使えないお金 - 2004年04月20日(火) 先日、カレー屋で食事をしたときのことだ。 いつものように本を閉じて、伝票をつまんでレジの前に行くと「研修中」の名札をつけた、たぶん20歳そこそこくらいの女の子がレジを打ってくれた。 いわゆる「美人」ではないけれど、闊達そうな感じの子だ。 「お会計は850円です。」 僕は千円札を出して、お釣りが出てくるのをなんとなく目のやり場に困りながら待っていた。 コンビニでの会計の最中などもそうなのだが、僕はこういうときの手持ち無沙汰がけっこう苦手なのだ。セブンイレブンで、レジの後ろにゲームとかCDの発売日の表があるのは、本当に良く考えられているなあ、といつも感心してしまうくらいに。 その女の子は、まだ慣れていないらしくて、たどたどしい手つきで100円玉と50円玉とを一枚ずつ大事そうに取って、それを自分の手のひらの上に置いてみせた。 「150円のお返しになります」 そのとき、彼女の動きが一瞬止まった。 彼女の手のひらの50円玉はえらく錆びて黒ずんでいて、ちょっと汚れてるな、という感じだったのだ。 「す、すみませんっ!」 彼女はあわてて手を引っ込めて、レジの中から新しい50円玉を1枚、取った。 …今度の50円玉も、さっきのよりは少しマシ、という程度に汚れていた。 彼女は、一瞬躊躇したのだけれど、おそらく「もう一度新しいコインを探すのにかかる時間」と「少し苛立ちはじめている僕」を見比べて、「すみません!」ともう一度言って、その50円玉を僕の手のひらにそっと置いた。 少なくとも、最初のだって使えないほどの汚れ方ではなかったんだけどね。 帰り道、僕はその50円玉1枚だけ、ズボンのポケットに入れておいた。 あれから1週間くらい経つけれど、いまだに使ってしまう気になれなくて、まだポケットの中にある。 ...
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