a Day in Our Life


2002年04月02日(火) ユズりんさんに続けて頂きました・田中様視点。


 ダンスの練習をしながら、田口の顔を見た。
 踊っている時のこいつの顔は、普段のあの『営業スマイル』のような顔とは打って変わって大人びて見える。なんてーか。色気があるっていうか。そう、男の色気ってやつ?言いすぎか、それは。俺には劣るけれども、を前につけておこうかな。
 今は長めの田口の髪が、回るに乱れてはちょっとウザそうに髪をかきあげる姿なんて、男の俺が見てもちょっとドキッとする。でも、じっと観察していた、俺の目が合った瞬間に「何見てんだよ」といつものあの笑顔に戻る。ドキドキしている俺の心臓は落ち着いて安心すると共に、もう少し見たかったな、と残念だなとも思う。
 何しろ、田口は笑っている時以外の顔はポーカーフェイスで感情が読み取れないし。っていうか、笑っている顔も時々本気で笑っているのか、ただそのような顔をしているだけなのかすら分からない時もある。
 付き合いが長くなって、ようやく雰囲気で奴の意思表示を読み取れるようになってきたものの、まだまだ分からない。俺はどちらかというと結構感情が表に出る方だから、尚更そう思うのかもしれない。
 こんなポーカーフェイスな田口に、違う顔をさせるやつは一体どんなヤツなんだろうな。そんな事を考えていた事があった。


 だけれども、意外にも『ヤツ』は近くにいた。
 しかも同じグループメンバー。 


 ほら、来た。ドアを蹴破る勢いで開けて来て・・・。


「田口!」
 一直線、ズカズカズカと勢い良く歩いてきて、田口のまん前に座り込む。
 そいつはほっぺたをぷぅ〜と膨らまして、
「仁とケンカした」
 と一言、言った。
 そいつは、俺とそして田口、同じグループのメンバーで亀梨だった。いつもは同じグループの仁と呼ばれている赤西と一緒にいるのだが、ケンカをしたり気まずくなったりすると、こうして田口の元に決まって現れてくる。そして、言いたい事を言って、喋るだけ喋って亀梨が落ち着いたのを見計らって田口が一言二言、話し掛ける。
 頭を撫でたり、笑いかけたり。
 そうすると、亀梨はにっこり笑って、仁の元に返っていく。それが、今まで俺が見てきた二人の行動パターンだ。
 なんていうか・・・この光景を初めて見た時は『田口はなんて聞き上手で世話上手なんだろう』と思っていた。腹が立って怒っている人間をなだめるなんてなかなかできるもんじゃない。凄いな、と思っていた、田口に。俺はあんまりそう言うのは好きじゃないし、得意でも無いし。

 だけれども、ある時気がついた。何度かこの二人を見ているうちに、田口の表情って言うの?いつもより柔らかいっていうか。
 俺とか上田とかと話している時と、違う顔。明らかに。 
 その証拠に、オコチャマ思想の中丸(本人はすっごい否定するが俺はそう思う。)ですら、
「田口ってあんな顔するんだ」
 と言うくらいだしな。田口自身は気がついていないのかもしれない。
 亀梨と話をするのが楽しくて、嬉しくて、でもちょっと切なそうな顔。
 ・・・・・もしかしたら。田口は亀梨の事が好きなんじゃないかな、と思う。
 憶測で人を判断するのは嫌いなので、誰にもこの事は言っていないけれども、多分、当たっていると思う。 


 あ、亀梨が立ち上がった。
 仁の所に行くんだろう。あの晴れ晴れとした顔。「飛び切りの」笑顔で
「田口、ありがとな」
 と言って、去っていった。そして、亀梨の去った後の田口。
 ・・・・背中が寂しいって言ってるぞ、田口。ため息までついちゃって。
 よりによって、亀梨とはな。仁がいるを分かってて好きになっちゃったのか?
 道は険しいぞ、田口。心の中でそうツッコム俺様、田中様。
 田口の背中があんまりにも寂しそうだったから、ちょっとチョッカイを出してみた。

「どーした、田口。 なんか、さみしそーじゃん」

 ゆっくりと、田口は振り返る。
「別に。」
 別にって顔じゃないでしょ。ホント、素直じゃねーなぁ。
 結構、ヘコんでる顔してるぞ、お前、・・・なんて言ったら怒りそうな気がしたので、これも俺の心の中で処理。
「何があったか知らないけどさ、あんま溜め込むなよ」
「なんで?」
「元気ねぇゾ、背中が。」
「そう?そりゃいけないね。」
 いつもの笑顔に戻って、背筋をピーンと伸ばす。
「ん〜?もしかして、誰かに構って欲しい病なのか〜?」
「そんなんじゃないよ。っていうか、もしそうであっても聖にはしてもらいたくないね〜、俺。」
「んだと〜!コノヤロウ。」
 笑いながら、じゃれ合って軽くひじをキめてみたり、逆にどつかれたり、俺と田口は(たまにどうでも良い事ではしゃぎあう)ガキの様だった。
 すると、携帯に電話が入った。呼び出しを食らってしまう。呼び出しって言っても、悪いほうじゃない、と思うけど。
「悪い、ちょっと行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
 出来ればもう少しこの場にいたかった。結構良い雰囲気だったし、田口といるのが楽しかったし。でも、仕方ない。仕事だしな。
 俺は、軽く右手を挙げて手を振り、上着を持ってその場から立ち去った。



 なんてこった。
 用事なんてなんて事無かった、そんな事携帯で言えばすむような事だろう、的な事だった。
 あぁ、めんどくさい。行って、あっという間に終わってしまった用事にブツブツ文句を言いながら、俺は元来た道を歩いていた。
 すると、声が聞こえる。盗み聞きしているわけじゃない。
 (いや、聞こえているんだから仕方がないんだって、ホント。言い訳くさいって?気のせい気のせい) 
 しかも、聞き覚えがある・・・この声。

「別に謝ってもらわなくても結構だよ。」
「亀はおれとかどうでもいいんだろ。」
「田口のところに戻れば!」

 ・・・・・・・・・・・。うわ、もしかして、仁・・・そして亀・・・?

 暫く、どうしようもないくらいの沈黙が続いた。
 俺は、いてもたってもいられなくなって緩めていた歩幅を早めようとした。
 その時。

「・・・・・もう、いい。いいもん、そんなに言うなら、田口ん所に行く!」

 俺の目の前でバタン、と思いきりドアを開ける。
 危うく、鼻を打つところだった・・。亀梨・・危ないなぁ・・・。
 子供じゃないか、行動が!あぁ、全く。

 しかし、後ろを一度も振り返る事も無く、亀梨はドンドンと突き進んでいく。
 心なしか・・・肩が震えている様な気がした。 
 もちろん、そんな亀梨に声をかけられることなどできず。はぁ・・・。
 俺はそ〜・・・っと部屋の中を覗き込んだ。・・・やっぱりだ。赤西だ。下をうつむいて、肩を落している。さっきの会話から見ると、二人のケンカだろうな。
 でも、田口がどうとか・・・。まるで、三角関係の恋人達の痴話ゲンカみたいじゃん。ははは。笑えねぇ。

 いや・・・でも・・・・もしかして、赤西も・・・。






 うわ。
 ということは、亀梨、大モテ?!





 いや、いやいや、そう言うことじゃなく。
 仁は前から分かっていた事じゃないか。なんだ、前からって。
 落ち着け俺。ハイド俺!ジキル俺!! 
 落ち着くどころか、動揺しまくっている。だめじゃん、俺。
 不審行動が目に付いたのか、赤西が俺に声をかけてきた。

「見られちゃった?」

 えぇ、ばっちりと。聞こえてました。

「ん〜ちょっとだけ。」

 嘘付け、俺。

「どうしてあんな事、言っちゃうかな・・・。」
「ちょっと、あれは言いすぎかなぁ・・・。」
「あ、やっぱり聞こえてた?」
「え、あ、違う違う。最後の所だけ。」
「・・・・亀梨・・・また怒らせちゃったよ。」
「だろうね・・・。」
 そして、また田口のところにいってるんだろうな、とはさすがに言えなかった。トドメをさしてしまいそうだったし。
「素直に謝っちゃえば? 先に。」
「・・・。」
「何事も、早目が肝心だぜ、仁。」
「でも・・・。」
「デモじゃない。自分でも悪いと思ったことはさっさと謝る!
 でないと、どんどん気まずくなって何も言えなくなっちまうぞ。」

「・・・・・・るよ。」
 小さな声で、仁は言った。

「え?何?」
「ううん、なんでもない。有難う、ゴメンネ。」
「は、何が。」
「変なところみせちゃって。その上相談まで。」
「俺は何もしてないだろ。ただ、勝手に喋っただけ。」

 全く、本当に思いつくまま喋っただけ。

「でも、聖の言ってることは合ってる。正しいよ。」

 そう言うと、また俯いて、黙り込んでしまった。
 きっと、葛藤しているんだろう、亀梨のことで。俺は表向きな事を勝手に判断して勝手に話しているだけだ。でも、亀梨と赤西の二人の間に何が起こったのかまでは分からない。どんなに正論を説こうとも、その正論がすべての人に当てはまるとは限らない。

「本当は今すぐにでも謝りたいんだろう、仁。」
「うん。」
「即答かよ。」
「うん。」
「・・・まぁ、独りで考える時間も大事だよな」
「・・うん。ごめん。」
「良いって事。それじゃ、また。仕事さぼんなよ!」
「まさか、お前じゃあるまいし、田中様」
「サボった事ねぇっての!」
「え〜そうだっけ〜」
 そんな他愛の無い会話で俺は赤西と分かれた。思わずため息が出た。
 仕事の影響か、それともおかげさまでと言うべきか。
 俺らはどんな時でも『笑顔』が簡単に作れてしまう。
 仁の笑顔が、とても辛かった。俺にまで気を使う事無いと思うんだけどな。

 仁も仁で大変らしい。でも、俺が向かうこの先にも悩み人が・・・。

 こっそりと、裏口から入る。怖くて中に入れなかったのでバックに入ったままでいた。ここでもまた、盗み聞きしている訳でも無いのに声が聞こえる。
 しょうがないだろ、カバン、置きっぱなしなんだ。
 しかも、田口が座ってるところの近くに。あぁぁ。

 思ったとおり声は、田口と亀梨だ。
 亀梨の声のテンションは先ほどの怒り狂ったテンションとは違い、落ち着いた声だった。田口に一通り愚痴を聞いてもらって、いつものように頭を撫でてもらって、すっきりしているんだろう。
「ありがとう、田口」
「良かった、亀梨は元気なほうが良いよ。」
「・・・田口のおかげだよ。やっぱり、田口はあったかくていいな」
 二人の会話。仁が聞いたら卒倒しそうだ。倒れこんで二度と起き上がれ無いかもしれない。
 完全K.O! イエー!! って、違う。
 ここだけ聞いたらまるで恋人だ。今までのいきさつをすべてみてきた俺だからそう思うのかもしれないが。 
 かたん、と音がする。どちらかが外に出かけるみたいだ。

「田口、サンキュ!ダイスキダゼ!」

 バタン、とドアの閉まる音。・・・・・・亀梨? 亀梨君・・・今のは一体。
 そうか、そうだ。御礼だ、御礼。なだめてくれた御礼。
 またもやパニック寸前の俺。何緊張してんだ、俺は。
 今のはアウトだよなぁ・・・。罪なヤツだ、亀梨。田口、生きてる?

 バックで動けなくなった俺は、ただひたすら固まって石のように座っているしかなかった。とにかく、はやく田口に退場して欲しかった。
 期待通り、田口が出ていく気配がある。暫く間があって、バタンとドアの音がした。

「はぁ〜〜〜」

 どっと汗が出た。疲れた。何故俺が。こつん、と後頭部を壁にぶつけて後ろに縋る。
 なんだか、今日は大変だったような気がする。

 俺自体はなんでもなかったはずなのに、何でこんなに疲れているんだ。

 もう帰ろう・・・ゆっくりやすみたい。

 背伸びを一回グッとして、立ち上がった。
 カバンをあそこにさえ置かなければ一部始終見ることは無かったんだけど・・・。仕方ない、自分の責任さ。一人提議、一人釈明、一人納得。笑うしかない。
 ふらり、と歩き出す。バックから出て、カバンを取ったその瞬間。

 ガチャリ。

「た 田口・・・。」
「聖・・・?え?」
「お、俺今日は帰るわ」
「え?お前、何処から入ったわけ?」
「え、どこってそりゃーおまえ・・」
「忘れ物とりに着たんだけどさ、・・・誰ともすれ違わなかったんだけど・・・」
「サイナラ〜」

 効果音:スタコラサッサ

 まさしくそんな感じでおれは逃げるようにその場を去った。
 気分でいた。
 がっしりと、捕まれていた。俺のパーカーが。

 捕まった!
 多分、今一番捕まってはマズイ人に!!

「聖君、君とは一度ゆっくり話したいと思っていたんだ」
「あはは〜 それは光栄な事で。でもそんなにお気遣い無く・・・。」
「いや、ぜんっぜん。気なんか使ってないし。」
「恐れ多い事です〜いや、ほんとなんてーか、おれはなんにも・・・」
「なんにも、なにかな?」

 にっこりと。

 いつもの営業用スマイル以上のスマイルを。
 俺は思った。 
 これは田口じゃない。断言できる。ブラック田口だと。

 その日俺は、ブラック田口が田口から抜けるまでみっちりとしごかれた。
 怖い。ホント怖い。あの笑顔だから尚更怖い。 


 家に帰ったら、ベットがとても、温かく感じた。
 もうしばらく、観察をするのはやめよう、そう固く心に誓った。



■■■キャー田中様!

捏造・口亀にユズりんさんが続けて下さいました相変わらずの痴話喧嘩かつん。これで出てこないのは上田様ただ一人に…(笑)。こんな巻き込まれかつん絶対に嫌だ、と思いながらもただ一人常識人くさい田中様がツボに入って悶えました。キャーす★て★き!やですよねえ…こんなの一部始終見ちゃったら…。しかし読んでるあたしはメラ楽しかったです。ありがとうございました***

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