とける、けぶる夕日に とける、せばまる部屋に とける、ねばつく雨音に とけて、ほどけて、なくなって
湿ったシーツがかび臭くなる頃 ようやくぼくは目が覚めて カーテンから差し込む月のひかりに ようやくぼくは目が覚めて 幼児期特有の万能性を じゅうはちまで持ち続けていた
一度失敗しても 二度目はなかった この部屋の底で 二度目の夏を迎え
羽化する蝉の真似をしていたんだ ずっと閉じこもっていたけれど もう大丈夫だよと、片頬で笑う ひび割れた背としがみ付いた柱の心地よさで いつまでも飛び立てずに
まな板には 美しく剥かれた白桃が二つ けれど僕は口をつけない さみしいので、羽虫を飼うことにしたのだ 洗面台には無造作にすいかが投げ出されている
|