2002年03月05日(火) |
トラブル(バンビ→アニ?ぶっさん視点) |
「バンビ」 「なんだよ」 「モー子とうまくいってる?」 「はあ?何急に」
バンビはわけわかんないって顔してる。 まあ、当然か。 普通に飲んでるとこにイキナリ聞いたんだしな。 けど急にってわけじゃない。 実はかなり前から思ってた。 ここ数日毎日のようにモー子とデートしてるバンビ見てりゃ、うまくいってるのはわかる。 ここでも人のことお構いなしにイチャイチャしやがってるし。 付き合い初めってこともあるんだろけど、ラブラブそのもので。 そんでついでに童貞卒業したから余計。 見てるこっちが胸焼けするっつーの!ってくらいだ。
けどなあ?
「オマエってさ、馬鹿好きだよな」 「はあ?モー子が馬鹿だっていうのかよ」
いや、それは否定しねえけど。 モー子もかなり馬鹿だと思うし。 それをコイツは「俺が直す!」とか言ってたし。 けど結局振りまわされてるだけじゃん!とか思ったり。
「モー子もだけど。もう一人、とんでもない馬鹿いるだろ」 「はあ?誰・・・・」
誰って、一人しかいないだろ。 どーしようもなく馬鹿で、阿呆で。 いっつも面倒おこしては泣きついてくる馬鹿。 それで落ちこんでもすぐ立ち直っておんなじことする馬鹿。 呆れるくらい、どーしようもないヤツ。 そんなの一人しかいないだろ。 金髪の、見た目軽そうな。 ギャンブル好きで、トラブルメイカー。 そんで泣き虫で、人一倍人の気を使うやつ。
「アニ?」 「そ、アニ。好きだろ?」 「はあ?何いってんの?」
気づいてないのか、それともとぼけてるのか。 どっちかっていうと気づいてないのかもしれない。 だからモー子と付き合うし、アニとも普通に顔合わせてんだろう。 けどなあ。 傍からみてりゃ、一目瞭然。 わかりやすいんだよ、バンビは。
「俺がアニを?はあ?」
本当に気づいてないのな。 つーことは、無意識だったってことか? あんだけあからさまなのになあ。
最初は偶然だと思ってた。 アニといると視線を感じることがあって。 コイツ意外とモてるからなあとか思ってたけど。 それが何回か続くと変に思って。 ま、純のアニキってことでコイツも少なから注目浴びてるからなあ。 そう思ったけど、マスターの店でも視線感じるから変だと思って振り向いたら。
バンビと目が合った。
いや、バンビは俺を見てないから目が合ったっていうか視線の相手がわかったっていうのか。 とにかく、バンビはアニを見てることに気づいた。 それこそずっと、いつでも。 モー子といても、ふとした瞬間にアニを見てるんだよな。 オマエ見すぎだろ!と思うくらい、視線はアニを追ってた。 追いすぎっつーか。 あれって一種の『視姦』ってやつじゃねえ? どーみてもタダ見てるってわけじゃないだろうしなあ。 しかも無意識ってのは、余計タチ悪いだろ。
「オマエ、本当に気づいてねえの?」 「何を」 「自分が誰を見てるかってこと」 「誰を・・・・?」
あ〜あ〜悩みはじめちまったよ。 コイツはホントにダメだわ。 ここで気づかせて良かった。
自分があと半年で死ぬって知ったとき。 何が出来るんだろうって思った。 自分のこともだけど。 コイツラに、俺は何が出来るだろうって思った。 マスターはしっかりしてるし心配ないからいいけど。 問題はバンビとアニだった。 1番安定してねえは心配だわ。 悩みもあるし。 けど、バンビは無事童貞卒業できたしアニも監督業について純とうまくいってるし。 な〜んだよ、万事オッケーってやつ? とか思ったとこに、これに気づいちまったんだよな。 自分でも気づいてないから、どーすることも出来ないだろうし。 思いは溜まっていくだけだ。 ただ見てるだけで終ればいいけどさ。 けど、アニに近づくやつらをみる視線に気づいて。 バンビ見てたら、いつか爆発すんじゃねえかって思った。 ことがことだから、早々に解決しないとヤバイと思った。 ここで気づかせて釘打っとけば、コイツも自粛するだろうしなんとかするだろ。 そう思って、今日ここにきた。
けど、実は。 コイツの気持ちもわからないわけじゃねえんだよな。 ついアニ見ちゃうってのは、わかる。 俺もそうだしな。 危なっかしくって、何すっかわかんねえからってのもあるけど。 それでも、ほっとけなくて。
いつでもどこでも。 気づいたら見つめてる。 何をしても目の前に誰がいても。 視線を向けてしまう。 そこにいるだけで、どうしようもなく心が高ぶって。 落ちつかなくなる。
「ぶっさん?」
・・・・おい! 俺、何思った? ヤバイ。毒されてる気がするぜ・・・・・危ネエ。
「とにかく、二兎追うものは一兎も・・・なんだっけ?」 「・・・・」 「だから!くれぐれも両方ゲットしようなんて思うなよ?」 「・・・・・」
おいおい、なんで無言なんだよ。 なんで悩んでるんだよ。
「わかんないよ・・・」 「おいおい!しっかりしてくれよ〜」 「だって!無意識なんだから仕方ないじゃん!」 「いや、そりゃそうなんだけど」 「それに、止めようとしても止まらないもんだろ!」 「いや・・・・けど・・・」 「だから・・・・わかんないよ!」
そのまま、走りさってしまったバンビ。 俺はただ、呆然とするしかなかった。 もしかして。 俺って、余計なことした? 最悪な方にさせた?
「ああ、やぶへびだ」
マスターがぽつりと呟いた。
それから俺は、バンビが暴走しないことをただひたすら祈るのだった・・・・
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