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2004年04月09日(金) 『屋根の上のヴァイオリン弾き』『LYNX』

毎日観劇1週間の締めは、マチソワ。
真面目に、どう考えても さすがにしんどいのですが、
よりにもよって、連れとの関係で3エリザ入れてしまった週に
駒田さんと戸井さんと阿佐スパが入ってきてしまったから。
しかも、都合でアツヒロも入り込んできて、もうわやくちゃ。
救いなのは、今日の夜舞台も1時間35分と短いことかな。
8本中2本が2時間未満ってのは、本当に助かりました。
・・・って、変な観方をしすぎですよね、私。はぁ。


『屋根の上のヴァイオリン弾き』

キャストは火曜日と同じで。
前回は残業で1時間遅れたから今回は遅れないぞー!と
張り切って出かけたら、電車が止まって今度は10分遅刻(泣)
私は今回の♪しきたり には縁がないらしいです。

でも、観たかった3人娘のお掃除歌には十分間に合って。
ここの夢見る幸せなお嬢さんたちが見ていて好きなんです。
この場面の「素直に愛されて育ってきた可愛いお嬢さん」は
知念さん、似合ってたかも。逆に妹の笹本チャヴァは、
しっかりしすぎているのが、ちょっと気にかかる感じ。
「ここらで本を読む珍しい女の子」だから、造形としては
おかしくないのかもしれないけど、ホーデルとのバランスが
奇妙。姉に見えるのではないけど、姉妹に見えない。

後半になるとやっぱり、ホーデルがあまり何も考えてない
幸せな愛らしいお嬢さんでしかないのに不満が募るし、
頭が良く物を考え、芯のしっかりしたチャヴァが、
決意してロシア人と結婚し、エンディングではアナテフカを
出て行く決意をするのは とても納得できるようになる。
要は2人とも、この舞台を通しての娘の成長を
きちんと演じきれてないってことなのかなという気も。
いや、知念さんがダメなだけで、チャヴァの造形を
それに合わせて変えるのは変、なのかもしれないけれど。

前回ダメだった杉田パーチックは良くなってたと思う。
演技はともかく、普通に話しているときの声が若くなった。
それだけでも随分、革命に身を投じるらしさが増えたかも。
でも、歌いだすとまた、こもった声になってしまうし演技も変。
せめて、髪型やドーランの色を変えるだけでも違うだろうに。

「ユダヤらしさ」は、やっぱり今回、ほとんどないと思う。
私が引っかかったのは、別れる時にイェンテが言う
「仲間を殖やすよ」ぐらいかな。(こう変換されて聞こえる)
でも、それがこの舞台への共感度を高めていたと思う。
すごくいいパパ。ママ。娘たち。小さな村の共同体。
素朴な尊敬を集める司祭様。代々伝わる「しきたり」。

観終わって心に最も残るのが「今になって愛してると
言えるのはいいもの」という歌詞だったりする辺りが、
かつて日本にもあったはずのつながりを思い起こさせ、
なんとも温かく、いい雰囲気の舞台を作り出したと思う。
帝劇に比べて横幅の狭い舞台をさらに半円形に区切って
小さな世界を作り出し、しかし奥行きは広く何もない風景。
そこに夕焼けなどが映し出される美術も、郷愁を誘う。
あれとかこれとか、文句つけたらいろいろあるけれど、
じんわり泣ける、いい舞台だったと思います。


『LYNX』
<構成・演出>鈴木勝秀
<出演>
オガワ:佐藤アツヒロ、エンドウ:橋本さとし、
アマリ(薬の売人):伊藤ヨタロウ、イタバシ先生:佐藤誓、
ウサミ(職安の職員、オガワの小学校時代の同級生):鈴木浩介

実は、よく分からなかったんですけど。
でも何となく、かっこいい気がしてしまう舞台。
円形舞台にある2本の道が、オガワの部屋の奥と外に通じる。
椅子にもなる方形のものが2つ。ホワイトノイズを出す
TVの台になったり、幻覚の虫を閉じ込めた瓶が置かれたり。
オガワが撒く殺虫剤で、舞台はいつも少し曇っている。
オープニングで天井から垂れてきた、彼をつなぐ鎖。
エンディングで断ち切られる。整った顔立ちの男2人が
暗めのライトに照らされて向かい合う。会話を交わす。

昼に観てきた舞台とは思い切り逆の、他との関係性が
すべて切れてしまった男の話であることは分かった。
やたらとサイバースペースという言葉を口に出して、
そちらとの関係性ばかりがつながっているオガワ。
邪魔にならない相手というエンドウは、彼の鏡像。

いつも神経を逆立てて、人間社会に戻ろうとしない
オガワの姿が「LYNX=山猫」なんだろうと思う。
どうしても、アッシュ・リンクス(『BANANA FISH』
という漫画の登場人物)を思い出してしまうのは、
少女漫画で育っている私としては仕方ないけれど、
彼にはアッシュの強さはない。薬などから来る
幻覚の、自分にとってだけの真実に囲まれて生き、
むき出しの神経に触られるイライラ感ばかりが強い。

私が感じ取ったのは、それがすべて。
アツヒロの演技にある繊細さと防衛本能がそのまま現れて、
当て書きかと思うほど似合っていた。(初演は別キャスト)
彼にある攻撃性の部分はエンドウが請け負っていて、
ためらいのない残酷さが整った肢体とあいまって、
孤独を際立たせ、美しいとすら感じてしまった。

何も変わらないままの死というエンディングが、彼に
とって満足の行くものであったならいいなと何故か思った。
エンドウの死体の上にかぶさるようにして倒れた
オガワが何となく幸せそうに見えたのは、
喜んでいいことなのか、私には分からないのですが。
でもちょっとだけ感じて不安になるのは、私の生活は、
『屋根の上の〜』より『LYNX』に近いってことかもしれません。



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