2010年05月31日(月) |
辻恵衆院議員が検察審査会事務局に説明を求める |
日経(H22.5.31)社会面で、民主党副幹事長の辻恵衆院議員が、検察審査会事務局に対し、審査の手続きについて説明を求めたと報じていた。
一般的には、議員が、何らかの調査のために手続き等の説明を求めることはあり得る。
しかし、検察審査会では、小沢一郎同党幹事長を不起訴とした東京地検特捜部の判断の適否を審査しており、そのようなときに問い合わせすることは問題になると考えなかったのであろうか。
考えなかったのであれば、政治センスはゼロである。
考えたのであれば、無言の圧力の効果を期待したということになる。
この人は、弁護士出身であるが、弁護士業に関しても金銭問題でトラブルがあるようで、いずれ出処進退が問題になるかもしれない。
2010年05月28日(金) |
日本振興銀行に業務停止命令 |
日経(H22.5.28)7面で、金融庁が、日本振興銀行に対し業務停止命令を出したという記事が載っていた。
日本振興銀行は、貸金業者から債権を買い取っているが、その際に、一定期間後に同業者に一括再譲渡する契約を結んでいた。
しかしこれは実質的には融資であり、金利にすると45.7%にもなるとのことである。
金利45.7%となると、消費者金融以下、少々まともなヤミ金という感じである。
また、金融庁の検査で、特定の役職員が電子メールをサーバーから意図的に削除ていたそうである。
日本振興銀行は、以前から「銀行といいながら実質は消費者金融だなあ」「モラルに欠けている会社だなあ」と思っていたが、ヤミ金並みであったのには恐れ入った。
2010年05月27日(木) |
一審と二審とでは前提事実が異なる |
昨日の日経(H22.5.26)夕刊で、強盗強姦などの罪に問われた事件の控訴審で、東京高裁は、懲役13年とした裁判員裁判の一審判決を破棄し、懲役12年を言い渡したと報じていた。
裁判員裁判の控訴審で、一審判決が破棄されるのは初めてである。
これについて、解説記事では「一審判決を覆した説明としては十分とはいえず、『市民感覚の反映』という裁判員裁判の趣旨が損なわれかねない」と批判していた。
しかし、その批判は不見識である。
示談の有無という前提事実が異なるのだから、違った判断になっても何らおかしくない。(もちろん、同じ判断になることもあり得る。)
記事では「一審判決を覆した説明としては不十分」とする。
確かに、裁判員裁判に対する敬意を表する意味で、丁寧な説明することは望ましいことかもしれない。
しかし、説明しては、「一審判決後、示談が成立した」というだけで十分であると思う。
昨日の朝日(H22.5.25)夕刊で、鳩山政権の「事業仕分け」で、法務省所管の司法協会について、裁判記録などをコピーする際の料金設定が「高すぎる」として業務の見直しを求めたと報じていた。
セルフサービスは1枚20円で、コピーを協会の職員に頼むと1枚50円かかる点が問題にされた。
裁判関係の書類は事件によっては大部となることもあり、コピー代だけで何万円、何十万円することも少なくない。
そのため、記録のすべてをコピーすることを断念せざるを得ないこともある。
やはり、セルフで1枚20円、協会職員に頼むと1枚50円というのは高いと言わざるを得ず、是正して欲しいと思う。
2010年05月25日(火) |
「販売権」「営業権」は権利か |
日経(H22.5.25)社会面で、「宝くじの販売権を売る」と持ちかけ、現金400万円をだまし取ったとして、小宮山衆議院議員の実兄が詐欺容疑で逮捕されたと報じていた。
「宝くじがよく当たる」と評判の売り場があれば、そこで宝くじを販売できる権利が欲しいと思う人が出てくるのは当然であろう。
それゆえ、例えば販売する場所の賃借権を譲渡する形にして、そこに「販売権」という名目で、賃借権にプレミアムを付けて売買されることはありないわけではない。
しかし、本来は譲渡可能な「宝くじの販売権」というものはない。
似たようなものに、「パチンコの換金場の営業権」というのもあるが、これもそのような権利はない。
その他、いろいろと「○○権」と名前を付けされていることがあるが、たいていは、譲渡可能な権利ではなく、権利の内容自体も曖昧なものが多い。
「営業権」「販売権」などの権利を買わないかと誘われた場合には、安易に飛びつかず、慎重に対処したほうがよいだろう。
2010年05月24日(月) |
うつ病は、がんや心臓疾患と並ぶ三大疾患 |
日経(H22.5.24)18面コラム・リーガル3分間ゼミで、過労が原因で「うつ」と診断され、医者から仕事を休むよう言われたが忙しくて休めないという事例が載っていた。
回答は、大阪地裁の判例を参考に、会社は、単に残業しないよう助言・指導するだけでは不十分であり、残業を禁止する旨を明示すべきというものであった。
本人が残業を受け入れているのに残業禁止命令まで出せというのであるから、会社にとっては不本意な判断であろう。
ただ、うつ病などの精神疾患は、がんや心臓疾患と並ぶ三大疾患とまで言われるようになっており、労務管理上、重要な問題になっている。
それだけに、会社に課される全配慮義務はこれからも高度なものになっていくと思われ、大阪地裁の判断も厳し過ぎるとは言えのかも知れない。
2010年05月20日(木) |
裁判員裁判で求刑を上回る判決 |
日経(H22.5.20)社会面で、強制わいせつ致傷罪に問われた裁判員裁判の判決で、さいたま地裁は、求刑7年を上回る懲役8年を言い渡したという記事が載っていた。
この裁判で、裁判員は、男性5人、女性1人だったそうである。
男性が多いのは、弁護人が、女性の裁判員候補者を不選任請求したためかもしれない。
しかし、模擬裁判では、そのようなことをしてもあまり効果はなかったと報告されており、実際、この事件でも、男性5人、女性1人でも求刑を上回る判決がなされている。
私ももうすぐ裁判員裁判が始まるが、裁判員の選任についてはあれこれ考えないでおこうと思っている。
2010年05月19日(水) |
破産管財人が産廃処理の無許可業者に処理を依頼 |
日経(H22.5.19)社会面で、岐阜県の弁護士が産業廃棄物の無許可業者に廃タイルの処理を委託していた事件で、岐阜県警は、弁護士事務所の捜索令状を取っていたが、弁護士が任意で関連資料を提出したので令状は執行しなかったと報じていた。
この弁護士は、破産したタイル製造会社の破産管財人を務めていたが、この会社が出した廃タイル約2千トンを、産廃処理の許可を得ていない会社に委託したとして問題になったものである。
無許可業者なのだから、処理費用は安かったのだろう。
しかし、破産管財人の心理としては、費用を安くあげることよりも、安全を心掛ける。それゆえ、無許可業者に依頼することはあり得ない。
それなのになぜ無許可業者に依頼したのだろうか。
無許可業者と知らなかったのかも知れないが、可能性として高いのは、バックマージンであろう。
破産管財人になると誘惑は多い。
破産管財人は不動産を処分することも多いが、「取引を紹介してくれたらバックマージンを払う」と平気で言う業者もいる。
それだけに注意しなければならないのだが。
2010年05月18日(火) |
過大な宣伝文句の「有料情報」サイトのトラブルが急増 |
日経(H22.5.18)社会面で、ネットで「必ずモテる」「ほかでは手に入らないノウハウ」と過大な宣伝文句で勧誘する「有料情報」をめぐるトラブルが急増していると報じていた。
宣伝文句からして契約無効とされる可能性は高い。
しかし、申込代金は数万円程度であることが多く、裁判するには費用倒れになるので泣き寝入りになってしまうケースがほとんどである。
この種のサイトは、ページがやたらと長く、その多くが体験談であることが多い。
体験談でちりばめられているサイトは、眉に唾をつけて読んだ方が無難である。
2010年05月17日(月) |
“囲い屋”の跳梁跋扈 |
日経(H22.5.17)社会面で、路上生活者らに生活保護費を受給させ、家賃などを天引きする“囲い屋”について書いていた。
ビルを改装した大阪の簡易宿泊施設では、上部が空いた板で仕切られただけの部屋で、広さはたった7.5平方メートル。1つの照明を2部屋で共有する造りもあったそうだ。
このような施設を運営する業者は、路上生活者らに生活保護を申請させ、住居を提供する代わりに生活保護費から家賃を天引きする。
家賃は制度上限の4万2千円に設定するが、その家賃に見合った住環境ではなく、その差額の利益を得るというビジネスである。
大阪市もこのビルについては問題にしたが、一般論としては、「申請者自身が囲い屋の住居を選んでも保護の対象から外せない」「厚労省が囲い屋の排除につながる通達でも出してくれれば現場は動きやすくなる」と言っているそうである。
しかし、そのような賃貸借契約は公序良俗に反し無効ではないか。
そして無効である家賃を生活保護費から支給することは生活保護の趣旨に反するものであり、許されない。
大阪市やその他の市町村は、厚労省の通達に頼るのではなく、自らの判断でそのような“囲い屋”を排除すべきと思う。
2010年05月14日(金) |
保護司の成り手が減っている |
日経(H22.5.14)社会面で、裁判員裁判で保護観察付の判決が増えているが、民間ボランティアの保護司は、自宅での面接など負担の重さから新たな成り手は少ないという記事が載っていた。
記事で言うとおり、保護司の成り手は減っている。
保護司は自宅で面接するケースが多いが、自宅を知られるのはいやという人は多いのではないか。
他方、保護観察をされる側の意見として、「保護司の人が近所だと嫌だなあ」という話を聞いたことがある。
プライバシーが重視され、自宅を知られることを極端に嫌がる人が増えている中で、保護観察のあり方も曲がり角に来ているように思う。
2010年05月13日(木) |
消費者団体による訴訟は3年間で7件 |
日経(H22.5.13)社会面で、悪質業者の不当な契約などに対し、消費者団体が被害者本人に代わって差し止め請求できる「消費者団体訴訟制度」で、実際に適格団体が起こした訴訟は3年間でわずか7件という記事が載っていた。
調査や訴訟の費用が負担となっているとのことであり、団体事務局長は「訴訟費用は1件200万円程度が必要」と述べていた。
内訳が分からないので何とも言えないが、それほど費用がかかるのだろうかという気はした。
2010年05月12日(水) |
障害者団体側元幹部iに有罪の判決 |
日経(H22.5.12)社会面で、郵便料金割引制度を悪用したとされる事件で、障害者団体側の元幹部の河野被告に対する判決があり、大阪地裁は、元厚生労働省の村木局長被告らとの共謀を認定し、河野被告に有罪を言い渡したと報じていた。
この事件は複雑な様相を呈している。
村木元局長は、一貫して証明書偽造への関与を否定し、無罪を主張している。
また、団体の代表の倉沢被告について、大阪地裁は、村木被告との共謀を否定する判決をしている。
今回の判決では、河野被告がすべての事実を認めて争わなかったため、大阪地裁は、河野被告と村木元局長との共謀を認定するしかない。
そして、これらの裁判がすべて同じ裁判官の下で審理されているのである。
今後、村木局長に対する判決がどうなるのかよく分からない。
ただ、局長が証明書の偽造までするのだろうかという疑問は当初からぬぐえない。
2010年05月11日(火) |
遺言書はときどき書き直したほうがよい |
日経(H22.5.11)夕刊で、「元気なうちこそ遺言書を書こう」「遺言を残すことは、資産を持つ人の責任」という記事が載っていた。
その通りだと思う。
ただ、以前相談を受けたケースで、親が、子どもたちが平等に相続できるようにと思って遺言書を作成していたが、土地の値下がりで、亡くなったときには、土地を相続した子どもとってその遺言書は極めて不公平にものになっていたということがあった。
遺言書を作成する勧めるが、一度作ったからといって安心せず、状況に応じて書き直したほうがよいだろう。
2010年05月10日(月) |
不動産の鑑定価格について |
日経(H22.5.10)16面で、増資した資金がすぐに流出する「不公正ファイナンス」が後を絶たないという記事が載っていた。
いまよく使われている手法は、不動産などの提供を受け対価として株式を発行するものである。
この場合、不動産評価が異常に高ければ、不動産の出資者は不当に安く株式を手に入れることができ、その株式を市場で売却すれば大きな利益が転がり込む。
もちろん、不動産価格は不動産鑑定士が評価する。
しかし、鑑定の際にどの数値を採用するかは、どうしても幅があるから、「不当に高い」といっても違法とまでは言えない。
裁判でも不動産鑑定がなされることがあるが、なぜこの数値を採用したのか分からないことがある。
裁判官も不動産鑑定の価格を全面的に採用するのではなく、その鑑定価格を参考にしつつ、独自に判断することもしばしばある。
もちろん、弁護士としては、「なぜこの鑑定価格になったのだろうか」と首をかしげているだけでは仕事にならない。
できるだけ依頼者に有利な価格になるように努力するのが弁護士の腕ということになるのだが。
2010年05月07日(金) |
器物損壊罪の故意を欠く? |
日経(H22.5.7)夕刊で、JR亀有駅前にある「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の両津巡査の銅像が壊された事件で、亀有署は、会社員の男を器物損壊容疑で書類送検したと報じていた。
記事によれば、「酒を飲んだ後、銅像を見かけたので、両手で5、6回揺すったら折れた」と話しているということである。
そうすると器物損壊罪は故意を欠き、成立しないという理屈になる。
しかし、検察官は、「揺れば壊れるかもしれないと思ったが、酒の勢いでやってしまった。」というような調書を作成して故意を認めさせた上で、「本人が犯罪事実を認め、反省している」として起訴猶予にすることが多い。
ただ、この件は、男が、折れたマスカラを捨てているから、悪質であるとして、罰金刑になるかもしれないが。
2010年05月06日(木) |
裁判員裁判を否認事件に絞る |
日経でなく昨日の朝日(H22.5.6)13面「私の視点」で、弁護士が「裁判員裁判を否認事件に絞り、被告人が選択できるようにすべき」という意見を述べていた。
選択制については、戦前のように被告人は裁判員裁判を選択しない可能性が高く、制度が崩壊しかねないので、賛成できない。
他方、裁判員裁判を否認事件に絞ることは一つの考え方であると思う。
裁判員裁判が、市民の常識を反映し、冤罪・誤判を防ぐことにあるとするならば、自白事件まで裁判員裁判をする必要はないからである。
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