便蛇民の裏庭
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美容室へ行った。 久しぶりに短めにカットしてもらって てくてくと家に向かって歩いていた。
美容室はうちから歩いて10分もしない。
そんな夕暮れの帰り道 突然胸が熱くなって涙が出てきた。
一人で美容室に行き、一人で帰宅する。 それは今までは当たり前のことだった。
でも今の自分にはとても遠くて 一人で外に出ることは恐ろしくて 知らない人とすれ違うのもなんだか怖い。
今日はその距離を、 足が痛くてもひとりで歩けた。 恐怖心に襲われることなく 視界に歪みが生じることもなく。
嬉しくてたまらなかった。
家に入ると息子が出迎えてくれた。
「ただいま!」 「おかえりー」 「ねぇっ、髪切ってきたけど、どう?」 「…びみょー…」 「び、微妙〜?微妙って?なにぃ?ダメ?かわいくない?」 「あぁ、かわいいかわいい」
そういってTVゲームに戻る息子。
…うわぁぁぁん。
笹子と美味いそばを食べにいく。 食べたあとうちでのほほんとすることに。
「あ、笹子に渡さなくちゃいけないモノがあるんだった!」
そういっていそいそと隣の部屋から取り出してきたのは かわいいクリアピンクのオナホール。
それは以前、ドンキホーテでアダルトグッズを見てる時に オナホールの外側の柔らかさに驚き 指を入れてみたいよねーという会話があって 面白半分にネットで購入した代物である。
指を突っ込もうとする笹子さん。
「濡れてない時の自分みたいに全然指が入らん」 「ではローションを入れましょう」 (なぜ持ってるかは訊いちゃダメー)
と持ってきて穴に挿入…しようと思ったら どこが穴なんだかわからない。 ま、とりあえずその辺にぬちゅるっと。 そして念願の指挿入。
ぬちゅるぬちゅると遊んでみる笹子さん。 その指はろーしょんでネパネパである。
きっとこんなものをプレゼントする友達なんて他にいないだろう。
…夏の昼下がり、主婦二人がする危険な遊び。 こんな友達いてよかった♪
子供たちにせがまれてスピカ大アマゾン展を見に行った。 珍しいらしい動物たちがたくさんいた。
これ、ペットショップでも見れるよね? ショップのほうが品種豊富だよね? とかは言ってはいけない台詞だったようなので黙って見てた。
世界のふくろうコーナーはなかなか良かった。 機械仕掛けのような動き。 こちらに無関心な悟ったような顔。
が、しかし。
一羽の大型のふくろうと目が合った。 そのふくろうはじっとこっちを見、 目をどんどん大きく見開いていく。 そして羽毛を膨らませ始める。
「あんたの髪の毛に反応してるんじゃないか?」
そういって相方がぼくの金髪を手で持って膨らませた。 見る見る羽を膨らませて威嚇を始めるふくろう。 相方がぼくをガラスに押し付けてふくろうの反応を見る。 ますます威嚇のふくろう。
「ごめんなさいごめんなさい、何もしないから威嚇しないで」
なぜに謝るのか自分。
なんだか申し訳なくなり怖くなり相方の陰に隠れると ものすごい勢いで首を伸ばしてこっちを見ている。 引っ込めば引っ込むほど首を伸ばしてこっちを見ている。 周囲の客も笑っている。
そしてふくろうコーナーから出るまでに あわせて3羽のふくろうに威嚇をされ 散々じろじろ見られた。
天敵だと思われたのだとしたら いったいなんだと思われたのだろう???
考えてみると、 今精神安定剤を4種類も出されてるんだけど。 しかも副作用として 『口が渇く』 って書かれてるんだけど。
口が渇く病気だから唾液を出すお薬飲んでるのに 別の薬の副作用で口渇いてたらあまり意味がないような。
手足が痛かったころはまだ自分でペットボトルが開けられたのに 足の痛みが和らいで手が強く痛んでる今 ペットボトルが開けられません。 右手の人差し指以外全部感覚おかしい。
お箸を持つのも一苦労ですがな。 怪力自慢だったのに。
外食に出かけると娘が割り箸を割ってくれる。 娘はなにやらしっかりしている。 歯科医のカルテに強い子だと書き込まれるほどに強い子だ。 ぼくが病気になってからますます強くなった気が。
昨日は手を洗おうと思って洗面所へ行き そこで倒れてしまった。
うちの洗面所は危険だ。 相方の砥石や研がれるのを待っているノミなどが置いてある。
その狭いスペースにちょうど良くぼくは倒れた。 相方に抱き起こされ、めちゃめちゃ揺さぶられた。 打ち所が悪かったりしてそんなことされたら危険極まりないのではないか。 とかぼんやり考えた。
体が思うように動いてくれず、 意思に反して砕けてしまう。 そんなわけでぼくは今、 間違った入れ物に入ってしまった気分です。
精神科受診日。
オトコノコが都合つかなくなったので 相方に送ってもらうことになった。
待合室。 隣りで相方は仕事の話をしている。
気温が高いせいなのか頭がくらくらする。 靄がかかったように。
呼吸がしにくい。 体が震える。
視界が歪む。 涙が滲んでくる。
オトコノコや笹子に付き合ってもらった時より とてつもなく待ち時間が長く感じられる。
「この2週間、前の2週間と比べてどうでしたか?」 「あまり良くなかったです」 「どの辺が良くなかったのかな」 「…圧迫感が強かったです。息苦しくて。不安な感じでした」 「それは一日の中でどの時間帯に強く感じるのかな」 「夜ですね」
もともと夜は不安。 幼少時代は父親が、もう少し経ってからは母親が 夜暴れるのでいつでも逃げ出せる体勢で過ごしたから。
「体の痛みはかなりお薬で抑えられてきてるようだけど、 心の痛みがね、多分次々出てきちゃうと思うから。 でも心配要らないからね。 今回は2週間分、不安を抑える薬を追加しておきましょう」
はぁ、これがうわさにきくデパス様ですか。
入院していた病院へ寄る。 入院中親しくなった人々に元気になったねと驚かれる。
そう、足は驚くほど回復して普通に歩けてる。 けど、中身が今にも崩れ出してしまいそう。
Sさんの病室をのぞくと 髪を切ったSさんがベッドに座っていた。
「よお!元気そうだね!あたしは戻ってきちゃったよー」 「いつごろ退院できそうなの?」 「わかんないんだよねぇ」
残りの人生を家族とのんびり過ごすといって退院して行ったSさん。 一緒に撮った写真を渡し病室をあとにする。
みんな笑顔で居て欲しい。 みんな幸せであって欲しい。
行きつけの店に相方とおもむき 途中でマスターの事情で店が休みであると知る。
仕方なく姉妹店を訪ねる。
カウンター内の女の子の年齢を知りたがる相方。 訊くと19歳だという。 店員の女の子に自分が何歳に見えるか聞けという相方。 相方がオヤジであることを痛感する。
「27歳ですかぁ?」
いやぁ、優しいねぇきみ。 ありがとうありがとう。
元来酒の弱い相方、もうよたっている。
「おれねぇ、この辺に来たことあるんだよ」 「ふーん」 「っていってもキャバクラ?ピンサロか」 「そうなんだぁ。面白い?」 「って言うか、抜ければいいわけだから」 「そうだろうけどさ」 「しかもその店は1回で2度抜いてもらえるんだよ」
そっか。 ぼくに対して勃たないきみは、他の子になら勃つわけか。 悲しいとか何とかそんなんはなく。 ただ、虚しい感じ。
酒に弱い相方に気遣って 早々に退去することに。
スタッフくんに心配されながら車に乗り込む。
このまま事故って死んでもいいよ。 何がなんだかわからないよ。 ぼくはぼくが欲しているものすらわからない。
天候のせいか痛みが強い。 それよりも孤独が強い。 布団の中でわけもなく泣くよりは外に出た方がよい。
そんな時に笹子からお誘い。 そりゃもう喜んでついていくよ!
そんなわけで 笹子と( ̄毳 ̄)さんと3人で行きつけの店へ。
昨日はスタッフくんが焼いてくれた玉子焼きがぼくの口にした食べ物で あと胃に収まったのはカクテル4杯と薬。
オトコノコが一緒ではない時は意識がしっかりしている。 オトコノコが居ると気の緩みですぐ酔ってしまうけど。
ちゅうことはこのフラフラは薬のせいか? 痩せ過ぎて貧血なせいか? 体重が45キロ台になり高校時代に買ったベルボトムがはけるようになってしまった。
笹子が帰ってしまったあと( ̄毳 ̄)さんと飲み続けた。
ぼくと( ̄毳 ̄)さんは植物仲間。 一緒に植物園へ行ったり植物の画像を交換したりする仲だ。 そして笹子と( ̄毳 ̄)さんとぼくは手打ち讃岐うどん仲間でもある。 よくわからない仲間だ。 ヤクザと情婦とおつきのチンピラに見えなくもない3人だ。
スタッフくんが言い難そうに言った。
「このお店、今月で閉めるんです」 「えーーーーー!本当に?」 「姉妹店の近くに移転することになったんですよ。 でもこんな雰囲気のお店になる予定ですから」
いくらそっくりなお店を作っても、 もうそこは便ちゃんお気に入りのお店とは別のお店なのだ。
一人で夜中にふらりと出かけられるお店。 常連さん以外来ないような場所。
だけど今度のお店の場所は ちょっと一人でふらりとはいけない。
とってもさびしい。 なので今月は行きつけの店に行きつけることにする。 勝手に決めた。
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