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2005年11月17日(木) |
『ウェストサイドワルツ』 |
<場所>ル・テアトル銀座3列17番 <時間>1幕19:00〜20:05、2幕20:20〜21:35 <作>アーネスト・トンプソン <演出>高瀬久男、<音楽>稲本響 <出演>マーガレット・メアリー:若尾文子、 ロビン:浅野温子、カーラ:寿ひずる サージ:石田圭祐、グレン:戸井勝海
とにかく、若尾文子さんがきれいだったぁ・・・。 かつてはピアニストを目指し、結婚後は教える側に回り、 夫に先立たれてしばらく、今はそれもやめているという、 70歳代の独り暮らしの女性役だったのですが、自分の人生を 生きている誇りと気品が、全身から かもし出されていて。 途中から杖、次に歩行器に頼り、最後は車椅子になるのですが、 それでも独りで立っている美しさが輝いていて。
ただそれは確実に、意固地さにもつながっていました。 寿さんが演じるカーラは、同じマンションに住む独身の 「おせっかいおばちゃん」といった様相の人なのですが、 彼女の好意に対する辛辣な拒否は、さすがにどうよ?と 思う時もないわけではなく。まあカーラは親切だけではなく、 それに付随する図々しさも多分に持っている人で、私なら 門前払いを食らわせるだろうし、仕方がない気もしますが。 ただ一つ、カーラはバイオリンが好きで、少しもめたとしても、 ピアノとアンサンブルをしようとなれば、気持ちは重なって。
ただ、マーガレット・メアリーにしたところで、 そんな、素直に人の親切を受け入れられない自分に、 人ときちんと関われなくなっている自分に苛立ちがないわけでも ないわけで、衝動的に、本屋の掲示板に「同居人求む」という 紙をはりつけて帰ってきたりもします。でも、忘れてしまう。 そんなことをしたことも忘れて、煩わしいなりに寂しさが紛れる カーラとの生活を送っていると、掲示を見たというロビンが現れる。 マーガレット・メアリーは、今までの自分の生活にはありえない、 奇抜な格好をした彼女を受け入れる。
そこまでは良かったんです。頑なで美しいマーガレット・メアリーと、 彼女に憧れ、何くれとなく世話を焼き、アンサンブルできることが 自分の誇りで喜びであるカーラとの生活も感情も理解できた。 最後まで観ても、私には、頑なだったマーガレット・メアリーが、 カーラを受け入れて微笑むまでの話なんだと理解されました。 けれど、キャスト表でロビンはカーラより上に書かれていました。 私にとって「ロビン」とは、ただ、話を動かすための登場人物としか 思えなかったのに、さらにその恋人となると、なぜ実際に 登場する必要があったのか全く理解できなくて悩んでしまって。
ロビンは、話を動かす人物としては良かったです。 女優志願と言いながら、ちっとも稽古などを受けようとはせず、 自分の実力の程度を認識するのが嫌だからなどと言うロビン。 そして時には、「あなたはカーラを利用しているだけだ」などと 直視したくないことを、拘りなくはっきり言ってのけたりもする。 彼女と暮らすことでマーガレット・メアリーが変わっていく姿は、 見えていたのですが、ロビン自身の変化が理解しかねたため、 奇抜な格好ではなくドレスを着て、恋人としてグレンを連れて やってきた彼女は、理解できませんでした。しかも、現れたのが 「弁護士」という職業以外に何の魅力も感じられない、むしろ、 人間としてダメだろうと思われる言動の男って、どうなのよ?
・・・というわけで、私にとっては何が起こったのやら 理解できないままに、わずかな戸井さんの出演時間は去り、 ロビンも去り、マンションの雑用をしながら彼女たちをずっと 見守ってくれていたサージも去り、あっという間に2人になって。 もはやピアノも弾けなくなって長いすに横たわるマーガレットと カーラの微笑むエンディングは、人との関わり方に関しては、 最も、マーガレットに共感する私にとってはホッとするものでした。 熊ん蜂の飛行やチェルニー、キラキラ星、子犬のワルツなど、 馴染み深い優しい音楽を挿みながらゆったりと進行する舞台は、 エンディングまで、割と好きだったのですが、どうしても途中が 全く理解できなかったところが、不完全燃焼になっています。
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