標高1100メートルのこのあたりは、空気がひんやりとして気持ちがいい。 平地で、35、6°もあるときは、さすがに、少し暑いなと思うが、直射日光に当たらなければ、汗をかくほどではない。 夏の暑さを避けるために、ここに来るようになってもう、26年になる。 最初あまり家が建っていなかったが、今年になって、向かい側に二軒建ち、だいぶ眺望が変わった。 左の一軒は、私たちより少し年代が上の夫婦、ベンツを駆って、大きな犬を二頭伴ってきている。 立派な山荘を建て、張り切っている。 車のナンバーで、東京の人らしいと判るが、まだ、挨拶をしただけである。 右側は、私たちと同世代くらいの奥さん、「娘の名前で建てました」なんて話をしていた。 精力的に、動き回っている。 雨で工事が遅れたらしく、まだ水が濁っているからとかで、先日、大きなペットボトル三本を持って、炊事用の水をもらいに来た。 飲み水は買っているが、お米をといだり、顔を洗ったりの水がほしかったらしい。 こちらも、新しい家で、何かと設えに凝っているようだ。 我が家の西側には、孫二人を預かって、代わる代わるあやす夫婦の声。 私たちより少し若そうだが、娘夫婦は、週日は仕事で別のところにいるらしい。 昨日からは、孫の親たちも来て、にぎやかである。 ここは車でなくては、不便な場所。 25年前は、子供連れの家族が多かったので、真夏は、人の声が聞こえて、結構にぎやかだった。 山荘の売り買いも、活発な時期。 10年くらいの間に、それも、ほとんど落ち着き、思い思いのセカンドライフを営んでいる。 ほとんど改装も、お金もかけていない人もいれば、周りの雰囲気と違う豪華な家を建てる人もいる。 真夏には、野外で臨時の市が立ったり、ミニコンサートが開かれたりする。 車で行けるところに、美術館、博物館もある。 今朝は散歩を兼ねて、歩いて10分の場所にある朝市に行った。 ちょうど地元の人が、臼と杵で、お餅を搗いていた。 つきたてを食べさせるというので、朝ご飯の代わりに、2個入り一皿100円のお餅を食べてきた。 25年前、働き盛りの壮年だった人たちが、次第に老齢期に差し掛かり、子供の世代になったり、遠方から来るには、体力が追いつかなくなったのか、最近はハイシーズンでも、割合に静かである。 家の前を通る人たちも、老夫婦が多い。 東京のある市で、昭和40年代後半から50年代にかけて、大々的に開発した巨大団地が、30年経つ頃から、住民が一斉に老齢化していくことが、話題になっているが、この辺も、同じような現象が起きているのかもしれない。 「車の運転が出来なくなったら、考えよう」と夫は言うが、当分大丈夫そうである。 車の通る音以外は、大きな音もせず、さわやかな風のそよぎを感じながら、過ごしている。
|