2009年04月30日(木) |
、銀行以外の事業者も送金業務が可能に |
日経(H21.4.30)5面に、資金決済法が今国会で成立し、銀行以外の事業者も送金業務が可能になる見込みという記事が載っていた。
これまでは送金業務は銀行に限定されていた。
しかし、振込手数料が高く、また銀行の営業時間内しか振り込みできないなど利便性も悪かった。
ときどき「外国人の地下銀行を摘発」というニュースが載っているが、実態は「地下銀行」という大それたものではなく、銀行の振込手数料が高いために、安い手数料で送金手続きの代行をしていたものである。
つまり、銀行が規制に守られ、高い振込手数料で胡坐をかいていたため、そのような犯罪行為を誘発したともいえる。
送金者の保護も図る必要があるから送金業務を全くの自由にすることはできないだろうが、法改正により銀行以外にも送金業務を認めて競争を促すことは望ましいことである。
2009年04月28日(火) |
公判前整理手続きの前に打ち合わせ |
日経(H21.4.28)社会面に、秋葉原無差別殺傷事件で、第1回公判前整理手続きを6月22日に開かれることになったという記事が載っていた。
この事件は昨年6月8日に起きている。
犯人は現場で逮捕されたが、精神鑑定をしたうえで10月10日に起訴された。
それからいままでの半年間、何をしていたかというと、公判前整理手続きのための打ち合わせをしていたのだと思う。
つまり、本来であれば公判前整理手続きにおいて争点整理などをすることになっているのであるが、その前に裁判官、弁護人、検察官で打ち合わせ期日を入れ、その中で実質的に争点整理などをしているのである。
そのため、公判前整理手続き自体は1回で終わることもある。
このような運用は法が本来予定している手続きの流れではない。
ただ、柔軟な処理が可能であることから、今後定着していくことになるのだろう。
2009年04月27日(月) |
法廷で被害者を恫喝した事件で実刑判決 |
日経(H21.4.27)夕刊で、法廷で被害者を恫喝した事件で、東京地裁は、被告人に実刑判決を言い渡したと報じていた。
ただ、懲役1年6月の求刑に対し、判決は、懲役1年2月であった。
通常であれば、判決は求刑の8割程度といわれてから、相場通りの判決である。
しかし、この事件は、証言している被害女性に対して、「また次もやるぞ。」と脅かしている。
女性はショックを受けて、被害者参加制度に基づき、被害者が被告人に直接質問する予定を取りやめている。
このようなことが頻繁に起きれば、適正な刑事司法は確保できないことになりかねず、その行為は極めて人の行為の悪質である。
それゆえ、求刑通りの判決でもよかったのではないかと思う。
2009年04月24日(金) |
家宅捜索の必要まであったのだろうか |
日経(H21.4.24)社会面に、草なぎ剛が逮捕された事件の続報で、自宅を家宅捜索したという記事が載っていた。
警察の狙いは違法薬物であろう。実際、草なぎ容疑者に尿検査までしているから。
ただ、容疑としては酔って裸になっただけである。
そうであれば、家宅捜索して何かわかるというものでもなく、その必要はないだろう。
草なぎ容疑者に非難が集まっているので警察を批判する声までは聞かないが、少しやり過ぎではないかと思う。
2009年04月23日(木) |
SMAPの草なぎ剛を公然わいせつ罪で逮捕 |
日経(H21.4.23)夕刊で、SMAPの草なぎ剛が公然わいせつ罪で逮捕されたと報じていた。
今日の昼には検察庁前に報道陣が集まっていたが、検察庁に送致されるのは明日(24日)になるだろう。
送致された場合、悪質な犯罪ではないので、事実を認めれば通常は釈放される。
ただ、本人が「酔っていてよく覚えていない」と言っているようである。
そのような場合には、「それなら勾留してよく調べよう」ということなって、釈放されないことも多い。
意識的に公然わいせつ行為をしたわけではないので、かわいそうな気はするが。
2009年04月22日(水) |
和歌山毒物カレー事件と裁判員制度 |
日経(H21.4.22)社会面トップで、和歌山毒物カレー事件で、最高裁が林被告の上告を棄却し、死刑が確定へ、と報じていた。
この裁判は一審では95回も審理を行っている。
しかし、裁判員制度が始まるとそのような長期な審理はできない。
そのため、公判前に争点などを絞り込む公判前整理手続きによってある程度審理を短縮することになるだろう。
ただ、審理の短縮を図ろうとして、本来公開の裁判で審理すべきことまで、公判前整理手続きといういわば密室の手続きで行うことは問題である。
いまは審理の短縮ばかり強調されており、審理を受ける被告人の利益についての配慮が欠けているような気がする。
2009年04月21日(火) |
雑誌協会が、「賠償金額の算定方法はあいまい」との見解 |
日経(H21.4.21)社会面で、名誉棄損訴訟で出版社に高額の賠償金支払いを命じるなどの判決が相次いでいることに対し、日本雑誌協会が、「雑誌ジャーナリズム全体を揺るがす事態」「4000万円を超える高額の賠償金額算定法は極めてあいまい」との見解を示したという記事が載っていた。
しかし、もともと精神的損害の賠償額の算定はあいまいである。
精神的損害を金銭に換算するは本来できないはずからである。
結局は、表現の自由に委縮効果を与えない範囲内で、名誉棄損を抑止できる程度の金額を定めるしかないのだろう。
そうはいっても、最近の賠償額は高額という印象は否めない。
2009年04月20日(月) |
監査役が取締役を訴えるケースが増えた? |
日経(H21.4.20)14面で、監査役が権限行使して、取締役を公然と批判し、訴えるケースが目立ってきたという記事が載っていた。
記事ではいくつか事例を取り上げていたが、監査役が取締役の責任を追及ことはやはりレアケースと思う。
それは、監査役は、実質的には取締役によって選ばれているという事情だけでなく、会社の情報がきちんと集まらないからだと思う。
この点は社外取締役も同じであり、情報が集まらない限り、適切な監督は難しいといえる。
2009年04月17日(金) |
郵便割引制度を悪用した事件 |
日経(H21.4.17)社会面で、障害者団体向け郵便割引制度を悪用した事件で、ベスト電器元幹部らが逮捕されたと報じていた。
逮捕を受けて、ベスト電器は「法令に違反しているとの認識すらなかった」とのコメントを出している。
ただ、この制度の利用は「大手代理店の法的検討を経た提案」だったそうである。
しかも、郵便事業会社も承認している。
ベスト電器の担当者も私腹を肥やしたわけではないだろう。
その意味では、ベスト電器の担当者には同情の余地はある。
しかし、「違法ではない」と思っていたとしても犯罪は成立する(講学上、違法性の錯誤と呼ばれている問題である)。
それゆえ、同情の余地があるとしても、それは刑の重さで考慮されるに過ぎない。
2009年04月16日(木) |
会社を告発した店員を、飯5杯盗んだとして告訴 |
日経ではなく朝日(H21.4.16)社会面で、牛丼チェーン「すき家」のゼンショーが、残業代不払いで同社を刑事告訴した女性店員に対し、ご飯を無断で食べたなどとして窃盗などの疑いで仙台地検に刑事告訴していたという記事が載っていた。
地検はすでに不起訴処分にしているそうである。
とんでもない会社であるが、告訴手続きをしたのが弁護士かどうかは気になる。
弁護士だとしたから、本心はいやだったろうが、断りきれない事情があったのだろうなあと思う。(私だったら断るが)
2009年04月15日(水) |
痴漢事件で最高裁が無罪判決 |
日経(H21.4.15)社会面トップで、電車内の痴漢事件で、最高裁が逆転無罪を言い渡したと報じていた。
1、2審は懲役1年10月の実刑判決であったから、被告人もほっとしたことだろう。
痴漢事件では、被害者が嘘をついているわけではない。しかし、乗客が大勢いる中で、犯人を間違うことは十分あり得る。
ところが、一度疑われると何を言っても逆効果で、警察は痴漢の容疑をかけられた人の言い分をまともに取り上げようとしなかった。
今回の最高裁の判決によって、今後は捜査に一定の慎重さが求められるようになるだろう。
2009年04月14日(火) |
個人情報が流出した場合の請求の根拠規定は個人情報保護法ではない |
日経(H21.4.14)社会面に、参議院宿舎の建て替え計画をめぐり、参議院事務局が、建て替えを反対していた近隣住民の個人情報を推進派住民に流したことについて、東京地裁はこれを違法として国に70万円の支払いを命じたと報じていた。
参議院など国会については個人情報保護規定がない。
ただ、個人情報保護法は、個人情報保護規定に違反した事業者に対し、主務大臣が是正のための勧告、命令をすることができ、それに違反したときなどには罰則が科せられるが、個人情報保護規定に違反したことに対する直接の制裁規定は設けられていない。
個人情報が流されて精神的損害を被った場合の直接の根拠規定は、個人情報保護法ではなく、民法の不法行為責任や債務不履行責任となる。
記事の裁判でも、参議院について個人情報保護規定がなくても訴えることができたのはそのためである。
日経でなく朝日ネットニュース(H21.4.13)で、工作機械メーカー「プロデュース」の粉飾決算事件で、逮捕された公認会計士が、同社元幹部に口止め料として約1千万円を提供していたという記事が載っていた。
最近、公認会計士の不祥事が多くなっている気がする。
これは、監査法人の責任が厳しく問われるようになっており、そのため大手監査法人が問題ある会社の監査を断る傾向にあることが原因の一つのように思われる。
断られた会社は、監査の甘い監査法人に依頼するしかない。
他方、監査法人側も、大手監査法人のように厳しいことを言っていると仕事が来ないから、昔ながらの甘い監査をする可能性がある。
そこが落とし穴となっている気がする。
ただ、これは公認会計士だけでなく、法曹人口が急増している弁護士も他山の石とすべきことであると思う。
2009年04月10日(金) |
情報を盗んでも窃盗罪にはならない |
日経(H21.4.10)社会面で、三菱UFJ証券の元社員が全顧客の情報を持ち出し、一部を名簿業者に売っていたと報じていた。
行ったことは、物を盗んで第三者に売るという窃盗行為と同じであるが、盗んだものが「情報」であるため、現行法では窃盗罪に問うことはできない。
もっとも、元社員はアクセス権限を持つ別の社員のIDとパスワードを使ってシステムに接続していたため、不正アクセス禁止法違反になると思われる。
ただ、窃盗罪は懲役10年以下または50万円以下の罰金であるのに対し、不正アクセス禁止法違反は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金であるから刑罰に大きな差が生じる。
情報は財産的価値を有するものであり、それを盗む行為については、端的に情報窃盗罪を認めるべきかもしれない。
2009年04月09日(木) |
医師なのか鑑定人なのか |
日経(H21.4.9)社会面に、奈良県医師宅放火殺人事件で、長男の鑑定をした医師が調書を漏えいさせた事件で、法律論が争点になっているという記事が載っていた。
刑法の秘密漏示罪は、医師や弁護士などが業務上知りえた秘密を漏えいすることを禁じている。
この点について、弁護側の主張は、漏えいしたのは鑑定人であり、医師ではないというものである。
長男の調書は、医師として業務上知り得たものではなく、鑑定人として業務上知り得たものであるということなのだろう。
法律論としてはおもしろいが、その主張には無理があると思う。
裁判所が鑑定を依頼したのは、医師だったからであり、長男の調書は、医師ゆえに知りえた事実といえるからである。
もちろん、弁護人としては「無理かな」と思っても主張することはよくあることで、そのような主張に問題があるわけではないが。
2009年04月08日(水) |
秋田連続児童殺害事件で検察側が上告を断念 |
日経(H21.4.8)社会面で、秋田連続児童殺害事件で、1、2審の無期懲役判決に対し、検察側が上告を断念したという記事が載っていた。
死刑を望んだ遺族にとってはつらい判断かもしれない。
ただ、上告理由は、憲法違反、最高裁の判例違反に限定されている。
そして、検察官は公益の代表者であるから、適切な上告理由がないにもかかわらず上告することは許されない。
しかし、弁護側の場合には、被告人が上告を希望すれば、適切な上告理由がないと思っても、被告人の意思を尊重して上告する。
もっとも、上告理由で多いのは、「他の事案に比べて刑が重すぎて、平等原則(憲法14条)に違反する」というものであり、こじつけの感は拭えない。
2009年04月07日(火) |
ドン・キホーテからの献金は違法か |
日経(H21.4.7)31面(首都圏版)で、森田千葉県知事の初記者会見の様子を報じていたが、その中で、森田知事は、ドン・キホーテからの献金問題について、「弁護士と協議中と」と答えたそうである。
この問題は、森田知事が支部長を務める自民党支部がドン・キホーテから計1010万円の政治資金を受けていたが、その当時、政治資金規正法は外国人や外国法人の株式所有割合が50%を超える企業からの政治献金を禁止しており、これに抵触するというものである。
しかし、その後政治資金規正法は改正され、現在では違法ではない。
しかも、ドン・キホーテの外国人の所有割合は2005年、50.62%、2006年51.82%と50%をわずかに超える程度であり、少なくとも受け取った側は50%を超えていることを知らなかった可能性が高い。
このような事情の下では、献金は違法でないか、少なくとも違法性は極めて低いと思う。
それにもかかわらず大騒ぎされるのは、森田進知事が「完全無党派」と謳いながら、そうではなかったことが背景にあるのだろう。
日経(H21.4.6)14面のリーガル3分間ゼミというコラムで、みなし労働時間制で残業代がつくのかについて書いていた。
みなし労働時間制とは 労働時間を正確に出すのが困難な職種等について、実際の労働時間の長短にかかわらす、一定の時間、労働したものとみなすというものである。
しかし、これは一定の賃金でサービス残業させ放題という制度ではない。
仮に、みなし労働時間と算定された時間が法定労働時間(8時間)を超える場合には、その超える部分は時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要となる。
労働者が労働力を提供した時間は賃金支払い義務があるのが原則であり、それについての抜け道はないと考えた方がよいと思う。
2009年04月03日(金) |
最近は「個人情報保護」が行き過ぎているのではないか |
日経(H21.4.3)1面広告欄に、雑誌「銀行法務21」の広告が掲載されていたが、その中の論文に「弁護士会照会と銀行の回答義務」というものがあった。
弁護士は、弁護士会を通じて調査することが可能であり、銀行に対しても、口座名義人の住所などを照会することがある。
この雑誌の論文も、銀行はどこまで回答義務があるかを書いているのだと思うが、最近は、「個人情報保護」を理由に回答を拒まれることが多くなっている。
銀行だけでなく、どうも「個人情報保護」が独り歩きして、弁護士による調査が困難になってきているように思う。
そのため証拠収集が難しくなり、結果として、裁判という正当な権利行使の機会を奪っていることになっている。
何ごとも行き過ぎはよくないのであり、「個人情報保護」についても考え直すべき時に来ているように思う。
2009年04月02日(木) |
定額給付金と預金債権 |
日経でなく朝日(H21.4.2)社会面で、長崎県対馬市が、定額給付金を支給した日に預金を差し押さえたという記事が載っていた。
市の担当者は「預金を差し押さえたところ、給付金が含まれていた」と、とぼけたコメントをしているが、定額給付金を狙い撃ちしたことは明らかである。
定額給付金について、総務省は、「定額給付金そのものを差し押さえるのは、家計の緊急支援という趣旨に合致しない」と指導しているそうである。
しかし、定額給付金もいったん口座に入ってしまえば、銀行に対する預金債権となり、定額給付金としての性格は失う。
その預金債権を差し押さえたのであるから、「定額給付金を差し押さえたわけではない」という対馬市の主張は間違いではない。
2009年04月01日(水) |
毒物カレー事件の最高裁判決が4月21日に言渡し |
日経(H21.4.1)社会面で、毒物カレー事件で殺人罪などに問われた林真須美被告に対する最高裁判決が4月21日に言い渡されるという記事が載っていた。
この記事によると、弁護側は「真須美被告がカレー鍋を開けたという目撃証言は誤り」と主張し、検察側は「『一緒にいた』とする次女の証言は信用できないと主張しているようである。
そうすると、近所の人と、真須美被告の次女のいずれの証言が信用できるのかが一つの争点のように思われる。
この場合、ほとんどが「第三者である当該証人が虚偽の証言をする動機はまったくないし、証言内容も具体的であり、信用できる」というのがお決まりの言い方で、結局、第三者の証言が採用される。
実際、一、二審でも、「真須美被告がカレー鍋を開けた」という近所の人の証言が採用されている。
他の証拠を知らないので、真須美被告が犯人かどうかは分からない。
ただ、第三者の目撃証言というのは決定的役割を果たすだけに、怖いものがある。
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