今日の日経を題材に法律問題をコメント

2002年11月29日(金) 刑務所ではあまり逆らってはいけない?

日経(H14.11.29付)・社会面に、名古屋刑務所の受刑者が死亡した事件で、刑務所所長が更迭されたと報じていた。


 受刑者を暴行して死亡させたというのだからひどい話である。


 刑務所というのは、自分たちだけで一つの社会を作っている、独特の世界である。


 たとえ被告人の弁護人であっても、裁判が終われば、一般人と同じ扱いである。

 それゆえ、特別の理由がない限り受刑者に会うことはできない。

 しかも、事前に面会する理由を書いた書面を提出しなければならない。

 要するに、受刑者には何の権利もなく、すべては恩恵であるという意識なのである。


 実刑の判決を受けた被告人に対しては、刑務所で刑務官に逆らわないように、少々嫌なことがあってもがまんしなさいというアドバイスをするが、あまり気持ちのいいアドバイスではない。



2002年11月28日(木) 社外取締役制度は、監査役制度より優れているか

日経(H14.11.28付)・9面に、破綻したエンロンなどアメリカの一連の不祥事の教訓として、社外取締役の資格を厳しくするにようになってきたと報じていた。

 しかし、「社外」の資格を厳しくしても、例えば、代表者の顔色を窺う弁護士を社外取締役とした場合は、代表者からの独立性を保てないという意味では同じことである。

 実際、アメリカの社外取締役には、そのような者もいたとようである。


 そもそも、現在の商法に定める監査役制度について、監査役は元社員がなることが多いから監督機能が期待できない、それに対し、社外取締役は、「社外」であるので、監督機能が期待できるという議論は間違いである。


 私は、監査役制度でも、社外取締役制度でも、独立性さえ確保できれば、制度自体の優劣はないと思う。

 重要なことは独立性の確保であり、社外取締役制度であっても、当然に独立性が確保されるわけではないことはアメリカの一連の不祥事をみて明らかである。


 そのうえで、監査役あるいは社外取締役に情報をきちんと流すことである。

 どんな優秀な人でも、情報がきちんと伝わらないと、監督機能を果たすことは不可能だからである。



2002年11月27日(水) ストックオプションは一時所得であるとの判決

 日経(H14.11.27付)1面に、ストックオプション課税に関する訴訟で、東京地裁は、「給与所得」ではなく、「一時所得」であると認定したと報じていた。


 裁判長の名前をみると、藤山雅行裁判長と書いていた。


 この裁判官は、東京都が大手銀行に対し課税した訴訟で、東京都全面敗訴の判決を書くなど、最近、新聞によく名前が載っている。



 今回のストックオプション課税についての裁判と、東京都の課税についての裁判で思ったのだが、この裁判官は、租税法定主義を厳格に考えているだろう。


 租税法定主義というのは、課税するには法律によって定めなければならず、行政が恣意的に課税することは許されないという考え方である。


 ところが、日本では、通達によって課税が行われている傾向が強い。


 それに対して警鐘を鳴らしているのだと思う。


 ただ、判決文の中で、
ストックオプションは給与所得であると主張する国税庁に対し、
「一億円の宝くじがあたった後で、宝くじの販売価格は一億円と評価すべきに等しい。」と批判しているそうである。

 判決でそのような書き方をする裁判官はあまりいない。

 やっぱり、少し変わった裁判官なのかなあと思う。



2002年11月26日(火) 取調中の男性が拳銃の発砲により死亡した事件

 日経(H14.11.26付)・社会面に、取調中の男性が拳銃の発砲により死亡した事件の民事裁判で、一審で敗訴となった神奈川県が控訴したと報じていた。


 この事件で、警察は、死因は、男性が自ら発砲した自殺であると発表した。


 しかし、民事裁判において、死因は、警察の過失により暴発したものと認定されたのである。

 そして、その判決の中で、警察の証拠隠滅工作について詳細に認定したようである。


 これに対し、神奈川県が控訴したものであるが、控訴の方針は神奈川県警の意向によって決められていることは明らかである。


 そして、神奈川県警は、「控訴審では必要があれば新証拠の提示を検討したい。」と言っているそうである。


 しかし、これは極めて問題のある発言であろう。

 新証拠があるのなら、なぜ一審で出さなかったのだろうか。


 もっとも、おそらく「新証拠」などないのだろうと思うが・・。
 



2002年11月25日(月) 赤ちゃんの突然死について

 日経(H14.11.25付)・社会面に、赤ちゃんの突然死についての記事が載っていた。

 死亡原因が不明である突然死と、うつぶせ寝による窒息死とはまったく違うのであるが、医師が安易に突然死と診断する傾向があるのではないかとして、亡くなった赤ちゃんの両親から不信感が起きているという記事である。


 ただ、突然死と窒息死の区別はつきにくい。

 そのため、医師としても、窒息死と明確に分からない限り、突然死と診断するしかないのかもしれない。

 とくに、病院で赤ちゃんが亡くなった場合は、窒息死ということになれば病院の責任になりかねないのだから、突然死と診断する傾向は強いと思う。


 しかし、亡くなった両親としては堪らないだろう。

 そのため、突然死ではなく、病院や保育園の過失による窒息死でないかとして、全国で30件ほど裁判が起こされているようである。



 実は、私は、司法修習生のとき、赤ちゃんの突然死の解剖に立ち会ったことがある。

 しかし、遺体解剖の様子を見ていても、突然死か窒息死かの区別ははっきりしないのではないかという印象を受けた。

 もちろん、医学的専門家でない立場からみた印象に過ぎないのであるが・・。


 それにしても、遺体解剖というのはやられるものではないと思った。

 解剖した後、脳や内臓を元の位置に戻すことはせず、適当に詰めて縫い合わせるのだから。
 



2002年11月22日(金) 詐欺罪の証拠収集は難しい

 日経(H14.11.22付)社会面に、高配当を宣伝した投資仲介業者が出資法違反で捜索されたと報じていた。

 「世界一周クルーズや福祉事業に出資すれば一年で出資金が2倍になる。」といって10億円くらい集めたそうである。


 出資金を2倍にして返すことなんかできるはずがないから、明らかに詐欺である。


 しかし、警察は、簡単には詐欺の容疑での捜査はしない。

 詐欺の証拠を集めるのは難しいからである。


 そのため、警察は、出資法のようなからめ手をつかって、まず会社を捜索する。その結果、詐欺の証拠が集まれば、容疑を詐欺罪に切り換える。

 株取引の「にっぱち屋」に対する取締も、最初は、証取法違反で会社を捜索し、株取引の仲介している事実がないことが判明すれば、詐欺罪に切り換える。


 迂遠ではあるが、公判を維持できるだけの証拠を集めないといけないを考えると、やむを得ないのだろう。
 



2002年11月21日(木) 水と磁石の宣伝にご注意

 日経(H14.11.21付)夕刊・社会面に、特定商取引法(誇大広告の禁止)違反容疑で、オウム真理教信徒が代表を務める浄水器販売会社などを捜索したと報じていた。

 ホームページで、血液をサラサラにしたりなどの効能がある「単分子化水」を作れるなどと、事実と異なる商品の性能を宣伝したそうである。


 水の分子は分子同士がくっつき、ブドウの房のように(クラスター)になっている。

 そのクラスターを小さくするという謳い文句はよく聞くが、単分子化というのは初めて聞いた。

 水を単分子の状態にするのは無理ではないだろうか。


 それゆえ、誇大広告として捜索されたのであろう(オウム関係であるということの理由の方が大きいが)。


 詐欺的商法でよく使われるのが、水と磁石である。

 この2つが出てくると注意した方がいいと思う。



2002年11月20日(水) アメリカの検挙率を取り違え、犯罪白書を訂正

 日経(H14.11.20付)夕刊16面に、犯罪白書で、アメリカの犯人検挙率を間違えたため、「日本の検挙率がアメリカを下回った」と誤って記載し、法務省が訂正をしたと報じてた。


 間違いを指摘したのは、警察庁だそうである。

 間違いによく気づいたなあと思う。

 よっぽど、検挙率がアメリカより低いと書かれたことを気にしたのだろう。



 警察庁内部では、「犯罪の概念や統計を取る基準が違うのに、各国のデータを比較する意味があるのか。」という声が出ているそうである。


 近年、日本での犯罪検挙率は急激に下がっており、警察に対する非難が強まっている。

 それゆえ、他国と比較してまで、日本の検挙率が低いといった批判はして欲しくないのだろう。


 しかし、日本の検挙率が高かったときは、警察も、他国と比較して、「日本の警察は優秀である。」といっていたような気がするが・・・。



2002年11月19日(火) 日本信販、総会屋に利益供与

 日経(H14.11.19付)11面に、前日に引き続き、日本信販の総会屋への利益供与事件について報じていた。


 この事件では日本信販社員が多数逮捕されている。

 役員クラスは、逮捕されてもやむを得ないが、中間管理職以下の人たちは可哀想である。


 総会屋に利益供与することが違法であることはみんな分かっていたはずである。

 でも、サラリーマンが、役員に向かって、「違法だから止めましょう。」と言えるはずがないではないか。

 だからこそ、トップが「総会屋とは縁を切る。」とはっきり言って、行動に移さないといけないのである。

 それを放置していたトップの責任は重大である。


 社長はマスコミに向かって謝罪することは当然であるが、逮捕された社員の家族に対しても謝罪すべきである(但し、役員は除く)。 


 何が言いたいかと言えば、トップが範を示さない限り、違法行為を根絶することはできないということである。



2002年11月18日(月) 証券会社の元部長が、インサイダー取引の疑い

 日経(H14.11.16付)1面で、大和証券SMBCの元部長が、インサイダー取引の疑いがあることが判明したと報じていた。


 この元部長は、銀行からの出向だったようである。


 一般的にいって、銀行からの出向者は、出向先の会社への帰属意識がほとんどない。

 同窓会の集まりとかで名刺交換する際、証券会社の名刺を出しながら、「○○銀行から出向中です。」なんて言われることがよくある。

 自分は銀行員という意識なのだろう。



 インサイダー取引をした部長も、銀行員という意識が強く、インサイダー取引についての違法性の認識に欠けていたのではないだろうか。



2002年11月15日(金) 国外犯を処罰するよう法改正がされる

 日経(H14.11.15付)・2面に、外国人による海外での犯行を処罰できるよう法改正すると報じていた。

 現行法では、原則として国外での犯罪は処罰できないことになっているためである。

 欧州での日本人拉致事件を念頭においた措置だそうである。


 実は、先日、私の依頼者で会社経営していた人が破産をしたのだが、外国の取引先の社長が怒ってしまった。

 外国から電話をかけてきて、「支払わないと、日本に殺し屋を送り込む。1人50万円で引き受けてくれる組織がある。家族4人全員で200万円でやってくれる。」などと恐喝したのである。


 取引先は売掛金が回収できなくなるのだから、起こる気持ちは分かるが、「払わないと殺してやる」というのは、立派な恐喝である。


 しかし、海外から電話で恐喝した場合に、日本の刑法が適用されるかは微妙である。


 実行行為の一部でも国内で行われれば、刑法を適用することはできる。

 そうすると、電話口で音声が再生され、それによって恐喝の言葉が相手に伝わっているのだから、日本の国内で実行行為の一部があったとみることは可能なように思われる。


 しかし、この考えは司法試験では通じるかも知れないが、実務的ではない。


 実際問題としては、このような考えで、国内で犯罪が行われたといって、その外国の警察に協力を求めても協力はしないだろう。


 したがって、外国から電話して恐喝をしたとしても、処罰することは困難と思われる。



 ちなみに、その依頼者は警察にも相談したが、担当者は、「単なる脅しであり、相手は何にもしないだろう」というだけで、まともに取り合わなかった。

 そればかりか、「そんなに怯えているのなら、返済したらどうか。お金がないのなら、弁護士さんに立て替えてもらったら。」なんてことを言った。

 「それはないんじゃないの。」と思う。




2002年11月14日(木) ホテルで無銭飲食

 日経(H14.11.14付)・社会面に、ホテルに12連泊して無銭飲食をしたことから、詐欺罪で逮捕されたという事件を報じていた。


 無銭飲食が詐欺罪になるかは、司法試験では格好の勉強材料である。


 もちろん、支払う意思も、お金もないのに、レストランで注文することは、その時点で詐欺が成立することは当然である。


 では、払うつもりでレストランで注文したところ、食べ終わってから金のないことに気づき、逃げ出した場合は詐欺罪が成立するだろうか。

 この場合は、詐欺の実行行為がないから詐欺罪は不成立であるとされている。


 試験勉強をしていたころ、上の事例だけでなく、いろんな事例を自分たちで想定してみて、夢中になって議論した。


 ところが、いろいろと事例を想定しても、実務では問題になることはない。

 というのは、取り調べの時に、警察の都合のよいように供述調書が作成されてしまうからである。


 「お前、元々払うつもりがなかったんだろう」と厳しく問いつめられて、最初は、「いや、私はお金を持っていましたから、無銭飲食なんて考えてませんでした。」なんて強がっていても、取調官から、「でも、うまくいけば払わないで済むという期待もあったんだろう。」と言われ、「そりゃ、そうかも知れませんが・・。」と言おうものならお終いである。

 取調官は、[お金はありましたが、うまくいけば払わないで済むと思い、注文しました。」という調書を作成してしまう。

 被疑者としては、「ちょっと違うなあ。」と思いながらも、「まあいいか。」と思って供述調書に署名すると、それが命取りの供述になる。


 ということで、実際には、当初から無銭飲食をするつもりで注文したという調書ができあがるため、最初は払うつもりで注文したといったような事案になることはないのである。



2002年11月13日(水) 解雇が「悪」というわけではないと思う

 日経(H14.11.13付)社説で、「解雇法制に真剣な議論を」という見出しで、解雇についてのルールを労働基準法に盛り込むことについて論じていた。


 どのような場合に解雇が認められるかについては、判例上、一応の基準というのはある。

 しかし、明確な基準とはいえず、事案ごとに事情は異なっている。


 ただ、一般的には、裁判所は解雇を認めない傾向が強いという印象である。

 それゆえ、顧問会社から、「解雇しても大丈夫だろうか。」という相談を受けても、弁護士としては慎重な回答をせざるを得ない。


 しかし、企業の本音としては、優秀な人は辞めて欲しくないし、能力のない人ややる気のない人は辞めて欲しいだろう。

 それが間違っているとはいえない。


 すなわち、解雇が「悪」という考えはおかしいと思う。

そういう意味では、法律改正によって、どのような場合に解雇できるのかをもう少し明確にした方がいいように思う。



2002年11月12日(火) 鈴木議員は、保釈請求をしていないそうである

 日経(H14.11.12付)・社会面に、鈴木宗男議員関連の記事が載っていた。

 昨日の夕刊の記事によると、鈴木議員は、これまで保釈請求をしていないようである。


 否認事件の場合は、保釈請求は認められにくい。

 証拠を隠滅する恐れがあるというのが一応の理由である。


 ただ、第一回公判で検察官の証拠請求に同意すれば、保釈が認められことは多い。

 証拠請求に同意するということは、裁判官に証拠をみてもらっていいという意味である。

 そして、裁判官が証拠がみた以上、証拠を隠滅する可能性は低くなったから、保釈を認めてもよいという理屈になる。


 ところが、鈴木議員の場合は、検察官が請求した証拠の半分近くを不同意にしたそうであるから、当分保釈請求は認められないだろう。

 そして、保釈請求しても認められないことを見越して、保釈請求していないのだろう。



 ところで、かつてに比べて保釈が認められる割合は低くなってきているといわれている。

 裁判所が一番困るのは、保釈した結果、逃げてしまうことである。

 最近では、許永中が逃げた例がある。

 重大事件では、保釈金が何千万円どころか、一億円以上になることもあり、逃げるとそれが没収される。

 それでも逃げることがあるのは、シャバがそれ以上の価値があるということなのだろうか・・。



2002年11月11日(月) 「外国人お断り」の入浴施設に賠償命じる

 日経ネットニュース(H14.10.30付)で、「外国人お断り」と貼り紙をした入浴施設に対し、300万円の損害賠償を命じたと報じていた。


 この記事を読んで、よくパチンコ店に「中国人お断り」と書いているが、これは損害賠償の対象にならないのだろうかと気になった。


 おそらく、外国人を断る合理的理由があれば、損害賠償の対象にはならないのだろう。

 その点、パチンコ店での「中国人お断り」という貼り紙の場合は、微妙なように思われる。


 仮に、パチンコ店で入場を断られた中国人が裁判をしたらどのような判決になるのだろうか。




2002年11月08日(金) 地下銀行が摘発された

日経(H14.11.8付)・社会面に、地下銀行を摘発したという記事が載っていた。


 記事には総額100億円を送金したと書いているから、すごい組織だなあと思うかも知れない。


 しかし、実態はたいしたことない。


 地下銀行は、依頼者から、送金するお金と若干の手数料を受け取る。

 そして、受け取り先(中国やタイ)の人は、送金先の国(中国やタイ)にいる地下銀行の仲間から、送金相当分を受け取る。

 そうすると、送金先の国の地下銀行の資金がなくなってくるから、ある程度、日本で預かったお金が貯まると、まとめて銀行を通じて正規に送金する。


 要するに、わずかな送金手数料を稼いでいるだけである。



 しかし、外国人は、こういった地下銀行をかなり利用している。

 銀行よりも使い勝手がいいからである。

 つまり、そこにニーズがあるということである。


 銀行はそういったビジネスチャンスを放置しているといわざるを得ない。


 もちろん、法律上の規制もあるし、送金する人は不法滞在者が多いという事情もある。


 しかし、もっと外国への送金の使い勝手をよくしようと努力している形跡はみられない。



 今日の日経1面に、銀行が人員・店舗を1、2割減するリストラを前倒しでやると報じていた。

 まだそんな程度のリストラである。

 これまで何をしていたのだろうかと思う。


 顧客満足度において、地下銀行に負けないサービスをしようと考えないのだろうか。

 銀行は、ビジネスに対するどん欲さに欠けているように思う。



2002年11月07日(木) 弁護士がまたまた逮捕

 日経ではなく、朝日夕刊(H14.11.7付)社会面に、信楽鉄道事故の弁護団長が示談金を着服して逮捕されたと報じていた。


 その記事をよく読むと、信楽鉄道事故の事件と、横領とはまったく関係なかった。

 信楽鉄道事故の弁護団長をするぐらいの消費者運動の先頭に立っていた弁護士が逮捕されたということをいいたかったようである。


 横領しても発覚しないと思ったわけではないだろう。

 しかし、暴力団に攻めたてられ、どうにもならなくって横領したのではないだろうか。



 この弁護士は10億円以上の負債があったそうである。


 しかし、弁護士の仕事はそれほど経費のかからない。


 私の事務所は、弁護士1人、事務員3人だから、事務所のスペースは小さい。

 そうすると、賃料は光熱費を入れても、月60万円程度である。

 事務員の人件費も、初任給で月20万円だから、3人分でも知れている。

 あとは、事件費、書籍費、交通費、通信費、交際費などである。

(もっとも、弁護士を雇用すると、人件費はとたんに多くなってくるが)


 
 だから、弁護士業を普通にやっていて10億円もの借金をつくることはあり得ないのである。

 新聞では、仕手株に手を出したと報じていたが、その背景には、別の事情もあったのではないだろうか。




 ところで、宮崎学(キツネ目の男で有名になった)の「地下経済」という本に、「職業の中で、1番卑しいのが政治家、その次が官僚と警察、3、4がなくて、5が弁護士」と書いていた。


 それほどまでに、弁護士という職業はイメージがよくないのだろう。

 反省しなければならないと思う。


 それにしても、冒頭の事件で、弁護士が横領したのは1997年、破産して弁護士の資格を失ったのは1998年、それから4年後に逮捕されている。


 いまさらという感じである。

 もう少し早い事件処理はできなかったのだろうか。



2002年11月06日(水) 東京都が、貸金業に登録取消など処分を強化

 日経(H14.11.6付)・35面(首都圏版)に、東京都が、貸金業に対し、登録取消・業務停止など、処分を強化していると報じていた。


 そのような処分強化の背景には、業者の悪質化がある。


 最近、テレビでもトイチ業者、トニ・トサン業者が話題になっている。

 この「トイチ」というのは、「10日で1割の利息」という意味と、「東京都登録1回」という意味がある。

 ということは、東京都に登録している貸金業者には、悪質な業者が含まれているとうことである。


 登録業者だと無茶なことはしないだろうと思ったら、なんのその。

 平気で高利を取るし、取り立ても激しい。


 登録業者だからといって安心してお金を借りてはいけないのである。
 



2002年11月05日(火) ネット株取引で、注文取次が5分以上遅れたら、差額を返還

 昨日の日経(H14.11.4付)・11面に、カブトドットコム証券が、株のネット売買の注文取り次ぎが5分以上遅れたら、差額を返還するという制度を導入すると報じていた。

 これは画期的サービスだと思う。


 ネット取引における大きな問題は、システムの安全性である。

 しかも、システム障害によって生じた損害の責任を誰が負うのかも明確でない。


 その意味では、5分以上遅れたら差額を返還するという形で責任を明確化したことはいいことだと思う。


 ただ、システム障害によって、注文自体ができなかった場合については、この制度の対象外であり、依然として問題は残る。


 多くの証券会社は、コールセンターの開設によって対応しているようである。

 それでも、投資家の立場からすれば、発注は遅れることになる。

 すなわち、システム障害によって、ネットで発注ができないため、コールセンターで発注することによって、取引が遅れることになるから、それによって損害が生じることはあり得る。

 ただ、ネットでいつ発注したかの証拠がないことが多いだろうから、投資家が泣き寝入りする可能性は高いだろう。

 したがって、投資家としては、手数料が安い証券会社と、システムの安全性が高い証券会社との両方に口座を持つなどして、リスクを分散しておく必要があるだろう。
 



2002年11月01日(金) 変わらない体質の先物取引会社

 日経(H14.11.1付)・31面に、「先物大競争時代」というコラムが載っていた。


 アメリカの先物取引会社の事情として、「技術を競う」「目先の利益より信頼」と報じていた。



 他方、日本は、といえば、ひどい状態である。



 先物取引自体が問題があるとは思わない。

 しかし、営業の実態をみると、会社ごと詐欺をしているのではないかと思わざるを得ない。



 「同郷です。」とかいって、電話攻勢をする。

 少しでも脈があると、強引に取引を開始させる。

 いったん取引が始まると、顧客は先物取引の知識がないから、取引会社のいうとおりにするしかない。

 そのうち、「追証がかかりました。」なんていわれて、あれよあれよという間に数千万円をつぎ込まさせられる。

 これ以上、お金がでないと思われたら、それでぽいっと捨てられてしまう。


 ほとんど同じパターンである。

 日本では、この体質は変わらないように思う。 


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