自転車か灯火し始めるほどの頃合いに帰宅の途につけるという恵まれた環境を噛みしめて今日も薄暗くなってゆく街を歩く。空を見るのが好きだ。ほとんど薄まった青と白でできた西の空に、橙と桃色のあいだに染まる広がりがあり、その手前には幾筋もの電線が交差している。もしも若い頃、10代やそこらだったら、完璧な美しさを求めて、それらを邪魔だと感じたろうか。今は、それもひとの造りしものとして、かすかに愛しさすら覚えている自分の存在に気付く。瑕疵のないものなど、ほんとうに少ないのだきっと。そんなことをやっとのことで受け入れ始めてる。何度となく、こんな年になってようやく、ってため息が出そうになるけど、しょうがないのよね。
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