Sotto voce
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ゆらゆらと 光を映して煌めく 水際の輝きに引き寄せられる
ふらり、と近づけば 押し寄せる波は あっという間に足元をさらう
近づいちゃいけないのに 圧倒的な存在感に 何故だか惹きつけられて
でもそばにいれば 良くも悪くも胸が騒いで 心安らぐことはなくて
その繰り返しが だんだんあたしを追い詰めて 心の悲鳴を無視できなくなって
そしてあたしは 逃げ出したんだ 大きな渦に巻き込まれて 溺れて息が出来なくなる前に
水際から遠く離れていれば 身を潜めていれば 決して巻き込まれることはない
あたしを見つけないで あなたと言う渦の中に あたしを巻き込まないで
でも あたしを見つけて ここにいることに気付いて どうしても立ち去れずにいることに
心は波のように揺れる 裏腹な気持ちを抱えたまま 水際にたたずみ 時間だけが過ぎる
何と、気の遠くなる時間だろう。
彼はその間、 ずっと一人の女性を想いつづけていたのだ。
想い人に似た 他の女性を伴侶に迎えても 忘れることができず やがて破綻を迎えても
いくつもの偶然や 彼の努力が 19年目にして二人を再び巡り会わせた。
そして今 彼は想い人の隣にいる 想い人には伴侶がいる でも、そばにいてくれるだけでいいのだ、と言う
自分がその人の面影を追い続けてきた 19年と言う年月を思えば 自分が彼女にとっての本命でなくてもいいのだと。
初めてあった時 彼は私にこう言った 「君は僕と似ているから 同じ気持ちを抱いているから 君の気持ちが痛いほどわかる だからなんとかしたかった」
決して自分のものにはならないのに それでもそばにいられればいいと 想い人を見つめ続けて時間だけが過ぎる日々
この先 ずっと繰り返していくのか。 彼も、そして、私も。
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