妄想日記 

2004年03月01日(月) 雛祭(ヨコヒナ)

花屋を通った横山は、あるものを見て、立ち止まった。
鮮やかな色の、小さな、花というには小さな、蕾の、花。
今から咲き誇りそうな、それでいて、充分キレイな、鮮やかなピンクの花。
薔薇のように決して主役には慣れないけれど。小さいけれど。キレイで、自分を引きつける姿。
まるで、『彼』のようだと思った。





『ボロニア』







珍しく、横山からのお誘いに。断る理由もなく。誘われるままに、横山の車に乗りこんだ。
ご飯食べたり、映画みたり。いつもの、二人のデートのようでいて。
けれど。移動するたびに、香る。花のにおい。
助手席と運転席の間から香る、甘く、癒されるような香り。

「珍しいなぁ」
「なにが」
「ヨコの車に、花が置いてあるなんて」
いつも、車の匂い消しか、飲みかけのジュースしか置いていない、ドリンクホルダーには、鮮やかなピンクの花が置いてあった。
薔薇のように自己主張するでもなく。コスモスのように存在感をアピールするわけでもなく。
ただ、小さな花を開いて、咲き誇っている。その姿。
名前を聞いても、花に興味がない自分には、わからないけれど。
ピンクで、キレイで。かわいらしいその花が。
今、目の前に。自分の隣で咲いてることを、村上に教えたかった。





おまえに似た、小さな、キレイな花が。
とても、愛しく感じたから。





だから、ガラにもなく、買って、飾ってしまったのだと。
言おうとして・・・ヤメタ。











「キレイやなぁ」
呟いた村上のほうがキレイだと、思ったけれど。
本人に言えるわけがなく。
思った自分が恥ずかしくて。村上の顔を見ないようにして、笑った。

  

 


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薫 [MAIL]

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