日経(H20.9.30)夕刊面で、1歳10か月の乳児がこんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせ、死亡する事故があったと報じていた。 同様の死亡事故はこれまで17件あり。このうち7歳までの乳幼児が10件、68歳以上の高齢者が6件とのことである。
ここまで事故が続くと、メーカーには製造物責任が生じるように思われる。
製造物責任は、製造物に欠陥があり、それにより被害が生じた場合に、過失がなくても負う責任であるが、欠陥には、設計上の欠陥、製造上の欠陥、表示上の欠陥の3つの種類があるといわれている。
こんにゃく入りゼリーの袋には小さい字で警告を書いていたようだが、それでは不十分であろう。
誰でも目に付くように、大きく「乳幼児、高齢者は食べないで下さい」とでも書かない限り、「表示上の欠陥」といえるのではないだろうか。
2008年09月29日(月) |
『御名御璽(ぎょめいぎょじ)』とは |
日経(H20.9.29)夕刊で、麻生首相の所信表明について報じていた。
麻生首相は、冒頭で「かしこくも御名御璽をいただき、第92代内閣総理大臣に就任いたしました」と演説したそうである。
「御名御璽(ぎょめいぎょじ)」とは、天皇の署名捺印のことであるが、法律を勉強しているものには意外となじみがある言葉である。
それは、憲法の最初(前文の前)に、「朕は・・ここに公布せしめる。 御名御璽」と書いているからである。
「御名御璽」とは何だろうと思うし、語調がいいから、印象に残るのである。
ところで、天皇は内閣総理大臣を任命するから、「御名御璽をいただき」とは、「任命していただき」という意味として使ったのだろう。
ニュアンスは分かるが、「御名御璽」という言葉に、そのような使い方があるのだろうか。
日経(H20.9.26)社会面で、土地の売買契約をした後に、法律が改正され土地が有害とされたため、売主が除去費用を請求した事件で、東京高裁は、1審の判決を変更し、売り主側に除去費用として約4億4800万円の支払いを命じたと報じていた。
足立区土地開発公社は、1991年に土地を約23億円で購入したが、その時点ではフッ素は規制の対象ではなかった。
ところが、2003年施行の土壌汚染対策法で、高濃度のフッ素を有害物質として新たに規制することになったことから、公社が調査したところ、土壌に基準を超えるフッ素が含まれていたことが判明した。
そこで、売主に汚染土壌の除去費用を請求したというものである。
記事では「土地の売買契約時には無害とされていたフッ素が12年後に有害として法規制された」と表現していたが、無害なものが有害になるはずがない。
科学的にいえば売買の時点で有害であったわけであり、裁判所は、土地に瑕疵があったと判断したのであろう。
ただ、売買から12年も経ってから土壌規制がなされたのであるから、売主にとっては酷といえ、実際、1審では請求は棄却されている。
それゆえ、1審敗訴の時点で、感覚的には控訴しても勝てないと思うのが普通ではないだろうか。
その上、控訴審の訴訟費用が印紙代だけで200万円くらいするから、2審も敗訴すれば、公社ゆえ批判も出るであろう。
足立区土地開発公社はよく控訴したなあと感心した。
2008年09月25日(木) |
松本死刑囚の弁護人に戒告処分 |
日経(H20.9.25)社会面に、オウム真理教の松本死刑囚の弁護人が、期限までに控訴趣意書を提出しなかった問題で、仙台弁護士会は、弁護士の1人に対し戒告処分にしたという記事が載っていた。
控訴趣意書を提出するということは弁護人としての基本的義務であり、それを怠ったのであるから、処分は当然であると思う。
問題は、『戒告』が処分として軽いのではないかということである。
仙台弁護士会会長は「戒告処分は軽いものではない」と述べているが、これは、記者会見でも、「処分が軽いのではないか」という質問が出たからであろう。
この件は、うっかりミスではなく、意識的に控訴趣意書を提出していない。
しかも、被告人の争う機会を失わせ、死刑を確定させてしまったという点で、結果も重大である。
そうすると、『戒告』では処分として軽いのではないかいう疑問がでても仕方ないと思う。
日経(H20.9.24)社会面で、秋田連続児童殺害事件の畠山被告の控訴審初公判について、見出しで「一審と別の弁護士が担当」としていた。
これでは、まるで一審の弁護人に問題があったかのようである。
しかし、国選弁護人の場合、一審、控訴審、上告審それぞれ別の弁護士が選任される。
それゆえ、控訴審で、一審と別の弁護士が担当するのは制度上当然なのである。
2008年09月22日(月) |
自民党総裁選は、公選法で禁止する事前運動か |
日経(H20.9.22)1面で、今日、自民党総裁選の投票が実施され、新総裁が選出されると報じていた。
この総裁選では、国民には総裁選の投票権はないにもかかわらず、候補者は全国を回って街頭演説をしており、実質的には公職選挙法で禁止する事前運動ではないかという見解がある。
公職選挙法で禁止する事前運動とは、選挙前(立候補届出前)に特定の候補者の当選を図るための活動を行うことである。
しかし、総裁選の街頭演説は、自民党総裁を選出するための活動であるから、本音は別にしても、衆院選の事前運動とまではいえないと思う。
むしろ問題とされるべきことは、公職選挙法が、事前運動を全面的に禁止するなどして、選挙運動をがんじがらめに規制していることであろう。
2008年09月19日(金) |
著作権の保護期間の延長問題、賛否が割れる |
日経(H20.9.19)社会面に、著作権の保護期間を現行の著作者の死後50年から70年に延長するかどうかについて、文化審議会では賛否が割れたという記事が載っていた。
すでに欧米では70年になっているので、それに合わそうという考えも理解できないわけではない。
ただ、死後70年となると、ひ孫の世代になっている。
そこまで保護する必要があるのだろうかと思う。
2008年09月18日(木) |
リーマン・ブラザーズ日本法人が民事再生を申立て |
日経(H20.9.18)7面で、リーマン・ブラザーズ証券の日本法人が民事再生を申し立てた経緯について書いていた。
アメリカ本社が破産を申し立てると、すぐさま日本法人が民事再生を申し立てたのは、資産の流出を防止するためであるが、このように短期間で民事再生を申し立てられるのは、大手法律事務所だけである。
それにしても、申し立ての前日は、弁護士たちはほとんど徹夜になったのではないだろうか。
2008年09月17日(水) |
元日弁連会長に戒告処分 |
日経(H20.9.17)社会面で、の元日弁連会長の鬼追弁護士が、整理回収機構(RCC)の社長当時、債務者だった大阪府内の不動産会社から顧問料を受け取ったとして、大阪弁護士会が戒告処分としたという記事が載っていた。
この事件は、顧問会社である不動産会社社長がRCCの債権回収などについて、RCC社長であった鬼追弁護士に苦情を申し入れたものである。
大阪弁護士会は、その時点で利害対立が顕在化したのであるから、顧問契約を解消すべきであったと判断している。
鬼追弁護士に悪意はなく、実際に不正な行為はしていないと思う。
しかし、RCCの業務範囲は相当広範であったから、不動産会社と顧問契約している場合には、利益相反の危険性は常にあった。
それゆえ、相当注意しないといけなかったのであり、脇が甘かったというべきなのだろう。
そうはいっても、個人事業主である弁護士にとって、顧問契約を解消するのはなかなかつらいのだが・・。
2008年09月16日(火) |
オークションサイトにキャラクター商品の写真を掲載するのは違法か |
昨日の日経(H20.9.15)14面の「リーガル3分間ゼミ」で、オークションサイトにキャラクター商品の写真を掲載したが、それはキャラクターの著作権侵害になるかという問題を取り上げていた。
これは、著作権法で認めている「引用」に該当するかどうかという問題であるが、なかなか難しい。
コラム記事では「違法となる可能性がある」としていた。
ただ、ネットオークションは経済生活にしっかり根付いており、オークションでは商品の写真を掲載することは不可欠である。
そして、その商品を掲載するという目的を達成するために、キャラクターを掲載(著作物の引用)したとしても、それは「目的上正当な範囲内」といえるのではないか。
したがって、著作権法で認めている「引用」に該当し、適法であると考えてよいと思う。
2008年09月12日(金) |
若ノ鵬元力士が、解雇無効を求める訴訟を提起 |
日経(H20.9.12)社会面に、大麻取締法違反で逮捕された若ノ鵬元力士が、日本相撲協会に対し、解雇処分の無効確認を求める訴訟を東京地裁に起こしたと報じていた。
代理人は、大鵬らの拳銃不法所持事件で解雇されなかったことと比較して、解雇処分は厳しすぎると主張しているようである。
確かに、刑事事件では、拳銃の不法所持は原則実刑である。
それに対し、大麻は、起訴されても1回目は執行猶予であるから、拳銃の不法所持に比較するとかなり軽い。
しかし、相撲協会の40年以上前の処分と、今の処分と単純に比較することはできないだろう。
大麻使用による他の力士に対する悪影響、国民の批判などを考えると、解雇が無効となることはないだろうと思う。
日経(H20.9.11)9面に、中部電力が、浜岡原発がタービン事故で停止していた期間、電力を補うために割高な火力発電所を臨時に稼働させたことなどで生じた「逸失利益」の賠償を求めて日立を提訴するという記事が載っていた。
用語の問題ではあるが、電力を補うために割高な火力発電所を臨時に稼働させたことによる損害は「逸失利益」ではないだろう。
「逸失利益」とは、得られるはずであったのに、事故等によって得られなかった利益のことである。
「逸失利益」は、事故によって出費したわけではないので、消極損害という言い方もされる。(これに対し治療費は、出費があるから積極損害である)
原発が停止したことによって電力を売ることができなかった場合には、それは「逸失利益」である。
しかし、電力を補うために割高な火力発電所を臨時に稼働させたことなどで生じた費用は、積極損害であって、「逸失利益」とは言わないと思うのだが。
2008年09月10日(水) |
不動産の権利関係は登記で決せられる |
日経(H20.9.10)夕刊で、「都市再生機構が、所有する賃貸物件の6割で、不動産登記法で義務付けられた建物登記をしていなかった」という記事が載っていた。
登記費用を節約しようとしたのだろう。
都市再生機構の担当者によれば、「登記で権利関係を主張しなくても構わない」と思っていたそうである。
しかし、不動産の権利関係は登記で決せられる。
それゆえ、不動産取引のトラブルを日常的に扱っている立場からすると、「登記をしなくてよい」と考える感覚そのものが異常ではないかと思う。
2008年09月09日(火) |
JR福知山線脱線事故の補償交渉 |
日経(H20.9.7)社会面に、JR福知山線脱線事故の補償交渉が難航しているという記事が載っていた。
記事によれば、「JR西日本側は、交通事故と同様に、賠償額を機械的に決めようとしており、遺族側は反発を強めている」とのことである。
この事件では被害者に過失はないから、死亡による逸失利益がいくらかが大きな問題となる。
死亡逸失利益とは、生きていたら得たはずの収入が得られなくなったことに対する賠償である。
現在の交通事故の裁判実務では、亡くなったときの年齢と、その人の年収を基準に逸失利益は算定される。
そうすると、低い年収の人の場合は、それが算定の基準となるし、また、自営の人は、原則として、税務申告している収入が基準になるから、賠償額が低くなってしまう。
そして個別事情はほとんど考慮されないから、そういった人たちは不公平感を持つであろう。
JR西日本が賠償額を減らそうとして無理な主張をしているわけではないが、両者の溝はなかなか埋まらないのではないだろうか。
2008年09月08日(月) |
ロシア出身力士の大麻陽性反応問題 |
日経(H20.9.8)社会面に、ロシア出身の力士に大麻の陽性反応が出た問題の続報がされていた。
それによれば、力士・露鵬は、「検査手続きに問題があり、検査を繰り返しても意味がない」と主張し、予備の検体の検査を放棄したため、陽性が確定したとのことである。
刑事事件でも、検査そのものの有効性を争っても勝ち目がないから、手続上の落ち度を問題にして争うことはときどきある。
この問題でも、検体が露鵬のものかどうか不明であると主張しているようである。
しかし、そうであれば新たに尿を採取して検査し直せばいいということになる。
露鵬側は弁護士まで立てているが、この程度の主張しかできないのであれば、弁護士を立てる意味はないと思うのだが。
私であれば断るが・・。
2008年09月05日(金) |
法科大学院の入り口で一定のハードル |
日経でなく、朝日(H20.9.5)社会面で、中央教育審議会が、法科大学院入学の際、受験を義務づけている適性試験の点数に、合格に必要な「最低ライン」を設けるべきだとする案をまとめたと報じていた。
「入り口段階で一定のハードルを設け、質の良い学生の確保を目指す」と書いていたが、そうではなくて、「質の悪い学生の排除を目指す」ということなのだろう。
しかし、司法試験の合格率が30%程度であるから、その前の法科大学院の段階でハードルを高くすると、実質的な合格率は10%以下になるのではないか。
これでは何のために制度を変えたのか分からないように思うが。
2008年09月04日(木) |
最高裁判事が依願退職 |
日経(H20.9.4)夕刊で、「横尾最高裁判事が依願退官へ」と報じていた。
他の報道では、横尾最高裁判事は元社会保険庁長官であったため、その責任を取ったのではないかと言われている。
しかし、『裁判官の独立』という見地からいって、以前に務めていた行政官時代のことを理由に退官するのであれば、それは望ましくないと思う。
いずれにせよ、最高裁判事という重要な地位に就いているのであるから、任期途中で退官するのであれば、その理由をきちんと説明すべきであろう。
日経(H20.9.3)社会面に、ロシア出身の力士から大麻の陽性反応が出たが、大麻取締法は使用について罰則規定がないため、警視庁は、所持していたかどうかを調べる方針と報じていた。
『使用』について、大麻取締法は次のように規定している。
大麻取扱者以外の者が、『研究のために使用』することを禁じている。(3条1項、24条の3第1項)
反対解釈として、研究のため以外の使用については禁じていないということになる。
なぜ、大麻取扱者以外の者について、研究のための使用だけを禁じ、それ以外を禁じていないのかはよく分からない。
医療行為を想定しているからではないようである。
なぜなら、4条2項、3項で、「何人も、大麻から製造した医薬品を施用すること、または、施用されることを禁じる」としており、医療目的で医療関係者が施用することを禁じているからである。
もともと、大麻は農業従事者が取り扱うことが多く、大麻取締法もそれを念頭に規定したため、現在では条文間に整合性がなくなっているのかもしれない。
もっとも、実際には、大麻を使用した場合には大麻を所持していることが通常であるし、大麻以外の違法薬物も使用していることが多いから、あまり問題にならないのだろう。
2008年09月02日(火) |
「おバカ弁護士急増中」? |
日経(H20.9.2)社会面で、司法修習生の卒業試験で33人が不合格になったと報じていた。
不合格の割合は5%であり、以前に比べるとずいぶん多い。
これは司法試験合格者の増加による質の低下が原因と思われる。
今週の週刊朝日では、「おバカ弁護士急増中」という記事が載っていた。
情けない話である。
日経(H20.9.1)19面の「リーガル3分間ゼミ」というコラムで、外国人労働者が労災に遭った場合の賠償額について書いていた。
そこにも書いていたが、不法就労の場合は定年まで日本にいる可能性が少ないため賠償額が低くなることはある。
しかし、そのような事情がない限り、外国人という理由で賠償額が低く抑えられることはない。
随分前に、外国人が労災で片腕を落としたことがあった。
その人は不法就労ではなかったから、裁判で争えば何千万円という額になると思われたが、その外国人は1000万円以下で和解して帰国した。
その国にとってはそれでも大金だったのだろうが、後味の悪い事件となったことがあった。
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