今日の日経を題材に法律問題をコメント

2004年03月31日(水) 不法残留イラン人一家の強制退去処分を東京高裁は認める

 日経(H16.3.31付)社会面で、不法残留イラン人一家が、強制退去処分の取り消しを求めた訴訟で、取り消しを認めた地裁判決を東京高裁は破棄し、強制退去を認めたと報じていた。


 強制退去取り消しを認めた東京地裁の判決が、これまでの裁判所の考えの流れからして異端であったから、予想通りの判決といえる。


 確かに、強制退去処分とした処分が裁量権の乱用とまではいえないと思う。

 その意味では、高裁の判断はやむを得ない。


 しかし、不良外国人による重大犯罪が多発している中で、そのような連中とは異なり、日本でまじめに10年間も働いてきたのである。

 犯罪目的で来日する外国人には来て欲しくないが、このような人たちはこれからの日本には必要ではないのだろうか。


 入国管理局(法務大臣)は、イラン人一家に在留の特別許可を与えて、日本での生活を認めてもいいではないかと思う。



2004年03月30日(火) 遺伝子スパイ事件 高裁の判断は妥当か?

 日経(H16.3.30付)社会面で、遺伝子スパイ事件で、東京高裁が、岡本元研究員のアメリカへの引渡しを認めなかったと報じていた。

 アメリカ側は経済スパイ罪容疑で引渡しを求めていたのに、日本の法律には経済スパイ罪はない。
 そこで、窃盗罪を理由に引渡しに応じることができるかということが問題になっていた。

 ところが、東京高裁は、「そもそも経済スパイ罪に該当しない」という理由で引渡しに応じなかった。


 これには、「えっ!」という感じであった。


 日経の社説は、東京高裁の判断は妥当と評価していたが、果たしてそうだろか。


 そもそも、アメリカで起訴しているのだから、経済スパイ罪に該当するかどうかの証拠を日本の検察官が持っているとは思われない。

 それなのに、「経済スパイ罪が成立しない」というのは、検察官に酷というものではないだろうか。


 裁判所は、アメリカ側が起訴した以上、その判断を一応尊重したうえで、当該行為が日本で犯罪となるかについて、慎重に判断するのが穏当ではなかったかと思う。



2004年03月29日(月) 六本木ヒルズの回転ドア事故について

 日経(H16.3.29付)社会面に、六本木ヒルズの回転ドア事件の続報が報じられていた。


 森ビルと三和シャッターとで言い分が食い違っているようであるが、いずれにせよ両社に責任があることは明らかである。


 それにしても、なぜこんな何人も入れる大型の回転ドアを付けたのだろうかと思う。

 通常の自動ドアでは外気が入りやすく、また、ビル風が吹き込みやいということのようであるが、子供が回転ドアで遊具と勘違いして遊ぶことはよくあることである。

 それなのに、十分な安全対策を施していたとは思えない。


 最近、森ビルのように実用性を重視したり、デザインを重視するあまり、安全性を軽視していると思われるビルが多い。


 例えば、デザインを重視して、ガラスがあることを視認させるためのステッカーが小さいところが多く、衝突事故の原因となりかねない。


 設計者や設置者は、過去の裁判例をよく調べたほうがいい。

 そうすると、意外なほど裁判が起こされていることが分かるであろう。



2004年03月26日(金) 個人情報の流出は今後もあり得る

 日経(H16.3.26付)11面に、アッカの個人情報流出問題について報じていた。

 記事では、扱う情報量の増加に企業の体制が追いつかないことを挙げていた。


 しかし、どのような管理体制を作っても、個人情報の流出はあり得ると思う。

 デジタル化社会になって、膨大な情報でも簡単にコピーでき、持ち出しも容易になったからである。


 こうなれば、一層のこと情報を持たないという発想も必要かも知れない。



2004年03月25日(木) 魚釣島に不法入国して逮捕。帰国費用は誰が負担する?

 日経(H16.3.25付)1面に、魚釣島に中国人7人が不法入国したとして、この7人を逮捕したと報じていた。


 魚釣島(尖閣諸島)は領土問題があるが、日本の領土であるとしている以上、日本としては、法に則って処理することは間違っていないと思う。


 もっとも、逮捕はしても起訴はせず、すぐに強制退去すると思われるのであるが、そのとき、帰国費用はどうするのか気にかかる。


 通常は、強制退去といっても、自費での帰国である。

 帰国費用がない場合は、何か月も入管に収容されたままである。


 今回のケースで逮捕された7人に帰国費用がなかった場合どうなるのだろう。

 この場合だけ、国の費用で早期に強制退去させることは、他のケースに比較して不平等ではないかと思う。


 そういえば、数年前に金正日総書記の息子が日本に不法入国して強制退去となったことがあるが、その帰国費用は誰が負担したのだろうか。



2004年03月24日(水) 精神的損害が5000円?

 日経(H16.3.24付)社会面に、早稲田大学が無断で講演参加者名簿を警視庁に提出したのはプライバシー侵害にあたるとして、裁判所は1人5000円の損害賠償を認めたという記事が載っていた。


 この裁判は1審、2審では請求を認めなかったのであるが、最高裁がこれを覆してプライバシーの侵害にあたるとし、それを受けての判断である。


 それにしても、精神的損害が1人5000円という根拠は何だろう。


 請求する側はプライバシー侵害が認められればいいのであって、金額の問題ではないのだろうし、精神的損害の算定基準というのは特にないのだが、それにしても、精神的損害が5000円というのは、金額としてあまりに少なく、不思議な気がする。



2004年03月23日(火) 江角マキコが国民年金を支払ってなかった

 日経(H16.3.23付)社会面で、国民年金の広告に起用されている江角マキコが国民年金を支払ってなかったと報じていた。


 江角マキコが「将来泣いてもいいわけ?」なんて言っていCMを見たとき、「そういうお前は国民年金を払っているのか?」と突っ込みたくなった。

 CMの狙いもそこにあったのだろう。


 そのCMの狙いは江角マキコ側でも十分分かっていたはずであり、それだけに国民年金を支払っているかどうかはきちんと調べたはずである。

 それゆえ、「支払っているつもりだった」という事務所側の説明は到底信用できない。


 社会保険庁は、契約を解除すると言っているが、CM制作は終わっているだろうから、解除してもどうなるものでもないと思うのだが・・。


続報(H16.3.29)

 その後の報道によると、確定申告書に国民年金を支払っている記載があったので、年金を支払っていたと思っていたとのことである。

したがって、支払っていないことを知りながら、CM契約をしたというわけではなさそうである。


 なお、CM契約では、国民年金を支払っていることが条件になっていたようであるから、社会保険庁は、契約の解除だけでなく、損害賠償請求もできる。

 もっとも、江角マキコは撮影などの契約は履行しているから、損害賠償請求できる額は知れている。

 広告を差し替えたために要した費用などが主なものになるだろうが、多額な金額にはならないだろう。



2004年03月22日(月) 便利になることも善し悪しである。

 日経(H16.3.22付)広告欄に「官報」の広告が載っていた。


 官報とは、国が発行する新聞であり、新しい法律などが掲載されているほか、破産者の名前も公告されている。


 そのため、官報を元に、破産者の名簿を作ることができる。

 ヤミ金は、この破産者の名簿を買ってダイレクトメールを送っている。

 破産者は当面は破産できないから、安心して貸せるからである。


 それで、先の広告に戻るが、広告の中で、官報に検索機能サービスがあると書いていた。

 とすると、検索サービスを利用してあっという間に破産者の名簿を作ることができるわけである。


 便利になるというのも困ったことである。



2004年03月19日(金) 週刊文春の問題で、新聞社は立場を明確にすべきである

 日経(H16.3.19付)社会面で、引き続き週刊文春の出版禁止命令の続報が載っていたが、だんだん扱いが小さくなっていく感じである。


 その中で思うのは、新聞各社が自分たちの問題として捉えず、人ごとのように報じている印象を受けることである。

 そこには、裁判所が判断したことは受け入れざるを得ないという前提があるように感じられる。


 しかし、裁判所の判断が絶対的であるはずがなく、高裁、最高裁で判断が変わることは珍しくない。


 新聞社にとっても自分たちの問題なのだから、少なくとも自分たちの考え方を明確にすべきであると思う。

 この点、読売新聞は裁判所の判断を支持して、立場を明確にしていたが、日経の社説は何が言いたいのかさっぱり分からなかった。


 ちなみに、私は、差止請求を認めた裁判所の判断は表現の自由に対する萎縮効果が大きすぎ、問題であると思っている。



2004年03月18日(木) 週刊文春の出版禁止命令の続報

 日経(H16.3.18付)社会面に、週刊文春の出版禁止命令の続報が載っていた。

 書店などの一部では販売を自粛しているが、対応は別れており、混乱が続いているという記事であった。


 出版禁止命令が出たが、販売禁止まで命じていないので、販売することは可能である。

 ただ、出版禁止命令が出るぐらいだから、週刊文春の記事がプライバシーの侵害している可能性は高い。

 それにもかかわらず、あえて雑誌を販売することは、販売行為自体がプライバシーの侵害であるとされる余地がある。

 このような考えから販売を自粛しているものと思われる。


 しかし、私は、雑誌を販売しても、書店が損害賠償義務を負うことはないと思う。


 たとえ今回のように、新聞報道されて、たまたま記事がプライバシー侵害となる可能性があると知っていたとても、書店にプライバシー侵害に当たるかどうかを判断させることは無理である。


 また、そのような判断を書店に強いることは、販売に萎縮効果をもたらすことになり、情報の自由な流通の確保という意味から望ましいことではない。


 以前、共同通信の配信をそのまま記事にした地方紙に対し、その記事がプライバシー侵害に当たるとして損害賠償義務が課されるという裁判があった。

 しかし、情報を自ら発信することを業務とする新聞社と、情報を流通させることを業務とする書店とは役割が違うのであり、同視することはできない。


 このような理由から、販売を自粛することは自由であるが、私は、販売したとしても損害賠償義務は負うことはないと思う。



2004年03月17日(水) 週刊文春に出版禁止の仮処分

 日経(H16.3.17付)社会面で、東京地裁が、週刊文春に対し出版禁止の仮処分を命令したと報じていた。

 日経新聞での扱いは小さいが、これは大事件である(夕刊では一般紙は一面トップで報じていた)。


 表現の自由は、憲法が保障する極めて重要な権利である。

 もちろん、ときには勇み足的な言論活動もある。

 しかし、それは自由な言論の市場に出され、そこで批判されることによって淘汰されるべきものである。

 それゆえ、国家機関である裁判所が、言論が自由な市場に出される前に差し止めることには慎重でなければならない。

 
 記事の内容は田中真紀子議員の長女の離婚問題のようである。

 そんなことを記事にしてどうするのかと思う。


 ただ、出版禁止まで認める必要があったのだろうか。事後的な損害賠償請求や謝罪記事を命じることで足りたのではないのか。


 記事の中身が分からないから即断できないが、それこそ裁判所の勇み足でなかったのかという疑問がある。



2004年03月16日(火) 弁護士に頼んだ方が結局は安い

 日経(H16.3.16付)社会面で、弁護士資格がないのに破産手続きを代行して報酬を得たとして、逮捕されたという記事が載っていた。


 記事では3人の依頼者から報酬を得たと書いていたが、その程度では通常は逮捕されない。実際はかなりの件数になるのだろう。


 無資格者に破産手続きを依頼することの問題は、第一に費用が高いことである。

 「弁護士に頼めばいくらかかるか分からないぞ。」「安くしておくから。」なんて言いながら、報酬名目だけでなく、実費名目などでも請求し、総額では相当高額になってしまうことが多い。


 しかも、そのような連中は、「指導」と称して、書類作成さえもろくにしないから、実質的な費用としても高いことになる。


 さらに問題なのは、少しでも面倒な法律問題が生じると、放り出して最後まで責任を持たないことである。


 したがって、目先の金額にごまかされず、最初から弁護士に頼んだほうが結局は安くつくことになる。



2004年03月12日(金) ヤミ金で借りていた人はどこに行ったのだろうか

 日経(H16.3.11付)社会面で、不正に口座をつくり転売していた事件で、そのグループが詐取した口座は2000口座にもなると報じていた。


 不正口座は、ヤミ金を始めとして、犯罪の温床となる。


 少し前は、ヤミ金業者と交渉していて、私が「口座番号から住所・氏名が分かるから、告訴する。」と言っても、相手は、「口座は買ったものだから足はつかない。弁護士も警察も関係ない。好きなようにやってやる。」なんて言っていた。

 ところが、最近は口座の摘発が効いたのか、ヤミ金業者自体が減っているようで、ヤミ金がらみの相談が少なくなってきている。


 よいことだと思うが、ヤミ金で借りていた人がどこにいったのかは気にかかる。



2004年03月11日(木) 仮退院を公表したことは、やむを得ない措置と思う

 日経(H16.3.11付)社会面で、神戸の連続児童殺傷事件の加害者の少年(すでに21歳であり、新聞では「男性」になっていたが)が仮退院し、法務省は、少年が仮退院したことを公表したと報じていた。


 少年事件で、仮退院したことを公表することは極めて異例である。

 公表したことで、マスコミは大騒ぎしている。


 少年の更生だけ考えれば、ひっそりと仮退院させることが望ましいだろう。

 仮退院を公表することによるメリットは少年にはない。


 しかし、被害者の遺族の立場としては、被害者側の気持ちを置き去りにして、少年の更生だけを考えて処遇することは堪らないことだと思う。


 もっとも、そうであれば、被害者側にだけ仮退院を通知すればよかったかもという意見もあり得る。

 しかし、被害者だけに知らせるということは事実上不可能である。


 そうであれば、密室でこそこそやっているという印象を与えるよりも、公表して、なぜ仮退院を認めたかを世間にきちんと説明したほうがいい。


 その意味で、少年の更生のうえではマイナスではあるにしても、仮退院を公表することはやむを得なかったのではないかと思う。



2004年03月10日(水) 慰謝料額は増加の傾向にある

 日経(H16.3.10付)社会面に、弁護士が接見するに際し、拘置所がビデオを事前に検閲しようとしたことは違憲に当たるとして、大阪地裁が損害賠償を認めたという記事が載っていた。

 記事によると、弁護士が被告人と、証拠となるビデオを見ながら打ち合わせようとしたところ、拘置所側が事前に閲覧することを求めたということのようである。


 少しびっくりしたのは、賠償額として110万円も認めたことである。


 これまで被告人との接見(面会)妨害に関する損害賠償額は、5万円から10万円程度であったと思う。
 

 精神的損害に対する賠償額(慰謝料)は次第に上がってきているように思われる。



2004年03月09日(火) 特定商取引法を改正

 日経(H16.3.9付)7面に、悪質商法の規制を強化するために、特定商取引法を改正すると報じていた。

 今度の改正では、水道の点検と偽って自宅を訪問して、浄水器などを売りつける「点検商法」や、懸賞に当たったと言って事務所に呼びつけて、商品を売る「アポイントメントセール」などが禁止されるようである。


 悪質商法に引っかかった人から相談を受けることはよくあるが、裁判するだけの金額でないこともあり、そのとき限りの法律相談になることが多い。

 それだけに、じっくりと文献などを調べる余裕はなく、即答を迫られるのだか、法律が毎年のように変わると、付いていくのが大変である。


 不断の勉強が必要であると思う次第である。



2004年03月08日(月) 養鶏場の浅田農産が弁護士を同席させて記者会見

 日経(H16.3.8付)社会面に、鳥インフルエンザ問題で、養鶏場の浅田農産が弁護士を同席させて記者会見したと報じていた。


 新聞によれば、その弁護士は、「事情を聞いていない」としたうえで「鳥インフルエンザと認識していないというのは、通る話ではない」と述べたそうである。


 私は、事情を聞かないまま記者会見に同席する勇気はない。

 弁護士としては、事実をきちんと把握し、養鶏場の社長にも正直に述べるように説得した上で、記者会見に臨むべきではなかったかと思う。



2004年03月05日(金) 「告訴」「告発」「起訴」の意味は法律上決まっている

 日経(H16.3.5付)社会面に、鳥インフルエンザ問題で、農水大臣が養鶏場の浅田農産を刑事告発する意向であると報じていた。

 農水大臣は直接の被害者ではないから、新聞で書いているように「告発」が正しく、「告訴」とはいわない。


 「告訴」「告発」「起訴」名との用語の定義は、法律上厳密に定められている。


 「告訴」とは、被害者等が捜査機関に対し、犯人の処罰を求める意思表示である。

 「告発」とは、第三者が捜査機関に対し、犯人の処罰を求める意思表示である。

 「起訴」とは、検察官が行う刑事の訴えである。


 いずれも刑事訴訟の用語であるから、民事事件で相手を訴えることを「告訴」とか「起訴」とはいわない。


 ときどき、「告訴」「告発」「起訴」などの用語を混乱して使って人がいる。

 それを非難するつもりは毛頭ないが、何となく気になってしまう。



2004年03月04日(木) 最高裁が再任を拒否

 日経(H16.3.4付)社会面で、最高裁が、10年ごとに再任期を迎える174人の裁判官のうち、2名が「裁判官にふさわしくない」として再任を拒否したと報じていた。

 すでに、諮問委員会は6名が再任不適当と答申しており、そのうち4名は自主的に再任希望を取り下げたようである。


 174人のうち、裁判官としてふさわしくない人数が6人とすると、この割合でいけば、10年に一度再任期を迎えるのだから、9年×6人で54人も裁判官にふさわしくない人がまだいることになる。


 そう思うと怖い。



2004年03月03日(水) 杉並区が防犯カメラ条例案を可決

 日経(H16.3.3付)社会面で、杉並区が防犯カメラ条例案を可決したと報じていた。

 条例の内容は、住民のプライバシーに配慮して、防犯カメラの設置者に対し、データ管理方法などの利用基準を定める義務を課すものである。


 防犯カメラの威力はすごい。

 先日、ある刑事事件の裁判で、犯行直後に、犯行グループが道を歩いている様子が防犯カメラに写っており、その写真が証拠として提出された。

 このように、防犯カメラは、防犯対策上、強力な武器となっている。


 しかし、犯罪に関係のない人もカメラで撮られているわけであり、例えば、男色のある人が男性とデートしていても、その様子が残ってしまうのである(変な例だが)。

 何となく不気味である。


 それゆえ、せめてデータの管理基準だけでも定めておくべきであり、その意味で、杉並区の条例制定は賛成である。



2004年03月02日(火) 裁判員制度はうまく機能するかだろうか

 日経(H16.3.2付)1面に、裁判員制度において、思想・信条を理由に裁判員を辞退できることになると報じていた。

 その記事によれば、「自分には人を裁けない」という思想でも裁判員を辞退できるそうである。


 ところで、憲法76条は「裁判官は良心に従って裁判を行う」としている。

 ここでいう「良心」とは、「自分には人を裁けない」という主観的な良心ではなく、裁判官としての客観的良心であるとされている。

 この考えに対しては「良心が二つあるのか」と批判されることもあるが、判例・学説は上記の立場を取っている。


 それゆえ、裁判官の中には、死刑に反対の人もいるが、自分の信条に反するとして死刑判決をしないということはできないわけである。


 それに比べて、なぜ裁判員は思想信条に反する場合は辞退できるのだろうか。


 私は整合性がないように思う(役人は、裁判官と裁判員とは違うという理屈をこねるのだろうが)。


 それにしても、「自分には人を裁けない」という理由だけで裁判員を辞退できるとすると、裁判員になる人はいなくなるのではないだろうか。


 裁判員制度は果たして期待された役割を果たすことができるのだろうか心配である。



2004年03月01日(月) 麻原の供述調書はどこから入手したのか?

 日経(H16.3.1付)の週刊ポストの広告で、「麻原彰晃が完落ちしていた」という見出しで、麻原が犯罪を指示したことを認める供述調書を入手したという広告が掲載されていた。

 そのような供述調書があるのに、なぜ裁判で提出されなかったのだろうか、と思い週刊ポストを買ってみた。


 裁判で提出されなかった理由は、麻原はその供述調書で犯罪を認めているものの、自己弁護に終始し、弟子たちとの供述との整合性がないためのようであった。


 それよりも、気になったのは、この供述調書をどこから手に入れたのだろうということである。

 なぜなら、検察官はこの供述調書を裁判所に提出しようとしていないのだから、弁護人にも開示していないはずだからである。



 通常、検察官は、裁判所に証拠として提出する予定の証拠は、弁護人に開示する。

 開示を受けた弁護人は、供述調書などをコピーする(コピー代が高いので、謄写しないこともあるが)。

 そのコピーした供述調書がマスコミに出ることがある。



 オウム事件では最初にヘンな弁護人がついたから、そこから調書が流れ出ることはあり得えるかもしれない(以前、問題になったことがあるように思う)。

 しかし、弁護人に開示していない証拠は、流れ出ようがない(まれに、裁判所に提出しない証拠でも弁護人に開示することはあるが、あまり聞かない)。


 とすると、この供述調書はどこから入手したのだろうか。


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