夜を切り裂き続ける タイヤの擦れる甲高い音 ブレーキをかけているのに どうして停まれないのだろう
交差点を照らすのは 赤くまんまるな光だけ 三色を行き来するはずの信号が 怠慢して点滅ばかりを繰り返す
月は真新しいマンションの陰で すっかりサボりを決め込んで 人間に作られた紛い物が 代わりに道を照らしている
それすらいかにも渋々で わざとらしい咳払いを繰り返す 怠け者ばかりの夜なのだ
まったく困ったご時世である ひとつしかない役割を投げ出しては 他にすることもなかろうに
ひょっとしたら俺以外 誰もが休んでいる夜なのか
ひょっとしたら俺だけが 走り続けている夜なのか
たったいま前を通り過ぎた 隣の家のコロですら 万歳をして犬を休んで寝ていたよ
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