山ちゃんの仕方がねえさ闘病記
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2012年04月26日(木) "Lady Wu"(林語堂著)を読む

"Lady Wu"(林語堂著)の邦訳を読んだ。
一方的すぎるという批判もあるようだが、のちの世代が書く歴史というのはそういうものなのかもしれない。
とにかく凄い女性だったのだろう。夥しい数の人々を死に追いやったのだから。
以後彼女以外に女性の皇帝は一人も出ていない。
(あの西太后は皇帝にはなっていない。)
とにかく凄いとしか言いようがない。

林 語堂
みすず書房
発売日:1979-02

 中公新書の「則天武后」(外山軍治著)を読んでいたので、武后の人となりはある程度は理解しているつもりでいた。その中で、詳細は林語堂氏の”Lady Wu”の邦訳が出ているから、そちらを参照するよう案内があったので、さっそくAMAZONで探した。初版が1979年(昭和54年)、新装版第1刷がみすず書房から出てたものを入手できた。

 本書を読んで、武后は人間とは全く異質な生物なのではないかと思うに至った。なにしろ人を殺す殺す、完全な殺人鬼である。著者の林氏は第34章に「殺人表」なるものを三つに分けて掲載している。第一表は武后の身内、第二表は唐の皇室関係者、第三表は朝廷の高官や軍の将軍たちである。もちろんこの表に載らない数多の人々をも殺害させた。それもほとんどが濡れ衣、讒訴などによる無実の罪によるものであったという。

 先帝の侍女であったものが次帝に取り入り妃となり、のちに皇后そして皇帝にまで上り詰めた。その後さまざまな改革をした女帝であったが、最後にはクーデターにより失脚し、全く元の唐王朝の制度に復してしまった。この間、唐の人民が味わった苦痛たるや計り知れない。しかし、武后本人にとってはほとんど幸せな一生だったのではないだろうか。

 最近では武后の政治的手腕を認め再評価する動きもあるそうだが、いくら政治能力が優れていても、彼女の非人道的な行為は消えもしなければ許されるものでもない。

 「アラブの春」の話題が世界中を駆け巡っている時、全く民主化の兆しが見えない中国において、こんな人を再評価しているヒマがあったら民主主義に目覚めてほしいものだ。

 とにかかく凄まじい一冊だった。


2012年04月23日(月) 節句が近い

そろそろ五月の節句が近くなったので、妻が玄関の飾りを節句らしく飾りました。
もちろん三月には雛飾りを、お正月にはお正月らしく飾りをします。ささやかですが。

それにこちら八戸地方では、二月に「えんぶり」という郷土芸能のお祭りがあります。
その時はえんぶりを踊る人を太夫といいますが、太夫がかぶる烏帽子のミニチュアを飾ります。

今は手作りの感じがよく出ていると思います。



 20世紀初頭、イギリスの考古学者(私は探検家と思っていたが)オーレル=スタインのキャラバン隊が、敦煌で後に「敦煌漢簡」と呼ばれる大量の木簡を発見する。その書かれている内容から、漢の時代辺境である敦煌の地に、すでに守備隊が配置されていたことがわかったというのだ。

 紀元前から北の守りのために長城を築き、その付近に駐屯し生活を余儀なくされた兵士たちの暮らしぶりや、人事異動から給料まで木簡から明らかになる。

 また、スタインが調査したのであろう、エチナ河流域に連なる「のろし台」の配置など、当時いかに速く情報を都へ伝達するか苦心した跡がうかがえる。

 木簡の読み下し文の説明が多少多く感じられるが、私には実際に木簡を読んでいるような気分になり、楽しく読めた。


2012年04月20日(金) オンリーワン

「こびと」シリーズがはやっているらしい。いろんな種類の「こびと」の本やDVDなんかがあるようだが、孫が持ってきたこの本をみて、ちょっとした違和感をもった。レビューを読む限り、私のような意見は少数派というより私だけである。Facebookに書いたらやっぱりひやかされた。残念ながら、ワンノブゼムではなくオンリーワンのようだ。

ここ「ブクログ」や「AMAZON」のレヴューを見ても肯定的かつ高評価ばかりなので、私はあえて別な面から批評してみたい。

この本のほかに「こびとづかん」、「こびと大百科」、DVDなど、かなりたくさんのシリーズものが出ており、最近では映画化までされるらしく、こどもたちの間ではやっているという。

小二と年長組の孫が遊びに来たとき、一冊ずつ持参したので借りてみた。「こびと」の「捕まえ方」や「飼い方」が「こびと」の種類別に詳細に書かれてある。初めは、新しい発想でなかなか面白いと思った。人気グループのメンバーがブログに書いたこともあって広まったと聞く。

孫たちは我が家に来ると、「こびと」を見つけに行くと言って、家の周りの林や田畑に出かけて行っては「いなかった」と言って帰ってくる。次の日には捕まえる仕掛けを作ると言い出す。

実在しない「こびと」をカテゴライズし、面白おかしく性格付けしているぐらいは絵本の世界とあまり違わないようにもみえるが、これに出てくる「こびと」とはいったい何なのだろう?「虫」ではないだろうし「動物」とも言えない。この場合「こびと」はやはり「小人」であり、「人」としての人格が与えられているのではないだろうか。それを、「捕まえ方」や「飼い方」を詳細な絵や写真で解説するあたりはもはやグロテスクで、私には第二次世界大戦時のナチによるユダヤ人狩りを連想させる。(我が日本国民も他民族に対して似たようなことをした経緯がある。)これはもうこどもたちに見せるものだとは思えない。しかし意外にもこどもたちはこういうものを面白がるし信じやすい。中には獰猛な「こびと」もいるそうで、がんじょうな金網のゲージ(ケージのことか?)に入れて飼えという。近づくと威嚇してくるという。これではもはやメルヘンではない。

他のレヴューによれば、学校で読み聞かせをしているところもあるのだとか。こういうものを学校の教材として用いるのはいかがなものか。中には「自由研究」のテーマにしたいと言い出す子もいるそうだ。実際にやったかどうかはわからないが、それにしても親は何とも思わないのだろうか。

私はこんなものは見たくもないし、こどもたちにも見てほしくない。できることならはやくこのブームが去ってほしいと願う。若者たちのウケを狙ったとしたらそれもありかもしれないが、最初からこどもたちがターゲットだとしたら、ちょっと違うのではないだろうか。


2012年04月11日(水) 水滸伝を読む

最近、水滸伝にはまり中である。ずうっと中国や朝鮮半島の歴史を学んでいるうちに、宋代のあたりで当然のように水滸伝が登場する。中国の四大奇書ともでいわれるのに、三国志演義や西遊記は知っていても、水滸伝についてはまったく知識がなかった。(もう一つは金瓶梅)

そこでまず最初に手をつけたのが、歴史家の大御所・宮崎市定氏の新書「水滸伝ー虚構の中の真実」である。物語の中でも史実を伝えている部分があるのだそうだ。重要な部分を面白く解説しており、本編をぜひ読みたくさせる内容だ。

次に手に取ったのが横山光輝氏のコミック版「水滸伝」、文庫版で全6巻だ。横山氏のコミックは以前三国志全30巻を読んだが、長編なのでさすがに途中飽きてしまったが、この水滸伝は分量的には6巻のみなのでちょうどよいぐらいの長さだ。

そして最後に手掛けるのが吉川幸次郎訳「完訳 水滸伝」(岩波文庫)全10巻である。これはちょっと長いので覚悟がいる。今のところAMAZONで中古をまだ3巻までしか購入していない。全部読みとおす自信がないので、読みながら買い足していこうと思っている。

その次に読むものもすでに決まっている。清代の小説「紅楼夢」である。これも長く、文庫版(平凡社ライブラリー)で12巻もある。第1巻をすでに入手済みだ。もしこれを読み終えることができたら、「金瓶梅」にも手を出してみたい。こちらはさらに長そうなのでコミック版を試してみたい。

 中国四台奇書の読み物の一つと言われる水滸伝。小説でありながら当時の史実に基づいたエピソードが基になっている話が多いのだとか。四代奇書って?三国志演義、西遊記、金瓶梅そしてこの水滸伝だそうだ。

 そこで著者の宮崎氏は、実在の人物と小説の登場人物を検証し、特定を試みたり、実際との相違点を見出したりする。また、当時の政治状況や戦争、事件、役人の官職などに至っては時代考証まで行い、水滸伝の著者の杜撰さを暴いている。我々日本人が見てもちょっとやそっとではわからないが、宮崎氏にかかっては中国人研究者もびっくりだろう。私は「水滸伝」本体は読んでいなかったので、今度ぜひ読まなければならない。とりあえずコミックからはいるのも一考か。いろんな本がでているようなので。

 今回の本はAMAZONで購入した中古本である。昭和47年発行の新書だけあって、当初の値段はなんと280円という表示がきちんと残っていた帯に表示されていた。さすがに古いため背表紙のノリも乾燥硬直していたのか、78から79ページの間でバリっと裂けてしまった。他にも2か所でページが脱落した。修理用製本テープで補修したが、やはり古い本は要注意だ。


岩波文庫で完訳「水滸伝」を読みはじめたが、全体を把握しないと思い、コミックを先に読みはじめた。横山氏の作品はどれも原作に忠実だということで、信頼できるし、飽きさせない。
全部で6巻だが一晩で読んでしまいそうだ。


2012年04月02日(月) 八戸の光星学院決勝進出!

今回の選抜高校野球で、八戸の光星学院がとうとう決勝まで勝ち進んだ。
この際だからぜひとも優勝してほしい。

優勝旗が白河の関を越えたことがないとか、さまざまな言われ方をしてきたのだが、ぜひそのジンクスを破ってほしいものだ。

 歴史書でありながら物語のように読める。宮崎市定氏の真骨頂ともいうべきか。やはり王室の系図や関係地の地図を効果的にちりばめ理解を助ける。

 また、ヨーロッパとの東西比較をし、秦漢帝国をローマ帝国になぞらえ、これらを古代の帝国とみる。ローマ帝国が滅亡したのと中国が三国に分裂した頃をもって中世の始まりとみる。その三国時代から唐の成立・滅亡までを描く。

 難しい言葉や中国独特の表現がたくさん出てくるが、それらを辞書やネットで調べながら読むのも知識を増やすという意味でも有意義というものだ。

 地図と系図のページに付箋を貼ったら、付箋だらけになってしまった。しかし最近の付箋は下部が透明で上の一部分のみ色分けされているものがあるので、色別に図を仕分けできるので便利であった。

 また、皇帝や話題の人物の似顔絵は、ストーリーの想像を膨らませてくれた。400ページを超える大部であるが、まったく飽きさせることがない。さすがに宮崎氏の著作である。


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