2010年06月30日(水) |
大相撲の賭博問題で、元東京高検検事長が理事長代行に |
日経(H22.6.30)社会面で、大相撲の賭博問題で、日本相撲協会の調査委員会は、村山弘義元東京高検検事長を理事長代行に推薦することを決めたと報じていた。
このような不祥事のあとの責任者として就任する人は、最近は圧倒的に検察官出身者が多い気がする。
もう少し元裁判官を使ってはどうかと思うが、検察官のような強固なネットワークがないために、あまり声がかからないようである。
2010年06月28日(月) |
「会社を辞めろ」は禁句 |
日経(H22.6.28)17 面の『リーガル3分間ゼミ』というコラムで、会社の上司が部下に対し、「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」とメールでしっ責した場合の責任について書いていた。
記事では、一審は上司の責任を認めなかったが、東京高裁は、上司に5万円の慰謝料の支払いを命じたとしていた。
慰謝料の支払いを認めたポイントは、しっ責するときに「会社を辞めるべき」と言ったことであろう。
しっ責は指導として行うのだから、がんばれという趣旨でなければならないのに、「会社を辞めろ」ではしっ責の趣旨に外れることになる。
それゆえ、しっ責する場合「会社を辞めろ」という言葉は禁句と思った方がよいと思う。
ただ、慰謝料の金額が5万円では、請求した方は「勝った」とは思わないだろう。
他方、上司側は自分に責任があるとされたのであるから、「負けた」という思いが強いと思う。
その意味で、このような判決は双方とも何とも言えないもやもやが残ることが多い。
2010年06月25日(金) |
イラク通貨の販売に注意 |
日経(H22.6.25)社会面で、 「イラク通貨を購入すれば必ずもうかる」などともちかけ、高額の契約料を取るトラブルの相談や苦情が急増しているという記事が載っていた。
「イラク通貨は今が底であり、平和になれば急上昇する」というのが謳い文句である。
「なるほど」と思わせるが、イラク通貨の価値が上がったとしても、その換金が難しい点がこの商法の問題である。
それにしても、よくこれだけいろんな商法を思いつくなあと思う。
日経(H22.6.24)社会面で、株主総会集中日の29日に株主総会を開く企業は961社で、1990年以降で初めて1000社を割り込んだという記事が載っていた。
かつては総会屋対策のため、株主総会日が集中していた。
しかし、次第にその必要性が減少し、1997年の2351社をピークに、分散化傾向が進んでいる。
株主総会が集中していたときは、人気のある弁護士は大忙しで、掛け持ちはできないため、私が若いころは株主総会に駆り出されたこともある。
しかし、総会日の分散化により、若手の弁護士に頼む必要性も少なくなったようである。
2010年06月23日(水) |
不必要になった名簿の処分 |
日経(H22.6.23)夕刊で、個人情報保護法との関係で、「不必要になった名簿をどう処分するか」について書いていた。
個人情報の取り扱いが厳しく言われるようになってから、名簿の処分にも気を使わざるを得ない。
日弁連は毎年分厚い会員名簿を発行しており、以前は、前年の名簿は雑誌類と一緒に束ねてゴミで出していたが、最近はそういうわけにはいかない。
ただ、個人情報保護法の規制がかかっているのは「個人情報取扱事業者」であるから、一般の人はあまり神経質になる必要はないと思う。
2010年06月22日(火) |
角界の野球賭博問題 弁護士20人で事情聴取 |
日経(H22.6.22)スポーツ面で、角界の賭博問題で、野球賭博の関与を認めた力士らに対し、弁護士20人が事情聴取すると報じていた。
しかし、弁護士が聞いたからといって、的確な聴取ができるとは限らない。十分な証拠がない中で事情聴取しても限度があるからである。
ただ、捜査機関の取り調べのように、20人から聴取した内容を一度寄せ集めて精査し、その上で再度、矛盾点、疑問点を突いていくということを繰り返せば違うかもしれない。
事情聴取が成果を上げるかどうかは、調査委員会がそこまで厳しい事情聴取をするつもりがあるのかどうかにかかっていると言える。
2010年06月21日(月) |
1億円以上の役員報酬の個別開示 |
日経(H22.6.21)9面で、『経営の視点』というコラムで、役員報酬の個別開示について論じていた。
金融庁は、上場企業などについて、1億円以上受け取っている役員名と報酬額を公表させることにした。
これに対しては、全面開示を主張する側、個別開示を否定する側の両方から批判がなされている。
個別開示を否定する主な理由は、プライバシーの侵害である。
公表される役員からすれば、自分の報酬を世間に知られるのは嫌であろうから、個別開示に反対する気持ちは理解できる。
他方、個別開示の代表的意見は、「役員は株主が選任するのであるから、株主が役員の報酬を知ることは当然」「業績に見合った報酬を経営陣が得ているのかどうか、株主や投資家によるチェックが必要である」といったものであろう。
このような立場からは、開示する役員を1億円以上に限定する理由はないことになる。
そのため、両方の立場から「なぜ1億円なのか」という批判がなされている。
実際、個別開示の対象を「1億円以上」とするのは日本だけのようである。
しかし、私は、このような妥協案でよいのではないかと思う。
業績に見合わない高額の報酬をチェックできれば、ある程度、個別開示の目的は達成するだろうし、1億円以上であればプライバシーにもそれなりに配慮できるからである。
なぜ「1億円なのか」という疑問には、「切りのいい数字だから」という回答でいいのではないかと思う。
2010年06月18日(金) |
「基本に忠実な捜査」 |
日経(H22.6.18)社会面で、検事総長就任の記者会見の様子を報じていたが、大林新検事総長は「基本に忠実な捜査・公判を」と述べたそうである。
しかし、実際には「基本に忠実な捜査」がなされていないのではないかという危惧がある。
裁判員裁判が始まって、公判に提出される証拠が厳選されるようになってから、証拠収集まで甘くなっているように気がするのである。
かつてはがちがちに証拠を収集していた。
ところが裁判員裁判では、裁判員が膨大な証拠を読むことは困難という理由から、証拠を厳選するようになった。
それに対応してか、以前ほどがちがちに証拠収集しなくなった印象がある。
本格的に否認事件において、いずれその弊害がいずれ表面化するような気がするのだが。
日経(H22.6.17)社会面で、大相撲力士らの賭博問題で、文部科学省は、日本相撲協会に対し、名前の公表や名古屋場所の出場可否を再検討するよう指示をしたと報じていた。
賭博をしたと自主申告した力士らは64人であるが、どのような賭博なのかの内訳は分からない。
野球賭博をしていた力士が琴光喜関だけということは考えられず、他に何人もいると思う。
他方、64人の中には仲間内だけの賭けマージャンやトランプなども含まれているようである。
私が知る限り、賭けマージャンは検察官でもやっていた。裁判官も個室のある雀荘であればやった。
ただし、レートは学生が仲間内でやる程度であり、その程度であれば社会通念上許されていると考えてよいだろう。
このような社会通念上許される賭け事と、野球賭博をしていた力士とを一緒にして、「64人」という人数だけが報じられるのは不合理であろう。
相撲協会は速やかに悪質な賭博とそうでないケースとを選り分け、少なくとも悪質な賭博をしていた力士らについては公表すべきであろう。
日経(H22.6.16)社会面で、大分県竹田市が、温泉療法の利用者の料金負担を助成する制度を創設するという記事が載っていた。
具体的には、医師から、例えば「炭酸泉に1週間、1日2回入浴」などと書かれた処方せんを書いてもらい、助成を受けることになるそうである。
温泉療法の治療費については、交通事故などの損害賠償事件でときどき問題になる。
被害を受けた側が温泉治療を受けた場合、温泉治療ゆえ治療期間が長期化する傾向にあり、その治療費が損害にあたるかどうかについて支払い側と争いになるのである。
結論としては、医師の指示がある場合には温泉治療費も損害金として認められる傾向にある(ただし全額ではない)。
記事に戻って、損害賠償事件で、医師が「炭酸泉に1週間、1日2回入浴」などと処方せんを書いた場合、温泉治療費のうち、損害としてどの程度認められることになるのだろうか。興味があるところである。
2010年06月15日(火) |
福岡高裁は「老齢加算」廃止は違法と判断 |
日経(H22.6.15)社会面で、生活保護制度の「老齢加算」を廃止したことは違法として、北九州市の39人が保護費減額の取り消しを求めた訴訟で、福岡高裁は「正当な理由のない不利益変更であり、違法」と判断したと報じていた。
「老齢加算」とは、70歳以上の高齢者について60歳代以下に比べて食費や衣服費などが余計に必要として、生活保護費に加算されるもので、1960年に創設されている。
しかし、高齢になると医療費は余計にかかるにしても、食費や衣服費まで余計にかかるのだろうか。
もちろん、手厚い保護が望ましいことはいうまでもない。
ただ、1960年頃と違って70歳以上の高齢者が著しく増加しており、国・地方公共団体の財政がひっ迫していることを考えると、老齢加算を廃止することが違法とまでは言えないのではないか。
実際、東京高裁と4つの地方裁判所では、適法との判断をしている。
最高裁でも今回の福岡高裁の判断は覆される可能性が高いと思う。
日経(H22.6.14)社会面で、日本振興銀行による検査妨害事件で、同行の執行役らが金融庁検査期間中もメールを削除していた疑いがあることが分かったと報じていた。
一連の報道では、検査妨害は一部役員の主導によるものという論調である。
しかし、検査期間中にメールを削除するというのは、法令軽視もはなはだしく、会社全体がそのような風土であったということであろう。
問題は、金融機関でありながら、なぜそのような風土が出来上がったのかであり、一部の役員に責任を押し付けても問題は解決しないと思う。
2010年06月11日(金) |
裁判官は裁判期日を急ぐ姿勢 |
日経(H22.6.11)社会面で、全国の高裁長官と地、家裁所長が集まって意見交換する「長官所長会同」で、裁判員制度について、起訴から初公判までに余計な日数がかかったケースが反省として挙げられ、検察官や弁護人との密な連携が一段と重要になるとの意見も出たという記事が載っていた。
現在、裁判員裁判の事前打ち合わせを行っているが、裁判官は裁判期日を急ごうとする姿勢を明確に打ち出し、打ち合わせ期日を頻繁に入れようとしている。
弁護士側には、拙速になるという意見もあるが、私は、被告人のためにもあまりだらだらと打ち合わせをするのはよくないと思っている。
ただ、検察官のようにスタッフのいない弁護士側の準備は大変であり、その点の不公平感はある。
2010年06月10日(木) |
最高裁はNTTの年金減額を認めず |
日経(H22.6.10)4面で、NTTグループが申請した退職者の年金減額を厚生労働省が承認しなかったため、不承認処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁は、NTT側の上告を退ける決定をし、NTT側敗訴の一、二審判決が確定したと報じていた。
厚労省は年金減額に必要な要件を省令などで定めており、OBの場合は「真にやむを得ないと認められる」経営状態の場合で、3分の2以上の同意が必要としている。
ところが、NTTは申請時の直近の業績が黒字であったことから、裁判所は「真にやむを得ないと認められる」経営状態ではないとしたものである。
省令で定める要件を前提とする以上、裁判所の判断は当然であろう。
ただ、現役世代の負担を考慮して年金を減額するという動機は不当とは言えない。
とくに、NTTの案は、年金の給付利率を従来の固定型から、国債の利率に連動する仕組みに変えるもので、考え方としては合理的と思われる。
しかも、約9割ものOBがかかる案に賛成しているのである。
このように場合にまで年金減額を認めないのは、規制としていきすぎのように思うのだが。
2010年06月09日(水) |
死刑制度反対論者と死刑執行 |
日経(H22.6.9)1面トップは、「管首相就任記者会見」であり、管内閣の閣僚の顔写真が掲載されていた。
法務大臣には千葉景子議員が再任されたが、この人は任期中死刑執行の署名を一度もしなかった。
もともと死刑制度反対論者であり、その考えは尊重されるべきである。
しかし、それと大臣の職務とは別問題ではないだろうか。
裁判官は良心に従い、独立してその職務を行うとされている(憲法76条3項)。
では当該裁判官が「死刑制度反対」という良心を持っている場合には、死刑判決を下さなくていいかといえば、そうではない。
同様に、法務大臣も、法律行政のトップである以上、死刑執行という職務は果たすべきであろうと思う。
2010年06月08日(火) |
弁護士が芸能人らの戸籍謄本を不正取得 |
日経(H22.6.8)社会面で、探偵会社の依頼で、芸能人らの戸籍謄本や住民票など約90件分を取得していたとして、東京弁護士会は、山本朝光弁護士を業務停止6カ月の懲戒処分としたと報じていた。
山本弁護士は、探偵会社と月額5万円で顧問契約を結んでおり、「断り切れなかった」そうである。
しかし、月5万円の顧問料を欲しいがために、このような不正行為をするのだろうか。
この弁護士は他にも問題があるのかもしれない。
2010年06月07日(月) |
増える探偵業者、減らぬトラブル |
日経(H22.6.7)夕刊で、「増える探偵業者、減らぬトラブル 」という記事が載っていた。
探偵業者を届け出させ、守秘義務などを課す探偵業法が施行から3年になるが、届け出だけで営業できることから悪質業者も多く、トラブルも増加しているとのことである。
たとえ悪質業者でなくても、探偵の費用はかなり高い気がする。
人件費を考慮するとそれなりの料金にならざるを得ないとは思うが、やはり金額を聞くとびっくりする。
また、例えば浮気調査であればすぐに決定的写真が撮れるとは限らず、費用が事前に読めないこともトラブルの原因となっているのだろう。
裁判では間接的な証拠から事実認定されることはよくある。
そのため、決定手な証拠をつかもうとして探偵を頼む必要まではないことも多い。
ということで、裁判の証拠収集に関して言えば、探偵業者を使うことはあまりお勧めしていない。
2010年06月04日(金) |
不服審査を経ていなくても国賠請求できる |
日経(H22.6.4)社会面で、課税ミスで固定資産税を多く取られた場合に、不服審判請求をしないで過払い分の返還が認められるかどうかが争われた事件で、最高裁は、「不服審査などを経ていなくても、公務員が法的義務に背いて税額を過大に決定した場合は、国家賠償請求を行いうる」との初判断を示したと報じていた。
固定資産税の課税ミスは長年気がつかないことがあり、言われるままに多額の固定資産税を支払っていることがある。
ところが、これまでは過払い分のうち5年以内のものしか返還されなかった。
しかし、今回の最高裁判例によれば、国賠法の要件を充たすことが必要とはいえ、事案によっては5年以上前の過払い分の返還請求が認められることになると思われる。
判例の意義としては、この点が大きいと思う。
2010年06月03日(木) |
労働審判で異議を申立てるのは慎重に |
日経(H22.6.3)社会面で、景気悪化などを理由に内々定を取り消された学生が会社を訴えていた事件で、福岡地裁は、「内々定を得た学生が採用に期待するのは当然」として、会社に195万円の支払いを命じたという記事が載っていた。
1人約100万円の賠償額ということになる。
この事件では、労働審判で会社は175万円の支払いを命じられているが、会社がそれに異議を申し立て、民事訴訟に移行していた。
学生に内々定を出したのは7月で、わずか2か月後の9月に内々定を取り消しているから、それだけ考えると175万円という賠償額は少々高い気がする。
それゆえ、会社が労働審判に異議を出した気持ちも分からないではない。
ただ、異議を申し立てて民事訴訟に移行しても、結論が変わることはあまり考えられない。
実際、この事件でも民事訴訟で結論は変わらないばかりか、むしろ賠償額が増えているくらいである。
労働審判で異議を出すのは慎重であるべきと思う。
2010年06月02日(水) |
遺族は2次被害を受けたに等しい |
日経(H22.6.2)社会面で、三菱自動車製トレーラーのタイヤ脱落事故をめぐる訴訟で、不当に高額な報酬を遺族に請求したなどとして、横浜弁護士会は、青木勝治弁護士を業務停止6カ月の懲戒処分にしたという記事が載っていた。
青木弁護士は、遺族が同社と国に損害賠償を求めた訴訟で、報酬の説明をせずに、賠償請求額を550万円から制裁的慰謝料を含む1億6550万円に増額したそうである。
その結果、着手金は1632万円、印紙などの費用を合わせると計約2110万円という高額なものになった。
会社に対する損害賠償請求では約670万円が認められたが、弁護士費用と相殺したとのことであるから、遺族にまったくお金が渡っていないことになる。
これはひどい。
裁判で、制裁的慰謝料を請求することは間違いとはいえない。
しかし、それが認められる可能性は極めて低く、制裁的慰謝料を基準に弁護士費用を算定することは誤りであろう。
この弁護士は、過去にも懲戒処分を受けているようであり、業務停止6か月というのは処分として軽すぎるのではないかと思う。
2010年06月01日(火) |
取締役の全員が社外取締役 |
日経(H22.6.1)7面で、金融庁から一部業務停止命令を受けた日本振興銀行が、取締役を全員社外取締役としたと報じていた。
取締役全員を社外取締役とするのは珍しいのではないか。
社外取締役だけで果たして企業統治ができるのだろうかという疑問はあるが、企業自治の問題であるから、それ自体はあれこれ言うことではないかも知れない。
ただ、日本振興銀行が業務停止命令まで受けたのは、経営と執行が分離していなかったことが原因なのだろうか。
問題は、この会社を設立したときから持っている企業体質であり、もっと根が深い気がするのだが。
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