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2006年01月05日(木) 『贋作・罪と罰』(再演)

野田芝居って本当に苦手です。
今まで一度も、いいと思ったことがないどころか、
観終えて帰る時、話が理解できていたためしすらない。
ただミュージカル版の『天翔ける風に』が好きだったので、
その原作再演と聞いて勢いで取ってしまい、後悔しきり。
でも、誰かに譲ってしまおうと思ったところで、
ヤフオクでもチケ掲でもチケットあふれまくりで、
安売りするぐらいならと、自分で観に行ってみました。


『贋作・罪と罰』(再演)

「贋作」座席図 <場所>シアターコクーン
  BL−9番(左図左端中央の黒い点)
 <時間>19:00〜21:10ころ
 <出演>
  三条英:松たか子、才谷梅太郎:古田新太
  都司之助:段田安則、溜水石右衛門:宇梶剛士
  智(妹):美波、聞太左衛門(父):中村まこと
  清(母)、金貸しのおみつ、将軍:野田秀樹
  志士たち他:マギー、小松和重、右近健一、進藤健太郎
  おつば(おみつの妹)、酒場の女将、志士ほか:村岡希美


で、そこそこ満足。嫌じゃなかった。
多分、もともと話を知っているからだけじゃなく、
野田芝居にしては、すごく分かりやすかったんでは?
ひし形の舞台の一辺を正面から観る、一段上がっていて
さえぎるものが何もなく、非常に観やすい席だったし、
台詞も、シャワーみたいに流れ去るものじゃなくて、
割と聞き取りやすくなっていたような気がする。助かった。

それと、松たか子に英役は似合っていたんだと思う。
英的分け方をするなら、ミュージカル版の香寿@英は、
本来、踏み越えることを許されない側の人間だと思った。
努力に努力を重ねて、論理にふさわしくあろうとした感じ。
観ていないけれど、初演版の大竹@英は、きっと真反対。

そして松@英は、本来 許されていない側かもしれないが、
とにかく自分は、許された側だと信じている強さがある。
こういうエキセントリックな信仰が、彼女には似合う。
キンキンと高い声が、追い詰められればられるほど、
自己防衛の裏返しの過剰な攻撃意識と見えてくる。

でも、途中までの一本調子は似合っていたけれど、
最後、牢の中から、才谷に宛てた手紙を読む場面、
包装に使われるプチプチを広げて雪に見立てた上で、
結構きれいなのに、雰囲気が出なかったのは残念。
古田@才谷との食い合わせが意外なほど悪く感じて、
「十字路に立ち・・・」で既に盛り下がってしまったのに、
その後もテンションが変わっていないようでガッカリで。
悪くないんだけど、締めが・・・!と思った。

でも、英の締めがダメであったとしても、
舞台全体としては、観終えてそれなりに満足しました。
多分、ミュージカル版ほど英主役に見えなかったせいかな。
『天翔ける風に』では、苦しんで苦しむ英に共感することに、
話が集約していたような気がしたけれど、この舞台では
聞太や都の生き方のほうが、むしろ共感できたりも。
特に聞太を観るたび、英が思い込みで踏みつけにした
「凡人」は、聞太(や智)のような人々なんだということが、
非常に感じられて、彼の戦いこそが英の知るべきことだと、
無性に英に対して憤りを感じたりしていましたから。

もともと、松たか子の演じるキャラクターに対しては、
「あーはいはい、分かったから、人に迷惑かけないでね」
と感じることが多いところ、思い込みで人まで殺した以上、
私が彼女演じる英を「敵キャラ」と認識してしまうのは、
仕方ないことだったのかな?(苦笑)でも、最後に
聞太が殺されなかったし(私が見逃しただけ?)、
英には「牢から出てきたらもう少し考え直してみ?」と、
そう思いながら、何となく納得して観終わりました。
・・・きっと、間違った観方なんでしょうね・・・。



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