Comes Tomorrow
ナウシカ



 翼をください

昨日、ふと空を飛びたくなった。
私の前に道はある。
でも私の後ろに道はない。

2〜3日に1人のペースで患者は亡くなっていく。
そして、その空きベッドはまたすぐに埋まっていく。
そして、1ヶ月もしないうちに、また空いてしまうのだ。

痛みで怒りっぽくなったり、不安で寂しくなったり、痛みが和らぎユーモアが言えるようになったり、そしてただただ眠り続け、気がつけば家族親戚に囲まれている。
かと思えば、生前の行いで家族は滅多に来なくなり、1人ポツンと車椅子に座って、談話室でTVを観ている人がいる。
怒りっぽくて危ない人、こちらの呼びかけにはほとんど返事もしない。

心配で車椅子の後ろに、そっとついて行って『点滴、大丈夫ですか?』と声をかける。
車椅子の車輪に点滴ルートが巻き込まれそうでヒヤヒヤもん。
『ありがとう』と言ってくれた。
背中越しだったから言えたのかな?

家族との楽しい思い出も、苦い思い出も忘れてしまった青年がいる。
彼には今しかない。
今しか覚えていられない。
でも、幸せそうだ。

みんな、今を生きてるんだな。
前も後ろもなく、今ここに生きてる。
それだけでいいのかも。


2011年08月27日(土)
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