マニアックな憂鬱〜雌伏篇...ふじぽん

 

 

もうちょっとだけ、世間は甘くてもいいのだと思う。 - 2004年09月09日(木)

仕出し弁当の店が、一軒だけやっていた。

火曜日のお昼くらいが台風16号のピークで、外はもう今までに見たことがないくらいの突風と豪雨だったのだけれど、その店の弁当は、20分遅れで僕たちの手元にやってきた。
その弁当は、いつもと変わらない中身だったのだけれど。

僕はその弁当を食べながら、なんだかちょっと申し訳ないような気分になっていた。
台風なんて夕方には僕たちのいる場所からは去ってしまうし、そうすれば食事をする場所はいくらでもある。
それなのに、「お昼にごはんを食べたいけど、外は台風で出られない」という理由で、あんな状況のなかで、弁当屋さんに配達を頼むことは、はたして正しかったのか。

もちろん、そんなのに正しいも何もなくて、向こうだって「こういう機会に、新しい顧客を開拓したい」とか「他所がやってなければたくさん売れる」とか「いつも注文してくれるお客さんたちが台風で昼ごはんが食べられなくて困っているだろうから、なんとか配達する」とか、いろんな理由があるんだろうと思うし。

とはいえ、僕は、あまりに「サービスが当たり前になっている社会」に対して、不安というか、なんだか居心地の悪いものを感じる。
お正月も普通に営業している店や台風のときも「24時間営業」のコンビニ。災害対策に従事する人や医療関係者は、「台風だから」という理由で休んでもいられない(というか、こういうときにこそ必要とされる)けど、仕出し弁当の店やコンビニとかは、勤めている人の危険を顧みずに営業するほどのメリットがあるのかどうか。
僕は、「そんなときくらい、台風を避けて家で防災対策をやったり、もしくは安全な場所で休んでいればいいのに」とか、つい思ってしまう。
たぶん、そういう機会っていうのは、ある種の「ビジネスチャンス」ではあるのだろう。

でも、「今日は危ないからやめときますね」とお店の人が言って、「こういう日は、ムリして営業しなくてもいいんじゃない?台風が行っちゃうまでご飯食べなくても、飢え死にはしないと思うし」って、お客も返してあげられるような世の中だったらいいのなあ、と僕は思う。

こんな世の中にだって、せめてそのくらいの「甘さ」があってもいいんじゃないかな。



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