2004年10月28日(木) |
『ラブラブSHOW3』(ヨコヒナ) |
「ミスチル、この頃聞いてへんわ」 「あ、そうなん?ヨコが珍しいやん」
あんなにミスチル大好きやったのに。今は新曲しか聞いてないなんて。珍しいなとか。そない忙しいのかな。ほんなら、このあと時間ある?なんて聞いたらあかんかもな、と思って。「じゃあ」なんて言葉で切って。その場を去ろうとしたとき。
「おい」
いかにも不機嫌そうな、ヨコの声を聞いて。思わず立ち止まる。なんやろとヨコの顔を見ると、想像以上に、不機嫌で。自分が何かしたのかと胸に手をあてるが何も浮かばず。そんなら、この不機嫌なわけは自分以外の何かだろうと思った直後。
「聞いてへんて、言うたやん!」
怒鳴られて。よくわかんないけど。怒ってるヨコがいるから。「そうですね」って相槌うっても怒りは収まってくれず。 答え、間違えたんやろか?と。自分の答えを考えても、落ち度はわからず。ほんなら、ヨコの怒ってるわけは? ミスチルを聞いてないヨコ。ミスチルって、ヨコは車のなかでよう聞いてたな。って、ぼんやり思い出した。
「好きな子が助手席におるときは、ミスチルを流す」
いつか、車を買ったばかりの直後。ヨコが、豪語してたのを思い出す。恋愛ソングとしては最適なミスチルさんの歌。切ない歌を。大好きな彼女が乗ってるときに聞きたいと。ヨコは言ってたはず。 そのミスチルを聞いてないってことは。
「好きな人、おらへんの?」
やから、この頃聞いてへんわと、言いたいんやろと。自信ありげに言うと。
「阿呆!!!」
叫ばれて、しもうた。
やって。抱きしめたいとか。オーバーとか。切ない歌を好む自分に。ヨコもよく同意してて。悲しいけど、ええ歌やもんな。なんて、よく語ってたのを思い出した. それはどれも、片思いの歌ばかりで。ヨコは切ない片思いでもしてるんやろな。なんて思って。 やから、切ないばかりの自分に、なんのコメントもないのかと。そう言いたいんだろうと。思った。
けれど。
「オマエも、聞いてへんのやろ!?」 「え、うん」 「ほんなら、聞きにこようとかいう気持ちはないんか!?」 「え?聞きに!?」 「そうや!聞きたいとか、思わへんのか!?」 「や、そりゃま・・・」
大好きなミスチルですから。いつもで聞いていたいと思いますし。CD忘れたーって思う今でも。もし誰か持ってたら、貸してほしいって思うくらい、好きで聞きたい思いますが。
「ほんなら、今日の10時な」 「え?」
何がって、聞こうとしたけど。不機嫌な顔と鉢合わせして。止めた。ヨコと10年の付き合いのある自分になら、わかる。その言葉の意味。 何がって、待ち合わせがって、ことやん。そんな風に言いたいんだろう言葉をあえて言わせずに。にっこりと微笑む。
「うん、10時な」
よくわからへんけど。ヨコが満足そうに笑ってるから。俺の答えはあってたんやろとほっと安心しながら。
車のなかで好きな子と聞くミスチル、が好きで。 それを聞きにこい、ということの意味を全くわかっていない村上。
『ドライブに行こう』
そう、遠まわしに誘ってるということに、全く気づいていない。
「おまえ、絶対聞きにこいよ!」 「うん、わかってるよ」
ホントに全くわかってない村上は。一人うなづくと。 横山の肩に、顔をうづめた。
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