おちょこの日記
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父が死んだ。
雨と雷の夜だった。
何も言わなかった、 だって父も死ぬなんて思っていなかった。 あっという間だった。 入院した次の日に医者からあと10日の命と言われた。
そんな筈はと思っていた。
でも2日後、家族のことが解らなくなった。
いびきのような呼吸、閉じない瞼。
昨日はアタシの名前を呼んだのに。
何時、心臓が止まってもおかしくありません
医者が言った。
ソンナハズハ・・・。
地方にいる兄に電話した。 父さんがもう危ない。
兄は夕方に帰ってきた。 兄ちゃんが帰ってきたよって言ったら反応した。 ハッキリとおぉ!って言った。
アタシの事も母のこともわかった。 お父さん、わかる?って言ったら、うん。と言った。
それが最後。
後はいびきのような呼吸になった。
父の眼は何かを追いかけるようにギョロギョロと動いていた。 必死で息をしていた。
この世界の見納めるかのように。 何かを伝えるように。
7月31日、23時、心拍が乱れた。 必死で父を呼んだ。 父は応えた、アタシの声に、母の声に、兄の声に。 返事はしないけれど聞こえているんだ。
苦しいね、お父さん、 ありがとう、お父さん、こんなにも頑張ってくれて。 もういいって言ってあげたいけどどうか死なないで。
外は叩きつけるような雨、稲妻が絶え間無く光り続けている。
8月1日になった。 父の呼吸が静かになった。 心拍も落ち着いた。
朝まで持つかもと兄が言った。
30分後、父が大きな息をした。
パクッと音を立てて口が閉まった。
そして、もう開かなかった。
まるで、もう、止めた。と言うように。
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