たたく、という言葉がある。 たたいても、誰も痛まないのに、なんとなく蔑んでる。
致命的一撃を食らわせるなら、面と向かって突き刺せばいい。 叩くとは、ぬるく、甘く、あいまいな、勝敗を決することもできない、子供じみた、自己肯定の主張でしかない。
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気づいたら、どこを歩いていたんだろう。 立ち位置をなくしてこの町で、僕はどこにいるんだろう。 部屋が狭くなっていく。 歪曲した壁は次第に私を包み、世界との隔絶を、一体化へと変えていく。
電気蛍の見る夢は、枯れ草の上に露となって 水子の祭りが始まる夜に、私はベランダに並び 沈み込んでいく月の腹を、軽く指で押していた。
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