろうか。
2013年05月20日(月) |
司法試験予備試験の出願者が1万人を超える |
日経(H25.5.20)社会面で、司法試験予備試験が始まり、出願者が初めて1万人を超えたという記事が載っていた。
予備試験に合格すれば、法科大学院を修了しなくても司法試験を受けることができる。
もともとは、経済的理由などにより法科大学院の履修が困難な人のために用意したルートである。
しかし、受験生にとってはそのような制度目的は関係ないから、法科大学院をパスできるのならどんどん受験するであろう。
試験制度をどんなにいじくっても、受験生にとっては合格することこそが重要なのだから、合格に有利な方に流れていく。
それゆえ、試験制度はあまり複雑にせず、シンプルなのが望ましいと思う。
2013年05月17日(金) |
公選法改正後も控訴を取り下げない |
日経(H25.5.17)夕刊で、被成年後見人に選挙権を認めない公職選挙法の規定は違憲として、国に選挙権の確認を求めた訴訟の控訴審において、国側は、規定を見直す改正公選法が成立、施行した後も控訴を取り下げない意向を示したという記事が載っていた。
公選法を改選した後も、なお争うという国の狙いはよく分からない。
公選法の改正により、訴えた女性には選挙権が認められることになるので、訴えの利益がなくなり、請求却下となることを狙っているのだろうか。
もしそうだとすると、訴えた女性に失礼だと思う。
公選法を改正するということは、国は誤りを認めたということなのであるから、さっさと控訴を取り下ろう思う。
2013年05月16日(木) |
地方議会選挙区の定数配分 |
日経(H25.5.16)夕刊で、都議選の選挙区の一票の格差について報じていた。
東京都では、島部選挙区と北多摩3区との格差は5.43倍に達している。
ただ、島部と千代田区の2選挙区は、「当分の間設けることができる」特例選挙区とされており、法律上は例外扱いにしている。
そしてこの特例選挙区を認める規定ついて、平成11年、最高裁は、特例選挙区の規定は合憲であり、また、その規定に基づいた実際の定数配分も不合理とはいえないと判断している。
最高裁は、地方議会の定数配分については、地域間の均衡を配慮することをある程度認めているためである。
その後、千葉県選挙についても、平成12年に最高裁は合憲の判断をしている。
ただ、このときは2人の反対意見があり、3対2でかろうじて合憲となっている。
近時、最高裁は、国政選挙の定数配分については、人口比例原則を重視する流れになってきている。
そのため、今後、地方議会選挙の定数配分についても、同様の流れになってくるかもしれない。
2013年05月15日(水) |
テレビ放送の録画サービス |
日経(H25.5.15)国際面で、アメリカでテレビ放送をインターネット経由で配信するサービスを巡り、提供するネットベンチャーと大手テレビ局が激しく対立していると報じていた。
このサービスがテレビ局の著作権侵害にあたるかどうかについて、司法の判断は二分しているそうである。
日本でも同様のネット配信サービスがあり、最高裁まで争われたが、テレビ局側が逆転勝訴している。
しかし、いつでもどこでも好きな端末でテレビを見たいというニーズは今後も無くならないだろう。
実際、中国などのサイトには、録画した日本のテレビ番組が多数アップされており、それを日本の視聴者が見ているというのが現状である。
アメリカでも、そのようなニーズに抗しきれず、いずれテレビ局側が、何らかの折り合いをつけようとするかもしれない。
仮にそうなった場合、日本のテレビ局はどのように対応するのだろうか。
日経(H25.5.13)法務面で、日本がTPP交渉に参加することになったため、著作権保護期間を70年程度に延長するかどうかに注目を集めているという記事が載っていた。
米国は延長を求めているからである。
日本は、原則として、著作者の死後50年であるから、孫の代まで保護される(映画は公表後70年)。
それだけ保護されれば、権利としては十分ではないだろうか。
あまり長期間、著作権の存在を認めると、著作権者が不明になり、結局、その著作物を利用することができず、埋もれてしまうことになる。
これでは、著作権法の目的である「文化の発展に寄与する」ことに反する結果になってしまう。
そうは言っても、世界の大勢は、著作権保護期間が長くなる傾向にあり、TPP交渉では、公表後70年、映画はさらに長くなる可能性が高い。
2013年05月10日(金) |
法務省が、保護観察中の少年を雇用 |
日経(H25.510)夕刊で、法務省が、保護観察中の少年を同省の臨時職員として雇用する取り組みを始めたと報じていた。
同省によれば「国が率先して雇用する姿勢を示すことで、地方自治体や民間企業など、社会全体に取り組みを広げるきっかけにしたい」としているそうである。
まず隗より始めよということであろう。
日本は一度脱落するとなかなか再起できない社会であるだけに、国が率先して保護観察中の少年は雇用するというのは、喜ばしい取り組みだと思う。
2013年05月09日(木) |
DV保護法 無審尋で発令する要件が曖昧ではないか |
日経(H25.5.9)社会面で、DV被害者の調査で、配偶者暴力相談支援センターの取り扱い件数のうち、「生命に危険が及ぶなど被害者を即日保護する必要があった」とケースが約15%あったという記事が載っていた
裁判所の保護命令は、原則として相手方の言い分を聞く必要があるが、このような緊急性がある場合には、審尋を経ずに即日命令を出せる場合もある。
ところが、最高裁の調査では、無審尋で発令したのは0.8%(97件)にとどまるとのことである。
すなわち、ニーズに合った運用がされていないということになる。
内閣府の担当者は「無審尋でも発令してもらえることをセンター職員らが熟知していなかった可能性がある。今後、職員研修などの機会を利用して周知徹底したい」と述べているそうである。
しかし、法律の規定にも問題があるのではないだろうか。
無審尋で発令される要件として、DV保護法は、「期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情がある場合」とかなりあいまいな規定の仕方になっているからである。
本来は判例の集積を待つべきなのかもしれないが、無審尋で発令されるケースでは、相手方が争うことは少ないようであり、この規定についての判例はあまりない。
そうであれば、政府は、ある程度のガイドラインを示した方がよいのではないだろうか。
今日は休刊日なので、昨日の日経(H25.5.6)社会面であるが、日本弁護士連合会会長や整理回収機構社長を務めた中坊公平氏が亡くなったと報じていた。
中坊氏は森永ヒ素ミルク中毒の被害者弁護団を務めたことがあり、司法修習生のとき、中坊氏が弁護団長になる経緯や、その後被害者宅を一軒一軒訪ねた弁護活動を知って、感動した覚えがある。
ただ、司法改革を強引に推し進めたことで、弁護士の間では批判的な声の方が多いのではないだろうか。
一番の問題は、破綻した朝日住建資産回収に関して、詐欺罪で告発されたことであろう。
捜査の結果、東京地検特捜部は中坊氏を起訴猶予処分としている。
起訴猶予というのは、被疑事実は認められるが、情状により起訴しないというものであるから、検察官は、詐欺の心証を得たということになる。
ただ、このとき中坊氏は、責任を取って弁護士を廃業しており、それと引き換えに起訴猶予処分がなされたと言われている。
あれこれ考えると、中坊氏の業績は功罪相半ばといったところであろうか。
2013年05月02日(木) |
被害回復の対策を講じるべき |
日経(H25.5.2)社会面で、成年後見人として預かっていた1千万円の預金を横領したとして、東京地検は、元東京弁護士会副会長の弁護士松原厚容疑者を業務上横領容疑で逮捕したと報じていた。
対策として、日弁連は、報酬金と預かり金の区別の徹底などを指示しているが、その程度では解決しないだろう。
残念ながら、今後もこの種の事件は起こると思う。
その場合に、一番悲惨なのは被害者であろう。
弁護士が逮捕されても、横領された金が返って来なければ何の意味もないことであり、被害者にとって一番大事なのは被害回復である。
そこで、後見人候補の登録をしている弁護士から、毎年1人1万円ずつ集めて基金を作り、万が一のときにそこから被害者に弁償することにしてはどうだろうか。
ほとんどの弁護士にとっては迷惑な話であるが、被害者のことを考えると、それくらいの方策を取らないといけないのではないかと思う。
2013年05月01日(水) |
MRIインターナショナルの資金消失問題で被害対策弁護団 |
日経(H25.5.1)夕刊で、米金融業者MRIインターナショナルによる資金消失問題を巡り、東京の弁護士らが被害対策弁護団を立ち上げる方針であると報じていた。
弁護団が作られたとしても、実際にどれだけ資金回収できるかは分からない。
ただ、被害者にとっては、今はどうすればいいのかまったくわからない状態であろうから、相談できる窓口ができただけでも助かると思う。
それにしても、この問題が報じられて6日間くらいしか経っていないと思うが(しかも3日間の連休を挟んでいた)、すばやく弁護団を立ち上げたことに感心する。
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