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2004年02月11日(水) |
『カメレオンズ・リップ』 |
幕:1幕110分、休憩15分、2幕70分 席:C-1 作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 出演:ルーファス:堤真一、エレンディラ、ドナ:深津絵里、 ナイフ:生瀬勝久、ガラ:犬山イヌコ、ルドルフ大佐:山崎一、 ビビ:余貴美子、医師:木村悟、シャンプー:村田麻里
面白いんだとは思うけれど、ちょっと微妙な気分。 観終えて、どうにも納得できない部分が多い。 テーマがどうやら「嘘」だからだろうか。
誰にも彼にも楽しげに嘘をつきまくっていた大の嘘つき、 ルーファスの姉・ドナ。彼女は死んだ。今、ルーファスは、 姉にそっくりなお手伝いのエレンディラと暮らしている。 彼女にもなにやら、虚言癖らしきものが描かれる。 そこに、義兄のナイフと彼の現在の恋人・ガラが、 ドナの墓を建てたいとやってくる。逃げた犬を撃ちに来たと 大佐も現れ、ルーファスが脅しているはずの会社社長も来る。 観ていると全員が何重にも嘘をついている。何のために? 目的のない、嘘をつくための嘘もあるらしい。 そういえばドナは、そういう嘘ばかりついていた。
日の当たらない崖下の古ぼけた洋館。盗まれた毒薬。 人形を自分の赤ん坊だと信じて、絶対に人形を手放さない女。 「飼っている熱帯魚はカメレオンしか食べないから 捕まえたカメレオンを2階にためてある」なんて話が、 本当らしかったり、でもその熱帯魚が人の指を噛みちぎったり。 地下の防空壕にあるという白骨は、戦争の時逃げ遅れた人か、 既に死んだ姉が幼いころ撃ち殺したという母親のものか? 誰が誰を本当に愛していて、誰のどの言葉が嘘なのか。
結局、観終えてもよく分からない感じが気持ちいい人には いいのかもしれないなぁと思う。パンフレットで ケラさん曰く「文系の嘘つき」を目指したらしいから。 一つ一つの言葉に意味があるわけでなく、無意味な、 重ねることにしか意味がないような言葉と嘘の羅列。 通常の生活は そんなもののはずで、それを舞台に載せた時、 浮かび上がってくる人間関係が目的だったらしい。
そういう点から考えれば、 主要人物間では目的は達せられてたような気がします。 「姉弟」よりも「とにかく密接に結びついた2人」とか。 義弟に対するナイフの気持ちも、言葉にはしにくいけれど、 説明されるよりも共感できたような気がするし。 心地良いものではないけれど、どこか壊れた人たちの 奇妙な感情に強引に共感させられる この力は、すごい。
だから、釈然としないのも、観終えて微妙な気分なのも ケラさんの目的としては正しいのかもしれない。 嘘をついていないかもしれない医師とシャンプーに関しては 脚本としてうまく処理しきれていない感じがしたけれど、実は 観劇後感に比べればずっと、いい舞台なのかもなと思います。
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