妄想日記 

2004年10月02日(土) 信五先生とおでかけ(ヒロキ)

今日は、月に一度のおでかけの日。
秋ということもあって。芋掘りに挑戦することになった年長組。みんなでお手繋いで歩いていくというのが、園児のスタイルだけれど。引率をかねて村上と誰かが先頭にだって歩いていくという決まりもあった。


大好きな信五先生と、手を繋いで歩ける!

先頭は、珍しく素早い動きで、牽制しあうやつらをおしのけ、信五先生の手をゲットし、一人独占状態でご満悦の内だった。

「しんご先生V」
「ん?」
「えへへ〜」
さっきから、しんごと呼んでは笑顔の繰り返し。
なにが嬉しいんやろなあなんて思いながらも、笑顔を浮かべる内に合わせて、
笑顔を浮かべるけれど。あきらかに作り笑い、仕事用の笑顔なのに、それすら嬉しそうに受け止める内。
にこにこと、嬉しそうに笑う内は。かわええなあ〜と思い、ぎゅってしたなるな〜なんて、他の園児が聞いたら「ずるいー!」「ひいき!」と大騒ぎしそうなことを思っていた。


「しんごせんせぇ」
「ん?」
「あのね・・・」
顔をよせてくるから、合わせるようにかがんで顔を近づけたら、真っ赤になりながら、耳元に口をよせて。
「大好き!」
言って、頬にちゅうして。嬉しそうに、にこにこ笑う。
頬にちゅうされたのだが、全く気付かず(というか、違和感がなかった)むしろ「かわええ!」とこっちがちゅうしたくなるわ。「ありがとぉ」なんていいながら、頭をぽんぽんとしてやる。



そんな風に、いちゃつきながら(?)歩いていた二人だったが。
「しんご先生!ちょっと手伝って!」
内にしんごを独占されて暴れる生徒の相手をしていた生田が、暴走を押さえられなくなり、しんごに助けを求めてきた。
「なんやねん、も〜」
あまりにも切羽つまった言い方に、いつもの暴走が始まったんやろなあと、問題児園児の扱いになれているしんごは苦笑いしながら、現場に向かおうとしたけれど。
「いやや〜!!」
手を離した途端、内が大きな声をあげた。
なにごとやねんと、振り返ると、内が顔をくしゃくしゃにして、しんごめがけて体当たりしてくる。
「おわ!」
勢いに押されてバランスを崩したしんごが、焦りながらもカラダを支え、体当たりついでに抱き付いてくる内のカラダを受け止めた。
「なんやねん、どないしたん?」
なだめるように背中をさすりながら、内の顔をのぞきこむと。顔をくしゃくしゃにしたまま、手を伸ばしてきた。
抱きしめてほしいんかと、カラダをぎゅっとしたけれど。「違うーー!」と泣き叫ばれて、やったら、この手はなにを意味してんねん。


「手ぇ!!」
「手?」
こくんんと頷く内。この手が、なんやねんと。回した腕を自分の元へ戻して、じっと見つめると。
「ん!」
「ん?」
「ん!」
腕がなんやねん。思いながら、出される内の手にあわせて、肩に回した手を伸ばすと。
「手!繋ぐの!」
いいながら、伸ばされた手をぎゅっと握る。
そして、満足そうに笑って。繋いだ手をぶんぶんふって、歩き始める。





たんに、手が繋ぎたかっただけやったんか?








なんかもう、ほんまにかわええ子やなあ。なんて。「ヒナーー!」と叫ぶ生田の声を無視して思い。今日はずっとついててやろか、なんて。甘やかしたくなったりして。
内には甘いと、またヨコに言われるかもなあ。 




「ん〜!」
手を繋げて、満足そうに笑って。ずんずんと歩く姿は。
「メイみたいや」
隣で聞こえた声に振り返ると、いつのまにいたのか、たっちょんこと大倉がいた。
あいかわらず、読めないやつやわ。

「メイ!?」
「うん、ととろの」
言いながら、その場を離れて歩く大倉。なんでそんな離れてんねんというと、恥ずかしいからと言われ。
「手を繋いでる俺らが?それとも手を繋ぐのか?」
「両方」
言い捨てられて、さすがたっちょんやわ。なんて思った。



「大倉も手つなぐ?」
「今はええわ。2人きりのときにして」


園児らしからぬ答えに、しんごは「若年寄や」と笑った。


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薫 [MAIL]

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