今日の日経を題材に法律問題をコメント

2005年04月28日(木) 犬の鳴き声で、犬の飼育を禁じる判決

 日経(H17.4.28)社会面に、マンションの住民が、犬の鳴き声で不眠になったと訴えた事件で、名古屋高裁が、犬の飼育を禁じる判決を下したと報じていた。


 犬の鳴き声はかなり大きく、トラブルになることは多い。

 環境省の調査では、ラブラドルレトリバーやアメリカンコッカースパニエルが吠えた時の鳴き声は、工場で使われる金属プレス機の音90デシベルを超えていたそうである。


 ただ、犬の鳴き声が受忍限度を超えていたとしても、通常は損害賠償請求が認められるだけに止まり、飼育の禁止まで認められることは少ない。

 報道された判決のケースでは、マンションという集合住宅の特殊性が配慮されたのだろう。


 ただ、愛犬家からすれば、許せない判決かもしれない。



2005年04月27日(水) 商標侵害の判断は微妙なことが多い

 日経(H17.4.27)社会面に、マルマンが、登録商標と類似した名称のゴルフクラブを販売したとして、ヨネックスに対し製造・販売差し止めの仮処分を申し立てたと報じていた。

 マルマンの主張は、ヨネックスが発売した「CYBERSTER NANOV」という商品は、マルマンが商標登録した「NANO」と類似しているというものである。


 「NANOV」という部分だけ取り上げれば「NANO」と似ている。

 しかし、「CYBERSTER NANOV」という全体を比較すると、「NANO」と似ているとはいえないようにも思う。

 
 裁判官も、同僚裁判官に、「似ているかなあ」なんて聞いているのではないかと思う。


 それぐらい商標侵害の判断は微妙なことが多い。



2005年04月26日(火) JR福知山線の列車脱線事故

 日経(H17.4.26)1面トップで、JR福知山線の列車脱線事故について報じていた。

 このような列車事故や航空機事故では、日本では、刑事責任などの責任の追及が重視される傾向があるように思われる。

 そのため、事故現場でも、事故調査委員会の調査よりも、警察の捜査が優先されるようである。

 
 しかし、いくら刑事責任を追及しても亡くなった人たちは帰ってこない。


 むしろ、2度と同様な事故を起さないことこそが重要であって、そのためには事故原因の解明が重視されるべきではないかと思う。



2005年04月25日(月) 「ウィルスバイター」の更新ファイルに不具合

 日経(H17.4.25)社会面トッブで、トレンドマイクロ社の「ウィルスバイター」の更新ファイルに不具合がありパソコンが使えなくなった事件について報じていた。

 ちなみに、朝日新聞は実際に被害を受けたせいか、怒りは大きく、1面トップで報じていた。


 これで「ウィルスバスター」の信用は失墜したことは間違いない。

 ソフトのバグ一つで会社が傾くかもしれないのだから、怖いと言うしかない。


 トレンドマイクロ社は、顧客に賠償を検討しているそうであるが(ただし、その後の否定している)、企業のパソコンが使えなくなっているから、賠償金は相当な金額になるのではないだろうか。



2005年04月22日(金) アメリカと日本との裁判官の気質の違い

 日経(H17.4.22)文化面の「私の履歴書」で、ヨネックス創業者が次ののようなエピソードを書いていた。

 テニスラケットメーカーのウィルソンが、商標権侵害を理由に、アメリカでヨネックスを訴えたのであるが、判事がウィルソン側に「品質でも物まねがあるか」と聞いた。

 それに対し、ウィルソン側は「物まねはないが、製品はウィルソンの方が比べものにならないぐらいいい」と答えた。

 すると、判事は「私もテニスをする。ウィルソンを愛用していたが、最近はヨネックスを使い始め、調子がいい。ウィルソンより劣っているとは思わない。」と答えたそうである。

 この判事の言葉にウィルソンは動揺し、和解の道を探ることになったというのである。


 日本では、最近は裁判官も心証を明らかにするようになったとはいえ、自分の個人的経験を元にした心証を開示することはない。

 アメリカと日本との裁判官の気質の違いを見た思いである。



2005年04月21日(木) プールの排水口のふたについて

 日経(H17.4.21)社会面に、プールの排水口のふたについて、小中高校のうち589校がふたをしていないと報じていた。

 生徒が排水口に吸い込まれて動けなくなり、死亡する事故は毎年1人ぐらいの割合で発生している。

 そのため、管理責任を問う訴訟が何度も起されている。

 管理者は排水口の危険性を十分認識すべきである。



2005年04月20日(水) 企業防衛に奇策はなし

 日経(H17.4.20)15面の「企業防衛 私の視点」というコラムで、弁護士が、上場企業が取りうる企業防衛の対策を書いていた。


 それによると、「授権資本に余裕を持たして、緊急に増資できる枠を確保しておくこと」「取締役の定員枠に空きを作っておかないこと」だそうである。

 なんだと思うような平凡な対策であるが、企業防衛に奇策はないということだろう。



2005年04月19日(火) フジテレビとライブドアが和解

 日経(H17.4.19)1面に、フジテレビとライブドアが和解したという記事が載っていた。


 結局、ライブドアのいう「インターネットとメディアの融合」というのはお題目に過ぎなかった。

 「インターネットとメディアの融合」というのであれば、もう少し具体的なアイデアを出して欲しかった。


 他方、フジテレビも、自己の基本戦略を明確に示し、それを株主に問う形で対抗すべきではなかったかと思う。

 ところが、フジテレビも、ライブドアに恐れおののき、自己の保身に走っただけであった。


 いずれも自分のことしか考えずに和解したわけであり、株主の利益は完全に無視されていたといえるのではないだろうか。



2005年04月18日(月) 情報を持つことのリスク

 日経(H17.4.18)13面に、住友商事が、携帯電話に電話帳などの個人情報を残さず、サーバーで一括管理するサービスを始めたという記事が載っていた。

 携帯電話の紛失・盗難による個人情報の漏洩対策とのことである。


 個人情報保護法が施行されてから、情報管理に企業は神経質になっている。
 
 弁護士会でも、国選弁護した場合、弁護した事件の結果報告書を出すことになっているのだが、その報告書の保管期間を6か月にとどめることになった。


 情報を持つことはかえってリスクを抱え込むということについて、みんな意識するようになってきたようである。



2005年04月15日(金) 年金担保の違法業者を逮捕

 日経(H17.4.15)社会面に、年金を担保に高齢者に違法な金利で融資をしていた業者を逮捕したと報じていた。

 
 年金担保の融資では、業者は年金が振り込まれる通帳を取り上げて、そこから高利の金利を取る。

 通帳を預かっていれば、必ずそこに年金が振り込まれるのだから、回収は確実である。

 そのため、多くの違法業者が存在しており、業者は、年金受給者リストを元にさかんに勧誘をはかっている。


 高齢者の被害も後を絶たないため、昨年12月に法律が改正され、通帳等を預かることを禁じる罰則規定を盛り込んだ。

 その効果があって、私が扱った事案でも、受任通知を出して「通帳を返せ」と言ったところ、年金担保業者はすぐに通帳を返してきた。

 法改正の効果が現れたといえるが、もっと早く法律を改正すべきであったと思う。



2005年04月14日(木) 東京地裁が国籍法の規定は違憲と判断

 日経(H17.4.14)1面に、東京地裁が、母が外国人である非嫡出子について、国籍法の規定は違憲であるとして、日本国籍を認める判断をしたという記事が載っていた。


 結婚していない外国人女性と、日本人男性の間に生まれた場合、生後、父親から認知を受けたとしても、現行の国籍法では、その子どもは日本国籍を取得できない。

 東京地裁は、それは法律上の夫婦の子どもと比べて不合理な差別であり、法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると判断したものである。


 ただ、この判決は、当該夫婦が実質的には婚姻関係にあるという実態に踏み込んで判断しており、夫婦が共同生活を営んでいない場合は、日本国籍を認めなくても違憲ではないとしている。


 考え方としては理解できる。

 しかし、東京地裁の考え方によれば、行政は、国籍を認めるにあたり、夫婦に結婚の実態があるかどうかを含めて判断しなければならなくなる。


 国籍取得については行政の判断が介入する余地がなく、一律に定めることが望ましいと思われるから、この点からすると、東京地裁の判決は議論の余地があると思う。




2005年04月13日(水) 知的財産高裁が発足

 日経(H17.4.13)社会面に、4月から発足した知的財産高裁で、6件の判決が言い渡され、「審理迅速化へ一歩」と報じていた。

 もっとも、今回の判決はすでに従来の東京高裁で審理していたものであり、知的財産高裁で審理したものではない。

 したがって、知的財産高裁が発足したために審理が迅速化したわけではない。


 日経新聞の知的財産高裁に対する期待は分かるが、少し強引すぎる記事ではないか。



2005年04月12日(火) 一院制にすべきだという意見が26%

 日経(H17.4.12)2面で、憲法改正の世論調査の結果を報じていた。

 それによると、二院制に関して、一院制にすべきだという意見が26%もあったようだ。


 私が中学のころは、二院制というのは素晴らしい制度であり、一院制を採用するのは独裁政治であるかのように教えられたように思う。

 それからすると、随分人々の考え方も変わってきたようである。。


 そもそも、現在の憲法が採用している制度は歴史的所産に過ぎず、それが唯一正しい制度ではない。

 学校教育でも、現憲法の素晴らしさを教えることも重要であるが、制度というのは歴史的所産に過ぎないものであり、それが唯一絶対のものではないということも教えるべきではないかだろうか。



2005年04月11日(月) 平成元年版の六法を使っている弁護士はいない

 日経(H17.4.11)32面のドコモのFOMAテレビ電話の全面広告が載っており、法律事務所らしき室内でテレビ電話している様子の写真であった。


 その写真をよく見ると、本棚に並んでいる六法が平成元年版であった。

 よくそんな古い六法を見付けてきたなあと思う。


 最近は重要な法律の改正が相次いでおり、ほとんどの弁護士は毎年六法を買い換えている。

 それゆえ、あまり古い六法を使っている弁護士に依頼するのは止めたほうがいいと思う。


 高い広告費を取っているのだろうから、制作会社はもう少しディティールにこだわった方がよいのではないか。



2005年04月06日(水) 自首しても、刑の減軽を認めない場合もある

 日経(H17.4.6)社会面に、オウム元幹部の岡崎被告の上告審判決が明日言い渡されると報じていた。


 争点は自首による刑の減軽が認められるかどうかということである。


 自首した場合、必ず刑が軽くなるわけではない。

「減軽することができる」と書いているため、軽くしなくてもいいからである。


 この事件では、岡崎被告らは、何の罪もない坂本弁護士一家と、元信者1人を殺害している。

 それゆえ、いかに自首したとはいえ、死刑はやむを得ないと思う。


 なお、犯行者の名前は警察に分かっており、所在だけが分かっていないときに、逃げられないと思って警察に出頭するのは「自首」ではない。

 自首は「捜査機関に発覚する前に」申告しなければならないからである。


追記
 7日の報道で、最高裁は、岡崎被告の上告を棄却し、死刑判決を維持したと報じていた。



2005年04月05日(火) 支払うと、余計請求される

 日経(H17.4.5)社会面に、「会員権トラブルにご用心」という見出しの記事が載っていた。


 会員になると旅行やブランド品の買い物が割引になるといううたい文句で契約をさせるが、会員費用が高額で割に合わないというものであり、トラブルは以前から多かった。

 記事では、会員になった名簿が出回り、数年経っているのに、突然、「契約は継続しているので延滞料を払え」とか、「退会手続き費用を払え」と請求するケースが増えていると書いていた。


 実際、私もときどき相談を受ける。

 代理人として、弁護士名義で「支払わない」と言うと請求は止まる。

 しかし、しばらくして別の業者からまた同じような請求を受けることもある。

 名簿が出回っているためである。


 そのたびに弁護士名で「支払わない」と通知すると、名簿から抹消されるのか、そのうち請求が来なくなる。


 逆に一度でも支払うと、その業者からさらに請求されることもあるし、それ以上請求されないとしても、別の業者から請求が来る。

 支払った実績のついた名簿が出回るのであろう。


 したがって、支払うことは逆効果なのである。



2005年04月04日(月) 技術に頼った対策は問題

 日経(H17.4.4)1面に、手のひらの静脈の形の違いを識別するATMの低価格化に成功したという記事が載っていた。


 しかし、以前にも書いたが、このようなセキュリティー技術に頼った対策は問題である。


 手のひらなどの生体のデータも、デジタルデータに変換される。

 そのため、一旦そのデジタル化されたデータが盗まれたら、それ以降使えなくなってしまう。

 生体データは、暗証番号のように変更することができないからである。


 ATMでは「指紋」か「手のひら」かという争いがあるようであるが、そのようなばかな競争は止めて、例えば引出額の上限を引き下げるといったシンプルな対策と、犯罪に対する重罰化によって対応を図るしかないのではないかと思う。



2005年04月01日(金) ネット競売の詐欺被害者が、ヤフーに集団で提訴

 日経(H17.4.1)社会面に、ネット競売詐欺にあった被害者が、ヤフーに対し、集団で損害賠償請求の提訴をしたと報じていた。


 記事によれば、ネットオーションで運営会社を訴えたのは始めてとのことである。


 ネットオークションには多くの参加者があり、それは社会的に有用だからであろう。

 それゆえ、ネットオークションの仕組み自体が問題であるとはいえないだろう。


 ただ、ヤフーは、オークションの参加料や、売買手数料を徴収しているのであるから、場所を提供しているだけであり、何の義務も負わないということはできない。


 すなわち、ネットオークションでは、詐欺の舞台として利用されることは容易に想像できるのであるから、運営会社としては、詐欺に対する十分な対策を取る必要があるといえよう。

 したがって、運営会社として取り得る対策をとっていたかどうかが問題になるだろう。


 そうはいっても、運営会社が取り得る対策には限界がある。

 しかも、インターネットでは自己責任ということが強調されがちである。


 そうすると、詐欺に遭った被害者の運営会社に対する請求はなかなか認められないのではないだろうか。


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