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2003年06月30日(月) |
『天翔ける風に』前楽 |
『屋根の上のヴァイオリン弾き』のキャストが発表になりました。 私にとっては、もんのすごぉぉぉ〜〜い、ショックでした。 あの、くそ重苦しい(言葉遣い悪くてすみませんが)ミュージカルが、 西田テヴィエ時代にも増して観やすいものと化しそうな予感。 ユダヤの歴史もどこへやら、なんでこう暗い曲なのか、 何が「屋根の上」なのか、分からなくなっちゃったら嫌だなぁ。 重鎮、上條恒彦もいなくなっちゃったし、非常に不安、不安。
しかも、我が愛する駒田フィドラーがいないじゃないですかぁぁ(泣) 駒田さんの身体表現能力がフルに発揮される無言の演技、 大好きだったのに、次回から仕立て屋のモーテル。普通にセリフの役。 東宝的には昇格なのかもしれないけれど、ファンとしてはつまらない。 しかも、私の感覚的にはモーテルよりフィドラーの方が大切な役なのに、 東宝は この舞台におけるフィドラーを何だと思っているのか、 誰がフィドラー役をやるのか発表もしないじゃないですか(大泣) テーマを背負う陰主役なんて、どうでもいいんでしょうか? 『ラ・マンチャの男』に続いて この舞台も、あまり観劇をしない層にも 受ける「観やすいミュージカル」化するつもりなのかと思うと、泣けます。
で。帰宅してそんなことで大ショック受けていたのですが、 今日観てきたのは『天翔ける風に』。別の意味で大泣きしました。 以下、全然何のまとまりもない思いつくまま感想です。 この舞台の感想なんて、まとまらないよ。とにかく感情だもん。
何というかね、もう、幕末の風を感じたというか。 新撰組関連 読みまくってる関係上「慶応2年」とか言われると、 ああ あの事件の頃、と分かるからというのも確かなのですが、 前回観た時は、各々の姿が見えすぎて英の感情が消えがちだったのが、 今回、社会の中での各々の立場がはっきりと見えてくることで、 それに対する英の姿が更に浮き上がって見えてきた感じで。
郡司之助の「生活するのだ」という思想と、それを勧めながらも 一方で、人を殺すことを取り引き材料に出す姿なんかは、 1つの生き方として異様にリアルに見えてきてしまった。 前回、疑問に感じた父親の竜馬暗殺への心の動きも、今回は、 なぜ疑問に思ったのか分からないほど、ごく自然に感じた。 志士の出した「自分の命か竜馬の命」という言葉が、 脅迫ではなく取り引きと思え、それを受け入れた以上は、 どちらかを必ず行うのが、彼の最後のプライドだったのかと。
感情移入なんて全くしていないはずの、志士たちが踊るシーンでも、 先頭に立つヤマガタの熱さに呼応して血が湧き、息が苦しくなる。 智の覚悟も痛く、溜水の曲がってはいても命を懸けるほどの愛も、 すべてが奔流になって一時も休ませてくれない舞台。 暗転のほとんどない、目まぐるしく変わっていく場面たちや 立場の違う者の重なり合う歌、♪ええじゃないかの踊りなどによって、 混然となったまま どこへとも分からず走っていく時代を感じる。
その中で、ただ議論に走らず、踏み越えることができた英。 踏み越えることができる者が歴史を作っていくという事実。 けれど、ただ踏み越えればいいというものではないというのも事実。 既に、彼女個人の罪と罰が問題ではなく、周りの感情の問題でもなく、 激しく明滅する時代の中で、あくまでも自分にとって正直に強く 生きる姿に、痛いほど打たれて、とにかく泣いていました。
・・・はふ。 でも、あんまりすごいんで、観終えて疲れました(^^; そしてやっぱり、才谷はとにかく かっこいいなあ! 新撰組読んでると、思いっきり坂本竜馬=悪人モード入るけれど、 この才谷の大きさ広さ温かさだけは、誰がなんと言っても譲らない。 (いや、私に何も譲ってもらおうとは思ってないだろうけど・笑) 今日は「君が おつまさんを・・・?」と、悟った後の顔にやられた。 「違う、英!」と言いながら、自分こそが苦しそうで。
歴史上の坂本竜馬の思想を見ていると、アイディアがでかすぎて ついていけないけれど、実際に相対したら、こんな男だったのかも。 こんなに流れが渦巻く中、独りで平気そうに飲まれず立ってるのがすごい。 すごいんだけど、本当に楽そうに見えてしまうので、ホッとする。 でも、楽そうに見えるのは四肢がしっかりしているからだけで、 実は、あらゆる流れの気持ちを受けて苦しんでいるのだと、 こんな表情をされると分かってしまう。あまりに大きな男。
本当に本当に英の舞台で、彼女とともに息苦しい舞台でした。 才谷はその中で、苛立ちでもあり唯一の救いでもありました。 何が言いたいんだか、自分が何をここから得たのかなんて 分からないけれど、とにかく、ものすごい舞台でした。 感想ってそれだけ。こんなに書いたけど。 そしてまた再演してほしいです。それだけ。
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