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2006年03月08日(水) |
『夏ノ夜ノ夢』(3/7夜の部) |
村井さん出るし、何となく気にはなったけれど、 メインがタレントにモー娘。に、これ誰?って人ばかり。 松緑は、辰之助時代の「疾風のように」だけしか観たことなく、 その時点では華も感じずイマイチ好みじゃなかったしなあと、 興味に対して¥10,500は高い印象で、パスしてしまった舞台。 でも、別件のチケット探しをしていた時に、ふと半額以下の チケットを見つけ、手に入ってしまったので行ってみました。 3/7夜の部観劇。いつにも増してネタバレです。
『夏ノ夜ノ夢』
<場所>日生劇場G列14番 <時間>1幕18:30〜19:30、2幕19:50〜21:25 <原作>ウィリアム・シェイクスピア <脚色>小池竹見(福田恆存訳より) <演出>加納幸和 <主な出演>パック:尾上松緑 ヘレナ:佐藤江梨子、ハーミア:保田圭 ライサンダー:海東健、デメトリアス:河相我聞 タイターニア:床嶋佳子、オーベロン:村井国夫 イジアス:菅野菜保之、フィロストレイト:辰巳智秋 クィンズ(作家):住田隆、ボトム(ピラマス):マイケル富岡 スナウト(塀):水下きよし、フルート(シスビー):矢代進一 スターヴリング(月):秋葉陽司、スナッグ(獅子):北沢洋 小姓ほか:岡本昭裕
で、この脚本は、どうなのよ? まず、1幕60分かけてかったるく説明、2幕面白い話は 1時間弱で終了、残り40分全部が劇中劇という構成が疑問。 次に、パックがヘレナに軽く恋心を抱いてしまったりとか、 実は彼はオーベロンと人間の間の子供だって設定はともかく、 「パックがいたずらをするのは、目に見えないものを忘れがちな 人間に、自分たちのことを思い出してもらうため」であって、 最後にパックは都会の人たちにも思い出してもらうために、 彼らにいたずらをしかけに都会へ旅立っていくってのは、何? いや、そこまでにも、彼が結構シリアスに主役なんだと 感じていられれば良かったのかもしれないんだけれど、 脚本的にも演技的にも、松緑@パック、やたら影薄いし。
いっそ思いっきり脚色しまくって『パック』とかって タイトルにしちゃってれば、また話は違ったと思うんですよ。 でも、まったく違う。結構普通の『真夏の夜の夢』が進んでる。 それどころか、加納演出らしい、色気満載エロエロが強くって、 いかにもお祭り、無礼講の一夜という印象が前面に出ている 今まで観た中で一番『真夏』らしいくらいの『真夏』の舞台。 もともとは、夜がそうであればあるほど、明けた朝の 政治やら式といったものとの対比が面白いという話だし、 人間(妖精もですが)らしい感情全開の中で動き回るパックの姿は やっぱり「いたずらっ子」という感じなのに、実は昼間の論理で 動いていたんですよと最後にいきなり付け足されても変なだけ。
まあそんな感じで、とにかく脚本に文句はあったけれど、 出演者は、心配していた割りにいい人が多かったです。 床嶋タイターニアの踊りと色気にはゾクゾクさせられたし、 受ける村井オーベロンも、踊らせるのは無理があったけれど、 絡むと色っぽいなぁとうっとり。2幕後半の劇中劇の場面では 突っ込んでは笑わせているらしい声が聞こえない距離で残念。 個人的には、「手に入れた半裸の青年を抱き寄せて満足げ」 という姿を見られたのが、あまりにレアで良かったかも(笑)
そして、心配だった若者4人組は、大健闘! 佐藤ヘレナは少し演技の一本調子さが目立ったけれど、 皆、本当に呆れるほど自分勝手でおバカで単純な子供たち。 イジアスに、(元?)親友は女ったらしだと汚点を言い募る ライサンダーに、そこでうろたえる、どう見ても本当にヘレナを 遊び捨てたんだろうデメトリアス、優越感に満ちたハーミアに、 親友を売るヘレナと、どれもこれもロクな奴らじゃない。 夜になれば、全員やたらと無意味なように服を脱ぎたがり、 誘っておいて拒み、当然の権利のように覆いかぶさり拒まれ。 もう、パックにかき回されても、同情の余地なしな感じなのが、 だんだんそれなりに人間味あふれて愛おしく思えてくる。
彼らが朝、2組のカップルになった時点で素直に「良かった」 「めでたしめでたし」と思えただけに、そこで終わらず、 「素人の」「下手な」を強調しまくった、劇中劇を延々と行い、 果ては妙なパックの話をつけくわえた辺りが、とにかく失敗。 それがなければ、松緑さんもパックの作りようがあったかも? 今はただ、中途半端で芯が取れず、サ行がうまく話せないという 役者としての未熟さをネタに笑いを取ってるだけと感じたし。
森に鳥居が立ち、妖精たちは真っ白なナマハゲ様の衣装と、 和風の部分があるのに対して、お小姓はカボチャパンツ1枚、 オーベロンたちは、ずるずるしたギリシャ風衣装を着こなすと、 いろいろ地域が入り混じった感じの美術。でも、全体的に 幻想的で美しい一貫したイメージが出来ていて、美術には満足。 中央に座ったままのパックに対して、くるくる回る舞台の周囲を 歩かされて森をさまよう若者たちを表した1幕のラストなど、 演出も、全体的に印象的なものが多かっただけに、とにかく、 脚本の出来の悪さが、気になって仕方がない舞台でした。
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