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2003年05月21日(水) NODA・MAP『オイル』感想文。

『オイル』観てきました。
1日前の日記では、パソが壊れているから、
感想アップは遅くなること確定だと書いたのですが、
さっさと書いてしまって楽になりたい芝居だったので、
劇場帰りに前回お世話になったネットカフェに来ています。
『女神の恋』が始まるまでには帰れないだろうな・・・。
でもとにかく、早く書かないと気持ち悪くなりそうなので。
ちなみに、またしてもすごーいネタバレです。


<幕>全1幕、115分
<作・演出・出演>野田秀樹
<出演>
富士:松たか子、ヤマト:藤原竜也、神マサカ・マッサーカ軍曹:小林聡美、
ノンキダネ・日本人23:片桐はいり、神宮寺醍子・日本人24:山口紗弥加、
ヤミイチ:橋本じゅん、大國教授・日本人25:野田秀樹
北村有起哉、土屋良太、新藤健太郎、小手伸也、山中崇、越志マニング


私、野田秀樹作品 苦手なんです。
前に『カノン』と『半神』を観たことがあるのですが、どちらも、
感情に気付く前に膨大なセリフを追うことに疲れ果てるだけで、
脚本だけ読んでる方がよほど面白かったんじゃないかという感想で。
だから今回、一番最初に松たか子がしゃべり始めたとき、
「ああ、久々に野田秀樹作品を観に来たんだっけ」と感じました。
何を言っているのか必死で理解しなくちゃいけないセリフの洪水。
アンチ松としては「すごいじゃん、松たか子ってば、
野田秀樹 ちゃんとやってるじゃん」と、見直したりして。

ちなみに、帰りに友人と話したことによれば、普通は野田芝居は、
セリフを聞こうとしなくても、セリフの意味が演技の感情の中から
聞こえてくるから、セリフを聞こうと努力する必要は無いそうで。
だから今回、セリフを必死で聞かなければならなかった
前半の松たか子は、彼女にとっては非常にマイナスだそうです。
ってことは、今までの私が運が悪かっただけで、
松たか子は今回1人だけこなせてなかったってことか??

まぁでも何故か今回は、他の人はそうでなかったんです。
本尊の野田秀樹も含めて、ちゃんと内容の理解できるセリフ回しで。
苦労しなくてもセリフが理解できる野田作品ってすごい!!(笑)
そんな馬鹿馬鹿しくも非常に深刻な理由で、途中まですご〜く
私の中では評価高かったのですが。

でもね。聞いていい?何が言いたい芝居だったわけ?
今まで観て来た野田作品とは違う。多分、言いたいことは分かった。
分かったけど、それが私には全く共感できないってだけなのかな。
日本国民は原爆を落とされたことを忘れちゃいけないってのよね。
そこまではいいでしょう。でも、復讐の勧めなのかな?違うよね?

志願してもいないのに行かされることになった特攻から逃げ出し、
こっそりと、逃げるお金を送ってくれと電話してきた弟・ヤマト。
その電話の向こうで原爆が落ちた。何事もなかったように切れた電話。
結局、富士はその復讐のために、狂言を打って出雲の人々を駆り立て、
ツインビルに特攻させたってことになるのよね?そしてそれは、
遥かな昔、出雲の人々に「老いる」と「死」の概念を教え込み、
神々に対し反乱を起こさせたマホメット(この舞台でもこの表記で
いいのかどうかは分からないけれど)ってことなのよね?
更にそれを、ラストで強く涙とともに語っちゃってるのよね?

観終えてから、野田秀樹がこれを、ストレートに本気で書いたのか、
問い掛ける意図を持って書いたのかが分からなくて悩みました。
でも前書きを読んだら「自虐性の強い現代の日本人であるからこそ、
余計、絶対に書いておかなくてはならない」と思ったとあって。
「受けた仕打ちを忘れてヘラヘラしてんじゃねぇよ!」ってこと?
復讐の勧めとまでは言わないにしても、殴られてるのに、
ヘラヘラ笑ってんじゃねーよ!という怒りの表れなのかなと。

・・とすると、結構マジで珍しいほどストレートな芝居だったのね。
で、私にはどうにも共感しづらい内容だったんだなと納得。
ごめん、野田さん。私、殴られたらその時はもちろん腹立つけど、
いつまでも覚えていたいとは思わない。忘れた方が幸せだよ。
大体ね、殴る奴ってのは大抵バカだから、殴られた瞬間に
「怒ってるよ!」って見せないと、時間たった後に言われても、
何に対して怒ってるのか分からないから、すごく無意味だし。
富士は何度も、「あなたたちのことなのよ?!」と繰り返してる。
征服されたことにも気付かず、幸せそうに生きてる人々に対して。
昔、戦争はあったかもしれないけれど、今は戦争じゃない。
時間の概念がない彼らには「今は戦争じゃない」ことが重要で幸せで。

情けないのかなぁ?そりゃ、共感できない宗教押し付けられたり、
奴隷みたいな扱い受けたりしたら、それは怒ると思うけれど、
私は、神が憑いた振りをして人々を騙して特攻させてまで、
自分の復讐を果たそうとする富士の方が、よほど怖い。
自分や大切な人が、酷い目に遭ったことがないから思えること?
それならそれで、今、まだ遭ったことがないことを幸せに思いたい。
「世界で唯一の被爆国の人間としての意識が・・・」と言われれば、
それはまた別の問題だと思う。うまく言えないけど、何か違う。
観終わった瞬間は、もしかして野田さん「どう思いますか?」という
問題提起としてだけ作ったのかも・・という淡い期待があったけれど、
前書きを読んで違うらしいと分かって、悲しくなってしまって。

あ、舞台としては面白かった。でっかいB29が出て来たときは、
『ミス・サイゴン』のヘリが最初に出て来たときって、
こんな感動をしたのかなとか関係ないこと思ったりもしたし、
何しろ言ってることが分からない苦痛は無かったし、普通に笑えたし。
でも、ある意味で、早く忘れたいと思う面も相当に強い舞台でした。



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