2006年09月29日(金) |
司法修習の『落第』が過去最多 |
日経(H18.9.29)社会面に、「司法修習の落第が1493人中、107人になり、過去最多の落第である」という記事が載っていた。
落第率は実に7.2%である。
ちなみに、私の修習のときは、500人のうち2人が落第したから、落第率は0.4%である。
最高裁は、「合否の判定の基準は変更していない」とのことであるから、司法修習生のレベルが相当落ちていると考えるしかないだろう。
専門家は専門知識が要求されるのに、こんな状況でいいのだろうかと心配になる。
2006年09月28日(木) |
加害者に3億円の損害賠償を命じる |
日経(H18.9.28)社会面で、飲酒運転の事故で、千葉地裁佐倉支部が、加害者に対し3億円の損害賠償を命じたと報じていた。
この事故では、被害者に介護が必要となった事案のため高額になったようである。
通常、介護が必要となる事故に比べると、死亡事故の場合の損害賠償金はもっと低い。
その一番大きな理由は、亡くなれば生活費が不要になるので、逸失利益を計算する際に、年収から生活費分を控除するためである。(その他、介護費用などが加算されないなどの理由もある)
亡くなった方が損害賠償金が低いというのは奇異に感じるかもしれない。
2006年09月27日(水) |
奈良女児殺害事件の死刑判決に対し、弁護側が控訴 |
日経(H18.9.27)社会面で、奈良女児殺害事件の死刑判決に対し、弁護側が控訴したことを報じていたが、控訴の理由として、「裁判は事件の本質に迫り、社会に問題提起するのも使命の一つだが、判決ではこれが全く果たされていない」と説明したとのことである。
果たして、「裁判は事件の本質に迫り、社会に問題提起するのも使命の一つ」なのだろうか。
もちろん、刑事裁判は、事実を認定し量刑を定めることだけが使命ではないと思う。
被告人の更生に資するような裁判を行うという刑事政策的意義もあるだろう。
しかし、裁判では、提出された証拠だけで判断せざるを得ないから、事件の本質に迫ることには自ずと限界がある。
しかも、そのような限界があるのに、「事件の本質に迫ろう」とすると、必要以上の捜査を要求することになりかねない。
したがって、「裁判は事件の本質に迫り、社会に問題提起するのも使命」というのは過度の要求であり、少し言いすぎではないかと思う。
2006年09月26日(火) |
プロバイダーに対し発信者名の開示を命じる判決 |
日経(H18.9.26)社会面に、ファイル交換ソフトでインターネット上に曲を公開した発信者の氏名と住所の開示を求めた訴訟で、東京地裁は、プロバイダーに対し発信者名を開示することを命じたという記事が載っていた。
同様の訴訟は相次いでいるが、その原因は、プロバイダーが、裁判所の命令がないと開示に応じないことが多いことにあると報じていた。
裁判所の命令がないと開示に応じないというのでは、開示手続きを定めたプロバイダー責任法の趣旨に反すると思う。
そのような姿勢を続けていると、次第にプロバイダーに対する規制が厳しくなっていくのではないだろうかと心配する。
2006年09月25日(月) |
松本被告の弁護人に対し、裁判所が処置請求 |
日経(H18.9.25)夕刊で、控訴審の公判が開かれずに死刑が確定した元オウム真理教代表松本被告の弁護士について、東京高裁は、日本弁護士連合会に処分を求める「処置請求」をしたと報じていた。
「処置請求」の理由は、「控訴趣意書の提出期限の延期を申し出ながら、延期後もあえて提出しなかったのは、審理の迅速な進行を妨げる重大な違法行為」ということである。
私は、松本被告の弁護人の問題は、控訴趣意書を提出しなかったことにより、審理がなされないまま死刑を確定させてしまったことであると思う。
それゆえ、審理の迅速な進行を妨げたかどうかは付随的な問題である。
しかし、裁判所から「審理の迅速な進行を妨げた」と指摘されれば、それは否定できない。
そのため、日弁連は、処置(処置としては、助言又は勧告か、懲戒手続に付すことの2種類がある)せざるを得ないだろうと思う。
2006年09月22日(金) |
姉歯元建築士 保釈保証金が払えず勾留が続く |
日経ではなく、ヤフーネットニュース(H18.9.22)で、耐震強度偽装事件の元1級建築士・姉歯被告について、保釈が許可されたのに、いまだ勾留されており、理由は保釈保証金500万円が払えないためのようであると報じていた。
500万円というのは大金である。
しかし、裁判が終われば全額返還されるので、借金してでも保釈保証金をかき集める被告人は多い。
また、保釈保証金を払える見込みがまったくない場合には、そもそも保釈請求はしない。
そのため、保釈決定がなされながら、保釈金が払えず勾留が続いているのというのはめずらしい。
少なくとも、私は聞いたことがない。
2006年09月21日(木) |
弁護士に相談するのにも会社の承認が必要? |
日経(H18.9.21)社会面で、火災保険会社の行動規範に「弁護士に法律相談する場合は会社の事前承認が必要」と定めているのは、裁判を受ける権利を侵害するものであるとして、社員15人が行動規範の無効確認と慰謝料を求めて、訴訟提起したと報じていた。
確かに、個人的問題を弁護士に相談するにも会社の承認が必要というのであれば、それはひどい話である。
しかし、個人的問題を顧問弁護士に相談する場合に、会社の承認が必要というのであれば、それはやむを得ないだろう。
顧問弁護士は、会社と委任契約を締結しているからである。
記事だけでは訴えた側の真意がよく分からないが、労働問題が絡んでいるだろうか。
2006年09月20日(水) |
消費者団体訴訟制度が来年6月から施行される |
日経(H18.9.20)1面の『試される司法』という連載記事で、消費者団体訴訟制度について書いていた。
消費者団体訴訟制度とは、悪質商法に対し、被害者に代わって、政府が認定した団体が事業の差し止めを求めて提訴できる制度である。
ただし、消費者団体は、直接損害賠償請求はできない。
損害賠償請求は個々の消費者が行うしかないので、使い勝手は悪そうである。
それでも、悪質な企業にとっては脅威になると思われる。
消費者被害があっても、これまでは行政指導によってあいまいな決着が図られることも多かったように思う。
それに対し、消費者団体訴訟制度は、司法による紛争の解決を目指すものであり、『法化社会』の流れの一つといえる。
それゆえ、その制度の創設を積極的に評価したいと思う。
2006年09月19日(火) |
節税効果を謳った金融商品には注意 |
日経(H18.9.19)5面に、節税効果を謳った長期傷害保険について、国税庁が「大半を資産計上すべき」との見解を示したため、契約者に波紋を呼んでいるという記事が載っていた。
長期傷害保険は、解約した際に高水準の返戻金が出るのが特徴のようである。
そして、法人向けの傷害保険は、これまで保険料の全額を損金とすることが認められていた。
これを利用すると、企業に利益が出ているときに保険料を払って損金として処理して、利益を圧縮し、将来解約することにより高額の解約返戻金を得ることが可能となる。
ところが、国税庁は、これが利益操作につながるとして、大半を資産として計上すべきという見解を示したのである。
そのため、節税効果が期待できなくなってしまった。
契約の現場では「全額損金として算入できる」として契約を獲得していたようである。
それゆえ、今後、虚偽の説明である、あるいは税制の変更可能性について十分な説明をしなかったとして、契約者とのトラブルも予想される。
ただ、販売資料には、「税務の取り扱いは将来変更の可能性がある」と小さく書かれており、しかも、契約者が法人であることから、保険会社と争うのはなかなか難しいように思われる。
金融商品は、それ自体の運用益では他の金融商品と大きな差を出すのは難しい。
そこで、節税効果と組み合わせ、それをうたい文句とする商品が比較的多い。
しかし、国税庁は金融商品には目を光らせており、税制はすぐ変わってしまう。
節税効果を謳った金融商品には十分注意し、あまり新しいものには飛びつかない方がよいように思う。
2006年09月15日(金) |
少年犯罪の実名報道について |
日経(H18.9.15)社会面で、山口の高専生殺害事件において、一部報道機関が、殺人容疑で指名手配された男子学生の実名と顔写真を報道したことについて、日本弁護士会会長が、実名報道を批判する談話を発表したと報じていた。
批判の理由は、「少年法の精神は尊重されるべき。」「例外的に実名報道しなければならない社会的利益はない」というものである。
確かに、「実名報道しなければならない社会的利益はない」と思う。
しかし、実名報道の社会的動機は、「こんな凶悪な犯罪を起したやつが、匿名でいるのは許せない」という応報感情ではないだろうか。
そうであれば、「実名報道による社会的利益」の有無を考えるだけでは、解決できない問題があるように思われる。
根本的には、法律を改正して、少年法の適用範囲を18歳未満に下げ、かつ、少年の氏名や写真の掲載を禁じた少年法61条に、例外的に実名報道を認める規定を設けるべきではないかと思う。
2006年09月14日(木) |
情報流出事件に著作権法を適用 |
日経(H18.9.14)社会面で、KDDIの顧客情報の流出事件において、顧客情報が入ったデータベースを無断で複製し、他人に渡した行為について、警視庁は、著作権法違反で書類送検したと報じていた。
この事件のケースは、顧客情報データベースを「著作物」とみることができたようであるが、すべての情報流出事件で、情報が「著作物」といえるとは限らないであろう。
ただ、情報を盗む犯罪に対する一つの捜査のあり方であり、今後は、著作権法違反による摘発が増えるのではないだろうか。
2006年09月13日(水) |
反対尋問はなかなか成功しない |
日経(H18.9.13)社会面に、ライブドア事件の公判で、「検察側証人の証言に対し、弁護側が激しく反発し、証言の真偽を厳しくただす場面もあった」と報じていた。
しかし、「激しく反発し、証言の真偽を厳しくただす」だけでは、証言は崩せない。
その証言と相反する客観的証拠を提出したり、その証言の矛盾を突き、証言の信用性を低めたりしないと意味はない。
しかし、弁護側は、捜査機関ではないから、弁護側に有利な証拠の収集というのは難しい。
そのため、検察側証人に対する反対尋問はなかなか効果をあげることができないのが実状である。
2006年09月12日(火) |
最高裁は凍結精子訴訟で認知を認めず |
日経(H18.9.12)社会面に、凍結精子訴訟すべて終結という記事が載っていた。
凍結精子訴訟とは、夫の死後、凍結していた精子で体外受精し、出産した子供について、夫の子と認知するよう求めた訴訟である。
その種の訴訟が最高裁に三件係属していたが、最高裁はいずれも認知を認めなかった。
最高裁が請求を認めなかった理由は、夫の死後、凍結精子で出産する事態を法律は予想していないというもののようである。
しかし、法律が予定していない事態が生じた場合、裁判所が、解釈でそれを補うことはしばしばあるから、「法律が予定していない」というだけでは理由として不十分である(最高裁も、それだけを理由にしてはいない)。
今回のケースで父子関係を認めるべきかどうかは、結局は、生命倫理、社会科学、社会通念など様々な見地から検討を加え、広く議論して結論を出すべき問題であろう。
いいかえれば、少数の裁判官が法律に基づいて判断することには馴染まないといえる。
その意味で、最高裁が判断を自制して、結論として認知を認めなかったことは適切であったと思う。
2006年09月08日(金) |
大規模の経費共同型の法律事務所 |
日経(H18.9.8)社会面に、弁護士事務所がパートナーを募集する広告が掲載されていた。
この法律事務所は、ビルのワンフロアーを借りて、各自が独立して業務を行い、経費だけを共同で負担するという、いわゆる経費共同型事務所のようである。
ただ、弁護士が9名、その他税理士・司法書士等が9名もいるから、経費共同型法律事務所の中では規模が大きい。
従来から、知り合いの弁護士が経費だけ共同して事務所を作るということはあった。
いきなり一人で独立することは大変であるが、コピー機の事務用品や事務員などを共同で利用できれば、経費の負担は少なくなるからである。
もっとも、従来は弁護士は数人の程度のことが多かった(私も、以前は友人3人でつくった経費共同型の事務所に所属していた)。
ところが、規模を大きくすると経費共同のメリットが大きくなるからか、最近は、大規模の経費共同型事務所も増えているようである。
弁護士が増えてくると、今後もこのような大規模の経費共同型法律事務所は増えていくものと思われる。
日経(H18.9.7)1面、社会面に、秋篠宮ご夫婦に、41年ぶりの男性皇族となる男の子が生まれたことの続報が掲載されていた。
このような慶事があると、刑事被告人から「恩赦はあるのでしょうか」と必ず聞かれる。
恩赦というのは、司法が下した判断を他の機関(通常は行政機関)が覆す制度であるから、あまり望ましい制度とは思われない。
かつて、尊属殺人罪で受刑していた人に対し、最高裁が尊属殺人罪の規定を違憲と判断したことを受けて、恩赦によって減刑したことがあるようである。
そのような特段の事由がない限り、恩赦は控えめな運用が望ましいと思う。
ちなみに、今回恩赦があるかどうかについて、法務省は「恩赦を見越して犯罪に走る者がいるため、事前には公表しない」とのことである。
2006年09月06日(水) |
やはり外圧には弱いのか |
日経(H18.9.6)4面に、貸金業規制法の改正作業で、金融庁は、金利について5年間は28%の特例を認める方向で調整していると報じていた。
何だかこれまでの議論をすっ飛ばした印象であり、後藤田金融担当政務官がこれに抗議して辞意を表明したそうである。
金利の引き下げについて、アメリカは反対しているようであり(在日米国商工会議所意見書はかなり具体的に意見を述べている)、これが大きな影響を及ぼしているように思われる。
2006年09月05日(火) |
堀江被告の外堀は埋められている |
日経(H18.9.5)3面で、ライブドアの堀江被告の初公判について報じていた。
争点は、「投資組合の実体の有無」「架空売上げを堀江被告が認識していたか」「経営の主導権が堀江被告にあったか」ということのようである。
このうち、「架空売上げの認識」と「経営の主導権」については、側近であった宮内被告が、堀江被告に不利な供述をしている。
したがって、真の争点は「投資組合の実体の有無」であると思っていた。
ところが、昨日、早くも証人尋問が行われたようであり、その中で、投資組合の幹部が、「投資判断はライブドアの指示であった」と、投資組合の実体はなかったことを認める証言をしている。
そうすると、堀江被告の外堀は完全の埋められているようである。
マスコミの論調は、検察と堀江被告はがっぷり四つというものが多いが、そうではないと思う。
2006年09月01日(金) |
旧拓殖銀行の不正融資事件で、札幌高裁は元頭取らに実刑判決 |
日経(H18.9.1)社会面で、旧拓殖銀行の不正融資事件で、札幌高裁が元頭取らに実刑判決を言い渡したことに対し、被告人らは上告する方針であると報じていた。
この事件では、一審は無罪であったが、高裁で逆転有罪となり、しかも実刑判決ということであるから、被告人にとっては厳しい。
元頭取はすでに79歳のようである。
この歳で、有罪の実刑判決というのはつらいと思う。
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