沢の螢

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2年ぶりの電話
2003年04月10日(木)

昼前、突然かかってきた電話の主は、この3年ほど、全く顔も合わせていない人だった。
電話も、確か2年前に話したのが最後である。
そのころ彼女はシャンソンに凝っていて、ステージデビューを果たすと言って張り切っていたのだった。
私は、その前から始まったある人とのつき合いに、心がとらわれていて、そんなことを話したくて電話したのだと思う。
「恋というわけじゃないんだけど、何だかいつも心に引っかかってるの」というと、彼女はとたんに不機嫌になり、「それがどうしたの。結構なことじゃない」と言い、重ねて私が、「ほかのことを考えたいのに、出来なくなっちゃってるの」というと、「じゃ、止めれば」と、冷たく言い放ったのだった。
私は、彼女を、心の通じる友達だと思っていたので、話をきいてもらうことで、気持ちが少しはすっきりするのではないかと思ったから、電話したのだった。
でも、同性の友達の限界がそこでわかった。
女は、自分の友達が、恋などにとらわれることを好まないのである。
つまらないことにうつつを抜かして、と言う批判的な気持ち、その裏には、うらやましさ、嫉妬に似た気持ちもある。
「好きなことで悩んでるんだから、いいじゃないの。とことん突き詰めれば」と彼女は言って、それきり音沙汰がなくなってしまった。
私は年賀状を出したのに、返事も来なかった。
それだけの友達だったのだと思い、私も、それきり電話も掛けなかった。
それが、前触れなしに、今日、かかってきたのだった。
「お元気?」という挨拶に始まって、遣り取りしているうちに、彼女は私に、共通の知人の消息を聞きたくて、電話してきたのだとわかった。
「インターネットですぐ調べられるけど、調べましょうか」というと、連絡先はわかっているので、自分で調べるからいいという。
それなら何で、と思ったが、彼女も、2年前の電話の遣り取りで、後味の悪い切り方をしたのが、気になっていたのかなと思った。
2年も経てば、それがどんな内容だったかも、忘れるくらいのことだし、原因になった事柄そのものが、消滅してしまっている。
2年の間に、彼女は連れ合いの大病や、その心労で声が出なくなり、シャンソンも止めてしまったなどの変化があったらしかった。
「いろいろ大変だったわね」と私はいい、彼女の幸せを祈って電話を切った。

ともだちの意味確かむる四月かな 



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