a Day in Our Life
2002年01月12日(土) |
自覚症状。(近藤→山根/職員室) |
山根が気になって仕方がない。
担任はいたって大真面目に、自由な服装で来い、と言った。 そのときの学校は色んな意味で硬直して、膨張していた。規則と重圧、不満と歪み。だけど分かりやすく反抗するのは躊躇われて、従順なふりをした。俺や俺たちの外側と内側で感情が分裂する。限界は近いと思っていた。それでも私服で学校に行く気にはならなかった。 いや、正確には行けなかったんだ。 バカバカしい、と冷めたふりをして。本当は抵抗するのが怖かったんだろう。クラスの連中も同じようで、みんな当たり前のように制服で登校する。その中で、たったひとりだけ。 山根が制服を脱いで校門に立った。 そのときの俺の感情は、ちょっとひとことでは表せないと思う。 悔しさとか妬みとか。それから少しの憧れ?認めたくなかったから、それを怒りだと解釈した。ムカついてみせることで、この正体不明の苛立ちを説明づけようとした。
山根は私服姿で校門に立つ。
頭の固い先生たちに凄まれても迫られても、地面に足をつけて立っていた。 教室からその横顔を眺めていた。 線の細い体。何度も殴って傷つけた。それは体も、心も。 殴っても目を伏せるばかりで睨みつけることもしなかったその目が、今ははっきりと校舎を睨みつけている。
たったひとりで。
たったひとり、校舎に入ることも許されないで。ただ態度として抵抗を見せる山根に、心臓が冷たくなった。あからさまに意識していた。別に私服で学校に来ることが偉いわけじゃない。だけど山根のそれは勇気だっただろう。勇気があるということは、強いということだ。その強さに惹かれる自分を感じた。 きっと俺は、山根の強さに惹かれた。そう自覚した途端、どうしようもなく山根が好きだと思った。
好きだったんだ。
今更こんなこと、許されるはずもないけれど。 それでも内側から強く突きつける感情。その強烈な存在に、俺は戸惑う。脳の内側から早く早く、と言われている気がする。早くなにをどうするのだろう。 強い力で背中を押された。 その乱暴な衝動に駆られるようにして、言葉よりも先に、体が動いた。俺より背が高いはずの山根は、俺の腕の中でひどく脆く感じた。
「…好きなんだ」
山根の体温を感じながら、やっと口が動いた。
■■■ティービーエスドラマ「職員室」より近藤→山根。
いじめっこグループの中でも近藤のダルさが好きでした(笑)。一番早く嫌気が差して開き直ったのも彼でしたね。彼の焦りはそのまま山根の行動に繋がっていて、ああそれを恋というのよ、と間違ったことを教えたい気になりました。っつかこれ、250字ポエムとはまるきり違う話になってますよ既に。
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