マニアックな憂鬱〜雌伏篇...ふじぽん

 

 

”Magicians of The Century” - 2003年10月07日(火)

 今回は、何はともあれ、こちらのサイト「しんつま日記 in ベイエリア(10/6)」を先にごらんください。

 シークフリート&ロイ(SIEGFRIED & ROY, シークフリートなのか、ジークフリートなのか、いつも迷います)という2人組のマジシャン(というより、イリュージョニストと言ったほうが良いのかもしれません)を御存知でしょうか?
 彼らはたぶん、世界中で最も有名なマジシャンのうちの1組で、13年間もラスベガスを代表する巨大ホテルのひとつ「ミラージュ」で、週6回のマジックショーを続けてきました。
 日本円で1回1万円を超える価格でありながら、そのチケットは、シルク・ドゥ・ソレイユ(日本では、今「キダム」を公演中)の「O(オー)」が始まるまでは、長年「ラスベガスで最もチケットが取りにくいショー」として君臨しており、今なお非常に人気が高いショーなのです。

 でも、たぶん一部の好事家を除く多くの日本人にとって、「シークフリード&ロイ」は、あまりメジャーな存在ではないと思います。
 僕も、つい最近まで、ラスベガスに有名なマジックショーがある、というくらいの認識しか持っていませんでしたから。
 
 先日(約1ヶ月前)ラスベガスに旅行した際に、僕は彼らのショーを観る機会がありました。
 率直に言うと、彼らのことをよく知っていたわけではなくて、「ラスベガスで人気のショーだから」という理由で観に行ったのです。
 そこで、彼らはアメリカの人々に本当に愛されているんだな、と僕は感じたのです。
 僕のようなひねくれた人間は、彼らのすごいマジック(象が消えたり、ホワイトタイガーを入れた箱から人が出てきたり、とにかくスケールが大きい)を見て、まず「どんなトリックなんだろう?」と考えます。
 でも、多くのアメリカ人は「象が消えるなんてすげー!(歓声・拍手)、ところで、あれって、どういう仕掛けなんだろう?」というようなリアクションをとっているのを感じました。
 そういう、ものの考え方の違いみたいなのも、マジックとともに刺激的だったことを覚えています。

 今回、ステージ上でロイに起きたアクシデントは、本当に悲劇的なものでした。
 ホワイトタイガーは彼らの代名詞であり、彼らに大きな成功をもたらした友人だったのに。
 実際のステージでも、ホワイトタイガーが登場すると、観客の反応は明らかに他の場面より大きかったですし。
 そして、シークフリート&ロイは、絶滅に瀕するホワイトタイガーの保護のために、これまで莫大な援助を続けてきたのです。
 ステージ上で、たくさんのタイガーたちとともに「自然保護の大切さ」を訴える2人。
 ただ、そのとき僕は内心「タイガーの前に、イラク人をなんとかしてやれよ…」とか思っていたことも告白しておきます。

 今回のアクシデントで「飼い虎に頚を咬まれるなんて…」と悪趣味な言葉も一瞬僕の頭をよぎったのですが、上のリンク先で読んだロイの言葉で、僕はなんだか涙が出そうになりました。
 彼らがステージの上で言った、「僕たちのマジックなんて、ほんのささいなもの。"Nature"と”Life”こそ、本当のマジックなんだよ」という言葉を思い出して。

 たとえば、事故にあった人や事件に巻き込まれた人などは、「ああ、あの飛行機事故で亡くなった方ですね」というように語られてしまうことが多いですよね。
 でも、僕はそれはすごく悲しいことだと思います。

 もし僕が不慮の事故で死ぬことがあったら(念のために言っておきますが、僕はロイが死ぬなんて思っていませんので)、僕のことを知っている人には、「事故で死んだこと」よりも、「生きている間に一緒に過ごした楽しい記憶」を覚えていてもらいたい。
 だから僕は「シークフリート&ロイ」のショーを「ロイがタイガーに咬まれたショー」ではなくて、「13年間も世界中の人々を楽しませ続けている、偉大なショー」として記憶していたいと思うのです。
 一度でも、その場に居合わせた人間の特権として。

 今回のアクシデントで、ラスベガスの顔であった「シークフリート&ロイ」(ラスベガスの街に行くと、これでもかというくらい、彼らの顔があちこちで見られます、本当に)は、終演になってしまう可能性が高いそうです。
 ロイの容態も、けっして楽観できるものではないそうですし。

 でもね、僕は彼らがまた、ステージに立つ日が来る予感がするのです。

 そう、彼らは、たくさんの奇跡を起こしてきた
”Magicians of The Century”なのですから。
 

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