2007年05月31日(木) |
日経株式の譲渡の有効性 |
日経(H19.5.30)社会面で、日経の株式を一株1000円で株主間で譲渡できるかという訴訟の記事が載っていた。
この訴訟の当事者は日経新聞であり、「本社見解」という日経の主張も合わせて掲載されていた。
記事によれば、日経の株式は、価格を100円に固定し、また、株主同士の直接取引を認めず、日経共栄会を通じての売買しか認めていない。
ところが、退職社員が、他の退職社員に1株1000円で譲渡したため、その有効性が争われているのである。
争点は、価格を100円に固定し、また、株主同士の直接取引を認めず、日経共栄会を通じての売買しか認めていない制度の有無及びその有効性であると思われる。
ところが、この制度について明文の規定がないようなのである。
日経は「この制度は中正公平な報道の根幹である」と主張している。
しかし、それほど重要な制度であれば、明文の規定を作っておくべきであろう。
2007年05月30日(水) |
整理屋11人が逮捕される |
日経ネットニュース(H19.5.30)で、弁護士資格がないのに多重債務者の和解交渉をしたとして、弁護士法違反の疑いで11人が逮捕されたと報じていた。
逮捕された者は「整理屋」と呼ばれている連中であり、その整理屋にかかせない存在として、名前だけ貸す「提携弁護士」がある。
この提携弁護士、従来は高齢者が多いと言われていた(この事件の提携弁護士も高齢で、すでに病死している。)が、最近は若い提携弁護士も増えていると聞く。
いずれにせよ、報道されているのは氷山の一角であり、他にも多数の整理屋と提携弁護士がいることは間違いない。(弁護士会も手をこまねいているわけではないが、提携している証拠がつかめず、苦労しているようである)。
2007年05月29日(火) |
全日空のシステム障害 |
日経(H19.5.29)11面で、27日の全日空システム障害について、原因解明には時間が必要であり、全日空としては、システムメーカーへの損害賠償請求はまだ検討していないと報じていた。
全日空の損害額は不明のようであるが、億単位の損害になることは間違いないだろう。
ただ、仮にトラブルの原因がシステムメーカーのミスであったとしても、損害額のすべてをメーカーに請求することはできないのではないだろうか。
というのは、今日ではシステムが巨大化、複雑化しているため、いったんトラブルが生じると予期できない莫大な損害が生じかねない。そのため、契約を締結する際に、損害賠償額に上限を設けていることが多いからである。
例えば、契約金額が小さいケースでは、「賠償額の上限は請負い代金と同額までとする」として、請負側の責任を非常に制限していることが多い。
全日空のケースでどのような契約になっていたのか知らないが、損害賠償額にある程度の上限を設定しているのではないだろうか。
2007年05月28日(月) |
「うっかりインサイダー取引」の続発 |
日経(H19.5.28)19面に、「うっかりインサイダー取引が続発している」という記事が載っていた。
最近、増配や子会社の解散などの重要事実を公表する前に自社株買いをしてしまうという「うっかりインサイダー取引」の記事を目にする。
その原因の一つとして、何が「重要事実」かについて、法は「上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要事実であって投資者の判断に著しい影響を及ぼすもの」という一般条項(バスケット条項)をおいているため、どのような場合にインサイダー取引に当たるのかが不明確であるということがあるようである。
しかし、裁判所はこのバスケット条項を厳格には解釈していない。
それゆえ、会社としては、「何が重要事実か」については広く解されると考えて、慎重に判断すべきであり、「うっかり」では済まないと思う。
日経(H19.5.25)社会面に、山口県光市で母子が殺害された事件で、殺人罪などに問われた元少年の差し戻し控訴審が広島高裁で開かれたという記事が載っていた。
この事件では、被害者の夫の発言がテレビで何度も放映されていたが、きわめて正論かつ論理的であり、感銘した。
とくに「弁護士は元少年の更生をはかるというが、それであればずっと少年と付き合う覚悟があるのか。」という発言にはドキッとさせられた。
2007年05月24日(木) |
淫行条例違反に問われた男性に無罪判決 |
日経でなく、朝日(H19.5.24)社会面に、17歳だった少女と性的行為をしたとして、愛知県淫行条例違反の罪に問われた男性に対し、名古屋簡裁は無罪判決を言い渡したと報じていた。
裁判所は「真摯な交際を続けており、自己の性的欲望を満たす目的だけとは言えない」と判断したとのことである。
「淫行」とは、18歳未満の青少年と性行為をするすべてではない。
青少年を自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか思われないような性行為等をいうとされている。
そして、この事件では2人はまじめな交際をしているから、「淫行」にあたらないとされたものである。
2人がまじめに交際していたのになぜ刑事事件にまでなったかというと、おそらく親が告訴したのだろう。
男性は結婚していたようであるから、「許せない」という親の気持ちは分かる。
ただ、警察はもう少し丁寧に捜査すべきではなかったかと思う。
2007年05月22日(火) |
DNA鑑定活用の場が広がる |
日経(H19.5.22)社会面に、「DNA鑑定で窃盗まで解決」という記事が載っていた。
DNA鑑定の精度が上がり、機材も充実してきたことから、殺人などの重大事件だけでなく、窃盗事件などにも活用するようになったとのことである。
このようなDNA鑑定は、刑事事件だけでなく、嫡出否認の訴えや、親子関係不存在の訴えでも活用されている。
最近相談を受けたのは、イミテーション結婚ではないかと疑われる外国人女性と日本人男性との間に生まれた子どもについてである。
日本人男性は、結婚生活の実態が無く、生まれた子どもは自分の子ではないと主張しており、そのような場合に活躍するのがDNA鑑定である。
ただ、この種の事案では、なぜか女性側はDNA鑑定を拒否することが多いようである。
2007年05月21日(月) |
裁判官出身者を活用しては |
日経(H19.5.21)17面の「人脈追跡」というコラムで、検事OBのつながりについて書いていた。
「検事、第二の人生多彩に」「在野で生かす捜査の技」という内容であったが、その記事のとおり、検事OBは横のつながりがある。
それに比して裁判官はあまり横のつながりがないようである。
そのせいか、退官後、行政や企業からお呼びがかかることも少ない。
企業はもう少し裁判官出身者を活用してもよいのではないだろうか。
2007年05月18日(金) |
会津若松の母親殺人事件で被疑者国選弁護人が接見 |
日経(H19.5.18)夕刊で、会津若松で少年が母親を殺害したとされる事件で、国選弁護人が少年に接見したと報じていた。
従来、起訴後であれば国選弁護人が選任されたが、起訴前の逮捕・勾留段階で国選の弁護人がつくことはなかった(当番弁護士制度はあったが、これは「国選」ではない)。
しかし、逮捕・勾留段階こそ弁護人の必要性が高いため、昨年から被疑者段階での国選弁護人制度が実施されている。
私も被疑者国選弁護人に登録しているが、当面は対象事件を重大事件に限っているため、被疑者国選弁護人に選任されたことはまだない。
しかし、2009年からは窃盗、傷害罪などにも拡大される予定である。
そうなると、現時点では登録している弁護士が少ないようであり、対象事件の拡大に対応できるか心配されている。
私は、弁護士は法律事務について独占に近い資格を与えられているのだから、その反面、公的な義務を負担すべきであり、多くの弁護士が国選弁護人に登録すべきであると思う。
ただ、被疑者国選弁護人の報酬は多くないため、事務所経営を考えるとなかなか大変なのも実情である。
2007年05月17日(木) |
家系図は『事実証明に関する書類』か |
日経(H19.5.17)社会面に、家系図を資格なく作った男性が、行政書士法違反で逮捕されたという記事が載っていた。
記事では「家系図は行政書士法に定められた『事実証明に関する書類』に当たり、業務として作成するのは行政書士しか認められていない」と書いていた。
しかし、家系図が『事実証明に関する書類』といえるのだろうか。
家系図によって事実を証明するという意識は一般的にはないように思うのだが。
なお、「家系図を業務として作成するのは行政書士しか認められていない」と書いていたが、これは誤りであろう。
家系図ではないが、「相続人関係図」を司法書士や弁護士が作成することはよくある。
「相続人関係図」は、相続登記や相続問題において必要不可欠であり、司法書士や弁護士の業務として当然に認められているからである。
2007年05月16日(水) |
赤ちゃんポストに3歳児が預けられる |
日経(H19.5.16)社会面で、赤ちゃんポストに3歳児が預けられた問題で、警察は預けた父親の身元の特定を進めていると報じていた。
しかし、警察が捜査するのであれば、誰も赤ちゃんポストに預けなくなるだろう。
これでは何のために赤ちゃんポストの設置を認めたのか分からない。
ただ、警察が動くこと自体、赤ちゃんポストについて社会的な認知がされていないということではないだろうか。 (結局、警察は捜査しないことにしたそうであるが)
日経(H19.5.15)1面で、国民投票法が成立したと報じていた。
その法律の要旨を読んで、非常に詳細に定めていることにびっくりした。
投票用紙の様式については、公職選挙法では総務省令などに委ねているが、国民投票法では投票用紙の記載の仕方まで定めているのである。
重要な法律なので、下位法規に委ねることをできるだけ避けたのかもしれないが、何となく違和感を覚えた。
2007年05月14日(月) |
中小企業の事業承継問題 |
日経(H19.5.14)3面広告欄に、『あなたの会社、誰に継がせますか?売りますか?』というタイトルの本の広告が載っていた。
最近、中小企業の事業承継が話題になっているようである。
これは高度成長期に創業したオーナーがそろそろ引退の時期に入ってきているからであろう。
そのため、弁護士会でも事業承継問題対策の研修会を行っているぐらいである。
事業承継としては、自分の子どもを後継者とするために、他の相続人に会社の株式が分散しないように相続対策を行う、自分の子どもを後継者とすることを諦め、M&Aを行うのどさまざまな選択肢がある。
ただ、正解があるわけではない。
仕事上、会社のオーナーと話すことは多いが、オーナーにとって事業承継の悩みは深いようである。
2007年05月11日(金) |
村上被告に懲役3年を求刑 |
日経(H19.5.11)夕刊に、証券取引法違反(インサイダー取引)の罪に問われた村上ファンド前代表の村上被告に対し、検察庁は懲役3年を求刑したと報じていた。
裁判では被告人に有利な証言もあったようであり、どのような判決になるのかは分からない。
ただ、村上被告は捜査段階で自白しており、そうなると通常は有罪である。
供述調書は、時間をかけて、理詰めで被告人を問い詰めながら作成していく。
とくに検察官が作成した調書は、裁判でどこが問題になるかを知っているから、供述内容は合理的かつ自然なものとなっている。
そうなると後にそれを覆すことは本当に難しい。
2007年05月10日(木) |
長崎市長射殺事件で公職選挙法違反でも起訴の方針 |
日経(H19.5.10)社会面に、長崎市長射殺事件で、長崎地検は、殺人罪等に加え、公職選挙法違反(選挙の自由妨害)の罪で起訴する方針を固めたと報じていた。
報道によれば、容疑者は、犯行の動機につて「思い通りにならなかった市政がまだ4年も続くことが我慢できなかった」と供述しているようである。
そうであれば伊藤前市長の当選を阻む目的で犯行に及んだといえるから、公職選挙法違反(選挙の自由妨害)で起訴することは可能なようにも思える。
ただ、伊藤前市長を殺害すると、共産党推薦の立候補者が当選する可能性があったのであり、とすると、伊藤前市長を殺害しても思い通りにならない市政が続き、目的を達することができなかったのではないか。
その意味で、伊藤前市長の当選を阻むことが犯行の動機というのはやや不合理なように思う。
検察庁が公職選挙法違反でも起訴するのは、選挙運動中の候補者が射殺されるという民主主義の根幹を揺るがす事件の重大さを明確にすべきという考えからのようである。
その考え自体は正当である。
ただ、そのために容疑者から無理な供述を引き出そうとしているのであれば、それはそれで問題ではないかと思う。
2007年05月09日(水) |
紙の手形は消えていく? |
日経(H19.5.9)5面に、来年度に手形が電子化されるという記事が載っていた。
紙の手形の流通は、金額ベースでピーク時の半分以下に減っているそうである。
法律相談などでも手形に関する相談はほとんどない。
手形法は司法試験の必須科目でもあり、それぐらい重要なものだったのであるが、紙の手形は消えていく運命にあるようである。
2007年05月08日(火) |
古紙を持ち去った事件で、東京簡裁が新たに2人に無罪判決 |
日経(H19.5.8)社会面で、古紙を持ち去った事件について、東京簡裁は新たに2人に無罪を言い渡したという記事が載っていた。
同じ事件で、別の裁判官は有罪判決を言い渡しており、判断が分かれている。
裁判は、無罪となった裁判も、有罪となった裁判も、いずれも控訴されており、控訴審での判断が注目される。
2007年05月02日(水) |
『マジックの種』は財産権か |
日経(H19.5.2)社会面に、マジシャン逮捕のニュース報道で、マジックの種明かしたことは、マジシャンが共有する『種』という財産権を侵害するものであるとして、プロマジシャンらが、日本テレビとテレビ朝日を相手取り、損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたと報じていた。
しかし、『マジックの種』が財産権という主張は無理であろう。
これに似た問題として、ゲームのルールの問題がある。
ゲームのルールというのはアイデアであるから、「著作物」とはいえず、著作権はないとされている。
この裁判では、「著作権侵害」ではなく、「財債権侵害」を主張しているのであるが、いずれにせよ、『マジックの種』もアイデアのようなものだから、そこに権利性はないだろう。
また、かりに財産権であるとしても、なぜプロマジシャンだけがその財産権を有していることになるのかという疑問がある。
もっとも、この裁判は、テレビ局等に対し「安易に種明かしをするな」という警告をすることが目的であると思われるから、その意味ではすでに目的を達しているのだろう。
日経(H19.5.1)5面広告欄に、月刊誌『ZAITEN』に「弁護士淘汰時代」という見出しの記事があった。
今年卒業の修習生のうち、数百人が就職できないと言われており、日弁連も就職斡旋に力を入れている。
しかし、修習生が就職できない状況は今後も続くだろう。
大変な時代になったものである。
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