今日の日経を題材に法律問題をコメント

2006年12月31日(日) 1月4日まで休みます

今日から、1月4日まで休みます。



2006年12月30日(土) 成人の年齢を18歳以上とする法改正を検討

 日経でなく、朝日(H18.12.30)1面トップで、法務省が、成人の年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案を検討と報じていた。


 成人を20歳としているのは、憲法ではなく民法である。

 それゆえ、法改正により、成人の年齢を18歳とすることは可能である。


 私は、18歳、19歳はすでに大人であり、選挙権を付与して大人として扱い、その代わりというわけではないが、少年法の適用は排除すべきであるという意見である。


 ただ、18歳以上に選挙権を付与することは、若年層は票の行方が読みにくいだけに、政治家は嫌がるように思う。


 また、酒やタバコは認めるのかといった問題もある。


 あれやこれや考えると、そう簡単には法改正はできないように思われる。



2006年12月29日(金) 個人情報を得る目的での窃盗

 日経(H18.12.29)社会面に、個人情報を記録した顧客管理用サーバーを盗まれたという記事が載っていた。


 これまでは、パソコンを盗んだとしても、それはパソコンを売却して利益を得る目的であった。


 しかし、この事件では室内が荒らされた形跡がなかったということであるから、個人情報を得る目的であった可能性が高い。


 情報セキュリティー対策がますます重要になってきているということか。



2006年12月28日(木) 東大教授が懲戒解雇

 日経(H18.12.28)社会面で、論文の不正で東大教授が懲戒解雇になったと報じていた。


 大学側は、「論文の捏造は確認できなかったが、信憑性や再現性が認められなかった」としている。


 しかし、懲戒解雇とは思い切った処分であり、訴訟になれば認められるかどうか分からないと思う。


 確かに、信憑性のない実験結果を論文にして発表することは、研究者としてあるまじき行為である。


 しかし、この教授は、直接は実験していないようであり、論文の署名はこの教授であっても自ら不適切な論文を書いたわけではない。


 もちろん、その場合でも指導責任は否定できないが、指導責任と懲戒解雇とのバランスが適切かどうかが問題となり、争いになる可能性はあると思う。

 
 ただ、研究者としてはあまり同情すべき余地はない。



2006年12月27日(水) 法律事務所の合併が1面の記事に

 日経(H18.12.27)夕刊1面で、中堅法律事務所の合併の記事が載っていた。


 しかし、合併しても弁護士は33人であり、この程度の合併で1面に載ることに驚いた。


 法律事務所の動向に関心がもたれているということなのだろうか。




2006年12月26日(火) 一度に4人の死刑執行

 日経ではなく、朝日(H18.12.26)で、法務省が、25日、一度に4人の死刑執行に踏み切った背景について書いていた。


 それによれば、執行されていない死刑確定囚が100人超えそうになっていた現状があったとのことである。


 死刑制度を存続させるべきか、廃止すべきかについては様々な議論がある。

 私はかつては死刑廃止論に賛成していたが、死刑制度を存続すべきとの意見が国民の80%以上という国民感情を配慮すると、いまは結論を出しかねる状態である。


 しかし、その問題とは別に、裁判所が死刑と判断した事件について、行政がその判断を無視することは許されないことではないだろうか。


 それゆえ、死刑執行はやむを得ないことであると思う。



2006年12月25日(月) 消費者契約法の改正

 日経(H18.12.25)18面に、2007年の法改正で、顧客保護が強まるという記事が載っていた。

 とくに、消費者契約法の改正では、消費者団体訴訟制度が創設され、認定を受けた消費者団体が業者に対し、事業差し止め請求ができるようになり、その与える影響は大きいと思う。


 もっとも、消費者団体が請求できるのは事業の差し止めだけであり、損害賠償請求はできない。

 そのため、被害拡大の防止には資するが、被害者の直接の救済にはあまり役に立たないという問題は残る。



2006年12月22日(金) 条例で首長の多選制限ができるか

 日経(H18.12.22)39面(首都圏版)で、横浜市長が提案していた市長の多選制限条例案に対し、市議会常任委はこれを否決したと報じていた。


 公職選挙法を改正して首長の多選を制限することについては、それが適切かどうかは別にして、憲法違反にはならないという見解が多数であると思う。


 しかし、公職選挙法が多選制限していない状況で、条例で多選制限をすることができるかは別問題である。

 法律で認めていることについて、それより下位法規である条例で制限できるのかという問題があるからである。


 これはなかなか難しい問題である。


 首長の多選を制限していない公職選挙法の趣旨、多選による弊害の具体性などの検討などが必要であり、直ちに結論を出せる問題ではない。


 ただ、地方のことは地方に任せるという理念を強調するならば、首長の多選制限を条例で定めることも許されることになるだろう。



2006年12月21日(木) また弁護士逮捕

 日経(H18.12.20)社会面に、「弁護士 5800万円横領」の記事。

 大阪弁護士会所属弁護士の逮捕は、今年4月以降、4人目とのこと。

 最近、弁護士が逮捕されることが多い気がする。



2006年12月20日(水) 死刑判決が増えているのではないか

 日経(H18.12.20)社会面で、マブチモーター社長宅の放火殺人事件で、千葉地裁が被告人に死刑判決と報じていた。


 事件の内容や前科を考えると、死刑判決はやむを得ないと思う。


 ただ、裁判所は、かつては死刑判決をできるだけ回避しようとする姿勢が伺えたが、最近は躊躇することなく死刑判決を出しているような印象を受ける。



2006年12月19日(火) カーナビの改造

 日経(H18.12.19)夕刊で、「新交通戦争 事故ゼロを目指して」という連載記事で、カーナビでTVを見ていて交通事故を起した事件について書いていた。


 記事によれば、カーナビはメーカー出荷時に走行中のテレビ視聴ができない状態にしているが、販売店が走行中も視聴可能となるように改造するケースが多いそうである。


 今後、カーナビでTVを見ていて交通事故を起した場合、販売店に対し損害賠償請求するケースが出てくるかもしれない。(とくに、任意保険で損害をカバーできないとき)



2006年12月18日(月) 自転車の事故は問題になっている

 日経(H18.12.18)13面で、自転車の歩道通行の容認について論じていた。


 自転車の歩道通行がよいかどうかは別にして、自転車事故の場合でも、事故によっては一千万円以上の損害額になることがある。


 ところが、自転車の場合、自動車と違って保険に入っていないことがほとんどのため、損害賠償を支払えないケースがあり、訴訟でも結構問題になっている。


 自転車に乗りながら、電話したり、メールを見たりしている人は気をつけたほうがよいと思う。



2006年12月15日(金) 草津「湯の花」に公取委が排除命令

 日経(H18.12.15)社会面に、草津温泉の「湯の花」が原料であるかのようにして入浴剤を販売した地元のみやげ物業者に対し、公正取引委員会は景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を出したと報じていた。


 「天然湯の花 純度100%」と表示しながら、実際は、原油から取り出した硫黄に、炭酸カルシュームを混ぜただけというのだから、ひどい。


 「優良誤認」どころか、詐欺ではないか。



2006年12月14日(木) 欠陥虚偽報告事件で、三菱自動車などに無罪言い渡す

 日経(H18.12.14)社会面トップで、欠陥虚偽報告事件で、横浜簡易裁判所は、三菱自動車と元会長らに無罪を言い渡したと報じていた。


 その結論の妥当性はさておき、地方裁判所では、このような事件は合議事件となり、裁判官3人で協議して判断することになると思う。


 ところが、簡易裁判所では裁判官1人で審理する。


 これだけ注目された事件を1人で審理し、その上、無罪判決を書くのであるから、大変な精神的負担であったと思う。



2006年12月13日(水) ウィニー開発者に有罪

 日経(H18.12.13)夕刊トップで、「ウィニー開発者に有罪」と報じていた。


 予想された判決であるが、私はこの判決は問題ではないかと思う。


 幇助というのは、犯罪の手助けをするのであるから、もともと犯罪の外延が広く、その成否はあいまいである。


 その上、この判決は、「ウィニーが著作権を侵害する状態で利用していることを認識ながら開発した」ことを極めて重視している。


 そのため、もともとあいまいな幇助犯について、主観的要素を重視することによって、さらにあいまいになってしまっている。


 これでは、どのような開発行為が違法なるにかが不明確になり、もはやフィイル交換ソフトを開発しようと思う人はいなくなってしまうのではないだろうか。


 ところで、この問題について翌日の日経(H18.12.14)社説は「ウィニーを巡っては防衛庁の機密情報が流出する事件も起きており、元助手の責任は免れないだろう」と書いていた。


 字数制限のある社説とはいえ、これはひどい。


 ウィルスを撒き散らしたのは、ウィニー開発者ではない。


 これでは、ファイル交換の仕組みそのものがいけないと言っているようなものである。



2006年12月12日(火) 住基ネットから離脱した場合に弊害はあるのだろうか

 日経(H18.12.12)社会面で、住基ネット訴訟で、名古屋高裁金沢支部が、住民側の請求を棄却したことを報じていた。


 先日の大阪高裁とは判断が分かれたわけである。


 マスコミは、この問題を、住基ネットがプライバシー侵害の恐れがあるかどうかという観点から取り上げているように思われる。


 しかし、住基ネットの問題は、プライバシー侵害の危険があると考えた住民が住基ネットから離脱する自由を認めてよいかという問題であろう。


 この点について、昨日の名古屋高裁金沢支部は、「一部住民が住基ネットから離脱することは、全住民の情報がシステム上で利用できるという住基ネットの前提が崩れ、行政による事務処理の効率性が損なわれる」と判断した。


 しかし、そうだろうか。


 離脱したいという住民がいれば、そのデータを削除すればいいだけであり、それにより「行政による事務処理の効率性が損なわれる」とは思われないのだが。



2006年12月08日(金) 支払督促によっても受信料を支払わない人には強制執行

 日経(H18.12.8)9面で、NHKの受信料不払いが8万件減少したという記事が載っていた。

 その記事の中で、NHKは、受信料不払い者に対し支払督促を申し立てており、年明けには給与差押などの強制執行を実施する予定と書いていた。


 しかし、受信料未払いは約100万件もある。


 その中で、支払督促の対象者を、異議が申し立てられて正式の裁判になっても対応できる大都市の人に絞り、しかも強制執行は差押が容易である給与所得者に限るというのでは、不公平感があることは否めない。



2006年12月07日(木) 「強制捜査」と「逮捕」の使い分け

 日経(H18.12.7)社会面で、宮崎県の談合事件で「宮崎県前知事を近く強制捜査」と報じていた。


 刑事訴訟法上、「強制捜査」とは、逮捕・勾留、捜索・差押え、検証などをいう。

 このうち、宮崎県前知事のケースでは、「強制捜査」とは「逮捕」を意味していることは明らかである。


 したがって、「宮崎県前知事を近く強制捜査」ということは、「前知事を近く逮捕」ということと同じである。


 なぜ、新聞はそのように書かないのだろうか。



2006年12月06日(水) 否認した場合には、罪は重くなる

 日経(H18.12.6)夕刊に、迷惑防止条例違反(痴漢行為)に問われた元大学教授の植草被告の公判が開かれたと報じていた。

 
 植草被告は、無罪を主張しているようである。


 ただ、報道によれば、被害者や目撃者の供述だけでなく、犯行直後に植草被告が犯行を自認した旨の供述まであるようで、有罪は間違いないであろう。


 そして、このように否認した場合の量刑は一般にはかなり重くなる。


 犯罪を否認するか、認めるかは被告人の自由であるから、否認したこと自体で、刑を重くすることはできない。


 しかし、否認ということは、「悪いことをしたのに、悪いことをしていないと言っている」ということである。

 そのような態度に対し、反省しておらず、再犯の恐れがありと評価されるのである。



2006年12月05日(火) 「サラ金・消費者金融からお金を取り返す方法」

 日経(H18.12.5)3面の広告欄に、名古屋消費者信用問題研究会の執筆による「サラ金・消費者金融からお金を取り返す方法」という書籍の広告が掲載されていた。


 これとは別に、同じ執筆者で「過払金返還請求の手引き」という本があり、これは弁護士も使っている。


 今回の本は、債務者が自分で返還請求するためのマニュアル本であり、やさしく書かれている。


 それだけに、弁護士に依頼できない方、自分で返還請求をやってみようと思っている人にはお勧めである。



2006年12月04日(月) 法律事務所の労働条件

 日経(H18.12..4)16面の「リーガル3分間ゼミ」というコラムで、「会社の定期健診 受診は個人の自由?」というタイトルで、定期健診を拒否した社員の扱いについての問題を扱っていた。


 しかし、法律事務所では、定期健診拒否という問題の前に、そもそも事務員に定期健診を受けさせていないところが多い。


 そのため、法律事務所の事務員の不満のベスト3くらいに、「定期健診を受けさせてくれない」というのが上がっているようである。


 事務所経営者の弁護士としては、経費をケチっているからのではなく、そのようなことに頭が回らないのであろうと思うが。


 定期健診については、私の事務所は受けてもらっているが、有給休暇についてはなあなあでやっているところもある。


 法律事務所も、もう少し事務員の労働条件について考える必要があると思う(自戒を込めて)。



2006年12月01日(金) 大阪高裁が「住基ネットの制度に欠陥」との判断

 日経(H18.12.1)1面で、大阪高裁が、「住基ネットは、制度に欠陥があり、離脱を認めないのは違憲であるとして、離脱を容認する判断をしたと報じていた。


 一般に、東京の裁判所は行政を容認する傾向が強いが、大阪はその逆であるといわれている。


 だからというわけではないが、大胆な判決であると思う。


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