今日の日経を題材に法律問題をコメント

2002年04月30日(火) 税金の公平について

 日経(H14.4.30付)・1面に、地銀合併促進へ税優遇という記事が載っていた。

 合併する際の登録免許税などを軽減することを検討しているそうである。


 先日、東京都の外形標準課税について、銀行だけを狙い撃ちにした課税は違法であるとの判決がなされていた。

 この判決との整合性はあるのだろうか。


 一部だけから税金を取るのが不公平であるというのは分かりやすい。

しかし、一部だけから税金を取らないのは不公平でないのだろうか。


 このような優遇措置は他にもいっぱいあるが、それについて違法であるという意見はあまり聞かない。


 「税の専門家」でない私には、違いがよく分からない。



2002年04月29日(月) フランチャイズビジネスに注意

 日経(H14.4.29付)・3面に、小さく、「フランチャイズチェーン本部に義務づけている説明項目を拡充する」という記事が載っていた。

本部と加盟店とのトラブルを防止するのが狙いだそうである。


 新たに開示義務が課される項目には、本部と加盟店との直近5年間の訴訟件数、過去3年間の加盟店数の推移などがある。

 訴訟件数まで開示しなさいというのだから、すごい。


 つまり、それだけトラブルが多いのである。


 フランチャイズ本部の中には、加盟店料の取得だけしか考えていないところや、マルチまがいのところなども結構多い(まじめなところも多い)。


 脱サラして独立を考えている人の中には、フランチャイジーとして、加盟することを考えている人も多いと思うが、よく調査した方がいいと思う。



2002年04月28日(日) 倒産についての分類−日経の分類は誤りである−

 日経(H14.4.28付)・17面に、「倒産」についての解説記事で、「倒産のタイプ」として、銀行取引停止処分、清算型法的整理、再建型法的整理、私的整理(内的整理)の4つに分類していた。

 しかし、この分類は明らかに間違いである。


 手形が不渡りになって銀行停止処分となった場合、会社としては、法的に整理するか、私的整理をするか、それとも何もしないで放置するを決断しなければならない。

(まれに、不渡りになって銀行取引停止処分を受けても、そのまま営業を続けるケースもあるが、これはレアケースである。)

 つまり、銀行取引停止処分と、法的整理や私的整理とを並列して分類するのはおかしいのである。


 新聞の誤りをいちいちあげつらっても仕方ないが、新聞記者は、自分で調べず、安易に人に聞く傾向があるように思う。

 ところが、もともとの基礎知識が不十分なため、人に聞いても十分咀嚼できず、誤った記事を書くのではないだろうか。



2002年04月27日(土) 正当な取引をしないと、結局は損をする

 日経(H14.4.27付)・7面に、センチュリー証券が、一任勘定契約をしていたことで、1億4600万円の過怠金を課せられたという記事が載っていた。


 この会社の規模からいって、1億4600万円というのは、辛いのではないだろうか。

 一時的には手数料を稼げても、結局は、損をするという見本のような気がする。



2002年04月26日(金) 大阪高検の検察官逮捕について

 日経(H14.4.26付)・社会面に、大阪高検・検事が逮捕された事件で、
「暴力団組員が使用しているのを承知で、競売で落札していた」「落札した後、立ち退きを要求し、その際、『刑事責任を問われてもいいのか』と脅した」
と報じられていた。

 一旦逮捕されると、マスコミは何をしても悪者にするのが得意である。


 だいたい、暴力団が使用していたら、競売で落札してはいけないのか。

 それだったら、暴力団の思うつぼではないのか。


 立ち退かない相手に対し、「刑事責任を問われる」というのが脅しになるのか。

 ましてや相手は暴力団組員である。


 要するに、マスコミは、追及すべきポイントがずれているのである。


 しかし、この事件の真相はよく分からない。

 果たして、報道されている内容程度で、逮捕される事件なのだろうか。

 疑問が次々と湧く。



2002年04月25日(木) 税金訴訟で勝つ確率は意外と高い。

 日経(H14.4.25付)・社会面に、「税追徴16億円取り消し」という見出しで、東京地裁が、重加算税を課税した国税当局の判断は違法としたという記事が載っていた。


 税金訴訟は、弁護士でも手がける人は少ないが、裁判で、原告の訴えが認められることはしばしばある。

 税金の場合は、裁判の前に国税不服審判もあるから、それを含めると、不服申立が認められることは意外と多い。


 もちろん、税金訴訟の中には、原告の主張は、どう考えても通らないだろうと思うケースもある。

 私が司法修習生のころ、裁判所で税務訴訟に立ち会ったことがあったが、そのときの原告の主張はムチャクチャであった。

 原告の言い分を聞くと、「税理士に相談したら、以前、勝ったことがあるから、裁判したら大丈夫と言われた。」とのこと。
 さらに、どんなケースで勝ったのかと聞いたら、本件とはまったく事案の違うケースであった。

 当然、原告敗訴になった。


 このように、最初から勝つのが無理な事件も、統計には入ってきている。

 そこで、このようなケースを統計から除くと、不服審判や裁判で、課税に対する不服が認められる割合はかなり多くなるのではないだろうか。


 国税不服審査請求件数は年間大体3000から4000件。
 うち一部取消し、全部取消しが400〜500件だそうである。

 この中には、前記のような主張自体が無理なケースも入っているから、実質的確率は相当高いように思う。


 課税は法律に基づかなければならない(課税法律主義)が、税務署の課税処分はかなり恣意的なところがあるような気がする。

 それが、不服が認められる確率が高い結果につながっているのだろう。


 したがって、課税処分に対し、常識的に考えておかしいと思った場合は、不服申立をした方がよいだろう。

 ただし、税務署からは睨まれるだろうから、税金を誤魔化すなど、後ろめたい気持ちのある人は、別である。
 



2002年04月24日(水) 証券取引所に、金融庁が立ち入り検査

 日経一面(H14.4.24付)に、金融庁・証券取引監視委が、東京、大阪の証券取引所を立ち入り検査をすると報じられていた。

 みずほ銀行のシステム障害を踏まえ、取引所システムの障害時の対応のあり方を重点的に検査するとのことである。


 それにしても、検査は31年だそうである。

 行政がなんでも検査することがいいとは思わないが、31年も検査しなかったというのは異常ではないか。


 証券取引の公正化のために、検査すべきところはきちんと検査して欲しい。



2002年04月23日(火) 競売物件は、怖くはないが、最近はうまみも少ない

 日経14面(H14.4.23付)に、サービサーの会社の全面広告があり、その広告の中で、「不良債権を生き返らせる」「競売を中心とした担保不動産を毎月100件あまり仕入れて、それを市場競争力のある物件に再生して一般市場で販売する」と謳っていた。

 広告だからあまり目くじらを立てても仕方ないし、その会社を批判する気はまったくないが、「不良債権を生き返らせる」というのは少し大げさではないだろうかる。

 競売によっても、全額回収できるわけではなく、不良債権は残ったままだからである。


 ところで、競売物件はいまやいろんな不動産業者が手がけるようになっている。

 この前、私の知り合いの小さな不動産屋さんと、偶然裁判所で会った。
 話を聞いたら、競売物件は儲かるというので見に来たのだそうである。

 こうなると、株が高騰し、誰もが株に手を出すような状況に似ていて、競売ビジネスも、もううまみは少ないのかも知れない。


 ただ、競売物件を手がけることは難しくない。

 競売により、抵当権はすべて消えるから、権利関係もすっきりする。

 怖いのは占有者がいるときであるが、これもきちんと法律上の手続に則って淡々とやれば、大丈夫である。

 もっとも、占有者を排除するのに少し時間が掛かるので、資金的に余裕がないといけない。したがって、借入なんかで購入するのは非常に危険である。

 そういえば、昨日逮捕された検察官は、競売不動産を10件以上所有していたそうである。
 その検察官は、占有屋がいる危ない物件を、警察力を使って排除し(職権濫用である)、うまく儲けのではないだろうか。
  



2002年04月22日(月) MRFの運用利回りが0.000%

 日経夕刊・トップに、代表的な証券貯蓄商品であるMRFの運用利回りが、0.001パーセント未満になったと報じられていた。

 一部銀行が、ペイオフとの関係で、普通預金の金利を0.001%に引き下げ、批判されたが、銀行の普通預金の方がよっぽどましという感じである。

 以前にも書いたが、証券貯蓄商品の売り方が、「安全で、銀行預金より利率がいい」という売り方をするからいけないではないか。

 リスクとリターンをきちんと説明する売り方をしないといけないのではないだろうか。
  



2002年04月21日(日) 社内メールのチェックは、違法ではない。

 日経社会面に、社内でのインターネット利用について、3割を超す企業が利用状況を監視していることが調査で分かったと報道されていた。


 しかし、例えば社内メールについていえば、従業員としては「そこまでチェックしていいのか」という不満も多いだろう。

 しかし、法律上は問題がない。

 なぜなら、メールの利用権は業務のために与えられているのであるし、従業員には業務に専念する義務があるから、私的利用はもともと許されていないからである。


 もっとも、新聞記事によると、利用状況を監視している企業のうち、約4分の1の企業が監視していることを従業員に説明していないそうである。

 これは問題である。


 説明がない以上、従業員としては、プライバシーが保護されていると思っているかも知れず、トラブルの元になるからである。

 (「プライバシーが保護されているという合理的期待がある」という言い方がされる。)


 従って、企業としては、こそこそせずに、従業員に対し、メールなどを監視していることをきちんと説明し、私的に利用すれば、処分の対象になることを告知しておくべきである。



2002年04月20日(土) 夫婦別姓の議論は、実証的調査が足りないのではないか

 日経2面に、夫婦別姓で、自民党の調整が暗礁に乗り上げているという記事が載っていた。


 夫婦別姓反対派の理由は、「別姓を認めると家庭が崩壊する」ということにある。


 家庭内では同一の姓であるべきだという感情は分かる。

 他方、それまで慣れ親しんできた姓を変えるのは嫌だという人たちの気持ちも分かる。


 そうすると、「別姓を認めると家庭が崩壊する」と本当にいえるのかどうかがポイントになるだろう。


 私は、「別姓を認めると家庭が崩壊する」というのは、実証的裏付けが欠けているように思う。

 中国では夫婦別姓であるが、夫婦別姓が原因で家庭が崩壊しているのかとか、あるいは、崩壊している家庭を調査して、その原因は何かなどをきちんと実証的に調べるべきではないか。

 どうも、この問題はイデオロギー的な対立になっており、実証的調査が足りないように思う。



2002年04月19日(金) 破産法制を見直し

 日経7面に、「破産法制を見直し」という見出しで、破産した会社の経営者が再起しやすい法制にするとの記事が載っていた。


 その記事の中で、従業員20人以下の企業では、75パーセントの会社が、金融機関から融資を受ける際に、会社経営者が個人保証していると書いていた。

 しかし、75パーセントというのは疑問である。


 私が見た範囲では、小規模の会社では、会社経営者の個人保証はほぼ100パーセントである。

 したがって、会社が倒産すると、100パーセント、会社経営者も多額の債務を抱えることになる。


 すなわち、経営者と会社とは運命共同体である。

 それを見直そうというのが記事の内容である。
 しかし、そのような運命共同体であったからこそ、会社経営者は必死になり、会社を成長させる原動力となったということも事実である。



2002年04月18日(木) 株主総会で、ネットで議決権行使が可能に

 日経一面トップは、「株主総会 ネットで投票」という記事であった。

 商法の改正により、株主総会において、株主がインターネットで議決権行使することが可能になり、50社が導入する予定とのことである。


 ネット投票の導入により、株主総会の活性化が期待されているそうである。


 しかし、企業にとってのメリットは、株主総会の招集通知をネットで送れることになったことであろう。

 招集通知を発送するための費用は馬鹿にならない。

 それがネットを活用できるようになると、費用が著しく軽減できる。

 現在のところ、招集通知までネットを活用するというのは、ごく少数のようであるが、今後は増えて来るであろう。


 ところで、ネットで議決権を行使できるようになると、総会屋はどうなるのであろか。

 アメリカでは、ネットで議決権を行使する株主が半数を超えているそうである。

 そうなると、総会屋の「存在意義」はなくなるのではないだろうか。



2002年04月17日(水) みずほ銀行が損害を肩代わり

 日経4面で、みずほ銀行のシステム障害で、カード代金の入金ができなかったことによる延滞金を、みずほ銀行が肩代わりすると報道されていた。


 カード会社にとっては、実際に入金されるはずが、遅れて入金されたのだから、入金が遅れた分は損害になる。
 したがって、これを賠償請求するというのは分かりやすい。


 先日の日記で、入金が遅れて信用を失ったような場合は、損害の算定が難しいと書いた。
 これに対し、入金が遅れた分の利息相当分の場合は、損害の認定は容易である。


 では、小さな会社が、入金が遅れたからその分の損害を補填してくれと銀行に言ったら、すぐに賠償してくれるだろうか。

 銀行としても、個別にすべて対応して、損害額を確定して支払っていくというのは無理ではないだろうか。
 
 請求する側としても、入金が遅れた分の利息しか請求できないとなると、その額はあまりに少なく、そのうち、いやになってうやむやになってしまいそうである。

 しかし、銀行がそのような対応をすると、マスコミは黙っていないに違いない。

 「大企業に甘い銀行の体質」とか書かれて、おもいっきり叩かれるだろう。

 また、オンブズマン的な団体が、費用を度外視して銀行に対して訴訟を提起する可能性もある。


 銀行としては、カード会社などに損害賠償せざるを得ないだろうが、いったんカード会社などに賠償すると、次から次へと請求を受け、対応如何によっては、上記の事態が予想されるのである。

 みずほ銀行は、泥沼に一歩足を踏み入れたのかもしれない。



2002年04月16日(火) 大和銀ホールディングスの株主が、株主代表訴訟を提起

 日経・社会面によると、子会社の大和銀行や、あさひ銀行の旧経営陣の責任を、株主の立場から追及する義務があるのに、それを怠ったとして、両行の親会社である「大和銀ホールディングス」の株主が、株主代表訴訟を起こしたそうである。


 他の新聞記事によると、訴訟の動機は、大和銀行に対する株主代表訴訟では、和解が成立したが、「その和解の内容があまりに手ぬるい」ということにあるようである。


 前回の、大和銀行に対する株主代表訴訟においては、大和銀行が持ち株会社を設立して、その傘下に入ったため、訴訟の原告が大和銀行の株主でなくなり、訴訟の当事者でなくなる恐れが生じた。
 そのため、原告は、やむなく和解に応じたという事情があった。

 当事者でなくなると請求が却下されるのだから、和解に応じることはやむを得なかったのではないだろうか。


 今回の裁判では、親会社を訴えているから、前回の和解が問題であるといっているわけではない。

 しかし、実質的には紛争の蒸し返しという感じがする。


 しかも、代理人が同じ弁護士とのことであり、弁護士倫理上、いかがなものかと思う。



2002年04月15日(月) 飲酒運転でも逮捕されることがある

今日は朝刊は休み。
 日経夕刊・社会面で、東海大助教授が飲酒運転で逮捕という記事が載っていた。


 通常は飲酒運転では逮捕されない。

 しかし、現場から逃げたりしたら、逮捕される。

 また、飲んだ飲み屋さんに迷惑をかけちゃいけないと思って、飲んだ量などについて明らかに分かるうそをつくと、「じゃあ、本当かどうかじっくり調べようか」ということになって逮捕される。


 逮捕された東海大助教授も、立場上まずいと思って、うそをついたのだろうが、かえっておおごとになってしまった。

 うそはつかないことである。



2002年04月14日(日) みずほ銀行に損害賠償請求ができるか

 日経5面に、みずほグループシステム障害は、主導権を巡る人災の面があるという特集記事が載っていた。

 そういえば、先日、国会に社長が参考人招致された際、社長が「損害は生じていない」と口を滑らせてしまい、顧客軽視だと批判されていた。


 では、顧客に損害が生じたとして、銀行に対して損害賠償請求ができるであろうか。


 例えば、二重に預金が引き落とされたという場合に、すぐに引き落とした額が戻されているのであれば、それは損害とはいえない。

 では、送金できなかったことによって、信用を失ったとか、大事な顧客を失ったという場合はどうか。

 この場合、本当に信用を失ったのかということが疑問視される。

 通常、送金できなかっただけで、自動的に信用や顧客を失うことはない。

 相手方から、入金がない旨の連絡があるのが通常であり、そうすれば、みずほ銀行のシステム障害のためである旨を説明することも可能であったはずで、信用を失うということは考えられないからである。


 また、かりに、システム障害によって送金できず、本当に信用を失ったとしても、損害額の算定は結構難しい面がある。


 ということで、裁判をしても、その手間、弁護費用などを考えると、いい結果を得ることはできない可能性が高い。

 しかし、最近はオンブズマン活動が活発である。
 そのため、銀行の責任を明らかにするために、あえて裁判をして、銀行の過失責任を問うグループがでてくる可能性があるように思う。



2002年04月13日(土) 官房機密費の内部文書公表

 日経2面に、官房機密費を記録した内部文書を共産党が公表したと報道していた。

 こんな文書がどこから出てきたか不思議である。


 実は、これが本当に内部文書であれば、それを持ち出したことは窃盗罪になる。

 では、コピーして持ち出せばどうかというと、それはコピー用紙の窃盗になる。

 一度持ち出して、コピーして返しておけば、それは、持ち出した行為が窃盗罪になる。

 コピー用紙を持ち込んで、コピーしたらどうかというと、理論的には、インクカートリッジの粉の窃盗になる。


 情報窃盗という犯罪がないため、このような屁理屈を考えるわけである。


 しかし、今回の件では、誰もそれが内部文書であることは認めないだろうから、結局、警察が捜査に動くことはないだろう。



2002年04月12日(金) エンロン問題で、アンダーセンが司法取引へ

今週は激務で、12日(金)の今日の日経を、13日(土)に書いている。

 日経9面に、エンロン問題で、文書破棄により司法妨害した罪で刑事訴追されている会計事務所アンダーセンが、違法行為があったことを認め、司法省と司法取引する見通しであると報道されていた。

 アメリカでは、事実を認め、捜査に協力すると、罪は著しく軽くなる。
 刑事事件の8割以上がこの制度で解決しているそうである。

 司法取引のメリットとして、裁判費用と時間の節約につながるといわれている。
 しかし、それ以上に、被告人が複数で、否認事件のときに効果が大きいだろう。


 ただ、日本では司法取引の制度はない。(検察官の裁量で行われる起訴猶予処分で似ているが、やはり根本的に違う。)

 取引によって、罪が軽くなるというのは、国民感情が許さないのだろう。


 今年3月28日、本庄保険金殺人事件で被告人に求刑通りの無期懲役が言い渡されたが、さいたま地裁(金山薫裁判長)が、判決の中で、検察官が犯行自白を理由に死刑求刑を避けた点を「禁じられている司法取引に踏み出すもの」と異例の批判を行ったそうである。

 やはり、司法取引が根付く風土ではなさそうである。



2002年04月11日(木) 特許の審判制度の見直しについて

 日経3面に、パチスロ特許紛争が揺れているとの記事が載っていた。

 先月、東京地裁で、パチスロの特許権侵害で、84億円という史上最高額の損害賠償が認められた。

 ところが、その前提となる特許の有効性について、特許庁が特許無効の暫定判断を出した。

 そのため、損害賠償請求の前提が崩れそうなのである。


 このような複雑に事態になる理由は、特許の有効性は、原則として、特許庁が第一審的役割を担うことになっており、他方、裁判所は、特許が有効であることを前提に、特許の侵害があったかどうかを判断するという構造になっているからである。

 そのため、制度の見直しの議論がでている。

 しかし、最高裁は、「一元化は労力が節減できる効果があるが、審理期間が長くなる面もあり、どちらがいいとは言い難い」との立場のようである。


 しかし、一元化して労力が削減できるのであれば、審理期間も短くなるのではないか。

 おそらく、最高裁は、特許の有効性まで第一審で判断するとなると、裁判所の負担が加重になるのを恐れたのだろうが、やはり、一元的な制度にした方が、迅速さの点で優れているように思う。



2002年04月10日(水) 井上議長問題 弁護士に相談したのか

 日経2面に、井上参議院議長問題が載っていた。

 井上参議院議長問題というのは、井上議長の政策秘書が建設会社から工事受注費として6400万円受領したが、工事規模が予定より縮小したため1000万円を返却したという疑惑である。

 この疑惑について、井上議長は、6400万円の受領は否定した上で、1000万円を渡したことについては、「脅迫され、脅し取られた」と説明しているそうである。

 これに対し、自民党内からさえも、「とても弁護士と相談したとは思えないお粗末なコメント」との声が出ているそうである。


 「とても弁護士に相談したとは思えない」という言い方からして、弁護士に相談した上でコメントしたのだろう。

 そこで、弁護士に相談したのに、なぜそのような「お粗末な」コメントになったのかを推測してみよう。


議長「(弁護士に対し)1000万円を渡した理由として、脅迫されたことにしようと思うのですが」

弁護士「脅迫されたのであれば、普通は刑事告訴しますよ。それを何もしてないというのはおかしいです。そんな理由は通らないでしょう。」

議長「では、どのように説明すればいいでしょうか。」

弁護士「うそを言うと必ずバレます。本当のことを言うべきでしょう。」

議長の内心「本当のことを言えないから、相談してるんじゃないか。何のために顧問料を払っていると思っているんだ。」

弁護士の内心「作り話することを勧められるわけがないじゃないか。証人喚問されたら、偽証教唆になってしまう。作り話をするんだったら、自分の責任でやってくれよ。」

議長の内心「役に立たない弁護士だなあ。顧問弁護士を変えようか。」

議長「分かりました。自分なりによく考えて、説明することにします。」

議長の内心「やはり、脅迫されたことにしよう。事実関係については弁護士と十分確認していると言おう。」

 かくして、冒頭の「お粗末なコメント」になったというのが、私の推論である。
 本当かどうかは知らない。



2002年04月08日(月) ネットでの選挙運動が認められる

 日経2面に、「ネットで選挙運動」「ホームページ利用解禁」「政府 2004年参院選 導入めざす」という記事が載っていた。


 「何を今さら。」という感じである。


 実は、私は、1996年に、選挙運動として、ホームページの利用を認めるよう訴えたことがある。

 2004年実施というと、それから8年遅れている。

 政治というのは、改革のスピードがあまりに遅すぎる。


 もっとも、ネットを利用した選挙運動に、あまり過大な期待はしない方がいいと思う。

 とくに、小選挙区制を採用している衆議院議員選挙は、それがいえる。


 というのは、現在の小選挙区制においては、支持団体が単一では当選しないため、さまざまな団体に頭を下げなくてはならない。
 そうすると、あっちの団体で言うことと、こっちの団体で言うこととが微妙に違うということがあり得る。

 ところが、立候補者がホームページに掲示板などをつくって議論を深めていくと、あいまいな主張は許されなくなっていく。


 そのため、選挙運動でネットの利用ができるようになっても、多くの立候補者が、わりと差し障りのないことを書いてお茶を濁すのではないかという気がしているのである。



2002年04月07日(日) 銀行の企業融資 信用力に応じて金利に差を付ける

 日経・一面トップは、銀行の企業融資において、企業の信用力で金利に差を付ける、新しい貸出制度を導入するという記事であった。

 企業の信用力によって、貸し出し金利を変えるというのは、当たり前の話であり、今後はそのような流れが強まるだろう。


 ところで、零細企業では、商工ローン(商工ファンドや、日栄など)に手を出しているところも多いが、その金利は20パーセント以上である。

 それにも関わらず企業が借りるのは、銀行が貸さないからである。


 もちろん、商工ローンに手を出し、すぐに破産する会社は多い。
 しかし、何年も高い金利を払い続けているところも結構ある。

 したがって、銀行が信用リスクを考慮して、それなりの金利を取って貸し出せば、銀行にとってもビジネスチャンスなはずである。


 ただ、商工ローンで借りるような会社は、信用力という意味では極めて問題があるから、銀行としても、10パーセント以上の金利を取らないとペイしないであろう。

 しかし、10パーセントもの金利を取るとなると、預金金利がほとんどゼロだから、世間からは暴利だという批判が起きるだろう。


 かくして、融資を受ける側は、商工ローンでもいいから借りたいというニーズがあり、融資する側としても、金利を10パーセント以上に設定すれば、信用リスクを考えても充分やっていけると思われるのに、その部分に、銀行の金が流れない状態が続くわけである。



2002年04月06日(土) 大会社では、内部統制システムの構築義務がある?

 昨日の日経夕刊1面トップは、神戸製鋼利益供与事件の株主代表訴訟の記事であった。

 そこで、注目すべきは、和解の際に示された裁判所の所見で、神戸製鋼のような大会社の場合、内部統制システムを構築すべき法律上の義務があると明言したことである。

 私は、「内部統制システムを構築すべき義務」というのは、初めて聞いた。


 おそらく、大企業の代表取締役の場合、従業員の個々の行為までは知りようがないから、一般的な監督義務によっては、代表取締役の責任を問うことが難しいと判断したのだろう。

 そのため、内部統制システムを構築すべき義務というものを認め、その義務違反を問うことにしたのだと思う。


 ただ、私としては、「内部統制システムを構築すべき義務」という言葉には、どうも違和感がある。
 法律には、そのような義務は明記されていないからである。


 利益供与のような違法行為はしばしば行われていることから、代表取締役であっても、そのような利益供与が行われないよう注意する義務はあるであろう。

 それゆえ、私は、一般的な監督義務を理由にしても、代表取締役の責任を問えたのではないかと思うのだが・・。



2002年04月05日(金) 大阪の弁護団が、「ぼったくり入学金110番」を開設

 昨日の日経夕刊・17面に、大阪で、大学の前納入学金の返還を求める弁護団を結成したということが報道されていた。

 おもしろいことを考えるなあと思った。


 多くの私立大学では、合格すれば入学金などの前納を求められ、他の大学に入学しても返還されない。

 前納金は平均すると、80万円から90万円になるそうであり、これが、私立大学での重要な資金源になっている。


 入学しないのだから、大学にとっては、その後の経費は発生しない。まるっきりの収入となる。

 それゆえ、ぼったくりと言われても仕方ないだろう(大阪弁護団では、「ぼったくり入学金・授業料110番」と名前をつけて、電話相談を始めたそうである。)。


もちろん、入学金を支払う際には、「いかなる理由があっても一切返還しない」という断りが必ず入っている。
 したがって、本来であれば、返還を求めることはできないはずである。

 そこに、消費者契約法の適用を考えたことがおもしろいと思う。


 消費者契約法では、事業者に生じる平均的な損害額を超える部分は無効とされている。
 そして、入学を辞退したからといって損害はほとんど生じないだろうから、ほぼ全額の返還を求めることができるという理屈である。


 もっとも、大学と学生の間に消費者契約法を適用するというのは違和感はある。
 また、「入学金等を一切返還しない」という断りが、損害賠償の額を予定したものといえるかといった、法律上の問題もある。

 しかし、100万円近いお金が、入学しないのにまったく返還されないのはおかしいというのは素朴な疑問である。
 その素朴な疑問を、法律上の主張に高めた点が素晴らしいと思う。

 大阪の弁護士というのは、東京の弁護士に比べて、生き生きとした創造的活動をしているように思う。



2002年04月04日(木) 行政は、情報の提供の仕方を工夫して欲しい

 日経首都圏経済に、千葉県が新しい条例などを掲載した県報をホームページに公開し始めたという記事が載っていた。


 私の事務所は東京にあるが、弁護士の業務のエリアは、東京に限らない。
 そのため、それぞれ県や市の条例が必要になるときがある。

 ところが、県や市のホームページには、条例を調べにくいところが多い。

 条例集という形でまとめて掲載し、調べやすいページにして欲しいものである。
 (その意味で、東京都のホームページは調べやすかった)。


 行政は、情報の提供の仕方をもっと工夫して欲しいと思う。


 そういえば、法律も、現在は、総務省から「法令データ提供システム」という形で提供されており、重宝しているが、これも比較的最近のことである。
  



2002年04月03日(水) 取引一任勘定取引は、証券会社にとってもデメリットの方が大きい

 日経7面に、センチュリー証券が取引一任勘定取引をしていたことで、証券監視委が、金融庁に対し、処分勧告したと報道されていた。

 同証券会社は、2年前にも同様の処分勧告を受けていたそうである。


 取引一任勘定取引は証券取引法で明確に禁止されている(平成3年の法改正以前は、通達で禁止されていただけである)。

 それでも、取引一任勘定取引をするのは、証券会社にとっては手数料稼ぎになるからであろう。


 しかし、取引一任勘定取引は、投資家の保護の見地から問題であるだけでなく、証券会社にとってもデメリットの方が大きいと思う。

 なぜなら、どんな株式を買っても儲かるときならいざ知らず、通常は、取引によって顧客が損をする確率の方が高く、損をした客は、証券会社に対して文句をいうに決まっているからである。

 すなわち、取引一任勘定取引は、証券会社からみれば、トラブルの元になるわけであり、それは、取引一任勘定取引したことが公になって、行政処分の対象になる可能性があるだろうし、また、顧客との紛争を抱えることになり、その負担も大きいであろう。


 したがって、損得勘定だけを考えても、証券会社にとっても得ではないことに留意すべきであろう。


 ちなみに、取引一任勘定取引は、前述のように証券取引法で禁止されているが、私法上は原則として有効とするのが判例の大勢である。

 それゆえ、取引一任勘定取引で損失を被った顧客が、取引は証券取引法に違反し無効であるから、証券会社に対し金を返せといっても、それは原則として認められないので、注意が必要である。



2002年04月02日(火) 会社経営陣の監視強化 キーワードは「透明性」

日経6面に、
 「不祥事抑止へ経営陣監視」という見出しで、企業不祥事への反省から、経営改革に向けた動きが世界的に広がっており、そのキーワードは「透明性」であるという記事が載っていた。

 記事の最後に、日本の現状についても触れており、「日本企業の透明性確保の動きは後手に回っている」「商法改正で課題になっていた役員報酬個別開示も見送られた」とのことである。


 そこで、役員報酬の開示について触れてみたい。


 現在、ほとんどの会社が、役員報酬の総額だけを株主総会で決め、個別の役員に対する報酬は、取締役会で決めるのが普通である。

 したがって、どの役員がいくらの役員報酬をもらっているかは、株主には分からない。


 このように、個別の役員報酬は取締役会の決議に委ねてよいかは、従来から議論があり、裁判にまでなっている。

 そして、最高裁は、株主総会の決議で取締役全員の報酬の総額を定めて、その具体的な配分は取締役会の決定に委ねてもよく、株主総会の決議で各取締役の報酬額を個別に定めることまでは必要ないとしている。
(この判例は、商法の勉強をするときに必ず出てくる判例である)


 確かに、取締役というのが、サラリーマンに「取締役」という肩書きがついただけと考えると、給料まで人に見せるのは抵抗があるだろう。

 しかし、取締役が経営者であると考えると、株主から委任されて会社経営を任されているのだから、その報酬を明らかにするのは当然ではないだろうか。



 最高裁判例のように、法律上は、株主総会で、個別の役員報酬を決めることまでは要求していないにしても、当該会社の自主的判断で、個別の役員報酬を開示することは差し支えないはずである。


 今日では、取締役の強力なリーダーシップが要求されている。
 他方、そのような強力な権限があるだけに、第三者によるチェックもまた時代の要請であり、そのためには会社経営の透明性をはかる必要がある。

 それゆえ、取締役は経営者であるという立場を鮮明にして、個別の役員報酬についても開示し、もって、経営の透明化をはかるべきではないだろうか。

 そして、そういった企業こそが、横並び主義で、法改正しない限り、従来どおりのことを踏襲しているだけの企業に比べて、生き残りがはかれる企業であると思う。



2002年04月01日(月) 悪徳商法にご注意

 日経社会面に、悪質商法に目を光らせるために、経済産業省が、警察OBを全国に配置するという記事があった。



 悪質商法については、ときどき相談を受ける。

 最近、目に付いたのが、会社経営に出資するという話である。


 出資金は、100万円程度が多い。

 出資するのだから、数十万円というのはかえって怪しいが、数百万円となると、出資する人も躊躇する。
 それゆえ、100万円というのは手頃な額なのであろう。



 悪徳商法かどうかの見分ける一つのポイントは、配当率が数十パーセント以上を謳っているかどうかである。

 配当を約束するのは、ほとんどの場合、出資法違反となる。

 そういった法律上の問題だけでなく、いまの低金利の中で、数十パーセントの配当をすることが果たして可能かどうかを、冷静に考えてみれば分かるはずである。


 騙されないためには、配当をうたい文句にすること自体怪しいと思っていた方がいいであろう。


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