マニアックな憂鬱〜雌伏篇...ふじぽん

 

 

車椅子から立ち上がった、ひとりの「バカ」に捧ぐ。 - 2003年06月16日(月)

 今日、平井堅のコンサートを観てきたんだが、そのオープニングで、「Life is…」(ドラマ『ブラックジャックによろしく』のテーマのあの曲だ)のプロモーションビデオが流れた。
 あらためて観ていると(そりゃ、コンサート会場だから、それを観る以外にやることなんて何もありゃしない)、いろんな人が出ているのだ、そのビデオクリップには。
 このPVに出ている武豊を観るたびに、「そんなのより、馬に乗る練習しやがれ!」とか罵倒したくなるのだが、最後に出てくるマスクを被った男に、僕の目は釘付けになってしまった(今までこのPVを一部しか観たことがなかったのだ)。
 その男は、車椅子から、杖なしで必死に立ち上がろうとする。
 そして、よろめきながらも、その男は2本の足で地面に立った。

 彼の名は、ハヤブサ。
 彼は、プロレスラーだ(「だった」という過去形で呼ぶことは許されないだろう)。
 ハヤブサは一度リングの上で重症を負いながらも、必死のリハビリでリングに戻ってきた。
 しかし、その彼を再度悲劇が襲った。
 頚椎損傷による、四肢の麻痺。
 その傷を負ったとき、彼はリングの上で、全く動くことができなかった。
 それでも、彼はマイクに向かって「必ず帰ってくる」と観客にアピールしたのだ。

 それから、また時間が経ち、僕は彼のことを忘れかけていた。
(実際、今日も「この人誰?」と聞かれて、「サスケだったかな…」と考えてしまったくらいだ)
 でも、彼の時間は止まってはいなかった。
 血を吐くようなリハビリの末、ハヤブサは車椅子から立ち上がったのだ。
 彼の命であり、自由を奪った元凶でもあるマスクとともに。

 僕は、ハヤブサは「バカ」だと思う。
 一度重傷を負い、リスクを承知の上でリングに上がって激しい闘いをみせて、またもや人生を失いかねないような大怪我をしてしまうなんて。
 そんなになってまで、闘う必要があるのか?と

 彼が、車椅子から杖に頼らずに立ち上がろうとする姿をみながら、僕は「この人は、本当の『バカ』だなあ」と思った。涙をこぼしそうになりながら。
 
 「バカ」は無駄だ。
 「バカ」は、他人からみれば、みっともない。
 「バカ」になんか、つきあってはいられない。
 「バカ」は、自意識過剰でウザイ。

 でも、僕は「バカ」が好きです。
 たぶん人間の歴史の土台は、「バカ」たちの屍なのだと思います。

 甦れ!ハヤブサ。

 


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