2001年02月01日(木) |
ラーメン屋シンジくんと健治くん【出会い編】 |
「でさ、アイツがさ〜・・・」
女のハナシとかツマンネエハナシしかしないヤツラ。 いつも集まってるけど、仲間なんて思ってない。 まあ、コイツラみんなそう思ってるだろうけど。 だから平気で裏切るしオンナ取るし。 それが当たり前だからワルイなんて思ってない。 『裏切る』 そんな気はないから胸が痛むとかなるわけない。 けど、その単語を思い浮かべると時々痛む。 ソイツに対して痛むわけじゃない。 ただ、何かに対してすっげ罪悪感に囚われる。 それが何かはわからねえけど・・・・・・ 少なくともこの中にはいない。 仲間じゃないしダチでもない。 ただ、なんとなくツルんでるだけ。
その日もいつもと同じように渋谷でヤツラと遊んで。 親切なオニイチャンから金貰って遊んで。 「腹減ったな〜」 誰かが言ったけど金もつきたししょーがねえからラーメンでも食べるか? そんな軽い気持ちで入ったラーメン屋。 そこで、アイツに出会った。
「でさ、アイツラオレの顔見るなり逃げてやんの」
今度は自慢話かよ・・・・・・ いい加減聞くのもタルくなってぼうっとしてたら、カウンタで働いてるヤツに目が止まった。 オレとタメくらいのヤツが、店長らしいヤツに怒られながらも働いてた。 別になんてことない、よく見る感じだけど、何故か目に付いた。 渋谷とかにいそうなイマドキ風なヤツなのに、そんなのとは全然違って見えた。 なんでだ? 今まではいかにも「がんばってます!」なヤツはうぜぇとバカにしてたけど。 アイツだけはなんかバカにする気が起きなかった。 手つきなんか危なっかしくて、慣れてない感じだけど、それでも真剣にラーメン作ってて。 「お待たせしました!」 声と共に笑顔を浮かべてて・・・・・ その笑顔が、何故か懐かしい感じがした。 ずっと見たかったような・・・・自分に向けてほしかった笑顔・・・ ・・って、なんで過去形なんだよ? 会ったことも話したこともないヤツなのに・・・変だ。 そう思っても、なんか目が話せなくて見ていたらアイツと目が合ってしまった。 (ヤバイ) 慌てて目を逸らした。 けど、別に逸らすことなかったんだよな。 なんかしてるわけでもねえし。コソコソする必要ねえし。 だけど、見られるのが怖かった・・・・・怖かった? よく、わかんねえ・・・・・ぜってえ変だ。 「ちょっと便所」 そう言って立っていったので、オレ一人でラーメン食ってたら、アイツが近づいてきた。 「なあ、ラーメン嫌いなのか?」 イキナリ話しかけられたと思ったらそんな質問をされて、驚いたけどさっきのことがあったからなるべく普通にしてようと思った。 「・・・別に」 「そうかあ?さっきからまずそーに食ってるからさ、気になったんだけど」 「別に・・・・まずいといえばまずいかもしんねえけど」 そう言うとアイツはショックを受けたような顔をした。 まさかオレの言葉で落ちこむとは思わなくて、どうしようかと思っていると急にぱっと顔を上げた。 「オマエ明日もこいよ!絶対オマエにうまいって言わせてやるから!」 「はあ?」 なんでそんなことになったのかわからなくてどう言えばいいのかわからなかった。 「な、明日も絶対来いよ!」 「・・・・・いいけど」 アイツの勢いに思わず返事をしてしまったけど、なんでわざわざ来なきゃいけないんだよ? そう思ってたけど、オレが返事をしたら笑顔を向けられて・・・・・・何も言えなくなった。 (変なヤツ) 上機嫌で戻って行くアイツを見ながら、変と思いながらも明日も来ようとか思ってる自分に気づいた。 (別に・・・ヒマだから、ただそれだけだ)
その気持ちが『逢いたい』からだと気づくのに、そう時間はかからなかった。
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