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2002年06月21日(金) 野村萬斎in『オイディプス王』

劇場に行こうと渋谷の坂を登りながら、
携帯でメールを打っていました。
いきなり「How are You?」と声をかけられて、
「私?え?」と振り返ったら、
笑いながら私の方を見ている、数人の黒人さん。
思わず、携帯を思ーいっきり、相手の方に見せつけつつ、
できるだけ盛大に、嫌な顔をしてみせる私。
ちなみにストラップは、アズーリオフィシャルグッズ。
彼ら、ををっ!と、派手なアクションで驚いてくれました。
見つけたから声かけたんだろーが、てめーらはよぉ!(怒)

・・・しかし、未だに、「How are You?」と聞こえると、
脊髄反射で「I'm fine thank you, and you?」って言いたくなるね(^^;
そういえば、昨日の日記は普段の倍近い投票数を頂きました。
あまり冷静に書いてなかっただけに、すごく嬉しかったです。m(_ _)m


というわけで。街角で小さな国際交流しつつ(笑)、
久々に、重そうな芝居を観てきました。蜷川の『オイディプス王』。
フロイトの「エディプスコンプレックス」の素になったギリシャ悲劇で、
父親を殺して母親と結ばれる話だというのは、知っていました。
そういう壮絶な話の母親役を麻実さんというのは、面白いかなと。

でも、彼女の出番って、少ないんですね。
なかなか出てこないから、出て来る前に既に退屈してました。
劇場入るなり鏡貼りの舞台で、あぁ蜷川さんだなと、まず思う。
そして始まると、赤と黒を基調にした服のコロスたちが回り出す。
一斉に、セリフを謡うような感じで唱える。単体のセリフもいくつか。
蜷川さーん、ワンパターンもいいかげんにしようよ(^^;
全員 丸刈りなので、窪塚君とか小野伸二を思い出しつつ、
頭の格好が良い人って少ないのかなーなど思いながら時を過ごす。

そこに現れた野村萬斎@オイディプス王。
・・・・・・・軽いっ!軽すぎるっ!!
多分、声の出し方の問題だと思うのですが、ひとり浮いてる。
スフィンクスの謎を解き、国を救い、望まれて王になった知恵者?
疫病に襲われ、壊滅寸前の国を救うためには、
もう彼しかいない!と神のように崇められる人?
狂言と同じセリフ回しされたって、その役は辛いよぉ・・・。

ただ、セリフ回しは、少しずつ慣れてきました。
この王の、純粋さ・気性の荒さなどが見えてくるにつれて、
「高潔な王」として作っていないんだと感じてきたからかも。
「実の父を殺し母と寝る者だ」と信託を受けた後も、
神託の成就を畏れて国を出たという深刻さより、
「こうしときゃ成就できねーだろ、や〜い!」って感じ。
三叉路で馬車に出会って、道を避けろと言われても避けず、
売られたケンカは買って、相手をぶっ殺しておきながら、
思い切り忘れきって、「人殺しは追放!」なんて言う辺りも。

でも、それで慣れて見ていると、素性がバレてからの行動が違和感。
麻実@后は、首を吊って亡くなられたとナレーションがあり、
てっきり王も、我が子を殺して自殺したんだと思いました。
なのに、血まみれで出てきて、子供たち抱き締め延々と語る。

そして、コロスたちが再び嘆く。「どんな高潔な人間であろうとも、
神の無慈悲な運命から逃れることは絶対にできない」と。
やはり、知恵者で救世主で、だれよりも尊敬される人物が、
足掻いて足掻いて、その度に加速してどん底へ落ちていく、
その理不尽な無慈悲さこそが、この悲劇の真髄と思うのに、
いきおいで人を殺しちゃって、義理の弟も簡単に疑っちゃう。
そう見えるノリの軽さが、悲劇の度合いを薄めまくった気がしました。

内容やセリフは 通常演じられるものと同じなのだろうけれど、
翻訳・演出などが違うと、止むを得ない行動に見えるものなのかな?
野村萬斎の演技や声の出し方のせいだけじゃない気もします。
でも何しろ、重厚に作っている割に、何かずれてる舞台でした。
麻実れいさんと、義弟役の吉田鋼太郎さんは、好きだったです。



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