「ケーキ食べへん?」 ニッコリ笑顔なプリンスに、よく考えずに頷くと。内は嬉しそうに笑ったあと。小さな、箱を取り出した。 「俺に?」 聞くと、嬉しそうにコクンと頷くから。ありがとぉって答えて、受け取った。 中開けると、お決まりのショートケーキ。生クリームの上に赤い苺が乗ってるもので。 そして、その横には、小さな人形の形した、砂糖菓子。
着物と思われる恰好をした、髪の長い女の子のような、人形。
「お揃い」 言って、嬉しそうに自分の箱のなかを開けると。中には同じように着物を着た、男の子のような、人形。
「なんや、これ?」 「え?ヒナ祭のお祝いケーキです!」 「やから・・・なんで、これ?」
ヒナマツリといえば、女の子のお祝い。 華やかでかわいらしい人形を飾りながら、女の子をお祝いする日、のはず。 その、祝いのケーキを。何故、自分が持っているのだろう。嬉しそうに、渡されるのだろうか?
「ヒナ祭ですよ?」 「やから、わかってるって」 「わかってへんやん!ヒナ、祭ですよ?」 「やから、ヒナマツリやろ?」 「そうです!ヒナちゃんの、祭ですよ?」 「やから・・・・・」 わかってると答えようとして、ふと、気付いた。 内が、強調する部分。『ヒナ』という言葉。 あえて、ヒナ祭ではなく、ヒナちゃんの、祭だと言った理由。
ヒナというあだ名の、自分のお祝いだと。 内は、言いたいんか?
「はい!」 嬉しそうに、備え付けのプラスチックのフォークを差し出す姿は。かわいらしいけど。 そんなんで、ええのかと。ヒナマツリだからと自分のお祝いするために、嬉しそうにケーキを差し出すのは、ええのか? かっこいい、2枚目で売ろうという内には、そういうとこはあかんちゃうか? 阿呆な部分、少しでも隠さなアカンやろ?
なんて思うけど。
「村上くん、あ〜ん」 なんて、ケーキを目の前に、嬉しそうに差し出す内は、本当にかわいくて。 恥ずかしいわ。なんて思いながら、誘われるがままに、口を大きく開けた。
口のなかに広がる、甘い香り。 まるで、今の自分を表してるようだって、苦笑い浮かべた。
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